「本当にヘッドギア無くていいのか?」
オヤッサンが心配そうに聞いてくるが
「はい。あると視界が狭まるし何よりも普段通りに動けないので」
だって俺、スパーなんて数えるほどしかして無いし・・・
だがそれはそれ。
スパーだろうが何処だろうがここはリングの上だ。
俺に出来る全てを出す
・・・のはいいんだが、今の俺に出来る全力って言ったらアレなんだよなぁ・・・
「確認なんですが」
「おう」
「3ラウンドなんですよね、ダウンは?」
「何回してもいいぜ」
伊達さんが答える。
「それはありがたいです、全力でやれる」
不思議そうな顔をした伊達さんだが、にやっとして反対側のコーナーへ行く。
俺もコーナーへ行き、伊達さんに背を向けて・・・思考を切り替える。
ウェルター級はパワー・スピード・テクニックを高次元で融合させている選手が多い。
軽量級並みのスピードの選手だって有名人を除いてもたくさん居る。
その人たちに対抗するために考えたスタイルはあるんだが・・・当然まだ完成していない。
その選手たちに対抗するため、基礎を練り上げるため練習してきたのがリカルド・マルチネスの模倣だ。
後、一歩のスパーリングパートナーとして『仮想リカルド・マルチネス』役が出来たらいいなぁって思ってたのにまさか伊達さんの相手を先にするとはなぁ。
カァン!
ゴングと同時に振りかえる。
のそり・・・とガードを上げ気味に近づいてくる伊達さん。
俺はガードを上げ、少し左手を前に出しながらグローブの間から覗き見る。
伊達さんは様子見をしてるらしい・・・なら遠慮なく、行く!
左肘をロックし、肩の回転を意識して拳を内側に捻る。
肩口から伊達さんの視線を真っすぐに貫く軌道を意識して、背後にある壁まで撃ち貫く気持ちで・・・!
ドキュン!
と言う音を鳴り響かせてガードに触れ
ガード所か伊達さんの身体ごと吹き飛ばした。
あれぇ・・・思ってた威力と違う!
ガードの上からでも効く・・・!みたいな感じでビックリさせられたらいいなぁ程度になると思ったのに!
伊達さんが驚愕した顔から、ニィって笑った後・・・恐ろしい形相で構えなおした。
大きく吹き飛び、後退した伊達さんにリングの周りが騒めく
「なんだ今のジャブ・・・いや、あれでジャブなのか?」
「間違いなくジャブだ・・・だが、なんて野郎だ」
疑問を浮かべる沖田にオヤッサンが解説する
「どういう事っすか?」
「普通はな、あんな手首を捻って打ち込まねぇ。負担がハンパじゃねぇからな。だが見て見ろ。戻した拳が既にさっきと同じ位置で同じ構えをしてやがる。つまりあれが標準装備って事だ」
「アレを何度でも・・・連射できるかも知れないって事っすか」
「ああ。しかも異常に伸びやがる。まるで伊達を圧し潰し、穴を空ける勢いだったぜ」
「デビュー前の新人ですら無いと信じてませんでしたが・・・流石は破壊神って事ですか」
なんかまた過大評価されてる気配を感じる・・・
勘弁してくれ、今の俺が自信がある武器ってこのジャブともう一つしかないんだよ!
少々短いですが次回ちゃんとヤります。
『デュエルスタンバイ!梅沢死す!』