1にトレーニング2にトレーニング。3・4が無くてもトレーニング。
1週間に2~3度は一歩の家にお邪魔して、プロボクシングのルールのお勉強。
一歩と共に走ったり腹筋を鍛えたり首を鍛えたり釣り船屋を手伝ったり、日常生活でウェイトレーニングしたりしながら9月。
鷹村さんと一歩が出会ってからもうすぐ半年、俺と一歩はインナーマッスルと下半身を鍛える事に重点を置いてやってきた。
一歩は重りをもっと重くしたそうだったが・・・身体への悪影響を説いて説得した。
俺は2kgだとやばいと諦めて、1kgの重りにしたのに。
3kgで平気ってどういう頑丈さしてんだお前。
ともあれ、9月である。
原作では、11月にはプロテストを受けていたはず。
宮田や間柴、新人王トーナメントで出会う面々が今どうしているかはわからないが・・・
二人だけのトレーニングに限界を感じていた俺は一歩に提案した。
「なぁ、一歩。提案があるんだ」
流す程度に走りながら、横にいる一歩に話しかける
「何かな?」
「今までひたすら走り込みと筋トレをしてきた。でもボクサーを目指すなら、ボクサーになるためのトレーニングが必要だと思うんだ」
「それは・・・そうだね。今まで変な癖が付かないようにしてきたし」
「ああ、俺はまだまだ不安があるけど、お前は身体が出来てると思う。少なくとも同年代に体力面で置いていかれる事はないはずだ。だから」
グっと拳を握り、言う
「行ってみないか、鴨川ジム。今は入門を認めてもらえなかったとしても、トレーニング方法を教えて貰ったりできるかもしれない。正しいパンチの打ち方を一つでも教えて貰えたなら・・・」
「・・・正直僕も考えてたんだ。釣り船屋の事もあって卒業してからのつもりだったけれど。
梅沢君が手伝ってくれるおかげで、僕にも母さんにも余裕が出来たと思う。」
そうなのか・・・?美味い飯のお礼にってのと、一歩の下半身の強さを学びたいと、確かに手伝ったが。
あ、いや思い出した。トレーニングにいっぱいいっぱいで最近は考えて無かったが。
原作ではおふくろさんが過労でぶっ倒れ、家を守る為に引退を選択しなくちゃならなくて。
そこで出会い、釣り船屋を手伝ったのが俺・・・梅沢だった。
って事は本格的に俺が、一歩の家で働いておふくろさんをフォローできれば引退する理由の一つを潰せる?
それに今は9月の初旬。プロテストは11月だ。
ルールの勉強もしてきたし、2か月以上あれば、もしかしたら今年のプロテストに行けるかもしれない。
なら、やらない理由は無いよな。
「よし、お前今から鴨川ジム行ってこい!」
「ええ!?今から!?」
「ああ。んで、鴨川ジムに無事通えるようになったら・・・釣り船屋幕ノ内で俺を雇ってくれ。
手伝いじゃなく、従業員、難しいならバイトとして。給料はいくらでもかまわない」
それを聞いて一歩は、目を伏せながら
「そりゃ、梅沢君なら母さんだって受け入れるだろうけれど・・・それってもしかして・・・僕たちのために・・・?僕がボクシングをちゃんとやれるように、母さんが無理しないように?」
「違うとは言わねぇ。けど一番の理由は俺自身の鍛え方に納得できてないからだ。」
財布から全財産、5万を取り出して一歩に押し付ける。
「そんだけあればジムへの入会費用と必要な備品・・・練習用のグローブとかバンテージとか買えるはずだ。
思い立ったが吉日。行きたいと思ったなら行ってこい!」
義理堅く真面目で頑固な一歩だが、感情を真正面からぶつけられて無碍にするやつじゃない。
だから、泣きそうな、笑い顔のような、でも嬉しそうな顔で
「ありがとう!お金はちゃんと返すよ!母さんにも相談しておく!」
と、右こぶしを突き上げながら走って行く一歩を見送りながら考える。
(俺のほうはどうあがいても11月には間に合わねぇ。釣り船屋で身体を鍛えながらだとしても・・・)
パワーも足りないしスピードも、何よりもスタミナが圧倒的に足りないのだ。とてもじゃないが4ラウンドをフルに戦うなんて無理だろう。
そもそも、俺にどういうタイプのボクシングが合っているのかもわからないし。
そんなことを悶々と考えながら夜。
『鴨川ジムに入れたよ!梅沢君のおかげだ、ありがとう!』
電話に出て開口一番に大声で言われた。
「おう、おめでとう」
『軽いね!?』
それ以外になんて言えってんだ。
『あ、その報告だけじゃなくてね。鴨川会長に色々聞かれたんだけれど』
そらまぁ強くなるためのボクシングジムに、一歩みたいなフィジカルおばけが来たら気に成るだろうさ。
『いつもやってるトレーニングの事とか、ウェイトリストとアンクルの事とか、身体に負荷をかけるやり方とか
全部梅沢君に教えて貰ったって言ったんだけれど』
おっと、風向きが怪しいですよ?
『一度梅沢君を連れて来なさいって会長と鷹村さんに言われて。今度一緒に来てくれないかなって』