幕ノ内一歩vs小田裕介
勿論一歩を応援するために後楽園ホールに到着。
いつも一緒にトレーニングをしていたが、ボクサーとしての一歩を見るのは今日が初めてだ。
俺がジムで見てもらう時は鴨川会長に時間があって他のジム生が少ない時だし、一歩は普段地下リングを使っているらしいから。
楽しみだが、同時に不安も強い。
対戦相手である小田祐介の情報が青木村さんからしか無かったのもそうだけれど、原作の小田祐介との差異が全く予想できない。
ハードパンチャーで世界を狙えるとまで言われた拳だったが、今どうなっているのか。
考えながら、スタンド席へと向かう。
そういえば、原作でおふくろさんが作ってくれた『IPO』のトランクスは、ちゃんと一歩に注意して『IPPO』にしてもらった。
知りながら放置するのも気まずいし。
遠目に鴨川ジム一行が見えたが距離が離れてるし、俺はジムとは関係無い友人として来ているので軽く会釈するだけにした。
既に会場入りして、控室に入っている時間だろうが・・・
それにしてもジム入りしてから4カ月でプロデビューとか、あいつ本当に規格外だな。
アマチュアで経験があったならともかく未経験からだ、化け物にもほどがある。
何はともあれ、記念すべき一歩のデビュー戦。応援しなきゃ。
席に座って少し待っていると、少し離れた所から
「おー!きたきたぁ!頑張れよ一歩ぉ!」
「ぶちかましてこいよぉ!」
と青木さん・木村さんの声と、多分鷹村さんの口笛が聞こえて来た。
一歩が入場して来たのを目に入れて俺も声を上げる
「やったれ一歩!魅せてくれよぉ!」
声に気づいた一歩がコクリと頷くのが見えた。
そしてリングへと向かい、入る。
対戦相手、小田祐介の姿が確認できる距離になったんだが・・・
小田の身体をみて驚いた。記憶違いじゃなければ原作よりもいい身体してね?
いやいい身体どころか、鷹村さんの言葉を借りるなら。
『根性なしには作れない身体』に見える。
顔も気迫十分。
青木村さんの話では
『戦績は負けが込みすぎてて未だに4回戦。ハードパンチャーとして脚光を一瞬浴びたが今はそれも無い。若手に追いつき追い越され、引退したもんだと思ってたぜ』
と、恐らくは原作と似たような事を言ってたと思う。
まさか本当に鍛えなおしてきたのか?
ビーーーーーーー!
そんな事を考えていたら、試合開始のブザーが鳴った。
今はそんな事よりも、ちゃんと見て応援しなきゃな。
「ラウンドワン!!」
セコンドがリングから出て試合が始まる。
カァン!
開始の音がなると同時に飛び出すなんて事はなく、静かに始まった。
一歩はピーカブースタイル、小田は少し手を下げ気味の、多分オーソドックススタイル。
静かに距離を測っているのか頭を振りながらすり足、鬼気迫る気配で睨みつけていた小田から動いた。
叩きつけるような、ジャブと言うより左ストレートからの左フック。
それをダッキングで躱し懐に潜りながら大きく左足を踏み込み・・・
抉りこみ、突き上げるような見事な角度のリバーブローがめり込む
『ぐへぁ』とか声が聞こえてきそうな苦悶の表情を晒す。
小田はそのまま横に倒れこみダウン、一歩はコーナーに。
(お前成長しすぎだろ!?)
「ワーン!」
(今のリバーブロー、ダッキングで踏み込んだ勢いそのままで打ち込んだし、本当にボクシング始めたばかりか?)
立とうとしているが、今の一発で呼吸困難になっているのか痙攣しているように見える。
「セブン!」
「んがぁああ!」
小田が雄たけびを上げて立ち上がり、カウントが止まる。
レフェリーからの確認を受け続行。
小田は少しふらついて居るが目の光は消えていない。
一歩はそれを見つめ、またピーカブースタイルになる。
今度は一歩から前に。
ピーカブーで突進してジャブから右ストレート、小田は慌てて顔を反らして避けた。
が、右を戻す勢いを使ってそのまま左足を踏み込む。
そして再びリバーブロー、今度は小田の身体が浮き上がった気がする。
たたらを踏みつつ、今度は倒れず持ちこたえた。
(根性は凄い、凄いけど・・・)
そんな隙を見逃す一歩ではなく、渾身の右ストレートが顔面に決まり・・・
凄い勢いでロープまですっ飛んでいき、跳ね返りながら倒れるかと思いきや
ドォン!
跳ね返りの勢いのまま一歩のガードに右ストレートを叩きつけた。
(マジかよ!リバーブローだけでも悶絶・・・いや骨が折れててもおかしくないのに)
息が荒い、いや息が出来ているかどうかさえも怪しい苦悶の表情だが、それでも尚眼の光を失うどころか鬼の形相で一歩を睨みつけていた。
バトル描写難しい・・・!