深夜の廊下に竪琴の美しい音色が響く。フルートがない為か少し寂しさを感じさせるその音色は、しかし三つの頭を持つだけの犬には極上の揺籠に成り得たらしく、彼等、或いは彼女等を夢の世界へと誘った。
サリエリをして、神の意思を感じさせたというその音色を奏でるノーズワイズも、どこか得意気な表情をしている様にも見える。
ふふ、可愛い。
ハロウィーンの前日。十月の終わりも目前に迫った夜。仕込みを終えた僕は、僕とノーズワイズの一人と一匹は、四度目となる禁じられた廊下に挑戦していた。
そして四度目にして、恐らくは最初の関門であろうギリシャを代表するかの魔法生物を突破する事に成功したのだ。
何度味わっても飽きないね、この障壁を突破する感覚は。
「しかし、成程。生徒の様な年若い魔法使いでは決して打ち破れず、かといって熟練の魔法使いではアナログな演奏という手段は選択肢から外れる。良く考えられている、絶対の守りとは言えないけれど、時間に制限があるのならば最上の守りか・・・」
ホグワーツ城という、それ自体が完璧に近い守りのその中に、これだけの試練を用意するとは・・・、一体何を、或いは何から、守っているのだろうか。
「あぁ、本当に素晴らしい学舎だ、此処は僕を退屈から掬い上げてくれる」
「にゃ」
「・・・あぁ、そうだね。今は先の確認が優先だ、この感動は後で校長閣下の手紙にでも綴ろうか」
あぶないあぶない、どうやらモーツァルトに影響されて少し高揚していたみたいだ。本筋を見失うところだった、今は先に進まなければ。
眠っているフラッフィーを起こさない様に足元の仕掛け扉を開ける。うん、こっちは前来た時のままだ、特に魔法による仕掛けもされていないらしい。
「"アクシオ" かくれん防止機」
ぽっかりと空いた、暗い穴。仕掛け扉によって隠されていたその穴に、サッチェルバッグから取り出したかくれん防止機を投げ入れる。何の罠があるにしても罠自体か、或いはかくれん防止機が反応する筈だ。
「・・・うん、ちゃんと作動したね」
穴を覗き込めば、遥か下にかくれん防止機の光をうっすらと確認できる。どうやら穴の途中には何の魔法も掛かっていない様だね、これなら降りている最中に突然撃墜される事は無いだろう。
まぁその代わり、下に何かしらの危険が存在する事は確定したのだけれど。
「"シクトゥス ウェントゥス"、さぁ行こうか。おいで、ノーズワイズ」
「にゃ」
左腕にノーズワイズを抱きかかえ、大口を広げた闇に飛び込む。かなりの高度差があるけれど、自らに掛けた飛行魔法のお陰で自由落下する事は無い。・・・飛行魔法とはいっても、現状は滑空しか出来ないのだけれど。箒無しで飛び回るにはまだまだ勉強が足りないらしい。
二、三分程経っただろうか、眠りから覚めたらしいフラッフィーの鳴き声が聞こえなくなった頃、漸く目的の下層にたどり着いた。
かくれん防止機の光に照らされる石造りの通路と、不気味に脈打つ蔓性植物。どうやら此処には特に危険はないらしい、二つ目の障壁に警戒するべく、構えていた杖を下ろす。
「"インセンディオ"」
石造りの通路に着生した、恐らくは飛び降りた侵入者を生きたまま捕える為であろう、悪魔の罠を焼き払う。
「ふぅん、ケルベロスの後にしては随分と手緩い守りだね、こんなもので止められるのはマグルくらいのものだろうに」
フラッフィーとの難度格差に少々ガッカリしながらノーズワイズを優しく下ろす。てっきりケルベロスに匹敵する魔法生物の群れか、或いはガラハッド卿でさえ逃げ出すような呪いで溢れているのかと思ったけれど、どうやら二つ目の障壁は悪魔の罠単体だったらしい。この先もこのレベルなら少々、いやかなり期待はずれなのだけれど。
「にゃん」
「・・・うん。大丈夫、油断はしないさ。名声轟くホグワーツの守りがこれだけで終わる筈ないものね」
気持ちを切り替え、前を向く。何、まだたったの二つだ。きっとこの先には身の毛も弥立つ様な難問が用意されている筈、注意して進もう。
焼け焦げた悪魔の罠の残骸を踏み抜き、石造りの通路を下って行く。ゆっくりと、時間をかけ、暴露呪文や秘密発見機、かくれん防止機を併用して進む。しかし通路自体には何の仕掛けもないらしい、結局何にも邪魔される事なく光り輝く広間に辿り着いてしまった。
「鳥・・・、じゃないね。鍵を飛ばしているのか」
開けたアーチ状の空間を、数百の羽の生えた鍵が光を反射しながら飛び回っており、反対側にはこれ見よがしな木製の分厚い扉が聳えている。
これはまた随分と分かり易い問題だね、お優しい事に箒まで用意されている。
「取り敢えず、扉を調べてみようか。離れないでね、ノーズワイズ」
「にゃ」
一応、鍵が襲って来ないか警戒しつつ、扉に向かう。けれど、やはり、全く持って、空飛ぶ鍵はこちらに興味が無いらしく、自由気儘に飛び回っている。僕なら鍵型の爆弾を紛れ込ませて突撃させるけれどなぁ・・・。
当然、何の問題もなく扉に辿り着く。・・・うん、この扉も攻撃的な罠は仕掛けられていないらしい。解錠呪文は・・・、流石に防がれるか、錠前自体に魔法を弾く物を使っているらしい、少なくとも魔法で開ける事はできない様だ。
爆弾・・・もダメか。ホグワーツの校長室を吹き飛ばしたあれを使えば、或いは扉は突破出来るかもしれないけれど此処は地下だ。そんな事をすれば瓦礫の餌食になるだろう、今の僕にそれだけの質量を防ぐ術は無い。
「取り敢えずは正攻法でやるしか無いみたいだね。・・・ふぅん、箒はそこまで得意じゃ無いんだけれど」
サッチェルバッグから自前の箒を呼び寄せる。用意されていた箒に変な魔法が施されていたら困るからね。何より、箒には詳しく無いけれど、最新型であるニンバス2000より侵入者用に用意された学校の備品が早いとは到底思えない。
箒に跨り、地面を力強く蹴る。錠前と同素材の鍵は・・・、あれか。
姿勢を下げ、箒に沿わせる。流石は最新型、数秒と掛からずに空飛ぶ鍵の群れを抜き去る。
・・・っとっと、危うく天井に突き刺さるところだった。
うん、やっぱり箒は難しいね。僕にクィディッチの選手という未来は無いらしい、空を飛ぶ事自体は好きなんだけれどこんな様ではスニッチを捕まえるなんて夢のまた夢だろう。けれども、今回の標的はスニッチに比べればかなり鈍重だ、これならそう時間をかけずに捕らえれそうだ。
「ふぅん、クィディッチの選手は諦めて正解だったね。僕には地上の方が合っているみたいだ」
「にゃあ・・・」
粉々に砕け散った備品の箒を眺めながら、一つ溜息を吐く。意気揚々と地を蹴ってから三十分程か、用意されていた分も含めた五本の箒全てがその機能を停止させている。ニンバス2000に至っては開始五分で壁に激突し砕け散った。全く、今日初めて乗ったというのに、また新しいのを買わなくては。
「しかし、どうしたものかね。新品でさえこの様だ、修復呪文で無理やり直した物では真っ直ぐ飛ぶことすら怪しい。・・・一度出直すべきかな?」
「にゃぁ」
「・・・うん、一度戻ったところで状況は変わらないか・・・、新しい箒を用意したとしても僕の怪我が増えるだけだものね」
ふぅん、どうするべきか・・・。目的の鍵には魔法が通用しないし、物理的に捕えようにも箒の制御技術がとても足りない。
・・・いっその事爆薬を使うべきか・・・?しかし勝率の低い賭けな上に美しさが無い、答えが得られない可能性すらある。
新しい魔法の開発に着手するべきか、既存の魔法が弾かれるのであれば新しい物を・・・、いや駄目だ。魔法の概念すら解明できていない状況から、それを弾く物に影響を及ばせる魔法の開発なんて到底時間が足りない。
僕の生涯をかけたとしても辿り着けない可能性のある物に今の一年を使うのは間違っている。
・・・それならば合鍵を探すか、恐らくホグワーツの何処かにはある筈。・・・ふぅん、しかしそこの守りがここ以下な可能性は低い、何よりそれを成そうとすれば先生方と戦う必要が出てくるだろう、それはダメだ、フラッフィーと正面から戦った方が勝率は高いだろうさ。
そうだ、クィディッチのプロ選手を呼ぼう。彼等なら二、三人も居れば鍵を捕まえられ・・・、ダンブルドア先生が受け入れないね、僕がここで詰まっている事をかの御仁は把握している筈。であればそんな分かりきった答えをホグワーツ城に受け入れないだろう・・・。ふぅん、僕にも鍵達の様に翼が生えていたら簡単なのだけれど。やはり、箒を用いない飛行魔法の開発がさい・・・・・・・・・・、ふぅん?
「間違っていてほしいとすら思う仮定だけれど・・・、"フィニート インカンターテム"」
詠唱と共に杖の先端から、赤色の光が目的の鍵へ迸る。・・・あぁ、悲しい事に僕の考察は合っていたらしい。目標は、目標の鍵を
僕の知る限り、自らの意思を持たない無機物が、魔法の力を用いずに重力に逆らう事はない。つまり、あの鍵には何らかの魔法の力が作用している訳だ、そう鍵以外の場所にね。・・・うん、どうやら鍵自体には魔法は効かないけれど、それを飛ばす
"反対呪文"、魔法の効果を強制的に終わらせる呪文。まさかこんな簡単な呪文で止まるとは、あまりこういう場で使いたい呪文ではなかったのだけれど。
過程を無視する呪文なんて美しくも何とも無い、しかし今の僕ではこれ以外に突破する手段が無かったのも事実。
まだまだ勉強が足りないらしい。
「・・・まぁ良いや。次に行こう、ノーズワイズ」
「にゃん」
木製の扉を抜けた先には真っ暗な闇が広がっていた。しかし、生体反応か、或いは扉の動きと連動しているのか、一歩足を踏み入れれば部屋全体に光が溢れ、その全貌を明かす。
此方を守る様に佇む十六個の黒い石像、そして十メートル程先には、此方を睨みつけるかの様相をした白い石像。
「ふぅん、チェスか・・・。先生方との純粋な知恵比べというのは、少し不利な気がするけれど。いや、侵入者を防ぐという意味なら当然の策か」
念の為、一辺十メートル程の巨大なチェス板を迂回出来ないかと試してはみるけれど、当然の様に黒い駒がそれを防ぐ。
・・・そうか、黒い方もこの部屋の守りな訳だ。恐らく、僕が力尽くでこの部屋を突破しようとすれば白い駒だけでは無く、黒い駒も僕に襲い掛かるだろう。
そもそも、魔法が効くかも怪しい石像が三十二個だ。こんな狭い場所で挑む訳にもいかないか。
「ふぅん、如何やらこの部屋も正攻法で挑まなければならない様だ。・・・頼りにしているよ?ノーズワイズ」
「にゃ」
ニーズルであるノーズワイズの知能は一部において、そう一部において魔法使いで有る僕を凌駕している。勿論、ニーズルの代名詞とも言える先導能力、そして、何より、絶対的とも言えるその目の前の問題に対する解決能力。
過去や未来を繋いだ推理能力に関して言えば僕の方が優れているだろうけれど、しかし事、目の前の情報で完結する
僕がこの歳でホグワーツという、稀代の大問に挑めている理由の半分近くは、あぁ、彼の存在が有るのだろう。
意気揚々と、自らに任せろと、自慢気に先導する彼を僕は追いかける。どうやらこのチェスは侵入者が駒になり変わり、自身も盤上の上で戦わなければいけないらしい。
僕はノーズワイズに示され、クイーンと。彼は自らの足でビショップと、それぞれの駒になり変わる。
・・・ふぅん、こう見ると中々に恐怖を覚える光景だ。二メートルを超えるだろう石像が自らを殺さんと構えている。が、まぁ心配は無い、いかに相手がどの先生であろうと、チェスという純粋なゲームであればノーズワイズの独壇場だ。
「さぁ、始めようか」
「にゃあ」
などと、息巻いてはみたものの。ふぅん、どうやら旗色が悪い。盤面は優勢、黒番にも関わらず、しかしノーズワイズは一切の悪手を見逃さず圧倒的な盤面を作り上げてみせた。
しかし、だが、言われてみればそうなのだけれど、どうやら相手の狙いはチェスによる勝利では無いらしい。
幾度かのキングへの追跡を打ち切り、無意味に見える手を織り交ぜ、クイーンである僕や、或いはビショップであるノーズワイズを狙う動きを見せたのだ。
「確かに。幾らチェスで負けようとも、その先に進む存在が消えれば守っている何かを取られることはない。うん、これはやられたね」
「にゃ・・・」
「仕方ないさ、寧ろ此処まで順調過ぎたくらいだからね、また出直せば・・・、うん?」
落ち込んでいる様相のノーズワイズに声をかけているところ、何やら不穏な気配を感じて振り返る。
おかしいな、何故だか指示も出していない駒が勝手に進んでいる。それも現在の盤面に置いて最善手であろう位置へ。
「ふぅん、何やらきな臭い。早めに引いたほ・・・、ノーズワイズ?」
「にゃ」
君は何故、そんなにも覚悟を決めた表情をしているのだろうか。
白のクイーンが歩みを進める。まただ、また自らのキングの守りを捨て、ナイトを挟んで僕を狙う位置へと移動する。この盤面であれば、例え駒の動かし方しか知らない素人でも分かるだろう。
ナイトを跳ねさせればチェックメイトだと。
「待つんだノーズワイズ、待て」
「にゃ」
ノーズワイズの声に応える様に、僕を守っていたナイトが、その偉大な騎士の背中が、どこか申し訳無さそうな視線と共に遠ざかっていく。
騎士の騎槍が、白のキングに狙いを定める。キングは逃げ道を探しているのだろう、周りを見渡している。しかし唯一の逃げ道はノーズワイズの射程に収まっている。
チェックメイトだ。キングも、そして僕も。
僕が一連の流れを呆然とみている間に既に駆け出していたのだろう、僕が気づいた時には既に、彼女の剣は僕の胸元に突き立てられていた。
衝撃、激痛、その切先は僕の軟弱な防護魔法を容易に貫き、僕の体を吹き飛ばす。そしてまた衝撃、壁に叩きつけられた僕は壊れた人形の様に他に伏せる。・・・どうやら生きたまま殺すつもりはないのだろう、どちらの衝撃も命には届いていない様だ。
薄れ行く意識の中、僕が最後に見た光景は、どこか誇らし気に白色の王冠を僕に見せつけるノーズワイズだった。
君が楽しそうで良かったよ・・・。唯、こういう場合、普通は友人では無く自分を犠牲にするものではないだろうか?
翌日。・・・うん、日付は合っているね。翌日。僕は静まり返ったハッフルパフの男子寮で目を覚ました。しかし、なぜだか、珍しく、僕にベッタリなノーズワイズが居ない。流石の彼も、僕を見捨てて勝利に執着したのを気まずく思っているらしい。まぁ時間が経てば戻ってくるだろうし、僕の杖は彼と繋がっている。何か問題があれば呼ばれるだろう。
「・・・しかし、ふぅん。これはダンブルドア先生からかな?」
ノーズワイズの痕跡を探し、周囲を見渡していたところ、枕元に一通の手紙が置いてあることに気付いた。ホグワーツの紋章が刻まれ、封蝋によって閉じられたそれを開けば、そこには僕の予想通り見慣れた文字が言葉を紡いでいた。
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親愛なるリベルタへ
昨夜の君の謎解きは楽しく拝見させてもらったよ。
たった二ヶ月で、それも一生徒がチェスの間まで辿り着くとは驚愕に値する。よってハッフルパフに十点を加点しよう。
しかし、儂もホグワーツの一指導者。夜間に抜け出した生徒に、ましてや貴重な備品を大量に破壊したした生徒には罰則を与えねばならん。よってハッフルパフから五十点減点するとする。
しかし、しかし。あのチェス捌きは実に見事であった、愛好家としてあれだけのものを見せられたのでは黙っておく訳にもいくまい。ハッフルパフに百点を加点する。是非とも手合わせ願いたいものだ。
最後に、あれだけの大冒険の後で申し訳ないが今日は一年に一度のハロウィーンなので、決して遅れない様に。
アルバス・ダンブルドア
追伸
チェスを指揮したノーズワイズは、厳密にはハッフルパフではなかったね。やっぱり加点は無しじゃ。
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「ふぅん・・・、まぁ今更四十点の減点なんてどうでも良いけれど」
しかし、そうだ。今日はハロウィーン、例え授業をボイコットしようと今回のパーティーに遅れる訳にはいかない。何せその為に一月前から手を回していたのだから。手紙を読んで気付いたけれど、此処男子寮もパンプキンパイの良い香りで満たされている、もしや既に始まってしまったのだろうか。
焦る気持ちに突き動かされ、少し荒く身だしなみを整える。これではヴィンターに怒られてしまうね。
「ああ良かった!漸く起きましたか、リベルタ!」
談話室を走り抜け、厨房横の地下通路に飛び出た僕を聞き馴染みのある声が出迎えた。ふぅん、わざわざ待っていてくれたのかな?
「やぁ、太った修道士。もしかして出遅れてしまったかな?」
「ええ!もうパーティーは始まっていますよ、ご馳走が尽きる前にさぁ、早く早く」
太った修道士に急かされるまま、僕は廊下を駆ける。とは言うものの、ハッフルパフの談話室はパーティーが行われている大広間の真下だ。そう時間が掛かる事はない。
まだ日没前だというのに僕達以外誰も居ないホグワーツの廊下に、少し不思議な気持ちを覚えながら駆ける事、五分程か。僕はハロウィーン仕様に装飾された、大広間の扉の前で息を整えていた。少し遅れはしたけれど、これなら許容範囲だろう。
「まったく、いつもの豪胆さはどうしたのですか。息が整うまで待つなんて」
「ベドリアントにしても、メルリヌスにしても。一応は貴族の血筋だからね。余裕は大事なのさ」
そう言うものですかね。などと呆れた風な表情をしながらも、律儀に僕を待っていてくれた太った修道士に感謝を伝え、大広間の扉を押し開ける。
瞬間、広間中の視線が僕に突き刺さる。当然だろう、パーティーの最中にこの扉が開く事は基本的に無いのだから。それこそ緊急事態でも無い限りね。
まぁ、気にする事もない。人の視線に怯えるタチでも無し、堂々とハッフルパフのテーブルに向かうとしよう。
先導する太った修道士のその背を追い、僕は一歩を踏み出そうとした。しかし、けれども、背後からドタバタと鳴り響く、慌てた様な足音に思わず振り返ってしまう。
特徴的なターバンは好き放題に乱れ、その顔を恐怖に歪ませている。クィレル先生だ。彼はローブコートが汚れる事を気にした風もなくその場に倒れ込み、震える口を開く。
「トロールが・・・地下室に・・・!お伝えしなければと・・・」
「・・・・・・・一応言っておくけれど、僕じゃ無いよ?」
クィレル先生の発言を聞いた瞬間、再び僕に向けられた視線に弁明を述べる。どうやら僕以外にもパーティーの為のイベントを準備していた存在がいるらしい。・・・ふぅん、それを知っていれば、わざわざルーマニアから取り寄せる必要も無かったのだけれど。
「監督生よ」
ダンブルドア先生が重々しく、その口を開く。
「すぐさま自分の寮の生徒を引そ「グガアァァァアッ!!」ふむ」
が、その発言を遮る様にホグワーツ城を揺らす咆哮が響き渡る。トロールの時点で既に怯え始めていた下級生達は、既にパニック一歩手前だ。
どうやら、僕の仕込みも予定通り動き出したらしい。
「それと・・・、
さて、楽しくなってきたね。
ノーズワイズ
「にゃあ(勝ちたかったんだもん)」
リベルタ
「ならしょうがないネ」