原作知識と言っても大した事じゃない。
一歩を苦戦させていた原作キャラのトレースである。
俺が今の今まで基礎の筋トレと技を地味に、執拗に反復してきた理由は
基礎が・・・土台がしっかりしていればそれらをトレースする時に必ず役に立つからだ。
一歩が左ボディを撃ってくる。俺はそれを見下ろしながら、一つ覚悟を決めた。
(腹はくれてやるよ!・・・あれ、これフラグじゃね?某アンダーソンみたいな)
「ぐぼふぁ」
変な事考えてる場合じゃなかったわ
ボディを食らい、くの字ほどでは無いが折れ曲がった体に追撃が来る。
今まで見せて来たパターンならここから、右フック→左フック→からの身体を沈ませてからのアッパー。それでも相手が倒れ無かったら左ジャブで追い、タイミングと距離を測ってからの右ストレートが黄金パターンだ。
まだデンプシーには至っては居ないし、これから先そこに行き着くのかはわからない。
だが今、この時ならパンチとパンチの繋ぎが甘い。
ボディから一拍置いて体制を作り直してからフックを打ち込みに来る。
体重移動がまだ未熟だからだろう、そこに時間が生まれる。
その時間・・・1秒にも満たないソレを使って俺は
折れた体制を利用して。
耐えながら右手を下にセット、左を上から叩きつける形で、フックを叩きつける!
前のめりになりながら・・・おいちょっと待て
(なんで食らいながら前に出てきてんのコイツ!?)
俺のフックを意にも介さずそのまま右フックを打ってきやがった
だがこっちだって覚悟完了済みなんだよ!
右フックを食らいながらセットしていた右を、腰を入れて回転しながら全力で突き上げる!
「んが・・・!」
「ぶは・・・!」
お互い顔を仰け反らせて後ろに1歩下がる
ロープに追い詰められたが、僅かに距離と時間を得た
今見せるツモリは全く無かったけど見せてやるよ
対一歩専用のスタイルをな!
左手に『偽・弾丸』と『リカルド・マルチネス』のジャブ、前進を止めるための『偽・飛燕』
右手に、本当なら別の物を搭載したかったんだが今は『スマッシュ』
構えは『猫足』後ろに体重をかけながらも素早く動ける構え。
そして思考は・・・『前世の俺』だ。
原作漫画を読む時、思い返す時。
自分に重ね、自分だったらどうするか?
もし身体が強く、ボクシングが出来ていたなら。
もし、もし、もしも。
幕ノ内一歩とリングの上で戦えたならどうするか?
そんなもしもを夢想していた過去の自分を引っ張り出す。
(こっから先は親友同士とかTVがどうのじゃねぇ。俺の・・・挑戦だ!)
少し突き出した左と、斜め下に構えた右に力を込めて。
「伊達さん、梅沢君ジャブで右ストレート撃ち落としませんでしたか?」
「撃ち落としたってよりは外側に弾いた、だな」
「そんな事出来るんですか?」
「試合でやれとかなら、俺には無理だ。出来るとしたら・・・特定の相手を研究に研究を重ね、癖を知り尽くす。そんな恋焦がれるかのような熱量が・・・」
1Rの残り1分と数秒。
ヤルと決めたからにはヤル!