六月二十九日。
ホグワーツ魔法魔術学校では、六月上旬に行われる試験を終えてしまえばその後に授業は無く、学年度末パーティー迄は完全な自由時間になる。
その期間生徒達は談話室で交友を深めることもあれば、点数を稼ぐ為に教授の手伝いをしてみたり、或いは図書館で新学年の予習をする者だっている。
僕、セドリック・ディゴリーも例に漏れず、パーティーが始まるまでの時間を潰す為にハッフルパフの談話室で、友人であるジョニーと談笑に興じていた。
「やっぱり、今年も寮杯はスリザリンの物かな?」
「だろうね、スナイプ先生の依怙贔屓はどうしようも無いよ。彼がホグワーツを去らない限り、寮杯が他の寮に渡ることは無いさ」
話題はやはり、寮杯がどの寮に与えられるかについてだ。去年までの六年間、公平であるはずのそれは一人の教授の依怙贔屓によってスリザリンに独占されてきた。勿論他の寮生は、スリザリンを除いた、グリフィンドール、レイブンクロー、そして僕達ハッフルパフは、不満を抱いている。中には自身が所属する寮の寮監にスリザリンの様な贔屓を直談判する者まで出る始末だ。
勿論、断られたみたいだけどね?
「今年はレイブンクローも頑張ってたけどね、見た?大広間の砂時計。先週見た時はスリザリンとの差は三十点しかなかったんだ」
「へー、それは惜しかったね。・・・でもどうせ今頃はかなりの差をつけられてるんじゃない?」
「だろうね、百点以上差が開いていても驚かないよ」
ジョニーと笑い合う。話題に上がったレイブンクローや、スリザリンとは犬猿の仲であるグリフィンドール。彼等は今頃、最後の足掻きとばかりに点数を稼いでいるんだろう、或いは苦虫を噛み潰したような表情で不満を口にしているかだ。
しかし、僕達ハッフルパフは違う。所属する大多数の生徒は既に寮杯を諦めている。勿論、ハッフルパフの寮風も影響しているのだろう。・・・けれど、ハッフルパフに寮杯を諦めさせた一番の理由は別にある。
「まぁどっちが勝つにしても、僕達には関係ないさ。初めて見たよ九月以外で砂時計が空になっているところなんか」
「確かに!俺なんて最後に砂時計を見たのは十一月さ!あの時点で今年度の寮杯は諦めたなぁ」
「ハロウィン前までは順調だったんだけどね。二ヶ月経たずに二百点、それも一人でね!あの時のスプラウト先生の喜び様は凄かったなぁ、流石マーリンの血を引く者だぁ!って大騒ぎ」
「本当にね。まぁ一週間後には同一人物のせいで砂時計が空っぽになるんだけど」
僕達がハロウィンの事件について語り合っていると、一人の男子生徒が近付いてくる。元凶の彼が。
「やぁ、先輩方。また僕の武勇伝を語ってくれてるのかい?」
「・・・やぁ、リベルタ。珍しいね、君が談話室にいるなんて」
それが彼、リベルタ・ベディヴィエル・アンブロシウス・メルリヌス。史上最も有名な魔法使いであるアンブロシウス・メルリヌス。或いはアンブローズ・マーリンの血を引く男子生徒だ。
今年度入学したばかりである筈の彼は、既に数え切れないほどの伝説を築き上げている。
曰く、禁じられた森に迷い込んだ生徒を狼人間から救い出した。
曰く、一度見ただけで無言呪文を習得した。
或いは、どうせ生き返るからと、ハロウィンパーティーに不死鳥の丸焼きを出そうとした。
或いは、何処からか持ち込んだマグル製の爆弾で、校長室を吹き飛ばした。
ざっと挙げただけでも彼の異常性がよく分かる。
彼が正体を表したハロウィン以降、大半のハッフルパフ生は寮杯を諦めた。諦めざるを得なかったんだ。
「ああ、そうだよリベルタ。君が如何にしてハッフルパフから寮杯を遠ざけたかを話していたんだ」
「失礼だなぁ、君達は。まるでハッフルパフが寮杯を手に入れられなかったのが僕のせいみたいじゃないか」
「・・・そう言ってるんだよ」
「・・・やめなよジョニー」
「そう言われてしまったなら仕方ない。聞かせてもらおう。君達はどれだけハッフルパフの為に善行を積んだ?どれだけの加点をしたんだい?二人合わせてでも良いよ」
「ふん!聞いて驚け、俺が三十だから・・・、二百位だ、減点を含めても百五十を下回ることは無い」
おかしいな、僕は今年度一度も減点されていない筈だから、ジョニー一人で五十点近く減点されている計算になる。彼も彼で、真面目というわけでは無いみたいだ。
「あははは!滑稽だね、それっぽっちの点数で僕を非難していたのかい?」
「む、じゃあ君はどれだけ加点したっていうんだ!それだけ尊大な態度を取るんだ、百や二百じゃ無いんだろ!」
「ふぅん、二千飛んで三十五。それが今年度一年で僕が増やした点数さ」
ジョニーが目を見開き黙り込む、勿論僕もだ。例年、寮杯を手にする一位の寮でさえ、総合で四百点から五百点程度。自慢になってしまうけど、僕が今年度稼いだ百七十という点数は、実はかなりの偉業なんだ。
しかし、彼は桁が違う。たった一人で一位の寮の四倍を稼いでいる、それも入学して一年未満の時分でだ。・・・しかし、それはおかしい。彼が本当に二千三十五点を稼いでいるのだとしたら、砂時計が空のはずがないのだから。ジョニーもそこに気付いたのだろう、嘘を暴こうと、隙を突こうと口を開く。
「それなら何で砂時計が空なんだ!二千点が事実なら、君はそれ以上の減点を受けていることになる。一体どれだけ減点されたんだ!」
「十一万」
「・・・は?」
「正確には、十一万九千百十八点減点されているよ」
ほぼ十二万点じゃないか、というか何故彼は自慢げなのだろうか。ホグワーツの歴史を調べ尽くしたわけじゃないけどこれだけは分かる、発言が真実であるなら彼は史上最も減点されたホグワーツ生だ。
「なに、そう大した事じゃない。この程度の事はやろうと思えば誰にでも出来る事さ」
やろうと思っても出来ないよ、というかそもそもやろうと思っちゃダメだろう。
「ふぅん、そんなに畏敬の念を込めた目で見られても困るんだけどね。こんな若輩の身で先輩方を啓蒙するわけにもいかない」
畏敬じゃない、畏怖だ。僕達が喋れないのは君に尊敬では無く恐怖を抱いているからだ。
「これ以上僕に質問は無いらしい、それなら失礼させてもらうよ。パーティーが始まる前に仕込んで置きたい物があるからね。・・・先輩方も遅れない様にすると良い、面白い物が見れるよ」
彼は、リベルタはそう言い残し、談話室を出て行った。同時に張り詰めた空気が緩む。
「・・・まだ、何かやらかすつもりなのか」
どうやら、彼に年度末くらい大人しく過ごそうという殊勝な考えは無いらしい。
「また一年が過ぎた!」
僕達は姿勢を正し、年度末の恒例であるダンブルドアの演説を聞いていた。パーティーが開かれる大広間には何か事情がある生徒以外は全員いるのだろう、数え切れない程の生徒が
「それでは例年通りここで寮対抗杯の表彰を行うことにしよう。点数は次の通りじゃ。【四位 グリフィンドール 三百六十一点】【三位 レイブンクロー 四百二点】【二位 スリザリン 五百十三点】【一位 ハッフルパフ 九千九百九十九点】」
大広間全体がシーンと静まり返る。生徒だけじゃ無い、ダンブルドアを除く教授達も惚けた顔でダンブルドアを見つめている。いや、スネイプ先生の視線だけはハッフルパフの長テーブルを端から端まで何度も往復している。まるで誰かを探す様に。
「よし、よし、ハッフルパフ。良くやった。しかし、つい最近の出来事も勘定に入れるべきじゃろう」
えへん、とダンブルドアが一つ、咳払いをする。
「駆け込みの点数をいくつか与えよう。まずはリベルタ・メルリヌス君!ユニコーンの糞を用いたマンドラゴラの栽培に関する重要な発見を称え、ハッフルパフに五十点を与える」
今一番聞きたく無い名前に身を構えるが、続いた言葉は僕達の予想を裏切り酷く真っ当な内容だった。呆然としている生徒を他所に、スプラウト先生だけは立ち上がり大振りな仕草で手を叩いている、どうやら既に知っていた様だ。
「次に、・・・リベルタ・メルリヌス君!・・・その類稀なる才能を用いて齢十一にして百味ビーンズに百一個目の味を追加したことを称え、ハッフルパフに五十点を与える」
それは称えられる程の事なのだろうか、彼の真似じゃ無いけどやろうと思えば誰にでも出来る気がする。
しかし、ここまで来ると混乱していたハッフルパフ生も、どうやらリベルタが、あの天才が人知れずハッフルパフに寮杯をもたらしたという事実を受け入れ始めた。静まり返っていた筈のハッフルパフ席は、今やリベルタを称える声で溢れている。
「そして最後に、リベルタ・メルリヌス君!!これは我が校始まって以来の偉業じゃ。・・・ここホグワーツ魔法魔術学校に幾重にも張り巡らされた障壁を突破し、打ち砕き!先生方にも難しいであろう、
また、大広間が静まり返る。先程まで口々にリベルタを称えていたハッフルパフ生も、何が起きたのかわからない様相で固まっている。
いつもスリザリンを依怙贔屓している、あのスナイプ先生すら頭を抱えてしまった。
「儂の計算が正しければ、飾り付けをちょいと変えねばならんのう」
ダンブルドアが手を叩く。次の瞬間、黄色の垂れ幕がグリーンに、黒色が銀色に変わった。愛らしいアナグマがその姿を隠し、恐ろしい巨大な蛇が現れる。
「それでは一同、パーティーを続けようぞ!!」
こうして、スリザリンの七年連続寮杯獲得という偉業は守られた。げに恐ろしきは当のスリザリン生すら混乱し、一つの歓声も上がっていない事だろう。
というわけでご紹介に預かりました、リベルタ・ベディヴィエル・アンブロシウス・メルリヌスだ、伝説に名高い忠義の騎士と史上最も有名な魔法使い両方の血を引く半人間さ。
「『ユニコーンの蹄味』」
合言葉を合図に校長室を守っているガーゴイル像が道を開ける、どうやらアルバス・ダンブルドア校長閣下は僕が作った百味ビーンズの百一個目を気に入ってくれたらしい。ユニコーンの蹄を手に入れるのには苦労したからね、合言葉にまで使ってくれるなんて僕も鼻が高いよ。
「・・・おっとっと、流石に対策されてるか」
ガーゴイル像を抜けた先にある螺旋階段。本来なら乗った対象を自動で運んでくれる便利な魔法が掛かってるんだけど、動かない。どころか自力で登ろうとすると逆に元の位置に戻されてしまう。・・・ん、その他には特に仕掛けはなさそうだ。
「アクシオ 箒よ」
ウェストポーチ型に改造したサッチェルバッグに手を入れ、引き寄せ呪文を唱える。見た目はただのバッグだが、検知不可能拡大呪文を掛けてあるから手探りで探すのは大変なんだ。
ちなみに魔法省の許可無しでこの呪文を使うのは思いっきり違法だから良い子のみんなは真似しちゃダメだぞ!
「ま、バレなきゃ良いんだけれど」
箒に跨り上階へと登って行く、やっぱり対策は形だけで本気で侵入を防ぐ気は無いみたいだ、本来なら箒で飛んだ程度で侵入出来る程校長室の守りは緩く無い。寧ろ前に忍び込んだ時の方が大変だったくらいだ、何せ虎の子の増殖爆弾まで使わされちゃったんだからね。
「しかしホグワーツの校長がこうもあけすけにグリフィンドール贔屓で良いのかな、ドアノッカーまでグリフィンって・・・」
螺旋階段を登った先には校長室に繋がる扉がある、増殖爆弾で吹き飛ばした筈なんだけど流石に直されてるか、気持ち威圧的になっているグリフィンのドアノッカーが此方を見つめている。
「好きなジャムの味は?」
「グリフィンドールの剣ッ!!!」
「あああぁぁぁぁぁぁあ・・・・・・・」
残念な事にこっちの合言葉は知らないんだ。でも大丈夫、こんな事もあろうかと各地から様々な魔法生物の一部を取り寄せてグリフィンドールの剣に吸収させてるからね、大抵の魔法は無力化出来るよ。
袈裟斬りにされた扉を蹴破り、校長室に入室する。礼儀作法、ノックは大事だからね。
「メルリヌスだ」「アルバスは?」「ライムバード!また貴様の血筋だ!」「パーティーに出席してる筈」「おお可愛いリベルタ」「また吹き飛ばされるぞ」「逃げるか?」「グリフィンドールの剣!?」
校長室に入ると歴代の校長達が歓迎してくれる、ダンブルドアはまだ来ないと思うよ、その為に大事なパーティーを欠席したんだもの。
今頃ハッフルパフの皆んなは喜んでるだろうなぁ。
「えーっと、グリフィンドールの剣は・・・」
「そこの壁に掛かってるケースだよ、リベルタ」
「あぁ、あれか。ありがとうございます、高祖父様」
絵画の中のご先祖様が指差した先にある透明なケース、確かにサイズ的にはピッタリだ。
今年度のハロウィンパーティの少し前、星見台でホグワーツに掛けられた魔法を解析していた僕は、何故か組分け帽子を運ぶ不死鳥を見つけたんだ。不死鳥なんて初めて見るし組分け帽子もずっと調べてみたかったからこれ幸いと捕まえたんだけれど、ハロウィンパーティ用に不死鳥をオーブンで焼いていたところ、何処からか聞きつけたダンブルドアに取り上げられてしまった。やっぱり入学パーティーでも無いのに組分け帽子を被っているのは目立つみたいだ。
けれど取り上げられるまでの数時間、組分け帽子を弄っていたら、中からグリフィンドールの剣が飛び出してきたんだ。不死鳥と組分け帽子は取り上げられたけど、この剣だけは今日、今この瞬間まで僕が隠し持っていたって訳さ。
「それをわざわざ返しに来るなんて、僕はなんて優等生なんだ。これは小細工なんかしなくても寮杯はハッフルパフの物だったかな?」
「うむ、うむ。砂時計を弄らなければあったかもしれんのう」
「・・・これはこれは、ダンブルドア先生。今は大事なパーティーの時間では?」
「それもそうなんじゃがな、大事な生徒がパーティーを抜け出してまでグリフィンドールの剣を返しに来てくれるとあれば、出迎えてあげねばなるまいて」
ふぅむ、流石にバレてたみたいだ。
パーティー大好きダンブルドアなら剣を返しに来ただけの生徒の事は後回しにすると踏んでたんだけど・・・、後回し?
「さては先生、逆転時計を使ってますね?どう考えても先生が自らの意思でパーティーを欠席するとは思えません。僕の予想では、例え他の魔法界が攻め込んで来ても先生ならパーティーを優先する筈です!」
「君は儂を何だと思っておるんじゃ・・・。まぁ間違ってはおらんが」
やっぱり!流石はホグワーツ魔法魔術学校の校長という絶対的な権力を握っておきながら、魔法大臣という聖二十八一族の傀儡を拒否した魔法使いだ。
「いや、そのような理由で魔法大臣の職を蹴った訳では・・・、まぁ良い。今はホグワーツの秘宝を返却した君に何か褒美をあげねばなるまいな、しかし寮杯の行方が決まった以上今更加点したところでのう・・・」
どうやらダンブルドアは僕に褒美を与える為にわざわざ逆転時計まで使って会いに来たらしい、これは重畳。本当は剣の代わりとして黙ってもらって行くつもりだったんだけれど、褒美と言うなら正式に貰っておこう。
「じゃあ、不死鳥下さい」
「ダメじゃ」
「二十世紀にもなって蒸気機関車っていうのもどうなのかね、電気製品が碌に動かないとはいえどもやりようはあると、僕はそう思うのさ。実際に空飛ぶ自動車、なんて物もある訳じゃ無いか、あれは確か普通の自動車のような灯火類を積んでいただろう?なら単純な機構の電化製品なら動かせるんじゃ無いかな、勿論全部を全部電動にしろとは言わないけどもそこまで意地張ってマグル製品を排斥するのは、寧ろ魔法族にとってもマイナスな事が多いんじゃ無いかと考えるよ、この蒸気機関車だって作られたのは百五十年近く前だろう?そろそろ進化させるのには良い時期じゃ無いかな、ああ勘違いしないでよ?僕は決して新しい物好きという訳じゃ無いんだ、けれども、かと言って、逆に、古ければ良いという考えが正しいとは思えないのも事実だ。その中間こそが素晴らしいと思うよ。君はどう思う?ローブの色からしてレイブンクローだろう?君達は聡明で知的探究心に満ちていると聞いているよ、でも実際はどうなんだろう、この一年間見てきたけどレイブンクロー生の中にも愚かな魔法使いや魔女はたくさんいたような気がする。そもそも人間を四つの分類に分けるという事自体無理なんじゃ無いかと思うけど、レイブンクローに愚か者がいる様に、スリザリンにだって勇敢な奴はいる。グリフィンドールは・・・、頭おかしい人間の集まりだからよくわからないけどね。ああ、ごめんさっきの答えを聞いてなかったね、さあ、君の考えを聞かせてくれよ」
「ひぇぇ・・・・・・」
「?馬鹿みたいな鳴き声だね、初めて聞いたよ。・・・あぁ、怖がっているんだね、これは失礼。君は知っているのか、僕にインキュバスの血が流れていることを。それは恐れて当然だ。けれど安心して欲しい、僕に流れているインキュバスの血は確かに一族でもかなり濃い方だけど、それでも半分だけさ。逆にいうと半分は人間なんだ、だからわざわざ女性を襲う必要はない、君達と同じ食事で十分な栄養を摂取出来るからね、まぁ、それは同時に人間の食事を摂らずに女性を襲うだけでも生きていけるという事にもなるんだけど、そんな野蛮な事はしないよ、確かに我が家の始祖であるマーリンは隙あらば女性を手篭めにしていたらしいけど、血が繋がっているからといって性格まで同じ訳じゃ無い。そもそも性格の遺伝とい・・・」
「そこまでだよ、リベルタ。もう気を失っている」
おや、本当だ。コンパートメントで二人きりかつ一切会話が無いのは気まずいだろうと、レイブンクローらしい話題を振ったつもりだったんだけど逆効果だったみたいだ、これでも女性との会話は得意なつもりだったんだけど。
「助かったよ、セドリック。わざわざ僕が一人でいるコンパートメントに入ってくる女の子がいるとは思っていなくてね、少し喋りすぎてしまったみたいだ」
「少し・・・?まぁ、良いや。ここ、空いているなら座って良いかい?他はどこも空いていなくてね」
「勿論、君の好きにしたら良い。君が居れば彼女も少しは安心できるだろうしね」
セドリック・ディゴリー。一つ上の先輩で、ハッフルパフ随一の優等生。ハッフルパフらしく平等で、レイブンクローらしく聡明で、グリフィンドールらしく勇敢で、スリザリンらしく打算的だ。やっぱり寮の分け方はよくわからないね。
「・・・どうだった、初めてのホグワーツは」
「随分抽象的な質問だ、けどそうだね。うん、楽しかったよ、知らない事ばかり、わからない事ばかりだった。猫以外と同じ部屋で眠るなんていうのも初めての体験だったし」
「それは良かった、実は少し心配だったんだ。君は他の生徒とあまり馴染めていない様に見えたからね、でも楽しかったのなら良かった」
「ハッフルパフ的な発言だね。安心すると良い、馴染めていないのは事実だろうけど、僕はホグワーツでの生活に何の不満も抱いていないよ」
これは事実だ、僕はホグワーツでの生活を心の底から楽しんでいた。多種多様な人間に、多種多様な魔法生物。家では見た事のない様な魔法を掛けられた部屋の数々とそれを自在に扱う先輩方や教授達。まるで新しい世界に来た様な感動を毎日の様に感じていた。寧ろ、既に、今から新学年が楽しみな位さ。
「ところでリベルタ、さっきから気になっていたんだけど」
「何でも聞いてくれ、セドリック。僕に答えられる質問なら答えるとも」
「・・・その縛り付けられた不死鳥は何だい?」
「この子はフォークス。今朝ホグワーツを出る前に校長室から盗んで来たんだ」
ゴドリック サラザール ロウェナ ディメンター
「入寮、入獄を拒否します」
ヘルガ
「しょうがないから家においで」