たきな視点
その後、わたしたちは仕事に取り掛かりました。ストーカー被害に遭ってる女性・沙保里さんの護衛。わたしと千束さん2人での仕事です。
そして、今回のストーカーですが………どうやら、ただのストーカーではないそうです。沙保里さんがSNSで撮った写真に銃取引現場が写っていたため、それを嗅ぎつけた悪の組織だと思われます。
ということで、わたしは今、沙保里さんと一緒に歩いていました。千束さんは一旦別行動です。どうやらお泊まりセットを取りに店へ戻ったらしいです。護衛のためにお泊まり会をやりたいそうです。
「じゃあ、2人は今日初めて会ったの?」
「はい。優秀な人らしいですが………」
話題は千束さんのことです。わたし、この人もちょっと不安なんですよね。おちゃらけてるというか、適当というか。なんならミズキさんも。翔也さんが居るせいで霞んでますが。
そんな事を思っていると、
「あっ、ゴキブリだ!」
「うわ〜、またいるよ〜!」
小学生たちの声が聞こえてきました。どうやらゴキブリがいるようです。特に気にすることもないでしょう。先に行きましょうか………
「しゃあ!これで100円玉10枚目!千円札に両替すればパチンコが打てるぞ〜‼︎」
そんな事はできませんでした。そこには自販機の下に手を伸ばし、小銭を拾う翔也さんが居ました。なんて汚らしいのでしょう。茶髪の見窄らしい風貌で、自販機の下をカサカサと探すその様は、まるで本物のゴキブリのようでした。
「何してるんですか、翔也さん?恥ずかしいのでやめてください。」
「おっ、たきなちゃんじゃん!ちょっと今、両替いけるかな?」
「無理です。」
「マジか〜!ほな、隣のお姉さんは?」
「えっと…………」
「沙保里さん、無視して大丈夫です。」
「なんでそんなに厳しいんだよ⁉︎」
「なんで理由が分かんないんですか⁉︎」
小学生にまたいるよと言われるほど、何度もこの行動をしてるんですよね?頭大丈夫なんですか⁉︎というか、この人本当に元DAだったんです⁉︎ホームレスの間違いでは⁉︎店長も、よくこんなの雇ってますよね‼︎
「というか、そんな事してる暇あったら仕事手伝ってください。」
「仕事してる暇あったらパチンコ打つんだよな〜。」
「ぶっ飛ばしますよ‼︎いいから早く‼︎」
「仕方ねぇなぁ〜。」
「仕方なくない‼︎」
「大丈夫なの、この人?」
「大丈夫に見えますか?」
全く、翔也さんのせいで沙保里さんが不安になってるじゃないですか。ほんと、だらしない人です。仕事なんですから、もう少しやる気を見せて欲しいですね。千束さんも不安ですが、この人はもっと不安です。
それにしても、さっきからガイドミラーに写ってる車、同じものですね。あれが尾行しているテロリストでしょうか?そうだ、いい作戦を思いつきました。
「すいません、沙保里さん。先に行っててもらえますか?」
「先?いいよ〜!」
「翔也さんはこっちに来てください。」
「どしたの〜、たきなちゃん?まさかお金を貸してくれ……」
「違います。」
沙保里さんを囮にして、あの車を引きつけましょう。そして、テロリストの注意が彼女に逸れている隙に、わたしと翔也さんで制圧するのです。
ということで、わたしは沙保里さんを先に行かせて、翔也さんと一緒に隠れることにしました。
「で、どんな仕事なの?まさかあの人の護衛じゃないよね?」
そういえば、翔也さんは仕事の内容を聞かされていませんでしたね。わたしたちが説明を聞いてる時にはもう、小銭を漁りに自販機の元へ向かってたのですから。
「護衛兼テロリストの確保です。あの人の撮った写真に銃取引現場が写ってたので、それを追ったテロリストが………」
「ちょっと!それじゃあダメじゃん!」
そして、説明したら………いきなり翔也さんが沙保里さんの元へ走っていったんですけど⁉︎何してるんです⁉︎
「翔也さん、作戦が………っ!」
「囮なら俺がやるから!護衛は囮にしちゃダメ!いい?」
「えっと………」
「それじゃ、あとよろしく!」
翔也さんまで囮になるという。というか、こんな適当な人に怒られるの、なんかムカつきますね。まあ、彼自身が囮になると言ってるので、言い返せませんが………
「あっ!それから、テロリスト撃つときは、こっちの麻酔銃使ってね!」
「麻酔………?」
「それじゃあまた!」
そして、何故か麻酔銃を使え、とのこと。確か翔也さんが作った麻酔が入ってるらしいですが………。麻酔で気絶させてから確実に殺すのでしょうか。それとも、麻酔だけで殺せるほどの強力なものなのでしょうか。とりあえず、使ってみることにしましょう。この見た目が筆箱という、変わった銃を。
テロリスト視点
とりあえず例の女を確保…………
「へいタクシー!ちょいとそこのパチ屋まで!」
「「「「えっ⁉︎」」」」
しようとしたら、ニートみてえな見窄らしい男が割り込んできたんだが⁉︎
「俺たちはタクシーじゃねえよ!」
「その女を捕まえろ‼︎」
「邪魔するならお前は殺す‼︎」
「嫌だ‼︎俺はパチンコで勝つまで死ねない‼︎嫌だ嫌だぁぁぁぁぁ‼︎」
「「「「えぇ…………」」」」
しかもなんか喚き始めたぞ、コイツ‼︎なんなんだよ⁉︎写真に写ってた男とは全然違う奴だし‼︎まさかターゲットの浮気相手か⁉︎だとしたら男の趣味悪過ぎるだろ………って、こんな事考えてる暇あるなら、さっさと確保しねえと‼︎
「止まりなさい‼︎」
今度はなんだ⁉︎JKが俺たちに筆箱を向けてるだと⁉︎意味不明過ぎるぞ‼︎なんなんだ、この街は⁉︎変人しかいねえのか⁉︎
「ね、眠…………」カクッ
「お前、その女に何をした⁉︎」
「おならだよ!俺の必殺技、アルティメット・ドライブさ!」
「なわけ………って、くせえ‼︎」
しかも何故か、人質が眠りやがった‼︎このパチンカスの屁が臭すぎて気絶したのか⁉︎いや、そんなんけねえ‼︎確かにコイツの屁は臭えが、そこまでじゃねえだろ‼︎ああもう、めんどくせぇ‼︎このパチンカスは殺………あれ、意識が………無くなる…………
たきな視点
翔也さんの麻酔銃を使ったのですが、凄まじい即効性ですね。しかもほぼ無音。普通、麻酔銃はこんなに効きが早くないです。効くのに30分以上かかることがほとんどなので、わたしたちリコリスはあまり使わないのですが………。調薬の天才なのは、本当だったようですね。
「たきなちゃん、お疲れぃ!」
「お疲れ様です、翔也さん………って、くさっ!」
「臭い屁を出す薬を飲んだんだよね〜。」
「何してるんですか⁉︎」
「相手の気を引くために!」
「なるほど、そういうことでしたか………」
なんでそんな薬も作れるんです?意味が分かりません。
「そういえば、沙保里さんは?」
「ちょっと眠ってもらってる!聞かせられない話もあるだろうからね〜。俺も小型の持ってるんだよ〜。」
「そうだったのですね。」
「にしても凄いね!射撃、超上手いじゃん!」
「ありがとうございます。」
ただのダメ人間だと思ってましたが、どうやら違うみたいです。これが彼を雇う理由でしたか。ちょっとだけ見直しました。
そんな事を思っていると、
「あれ、翔也もいるじゃん!もう終わった感じ⁉︎」
「自販機の小銭漁ってたら、たきなちゃんに見つかってな!」
「またゴキブリみたいなことしてたの〜⁉︎やめな〜、それ!」
「仕方ねえだろ!パチンコ打ちたいんだし♪」
千束さんが帰ってきました。
「ちなみにこれが例の連中たち。沙保里さんも含めて、眠ってもらってるよ!」
「お〜、ありがと〜!さっすが翔也〜!」
「命大事に、だからな!」
「うん!」
そして、とんでもない事を言いました。
「命大事にって、敵もですか⁉︎」
「もちろん!」
「無茶苦茶です!敵を生かした結果任務に失敗したら、どうするんですか⁉︎」
「それでも殺しはしたくない。これが私のモットーなんだよね!」
まさかの敵を生かす⁉︎確かに生かせば情報を得られるメリットはあります。でも生かすこと自体を目的にするのは違うでしょう。それで取り逃したら大変なことになりますよ。
「翔也さんはどう思ってるんです⁉︎」
「千束ちゃんのやりたいようにやらせてるよ〜。俺にとって仕事は、軍資金を得るためだけの、単なる作業だからさ!」
「その辺はどうでもいいのですね。」
「うん!」
「翔也、私のわがままに付き合ってくれて、ありがとね!」
「ど〜も〜♪」
翔也さんも翔也さんで、金さえ手に入ればどうでもいいって思考の持ち主ですし。ホントこの2人は大丈夫なのでしょうか?
ちなみにそのあとは、沙保里さんの家が分からなかったので、店でパジャマパーティーをしたのでした。目覚めた沙保里さんは、千束さんや翔也さんと一緒にはしゃいで、ミズキさんにリア充っぷりを妬まれるという。なんだか、どっと疲れた1日でした。