俺は一歩の仮想敵として、スパーリングパートナーとなる為にイメージトレーニングはよくしていた。
自分が成りきる為に、自分が同じリングに立った時にどうするか?と。
『伊達・島袋・沢村・リカルド』等・・・あ、千堂とかウォーリーは無理。
強い弱いじゃなく、あの独特の野生を再現する方法がわからない。
俺に出来るのは、あくまでも通常の・・・練習を積み重ねた延長線上にあるモノだ。
そして、原作を知る俺にとって。
その極北に位置するものが『リカルド・マルチネス』であり『デビッド・イーグル』であり
『幕ノ内一歩』なのだ。
その一歩が今俺の目の前どころかアゴの下、まさしく懐でボディブローを撃つ態勢で左拳を構えてやがる・・・!
一歩の訳のわからない覚悟の決まった顔に驚き、『偽・弾丸』の初撃を躱され、懐に潜りこまれたのはいい。
だがこんな判断が遅れたゼロ距離じゃスマッシュも普通のショートアッパーも撃てねぇ。
右手を防御に使うしかない。
ここで防御だけを考えて受けに回ってしまえば小田祐介戦で見せた、連打が来るのは当然!
ならば・・・折りたたんだ右腕でボディブローを防御しつつ、自分から横へ飛ぶ!
間合いとタイミングをハズして・・・もう一度ジャブからやり直しだ!
そのハズだったのに横っ飛びした俺をボディブローから踏み込みの勢いを止めず、そのまま追いかけてきやがった。
一拍置いてから『偽・弾丸』から『偽・飛燕』で動きを止めてのスマッシュに繋げようとしたのにツブされた。
もう細かく考えてたら俺のアバラも持って行かれる・・・そう思った俺は覚悟を決めた。
今日はヘッドギア有りなんだ・・・顔面へのダメージは必要経費だと割り切ってやるよ!
「お・・・梅沢も覚悟決めた顔したな」
「伊達さんとのスパーで見せていたって言う顔ですか」
「ああ、あの顔を見せてからのアイツは・・・俺が言うのもなんだが強かったぜ」
「しかし、クリーンヒットはゼロで完封されたと聞いたんですが」
「結果だけならそうだな。だが・・・いや今は見ようぜ藤井ちゃん」
余計な思考を排除する。
俺に出来るのは『練習通り』だけだ。
頭を揺らしながら突っ込んで来る一歩に対してタメて放つ『偽・弾丸』では避けられてしまう。
だったらやっぱり・・・
練習に練習を重ねたジャブを撃つ、打つ、ウツ。
『偽・弾丸』ではない、避け辛い軌道のフォームを研究しまくった、ただのジャブだ。
一歩の視線も意識して撃つ場所を左に寄せる。
この打ち方なら一歩のウィービングにも付いていける。
そしてダッキングで踏み込んで来た所にスマッシュを下から叩き込む
そう作戦を決めてジャブを撃つ!
ス・・・パパパパァン!
連打の中の一発が一歩の顔面を捕える。
それ以外はガードされたが後退させた。
(思ったより後退させちまった・・・伊達さん時みたいな感じになると思ったんだが)
あれ?一歩の顔が・・・なんていうかアレ、鼻血だしてるけどそれよりも
『こうこなくっちゃね!本気で、全力で行くよ!』
って言う顔にしか見えないんだけど!
・・・いいよやってやらあ!
どうせ仮想敵『リカルド・マルチネス』も考えてたんだ
原作日本王者の時だって、リカルド・マルチネスの左だけで完封されてたんだ・・・やってやるよ!