パチンカス・リコイル   作:スピリタス3世

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第2話 馬鹿への咆哮

  たきな視点

 

 その後、わたしたちは仕事に取り掛かりました。ストーカー被害に遭ってる女性・沙保里さんの護衛。わたしと千束さん2人での仕事です。

 

 そして、今回のストーカーですが………どうやら、ただのストーカーではないそうです。沙保里さんがSNSで撮った写真に銃取引現場が写っていたため、それを嗅ぎつけた悪の組織だと思われます。

 

 ということで、わたしは今、沙保里さんと一緒に歩いていました。千束さんは一旦別行動です。どうやらお泊まりセットを取りに店へ戻ったらしいです。護衛のためにお泊まり会をやりたいそうです。

 

「じゃあ、2人は今日初めて会ったの?」

「はい。優秀な人らしいですが………」

 

 話題は千束さんのことです。わたし、この人もちょっと不安なんですよね。おちゃらけてるというか、適当というか。なんならミズキさんも。翔也さんが居るせいで霞んでますが。

 

 そんな事を思っていると、

 

「あっ、ゴキブリだ!」

「うわ〜、またいるよ〜!」

 

 小学生たちの声が聞こえてきました。どうやらゴキブリがいるようです。特に気にすることもないでしょう。先に行きましょうか………

 

「しゃあ!これで100円玉10枚目!千円札に両替すればパチンコが打てるぞ〜‼︎」

 

 そんな事はできませんでした。そこには自販機の下に手を伸ばし、小銭を拾う翔也さんが居ました。なんて汚らしいのでしょう。茶髪の見窄らしい風貌で、自販機の下をカサカサと探すその様は、まるで本物のゴキブリのようでした。

 

「何してるんですか、翔也さん?恥ずかしいのでやめてください。」

「おっ、たきなちゃんじゃん!ちょっと今、両替いけるかな?」

「無理です。」

「マジか〜!ほな、隣のお姉さんは?」

「えっと…………」

「沙保里さん、無視して大丈夫です。」

「なんでそんなに厳しいんだよ⁉︎」

「なんで理由が分かんないんですか⁉︎」

 

 小学生にまたいるよと言われるほど、何度もこの行動をしてるんですよね?頭大丈夫なんですか⁉︎というか、この人本当に元DAだったんです⁉︎ホームレスの間違いでは⁉︎店長も、よくこんなの雇ってますよね‼︎

 

「というか、そんな事してる暇あったら仕事手伝ってください。」

「仕事してる暇あったらパチンコ打つんだよな〜。」

「ぶっ飛ばしますよ‼︎いいから早く‼︎」

「仕方ねぇなぁ〜。」

「仕方なくない‼︎」

「大丈夫なの、この人?」

「大丈夫に見えますか?」

 

 全く、翔也さんのせいで沙保里さんが不安になってるじゃないですか。ほんと、だらしない人です。仕事なんですから、もう少しやる気を見せて欲しいですね。千束さんも不安ですが、この人はもっと不安です。

 

 それにしても、さっきからガイドミラーに写ってる車、同じものですね。あれが尾行しているテロリストでしょうか?そうだ、いい作戦を思いつきました。

 

「すいません、沙保里さん。先に行っててもらえますか?」

「先?いいよ〜!」

「翔也さんはこっちに来てください。」

「どしたの〜、たきなちゃん?まさかお金を貸してくれ……」

「違います。」

 

 沙保里さんを囮にして、あの車を引きつけましょう。そして、テロリストの注意が彼女に逸れている隙に、わたしと翔也さんで制圧するのです。

 

 

 

 

 ということで、わたしは沙保里さんを先に行かせて、翔也さんと一緒に隠れることにしました。

 

「で、どんな仕事なの?まさかあの人の護衛じゃないよね?」

 

 そういえば、翔也さんは仕事の内容を聞かされていませんでしたね。わたしたちが説明を聞いてる時にはもう、小銭を漁りに自販機の元へ向かってたのですから。

 

「護衛兼テロリストの確保です。あの人の撮った写真に銃取引現場が写ってたので、それを追ったテロリストが………」

「ちょっと!それじゃあダメじゃん!」

 

 そして、説明したら………いきなり翔也さんが沙保里さんの元へ走っていったんですけど⁉︎何してるんです⁉︎

 

「翔也さん、作戦が………っ!」

「囮なら俺がやるから!護衛は囮にしちゃダメ!いい?」

「えっと………」

「それじゃ、あとよろしく!」

 

 翔也さんまで囮になるという。というか、こんな適当な人に怒られるの、なんかムカつきますね。まあ、彼自身が囮になると言ってるので、言い返せませんが………

 

「あっ!それから、テロリスト撃つときは、こっちの麻酔銃使ってね!」

「麻酔………?」

「それじゃあまた!」

 

 そして、何故か麻酔銃を使え、とのこと。確か翔也さんが作った麻酔が入ってるらしいですが………。麻酔で気絶させてから確実に殺すのでしょうか。それとも、麻酔だけで殺せるほどの強力なものなのでしょうか。とりあえず、使ってみることにしましょう。この見た目が筆箱という、変わった銃を。

 

 

 

 

 

  テロリスト視点

 

 とりあえず例の女を確保…………

 

「へいタクシー!ちょいとそこのパチ屋まで!」

「「「「えっ⁉︎」」」」

 

 しようとしたら、ニートみてえな見窄らしい男が割り込んできたんだが⁉︎

 

「俺たちはタクシーじゃねえよ!」

「その女を捕まえろ‼︎」

「邪魔するならお前は殺す‼︎」

「嫌だ‼︎俺はパチンコで勝つまで死ねない‼︎嫌だ嫌だぁぁぁぁぁ‼︎」

「「「「えぇ…………」」」」

 

 しかもなんか喚き始めたぞ、コイツ‼︎なんなんだよ⁉︎写真に写ってた男とは全然違う奴だし‼︎まさかターゲットの浮気相手か⁉︎だとしたら男の趣味悪過ぎるだろ………って、こんな事考えてる暇あるなら、さっさと確保しねえと‼︎

 

「止まりなさい‼︎」

 

 今度はなんだ⁉︎JKが俺たちに筆箱を向けてるだと⁉︎意味不明過ぎるぞ‼︎なんなんだ、この街は⁉︎変人しかいねえのか⁉︎

 

「ね、眠…………」カクッ

「お前、その女に何をした⁉︎」

「おならだよ!俺の必殺技、アルティメット・ドライブさ!」

「なわけ………って、くせえ‼︎」

 

 しかも何故か、人質が眠りやがった‼︎このパチンカスの屁が臭すぎて気絶したのか⁉︎いや、そんなんけねえ‼︎確かにコイツの屁は臭えが、そこまでじゃねえだろ‼︎ああもう、めんどくせぇ‼︎このパチンカスは殺………あれ、意識が………無くなる…………

 

 

 

 

 

 

  たきな視点

 

 翔也さんの麻酔銃を使ったのですが、凄まじい即効性ですね。しかもほぼ無音。普通、麻酔銃はこんなに効きが早くないです。効くのに30分以上かかることがほとんどなので、わたしたちリコリスはあまり使わないのですが………。調薬の天才なのは、本当だったようですね。

 

「たきなちゃん、お疲れぃ!」

「お疲れ様です、翔也さん………って、くさっ!」

「臭い屁を出す薬を飲んだんだよね〜。」

「何してるんですか⁉︎」

「相手の気を引くために!」

「なるほど、そういうことでしたか………」

 

 なんでそんな薬も作れるんです?意味が分かりません。

 

「そういえば、沙保里さんは?」

「ちょっと眠ってもらってる!聞かせられない話もあるだろうからね〜。俺も小型の持ってるんだよ〜。」

「そうだったのですね。」

「にしても凄いね!射撃、超上手いじゃん!」

「ありがとうございます。」

 

 ただのダメ人間だと思ってましたが、どうやら違うみたいです。これが彼を雇う理由でしたか。ちょっとだけ見直しました。

 

 

 

 

 そんな事を思っていると、

 

「あれ、翔也もいるじゃん!もう終わった感じ⁉︎」

「自販機の小銭漁ってたら、たきなちゃんに見つかってな!」

「またゴキブリみたいなことしてたの〜⁉︎やめな〜、それ!」

「仕方ねえだろ!パチンコ打ちたいんだし♪」

 

 千束さんが帰ってきました。

 

「ちなみにこれが例の連中たち。沙保里さんも含めて、眠ってもらってるよ!」

「お〜、ありがと〜!さっすが翔也〜!」

「命大事に、だからな!」

「うん!」

 

 そして、とんでもない事を言いました。

 

「命大事にって、敵もですか⁉︎」

「もちろん!」

「無茶苦茶です!敵を生かした結果任務に失敗したら、どうするんですか⁉︎」

「それでも殺しはしたくない。これが私のモットーなんだよね!」

 

 まさかの敵を生かす⁉︎確かに生かせば情報を得られるメリットはあります。でも生かすこと自体を目的にするのは違うでしょう。それで取り逃したら大変なことになりますよ。

 

「翔也さんはどう思ってるんです⁉︎」

「千束ちゃんのやりたいようにやらせてるよ〜。俺にとって仕事は、軍資金を得るためだけの、単なる作業だからさ!」

「その辺はどうでもいいのですね。」

「うん!」

「翔也、私のわがままに付き合ってくれて、ありがとね!」

「ど〜も〜♪」

 

 翔也さんも翔也さんで、金さえ手に入ればどうでもいいって思考の持ち主ですし。ホントこの2人は大丈夫なのでしょうか?

 

 ちなみにそのあとは、沙保里さんの家が分からなかったので、店でパジャマパーティーをしたのでした。目覚めた沙保里さんは、千束さんや翔也さんと一緒にはしゃいで、ミズキさんにリア充っぷりを妬まれるという。なんだか、どっと疲れた1日でした。

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