前のめりになりながら拳を叩きつけた小田は、そのまま止まる事なく進む。
もしかしたら、止まれないのかもしれない。
あれだけの強打を食らったんだ、まともに立てない可能性すらある。
2回ダウンしたら終わりの4回戦、防御に回っても勝ち目が無いと判断したか。
「うぉ・・・あああああああ!!!」
ココまで聞こえる雄叫びを上げて前進する小田。
それを横に避けるでもなく、後ろに下がるでもなく。
まっすぐ見据えて待ち構える一歩。
そして突っ込んで来た小田の右ストレートを、支えるかのようにガードして
そのまま右ボディーブローを叩きこんだ。
(あ、違うわあれ。支えたとか受けて立ったとかじゃなくて、確実に仕留めるための状況を作っただけだ)
くの字に折れて後退した所をジャブで追い、右フックで追撃。
そのまま低く、深く踏み込んでから右フックの勢いで沈んだ身体を起こしながら左フック。
完全に体を崩し片足立ちになった小田に・・・トドメの右アッパーが炸裂した。
(まて待て。短いけどその流れ、その動きってアレじゃねぇか!)
完全に身体から力が抜けた小田がリングに倒れこむ。
ダウン2回目・・・いや、そうでなくても完全にKOだ。
カンカンカンカン!
試合終了の音が鳴り響く。
「ナイスファイト!!」
一歩には勿論、小田にも敬意を込めて拍手を送った。
1R50秒 1勝0敗1KO
その後俺は帰るつもりだったんだが鷹村さんに文字通り拉致され、祝勝会に連行された。
いや、鴨川ジムの人たちでやってくださいよ・・・
原作と違って俺も一歩も18歳だけど、この身体が酒に強いかどうかわかんねぇし!
ビールの一杯くらいは平気だろうと諦めるしかないか。
そういや、こんな祝いの席なんて梅沢になった後もなる前も、全部合わせても何時ぶりだろうなぁ・・・
やって来ましたスナック『シュガーレイ』
アケミさんらしき人に青木村さんが突進して行ったり鷹村さんが気に入った女性を捕まえたり一歩がちやほやされたりしていたが、俺は我関せずだ、主役じゃないし。
「それでは一歩君のデビュー戦勝利を祝って!」
八木さんが音頭を取りグラスを掲げる。
「かんぱぁ~~~い!!」
「それにしても・・・」
木村さんが思い出すように話題を振ってきた。
「小田があそこまで根性あるとはな。一歩のリバー・ボディーブロー、それに右ストレート。まともに食らってあそこまでヤルとは正直思ってなかったぜ」
「それな。右ストレート食らって吹っ飛んだ後に反撃するなんざ本気で驚いたぜ」
青木さんも乗っかる。
「あそこまで身体を作って来て、あの面構えだ。何か負けられない理由でもあったんだろうぜ」
ちびちび呑んでいた鷹村さんは当然かのように言う。
そうなんだろうな。1年のズレで何が有ったのか、何が無かったのかは分からないが、今日の試合に賭ける何かが有ったのだろう。
酒への耐性がわからないから大人しく呑んでたら
「なーにそこで『ボクは関係ありませんよー』みたいな顔で呑んでやがる!次はおめぇだぞ!」
木村さんに絡まれた。
「いや、鴨川ジムへの入門はしますが・・・プロテストを可能な限り早く受けるつもりですが、プロデビューは会長や皆さんが許してくれるかどうか」
「何ぬるい事言ってやがる、おめぇ一歩の最初の師匠なんだろうが」
・・・はい!?
「なんで俺が師匠の一人に入ってんすか!そこは会長とか鷹村さんでしょう!?」
「あ、ごめん。僕が最初ジムに行った時にそう説明したんだ」
一歩ぉおお!
orzになってると鷹村さんから
「何にショック受けてんだか知らねぇが・・・体幹の鍛え方・親指の重要性と体重移動、基礎能力のトレーニング方法を教えていたのは貴様だろうが」
そうだけど、そうなんだけどさぁ!それは原作知識って言うズルありきでしてね?!
「俺は自分で試して有用そうなトレーニングを一歩に教えてただけですよ!」
「貴様が書いたトレーニング方法のメモを見た。あれは完全にインファイター専用のトレーニングメニューだ。それも・・・一歩専用のな」
買いかぶりすぎぃ!
順番が違うんです、一歩専用に俺が作ったメニューじゃなくて、一歩が原作でやってたトレーニングをほんの少し改善したりして提案しただけで!かと言って上手く説明できねぇ!
やべぇ、皆さんからの期待値が高まっていくのを感じる。