作者はとんでもなくお馬鹿さんなので…
「何やってんだコイツ…?」とか思いながら、教えて下さると幸いです
今回、ちょっと残酷な描写入ります
「ライム、ちょっと良い?」
ある日、ヴェルザに手招きされた。
何やら深刻そうな顔をしている。
ヴェルザは、私の頼れる仕事仲間兼、大切な親友として時を過ごしている存在だ。
こんなに戸惑っているのは初めて見る。
「はいはーい、今行くよっと」
*
「ごめんね、ライム。少し困った事になって」
「全然構わないって。それで、どうしたの?」
ヴェルザは机上の水晶に、映像を映し出した。
これは1つの魔法道具で、本来は触れた者の視点を共有出来る、というものなのだが、私とナーヴァの魔改造により、更に高性能に仕上がっていた。
制約関係無しに、好きな場所を映し出す事が出来る。
―で、映った光景は…
「…戦争?」
武装した人間の集団だった。殺気立っている事から、恐らく私の予想は合っていると思われる。
ヴェルザから状況を詳しく説明してもらう。
曰く、【真なる人間】《ハイヒューマン》の国が、数多の国家を巻き込んだ大戦を目論んでいるらしい。
なんと迷惑な。
(ところで『助言者』、【真なる人間】って?)
『―解。普通の人間より、全てにおいて上回っている上位種族です。魔物にも負けない強さを誇るため、楽観視は危険です』
OK、大体理解した。
「さて、どうするかな…」
ナーヴァとルシアは今は留守だ。まぁ、異変を察知したら飛んで帰ってくるだろうけどね。ただ、2人を待つ、という選択肢は私の脳内に無い。事態がより深刻化してしまうだけだ。
折角、世界の基盤を整えたんだし、みすみす破壊行動を見届けるつもりなんかない。
―そんな時。私の足元に大規模な魔法陣が出現した。
「「!?」」
流石の私達も驚くというもの。
『―解。召喚魔法です。召喚先は先程の映像の戦場地です』
先生による即時解析で、冷静さを取り戻す。
「なるほどね。悪魔を兵器として利用しようって考えたわけか」
「よくそんな平然としていられるんだか…それにしても、人間が扱えるのは精々上位悪魔《グレーターデーモン》召喚レベルの魔法よ?貴方を呼び出せるに至らないはずなのだけど」
確かに、私は現在、【悪魔公】《デーモンロード》という、悪魔の中でもそこそこ最上位の種族へと成り果てている。
…うん?どうやってなったのかって?
特に狙ったわけではないが、世界創生以前からずっとここまで長生きした事と、魔力の研鑽を積み上げた事、そしてナーヴァと特訓したらこうなった。
では、何故今回召喚されるに至ったのか、という疑問に答えるとしよう。
1つは、単純に現在、魔界に悪魔が全く居ない事。
もう1つは…
「今の私が、興味本位で上位悪魔並みの魔素量に擬態しているからだね」
「何で!?」
そんなに驚く事ないじゃんか、ヴェルザさん。
「解析速度とかに支障が出るのか確かめたかったのと、最近は戦闘訓練も何もしていないから、上位悪魔までランクを下げても何の問題も無かったからだね」
「…相変わらずね。まぁ、今回に関してはタイミングが良いのか悪いのか…」
ヴェルザも完全に諦めムードだ。
ちなみにここまでの会話、『思考加速』によりたった2秒間のものである。便利だね、スキルって。
「まぁ、これを好機として捉えようよ。わざわざあっちから招待してくれるわけだし」
更に、肉体も用意してくれるという好条件!
(↑悪魔を召喚するには肉体を用意しなければならないため)
乗るしかないでしょ、このビッグウェーブに!
「なるべく交渉を試みるけど、もしもの場合は問答無用で黙らせて良いかな?」
「えぇ、そこは貴方の判断に任せるわ」
よし。んじゃ、行ってきますか。
私は気楽な気持ちで召喚に応じた。
*
〈ヴェルザードside〉
「…好き勝手ねぇ。ライムの事だし、心配は必要無さそうだけど」
もはや呆れる事しか出来ない。
―この日が、歴史に最悪の悲劇として刻まれる事になるなど、この時の私は予想出来なかった。
*
〈ライムside〉
召喚先は、まさに地獄を体現したような光景だった。
周りには大量の死体。肉片が飛び散り、紅く染まった大地。
不快感が募る。
(目の前のコイツは…召喚主かな)
狂気に満ちた顔をしてやがる。腹立つなぁ、というのが心からの感想だ。これの後始末をしなきゃならないこっちの身にもなってみろってんだ。
「ほう、綺麗な人型の悪魔ではないか!これは良い働きが期待出来そうだ」
何コイツ、キモっ!!
背筋が凍りつくような感覚に襲われる。
戦場でセクハラとか終わってるよ。逝ね!
『…吿。人型の悪魔は高位の証です。決して貴方の思うような下心は無いでしょう』
(…あ、そうなの?)
良かったぁ、てっきりただ気色悪いだけだとばかり…
そろそろ本題に移ろうか。
「それで、私への望みは何でしょうか?」
「この先の国の殲滅だ」
やっぱりか。「進●ゼミで解いたところだ!」というような感情と似たものを感じる。予想的中だ。
「もう1度、対価の確認をさせて頂いても?」
一応聞いてみる。まぁ、命令に逆らう気満々だけどね。
「対価は―…」
「…は?」
私は思わず顔をしかめた。
召喚時に説明された代価とは全くの別物だった。勿論、望ましいものではない。
「…願いに見合った対価とは、到底思えませんけど」
タダ働きさせられているようなもんだ。これに従えと?
馬鹿も休み休み言えよ。
「フン、そんなの俺の知った事では無い!大人しく言う事を聞いてもらおうか!」
「…へぇ」
愚かなヤツだ。私を召喚した事で、完全に主導権を握っていると思い込んでいるのだろう。
残念だが、既に契約の時に取り付けられた呪縛は私が解除している。いくら命令に背こうと、私には何の呪いも課せられないのだよ。
「…最後に、もう1度だけお尋ねしましょう。
契約違反、という事でよろしいでしょうか?」
「何をぐずぐずしている!さっさ、と…」
私はその瞬間、召喚主の胸部を貫いた。鮮血が滴り、私の手を濡らす。
こんなヤツ、喋らせておく価値すら無いし。
「…さーて、私は私の仕事を片付けますかね」
目的は1つ。
―この召喚主たちの軍勢を殺戮する事だ。
*
「…取りあえず、戦争は終わった…かな?」
辺りの生存反応の完全な消失を確認する。
いやぁ、しかし酷い光景だ。
細かく表現するのは止めておこう。もう人間の肉体が形を維持出来てないもん。グロテスクだもん。
(…ルージュ達は、返り血で染まった私の手を、もう1度握ってくれるのかな)
ふと、そんな疑念が湧いた。
期待は出来ないかもな。
「…さーて、そろそろ帰ろうっと」
いつまでもこの血なまぐさい空間に居たくない。
転移魔法を使って帰還の準備をする。
―その瞬間だった。
『―吿。必要な人間の魂を取得。条件が揃いました。
これより、"魔王への進化"《ハーベストフェスティバル》が開始されます』
…はーべ…なんだって?
「―っ!?」
突如、視界がグラつく。
襲ってきたのは、圧倒的な睡魔。
何で?何で!?状況の理解が追いつかないんだけど!?
(嫌、だ…!こんな場所で、寝たくな…い…!)
抵抗も虚しく、私の意識はそこで潰えた。
おや?ライムの様子が…!?
ちなみに、通常ライムは召喚されないはずなのですが(既に物質世界を生き来しているため)そこだけはストーリーの都合上お許し下さい…