パチンカス・リコイル   作:スピリタス3世

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第1話 ゼロから始めるリコリコ生活

  たきな視点

 

 わたしはDA本部から喫茶リコリコ支部へ左遷命令が下されました。先日の任務での命令違反が原因のようです。本部に来たばかりでこれからって時だったので、正直辛いです。でも、諦めてはいけません。ここに在籍するファースト・千束さんから色々学んで成果を上げ、本部に戻れるよう頑張らねば。

 

 そんな事を思いながら、わたしは喫茶リコリコの扉を開けると…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミカさん、頼んます‼︎給料の前借りをさせてください‼︎パチンコで負け過ぎて、金が無いんです‼︎」

 

 おじさんがおじさんに土下座をしていました。

 

「翔也、またか………。正直、これ以上は厳しいぞ。」

「そこをなんとか‼︎絶対勝って増やしますから‼︎」

「そう言って、いつも負けてるじゃないか。」

「今はツイてないだけです‼︎」

「というか、買い出しを頼んでたはずじゃ……」

「スーパーへ行く途中にパチ屋があった*1んですよ!」

 

 どうやら土下座しているおじさんはパチンコ屋でお金を溶かしてしまったようです。しかも土下座されてる人の話ぶりを察するに、いつもパチンコで負けてるよう。更には仕事中にパチンコ。話になりません。

 

「というかミカさん、知ってますか?確率は収束するって。」

「いや、まあ知ってるが………」

「今が下振れてるってことは、ここから必ず上がるんです‼︎現に今日は7のつく日、駅前の○ハンがアツいんです‼︎それに俺は、パチンコの天才ですから!」

「えっとなぁ………」

 

 それにしても、言ってる意味が分かりません。パチンカスは皆こんな感じなのでしょうか?いくらファーストがいるとはいえ、こんなのもいるんですか?わたし、こんなのと一緒にさせられるのですか?

 

「あっ、ごめんね。新人の子かな。ちょっとこの人をどかすから、少し待っててくれ。」

「おっ、噂の新人ちゃんですか!ねえ新人ちゃん!」

 

 そんな事を思っていると、2人に話しかけられました。土下座していたパチンカスは無精髭の茶髪で、軽薄そうな目つきに顔つき。更には上下黒いジャージに黒い帽子。いかにもだらしない風貌です。こんなパチンカスが、わたしに何の用でしょうか?

 

「君も思うよね⁉︎俺にパチンコを打たせるべき、って!」

 

 どうやら、野暮用みたいですね。

 

「禁止させるべきだと思います。」

「嘘だろ⁉︎なんでこんなに手厳しいんだ⁉︎」

「当たり前じゃないですか‼︎わたしたちは治安維持部隊ですよ‼︎なのに仕事中にパチンコ⁉︎更には金銭管理もまともに出来ない⁉︎あり得ないです‼︎」

「ひぇぇぇぇ!そんなに言われたら、おじさん泣いちゃうよ〜♪」

 

 泣いちゃうよ〜、じゃないんですよ。泣きたいのはこっちなんですよ。なんで左遷先でこんなのと仕事しなきゃいけないんですか。

 

「頼りになる新人だねぇ。私はミカ。ここの管理者をやっている。よろしくね。」

「ありがとうございます。わたしは井ノ上たきなです。本日配属になりました。よろしくお願いします。」

「俺は楢葉翔也(ならばしょうや)!好きなものはパチンコ!たきなちゃん。ここでパチンコのことについて学んで、俺と同じ立派なパチプロになろうな!」

「なりません。」

「え〜、つれないな〜♪」

 

 にしてもこの人、とてもウザいですね。おまけに頭も悪い。あまり関わらないようにしましょう。

 

 

 

 しばらくすると、

 

「は〜い!千束が帰ってきました〜♪」

「買い出し行ってきたわよ〜。」

 

 女性2人組が帰ってきました。片方は赤い和服を着た方、そしてもう片方が緑の和服を着た方です。どうやら赤い和服の方が、ファーストリコリスの千束さんみたいですね。

 

「おっ、ちょうどいいところに。2人とも、この子が例のリコリスだ。」

 

 そんな事を思っていると、ミカさんが私を紹介してくれました。ちょうどいいタイミングですので、私からも自己紹介しましょうか。

 

「この子がぁ〜⁉︎よろしく相棒!ち・さ・と、でぇ〜す♡」

「井ノ上たきなです。よろしくお願いしま………」

「たきな〜、初めましてだよね!」

「はい。去年京都から転属になったばかりの……」

「お^〜、転属組!優秀なのね、歳は?」

「16です。」

「私が一つお姉ちゃんか〜。けど『さん』は要らないからね!ち・さ・と、でオッケー♪」

「はぁ………」

 

 にしても、とても騒がしい方ですね。なんかびっくりしちゃいます。でもまあ、そんなに悪い人ではないのでしょうね。少なくとも、翔也さんよりは。

 

「相変わらず千束ちゃんは元気だな〜♪」

「あっ、翔也じゃん!また先生にお金せがんでたの?」

「もろちん!」

「相変わらずだね〜。パチンコ辞めたらいいのに!」

「俺はやりたい事最優先だからな!お前と同じさ!」

「それは確かに!」

 

 どうやら千束さんと翔也さんは仲良いようです。何故でしょうか?あと、納得しないで下さい。やりたい事最優先にした結果がこの体(てい)たらくなんですから。

 

「ちなみにこっちはミズキね。」

「こっちって言うな!どうも、アタシがミズキよ。歳は27。婚活中だから、いい男見つけたら紹介してね♪」

「テメェは婚活中じゃなくてアル中だろうが‼︎」

「うるせえパチンカス‼︎貧乏移るから出てけ‼︎」

 

 そして、ミズキさんと翔也さんは仲が悪いようです。それもそうですね。むしろ仲良くできる千束さんが異常というか………

 

「たきな〜、みてみて〜!同い年コンビ〜!仲良しだよね〜♪」

「えっ、そうなんですか⁉︎」

「「仲良くないから‼︎」」

 

 と思ってたら、衝撃の事実を言われました。このパチンカス、どうやらミズキさんと同じ27歳のようです。ぱっと見ミカさんと同い年くらいに見えました。もしかしたら、無精髭のせいかもしれませんね。

 

「あの2人は元DAでね〜、問題児コンビとして有名だったんだよ〜!」

 

 そして、ミズキさんはどうやらだらしないようです。ここ、本当に大丈夫なのですか?

 

「やかましいわ‼︎アタシはコイツに足を引っ張られただけだ‼︎」

「一般人を逆ナンしまくる奴が何を言うか‼︎」

「任務中にパチンコしてクビになった奴に言われたくないわ‼︎」

「そりゃ、道中にパチ屋があったら打ちに行くだろ‼︎」

 

 更に、翔也さんに衝撃の事実が。なんとDAをクビになった理由が、任務中のパチンコだという。話になりません。しかも自分は悪くないと言わんばかりの開き直り方。こんなのが本当に元DAなのですか?信じられません。

 

「千束さん。」

「どしたの〜、たきな?」

「射殺した方がいいでしょうか?」

「ちょいちょいちょい!ダメだって‼︎」

「アタシは賛成よ〜!ほらやっちゃえ、たきな〜♪」

「たきなちゃん、殺すならミズキにしときな!」

 

 わたしはこんな所でやっていけるのでしょうか?とても不安になりました。というか、何故こんなだらしない人がクビになった後も、DA関係のところにいるのでしょうか?不思議で仕方ありません。

 

「ちなみに翔也はあんなんでも、お薬の天才なのさ!」

 

 そんな事を思っていると、千束さんが変な事を言い始めました。薬の天才?どういうことでしょうか?

 

「コイツは元DAの化学部でね。サポート用の薬だったり、対テロリスト用の麻酔の開発をしてたのよ。ムカつくことに、仕事だけは出来る奴なのさ。」

 

 ミズキさんが詳しく説明してくれました。化学部の方でしたか。確か戦闘力を上げるドーパミン系の薬だったり、テロリストが散布する毒ガスを打ち消す薬を作ったり、麻酔銃用の麻酔の開発をしている人たちですよね。たまにわたしたちの手伝いで、現場に出て簡単な応急処置もしてくれました。まさか翔也さんがその人たちと同じだったとは………

 

「お前もな、ミズキ。たきなちゃん。コイツは元DAの情報部出身で、スパイ活動のプロだ。アル中だけど仕事ができる、目の上のたんこぶさ!」

「まあ、アタシは翔也と違って自主退職だけどね!」

「そんな事言ったら俺だって、DAが任務中のパチンコを禁じてなけりゃ、クビになってねえぜ!」

「そんな組織があるかぁ‼︎」

 

 優秀だから、自由にやってもある程度は許される。でも、流石に度が過ぎますね。任務中にパチンコがダメな事くらい、分かるでしょうに。この人と一緒に仕事して、上手くやっていけるのでしょうか?とても不安になった1日でした。

*1:
自費で立て替えてから払う予定だったため、純粋に翔也の金でパチンコを打った

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