あれだけ自信満々に啖呵を切っておいてこんな結果とは。
穴が有ったら入りたい!
スパーの経験が足りなすぎなのは勿論、搭載している技が少なすぎる。
でも、いい経験になったし収穫もあった。
「梅沢さん」
俺の『偽・弾丸』と『偽・飛燕』、改良の余地が山ほど見つかったのもそうだが
「梅沢さん!」
なんだよ、現実逃避させてくれよ
「幕ノ内先輩が・・・」
わかってるよ!
なんか沖田さん、オヤッサンや仲代ジムの面々と仲良くなってやがる・・・なんで?
沖田さんは最初ガンくれてたし、原作じゃ目の敵のしてただろ
なにこれ、どういうバタフライエフェクトだ!
しかもさらに理解しがたい事にだ
「梅沢のあのジャブ、どういう発想で身に着けやがった」
「発想とかはわかりませんが、鴨川会長から教えを受けてからずっとジャブの練習に力を入れてましたから」
「なんで右を一切使わなかったんだ?足すらステップインする時しか使わなかっただろ」
「それは・・・なんででしょう。でも舐めてたとか実験とかじゃなくて、本気でやるためにそうしてたんだと思います」
俺の話題ばっかりなんだよ・・・
どうしろってんだ山田君。俺にあの輪に入れと?
どうするべきか悩んでたら、俺が起きた事に一歩が気が付いた。
「梅沢君、気が付いたんだね!頭大丈夫?」
その聞き方はやめれ。
「ああ、大丈夫だ。今は違う事で頭が痛かっただけで」
「起きたか。お前といいコイツといい、今の鴨川ジムはどうなってんだ」
「いや、この筋肉おばけと一緒にしないでください」
周りを見渡してみるが、伊達さんが居ない。
シャワーでも浴びてるのかな。
「一歩とのスパーはどうなりましたか?」
オヤッサンに聞く。
「・・・」
なんか黙ったんだけど。苦虫を嚙み潰したような顔してんだけど。
不思議に思ってたら後ろから一歩が話しかけてきた
「安心して梅沢君。一矢報いたから!」
お前、伊達さんに何した!
病院送りにしてねぇだろうな!?
「うぉっぷ・・・朝飯戻しちまったじゃねぇか・・・」
あ、良かった。何処からか戻って来た。
「伊達さん!無事だったんすね!」
「あん?なんだいきなり・・・ああ、そういう事か」
腹をさすりながら、周りを見渡して状況を理解したのか。
「引き分けって言いてぇとこだが、そっちはピンピンしてやがる。どういう身体してんだ」
「ええ・・・?山田君、簡単に概要だけでいいからどうなったのか教えてくれない?」
「あ、はい!3ラウンドやり切って双方1ダウンずつ」
そりゃ確かに一矢報いてるな。疲労のピーク、走り込みの後でさらに俺とのスパーもした後だとしても。日本王者からダウンを奪ったなんて・・・ダウンだと!?
「1・2ラウンドは伊達さんが優勢で、顔・ボディに何発か貰ってましたが耐えてました。3ラウンドが始まってすぐロープ際に追い詰めた伊達さんは梅沢さんにもやっていた、ボディから少し上にパンチをしたように見えた後。動きが止まったとしか思えない幕ノ内先輩に右ストレートを撃ってました」
ハートブレイクショットだな。
「ダウンから立ち上がった幕ノ内先輩が、勢いをつけて伊達選手に向かっていってワンツーを避けてそのまま左右のボディ、からの左フックで膝を突かせただけですが、ダウンを奪い返して」
吐いてたっぽい事言ってたのはソレかぁ
「その後はクリーンヒット無しの攻防で3ラウンド終了でした」
思ったよりは・・・まぁ、うん。
「やめてくれよぉ、そんな解説されるとこっぱずかしい、ダウンまで取られちまってよ」
身内贔屓もあるが、一歩のボディブロー2発食らってそれで済んでるのもすげぇよ・・・
「それよりも、今日はありがとうございました。課題も見えました!」
「気にすんな、また機会があればやろうぜ」
「はい!次は右も鍛えてきます!」
帰り道。電車に揺られながら話す。
「なぁ、なんであんなに仲代ジムの人に気に入られたんだ?」
「僕にもわからないよ。でも梅沢君のトレーニング方法とかに興味津々でさ、聞かれてたんだ」
「自分も聞かれたっす。見てたまんまを言ったっすけど」
見てたまんまって・・・なんだろう
「技も身体も基礎を積み重ねてる感じだって」
「どこであのジャブを身につけたんだ、とかも聞かれたね。」
なんでそこまで俺に興味津々なんだよ。
ジャブしか撃ってないし物真似未完成で出来損ないのジャブしか・・・そのせいか!
って事は社交辞令じゃなくて本当にスパーリングパートナーとして目をつけられた?
・・・よし、今度こそ現実逃避しよう。そうしよう。
今考えるべきはプロテストだな、頑張ろうぜ山田君!