ルシア 「…時々とんでもない事をさらっと言ったり、ヴェルダナーヴァ様と平気で危ない実験を始めたりしますけど、私はそういうところ、好きですよ」
ライム 「OK、フォローありがとう」
ここ最近の身内の変化をまとめようか。
まず、私が魔王になった。これは読者の皆さんにとっても周知の事実なのではなかろうか。
ヴェルザは新たに生まれた弟の世話に手を焼いている様子。最近は何かと不機嫌なので、よく労っている。
そして…
ナーヴァとルシアが結婚した。
「ルシアの事幸せにしろよチクショウめ」
「相変わらず口が悪いねぇ」
まぁ、大体予想してたけどね。ラブラブだったもん。
竜と人間の結婚というケースは始めて見るけど、今は多様性の時代らしいしね。
こういうのも良いんじゃないかな、うん。
ルシアは可愛いし、ナーヴァも認めたくないが美形だし。
お似合いだと思うよ。
さらに…
「楽しみだなぁ、2人の子」
ルシアのお腹の中には、2人の子がいる。
もうすぐで生まれるらしい。
「この子の姉のような存在になってくれたら嬉しいです」
と、ルシアは幸せそうに微笑んだ。(可愛い)
「勿論!ほら、ライム姉ちゃんだよー!」
話しかける素振りをしてみた。
「………」
「おいナーヴァ、そんな目で見るなぶっ飛ばすぞ」
「あまりにも理不尽すぎるんだけど」
なんだ?「お姉ちゃんって呼ばれる年齢じゃないだろ」とか思ってやがるのか?良いだろ、別に。
「そして私はロリコンじゃないからな。子供が愛らしく思えるだけだからな!」
「それをロリコンと言うんじゃないかな?」
「何も言い返せないからやめてね?」
…やっぱり、こうしてわいわいやってるこの時間が、私は好きなんだな。
*
「はぁ…」
私は、丘の上の大木の幹に寄りかかって座った。
ナーヴァとルシアの子は、『解析鑑定』によると、【竜人族】《ドラゴノイド》という、極めて珍しい種族の魔物だった。
流石、ナーヴァとルシアの子と言うべきなのだろうか、あの子は強大な力を秘めている。
例え、あのフィジカルお化けのルシアでも、生命力を根こそぎ奪われてしまう事になるのだろう。衰弱死してしまう可能性が高かった。
…ルシアは、覚悟の上みたいだけど。
(私、みんなの前でちゃんと取り繕えてたかなぁ)
暗い顔を見せたくないばかりに、薄っぺらな笑みを浮かべていたんじゃないだろうか。
「…疲れた」
思考を止めて草場に寝そべっていると、ナーヴァの顔が視界に入ってきた。
「随分お疲れのようだね」
「そう見える?」
ナーヴァは私の隣に腰掛けると、
「数百年も一緒に時を重ねれば、それなりには分かってきたつもりだよ。まだまだ未知数だけどね」
と苦笑した。
なんだ、それ。私が得体の知れない化け物とでも言いたいのか?上等だよ、かかってこい。
…だが、ナーヴァの次の言動は、私が予想もしていないものだった。
「―あの子に、名前を与えようと思っているんだ」
「え、」
ナーヴァの呟きに、思わず間が抜けた声が出る。
…魔物にとって、"名付け"という行為は人間のそれと違い、1種の儀式に等しい。
自身の力を譲渡しなければならなくなり、魔物の強さによってその代償はより大きいものとなる。
その代わり、名を授かった魔物はより強くなり、名付け親との魂の絆がより強固なものとなるのだ。
当然、名付けする側のリスクは大きい。
ナーヴァとルシアの子は、魔素の受け皿があまりにも大きすぎた。
あのナーヴァでも、自身の力どころか、生命力の大半が奪われる事になるだろう。
―だが、ナーヴァの瞳には迷いの色が無かった。
ナーヴァも当然、覚悟はしているはず。
(…なら、私が止めるのは、違うよね)
私は気持ちをグッと堪え、拳を握りしめた。
「…ライムは優しいね」
そんなんじゃないよ。私は。
「…ごめんね。これから全て、託す事になる。
世界の管理も、僕達の子も」
「謝るんだったら、最初からあんな契約してくんなっての」
―『世界を一緒に創ってほしい』、なんて無茶なお願いは、私にとっては充実した時間だった。
謝ってもらう必要なんかない。
私は立ち上がって、ナーヴァに向き直る。
「心配しないでよ。最後まで仕事はやり遂げますともさ。
ナーヴァが愛したこの世界を、ナーヴァの代わりに見届けるよ。
不老の私だからこそ出来る、やりがいのある仕事だしね」
私は約束を果たす。
―今までだってそうしてきた。
ナーヴァは心底安心したように、けれども、どこか呆れたような顔で笑った。
「心配でならないなぁ」
「失礼な」
良い感じの雰囲気になりつつあったのに、全て台無しにしやがったよ、この創造神。
「私だけならまだしも、ヴェルザもいるし!
なんとかなるでしょ、多分!」
ほらね。だんだん弱気になってきちゃったじゃないか。
けれども今度は、ナーヴァも頷いてくれた。
「…そうだね。ライムなら、きっと大丈夫だろう。
ここ数百年、ずっと頼りにさせてもらっていたんだから」
ナーヴァは目を細めて、懐かしむような視線を送ってきた。
「…ライムを見ていると、どうしても昔の知人が頭に浮かぶんだよね。前も話したけどさ」
「だから、それってどういう事なの?」
わけがわからず首を傾げる。
ナーヴァは長い沈黙の後、いつものように無邪気な笑みを浮かべて言った。
「要するに、君が常識を考えない、思考回路がぶっ飛んでるお馬鹿さんってところかな」
「今すぐにでも引導を渡してあげようか?」
「嘘ですごめんなさい」
けれども、怒りは湧いていない。
このくらいの雰囲気が、私とナーヴァには丁度良いものだと分かっているしね。
―幸せな日々にも、いつか終わりは訪れるもの。
それでも、最期のその瞬間まで。
ナーヴァ達と過ごせるこの時間を大切にしよう。
Q.ヴェルダナーヴァに対する印象を教えてください
ライム 「なんだかんだ、話してて楽しい相手だよ。
終始頭おかしい変人だったけど」
ナーヴァ 「珍しく素直になってくれたなと思ったら、最後のひとことは蛇足だったね」