さて、鴨川会長と鷹村さんにお呼ばれして。
のこのこと一歩に付いてきた俺、梅沢。
鴨川ジムの会長室へと通され、そして現在。
「小僧・・・幕ノ内に過度なウェイトをかけてトレーニングをさせるとはどういうつもりじゃ」
「常時12kgの重りなんて俺様でも付けようとは思わねぇ、下手しなくてもその重さで身体を壊す。何考えてんだてめぇ」
絶賛説教中でございます
「お主も身に着けておるが、重さが違いすぎる。何を考えて小僧にソレをさせた?」
ほっといてくれ!これが俺の限界なんですよ!
だが俺の言い分も聞いて欲しい。
凄まじい気迫と圧力を受けて怖いが俺にも言いたい事がある。
「最初は500gだったんすよ!そこからゆっくりやっていくハズだったんです!本人だって
『500gでも結構重いな』って言ってたんですよ!」
「だが、トレーニングを始めたのは最近じゃろう?聞けば日常生活でも常に身に着けていると言う。」
「関節もそうだが、靭帯や腱に深刻なダメージがあってもおかしくなかったんだぞ?
今まで何の問題も無く、あそこまで鍛え上げられるのが異常だ」
頭を振りながらため息を付いて、会長が言う
「体幹・バランス感覚・持久力の高さ。変な癖を付けないために基礎トレーニングを繰り返していたとは聞いておる。だが何をどうしたらあのような基礎能力の化け物ができあがるんじゃ」
二人が代わるがわる俺をせめてくるが、そんなもん俺が一番知りたいわ!
なんで平然としてんだよ一歩・・・!
「俺だって繰り返し言いましたよ!重くしすぎたら取り返しの付かない事になるから徐々に、慎重ににならしてけって!」
でもアイツ
「『慣れてきたら軽すぎて落ち着かないんだよね』って・・・自分で重くしやがるんですよ!?」
熱くなりすぎていると自覚できるほどだったので一息ついて冷静になるよう努めながら
「一歩は昔から実家の釣り船屋を手伝ってたそうです。氷が入ったクーラーボックスをいくつも持ち運び、揺れる船内で平然と立ち続けて、船内の掃除等の力仕事も積極的にやっていたそうです。あのフィジカルはそういう所で鍛えられてきたんだと思います」
なんか、納得いってなさそうな会長と鷹村さんだが・・・
「まぁ、よい。ウチに入門したからにはしっかり面倒を見る。ここからが本題じゃ」
「説教が本題じゃなかったんすね」
「流石にその為だけに来てもらったりせんわ。説教するべきたと思ったのも事実じゃがな」
額に血管を浮かせていた会長が一息ついてから続けた
「お主も小僧と同じく、プロボクサーになる為に基礎トレーニングをしていたそうじゃな?」
「・・・?その通りですが、俺はまだまだ筋力が足りてませんし、余計な体重を落とせるだけ落としてからこちらのジムに来るつもりです」
「その辺も聞いておる。小僧がこのジムに入会出来たなら、小僧とその母親をバックアップするために釣り船屋に行くと。」
全部聞いてるのか、それなら話が早い。
「はい、釣り船屋は何度か手伝っていますが・・・いいトレーニングになりますし。
足腰とバランス感覚を鍛えるにはうってつけです。余った時間は自分のトレーニングに使えますから」
「うむ。それはいい事じゃ。プロボクサーでもそれだけで食っていけるヤツなんぞ一握り。働き口を探すのは当然。」
いや、何がいいたいんすか。だから少しでも意味がある所で働いて、トレーニングもできて一歩の為にもなる一石二鳥な職場に行けたらいいな、ってだけなのに。
黙って見ていた鷹村さんが
「はぁ・・・じじいはな、お前もこの機会にジムに来ないか?って言いてぇんだよ。
一歩から聞いてる。お前らウチのジムに来るつもりでボクシングのルール以外、
技術面は全く手を付けてねぇんだろ?」
それはその通り。
原作を知る身としては、会長の拳を受け継いで欲しいと勝手ながら思ってしまった。
だから余計な事はしなかった
「まぁ、鷹村の言う通り。だがお主の気持ちは堅そうじゃな・・・」
「はい。少なくとも従業員がもう一人増えて、釣り船屋が安定するまではジムには通わないつもりです。今は一歩の時間を少しでも・・・」
と話してたら、あれ?鷹村さんと会長の目つきが鋭くなってますよ?
説教が1時間伸びた・・・ちくせう
いや大人の言い分として二人の言う事が正しいのはわかるよ?
「自分を犠牲にするつもりか?」とか「てめぇ、一歩の気持ちを考えたことあんのか?」
まぁ色々。
だが、そもそもの目的が違うのだから勘弁してほしい。
俺がトレーニングしてるのは、俺を実験台にして一歩にも使えそうなモノを探してただけだし。
一歩の家で働きたいのは、一歩が引退する理由を一つでもツブすため。
俺が今、この時期にジムに通わないのは一歩の人間関係を壊さないため。
そこまで考えて、自分で自分の思考と今までの言動を思い返して愕然とした
あれ?俺・・・一歩の事考えすぎじゃね・・・!?
・・・・・・・・・今更か。
一歩に気持ち悪がられないように気を付けるとして
下で待ってる一歩に声をかけて帰るとするか。