たきな視点
喫茶リコリコに大きな仕事が入ったようです。内容は凄腕のハッカー、ウォールナットの護衛。今回はDA経由ではなく、ウォールナット個人からの依頼ですね。
「で、どんくらい急ぎ?」
「現在、武装集団に追われている。」
「お〜、それは大変。たきな〜、仕事の話、もう聞いてる?」
「はい、一通り。」
「オッケー!そう、昨日話してたブツ!そこに置いてあるから、帰りに持って帰ってね〜。」
ちなみに千束さんは、どこかから何かを持ってきたようです。中身については分かりません。お菓子か何かでしょう?
「あれ、ミズキは?」
「既に逃走ルート確保に動いている。」
「張り切ってるね〜。めっずらしい〜!」
「報酬が相場の3倍。一括前払いでな。」
「通りで。」
そして、ミズキさんはお金を見せられてやる気満々のようです。どうやら普段はやる気ない様子。翔也さんと同じですね。
「あと、翔也は?パチンコ?」
「いや、別件だ。DAのいつものやつ。」
「あ〜、なるほど〜!つまりサボってパチンコか〜!」
「今金欠だから無理だと思うぞ。」
「確かに!この間自販機の下漁ってたし!」
「またアイツはそんな事を………」
そして、その翔也さんは不在です。しかもパチンコじゃないという。珍しいですね。一体何をしてるのでしょう?DAをクビになったのに、用事があるのは謎ですね。
「別件ってなんですか?」
「あ〜、たきなは知らないんだっけ〜?翔也はDAクビになった後も、時々薬の開発を依頼されてるんだよ〜!」
「ここじゃあ実験できないからな。月に何回かDA本部に行って、仕事してるんだ。」
「そういう事でしたか………」
クビになっても依頼されるって、相当すごいんでしょうね。仕事量は減ってるんでしょうけど、実質本部にもいるようなもの。わたしも翔也さんのように、本部に戻れるようになりたいですね。
「話を戻そう。敵は5人から10人程度、プロ寄りのアマだ。ライフルも確認した。気をつけろ。」
「了解!行こ!」
「はい。」
とりあえず、仕事をしなければ!
「ちなみに翔也のパチンコも、プロ寄りのアマだね〜!」
「かなり負けてるけどな。」
あと、翔也さんはパチンコそんな上手くないでしょう。というか、上手い下手とかあるんですか、あれに?ただの運だと思うんですが。そんな事を思いながら、私は店を出ました。
楠木司令
楢葉から私の携帯にメッセージが来た。
『ごめんなさい。DAには行けません。今この店を南北に縦断しながら、色んな機種で荒稼ぎしています。本当は、仕事が恋しいけれど、でも今はもう少しだけ、知らないふりをします。きっといつか、俺の財布に残るから。』
なんともふざけた野郎だ。コイツはDA時代からミズキと一緒に馬鹿な事ばかりして、色んな人を困らせていたな。他部署とはいえ、私も非常に頭を抱えさせられた。
「司令。翔也先輩、またサボってパチンコ行ってるんですか?」
「残念ながら。馬鹿はDAを辞めても治らないらしい。」
「ほんと、相変わらずですね………」
助手の川瀬*1は私以上に、あの2人と一緒に仕事していた。故に、よく奴らの奇行に頭を悩ませていた。本当に可哀想な奴だ。
「残念ながら、パチ屋にリコリスは入れない*2。だから、私が連れてこよう。」
「私も協力します。」
「ありがとう、助かる。」
という事で、私と川瀬が直々に楢葉を迎えに行ったのだった。
情報部に写真を特定してもらい、私たちは楢葉が遊んでいるパチンコ屋に足を踏み入れた。
「さてと、翔也先輩は………あっ、いました。」
「本当に呑気な奴だな。」
ちなみに楢葉はというと…………
「ここで7,500取れたらアツい‼︎今日の俺ならいけるはず………っ!」
《ジャッジ!押し込め‼︎》 ブブブキュインキュインキュイン‼︎デーレーレーレーデレレレレレレ~‼︎
「しゃあぁぁぁぁぁ‼︎」
よく分からんが、大当たりして嬉しそうだった。とりあえず、捕まえるか。
「よう、楢葉。仕事サボってやるパチンコは楽しいか?」
「げっ、楠木さん⁉︎それに杏奈ちゃん*3まで⁉︎」
「先輩、遊んでないで行きますよ!」
「ごめん、無理!見れば分かるでしょ!今当たってるから!」
「知りませんよ、そんなの‼︎」
「じゃあ、当たりが終わったら来てもらおう。」
「え〜、仕方ないですね〜!」
「「仕方なくない‼︎」」
私の情けで、当たりだけは打たせてあげることにした。前当たり中に連れ戻そうとしたら、死ぬほどごねられたからな。これで店員を呼ばれて出禁を食らった暁には、奴にとってここが楽園になってしまうから。
そして私たちは当たりを終えた楢葉を捕まえて、そのままDAに連行したのだった。
たきな視点
今回の任務は失敗………ではなく成功。なんとかウォールナット、もといクルミを守りきれました。でも、一度は失敗したと思いました。やっぱり、『命大事に』は無理がありますよ。
そんな事を思い、悶々としながら迎えた翌日………
「よっ、たきなちゃん、おはよう!昨日はありがとね〜♪」
翔也さんが話しかけてくれました。どうやらパチンコの話………ではなく、普通に昨日のことを労ってくれました。なんだかんだ、優しいのですね。
「翔也さん、おはようございます。昨日は………正直、上手くいったとは言い辛く………」
「作戦、聞かされてなかったんでしょ?ならしゃーないって!大丈夫大丈夫!」
「………やっぱり、命大事にって、無理がありますよ。」
その優しさを感じて、つい話してしまいました。千束さんのことです。
「まあ、普通に殺すよりは難しいだろうね〜。」
「それが分かってるなら、なんで………っ!」
どうやら翔也さんはそれも分かってる様子。そして、分かっていて、あえてそれを認めているという。なんで止めないのか。
「あの子の殺したくない、は単なる縛りプレーじゃないんだよ。あの子の強い信念なのさ。命を大切にしたい。これ以上は………本人の口から聞いた方がいいかもね!」
「そんな………」
信念といえども、それを守れないときはあるでしょう。それでもそれを押し通すには、相当の理由が必要なのに………肝心なところは、はぐらかされてしまいました。千束さん本人が言うことに意味があるのでしょうか。
「おはよう、たきな。」
そんな事を思っていると、ウォールナットことクルミが起きてきました。昨日から店で匿っています。金髪の小さな女の子で、見た目だけなら6歳くらいでしょうか。それに似合わないくらい、大人びた口調で話しますが。
「おはようございます。」
そういえば、翔也さんは昨日居なかったら、クルミのこと知りませんよね。いいタイミングですし、教えましょうか…………
「おはようございます、
えっ?はい?えっ、どういうことです?
「お、翔也も起きてたのか。早いな。おはよう。」
「姐さん、新しい布団はよく眠れました?」
「思ったより良かったぞ〜。ふかふかだし、サイズも僕にぴったりだ!」
「それは良かったです!」
なんで翔也さんが敬語?もしかして、クルミって…………
「たきなちゃん、どしたの?そんなに戸惑って………?」
「えっと…………クルミって、何歳なんです?」
「僕の年齢は秘密だ。」
いや、年齢秘密って………。今の会話と、ウォールナットが30年くらい活動していることから、あらかた想像がつくでしょうに………
「姐さんの年齢は俺も知らないんだよ、たきなちゃん!」
「そうなんですね。というか、知り合いなんです?」
「そうだ。翔也と僕は昔からの付き合いでね。昨日、久々に再会したんだ。」
「リコリコの中じゃ、ミズキよりも前だぜ!」
それにしても、ミズキさんよりも前からの知り合いって、だいぶ前じゃないですか。ということは、クルミの年齢は………これ以上は止めておきましょうか。
「千束が来ました〜♪」
「世界一の美女、中原ミズキも登場よ♡」
「おはようございます。」
「おはよう、千束ちゃん!大丈夫、酒臭くない?」
「へーきへーき、慣れたから!」
「おいコラ、やかましいわ‼︎」
そんな事を思っていると、2人が来ました。この2人は翔也さんとクルミの関係を知っていたのでしょうか?
「あとクルミ、ソイツが私らが話してたパチンカス。クズだから気をつけな。」
どうやら知らなかったようです。てっきりクルミが翔也さんのことを知らないものだと思っています。紹介の仕方は………まあ、合ってるでしょう。
「おいミズキ、翔也になんて事言うんだ。こんなに可愛いのに。」
「「「は?」」」
えっ?ちょっと待ってくださいよ?翔也さんが可愛い………?
「ありがとうございます〜♪姐さんも本当にお綺麗ですよ!」
「褒めても何も出ないぞ。」
「「「は?」」」
頭おかしいんじゃないですか⁉︎どう見てもニートのおじさんでしょう‼︎もしかしてクルミは、目が見えてないのです⁉︎
「なんだこの気持ち悪いやりとりは⁉︎吐き気がするんだけど⁉︎」
「テメェのそれは、酒の飲み過ぎだろ!」
「やかましいわ!つーか、お前はなんでクルミに敬語なんだよ⁉︎コイツはヤクザのお嬢かなんかか⁉︎」
「違えよ‼︎昔馴染みってだけ‼︎」
「そういうことね。にしても気持ち悪ぃーよ‼︎」
「黙れ、アル中‼︎」
「お〜、そうだったんだ!なんかエモいね!」
「ありがとう、千束ちゃん!ミズキとは違うね!」
「違くて結構‼︎」
どうやらミズキさんや千束さんも、2人の関係を知らなかったようです。にしても変なやりとりですね。どう見ても翔也さんは可愛くなんかないのに………
「おっと、そろそろ仕事の時間だ!お店、開けちゃうよ〜!」
「はい!」
とりあえず、仕事をしましょうか。そうして、わたしたちはいつも通り、営業したのでした。