杏奈(楠木の助手)視点
私は司令と先輩と一緒に、司令室まで戻ってきた。
「楢葉、そろそろ実験の時間では?」
「大丈夫っすよ!今いる職員が経過観察してるんで!あと30分くらい暇です!」
「そうか。」
それにしても、なんか懐かしいな。ここにミズキ先輩が居たら、完全に昔のDAだ。よく2人がやらかして、私が司令のところまで2人を連れてきて、そして司令が怒る。何度見た光景か。
「で、楠木さ〜ん!」
「お前の聞きたい事は、私は答えられない。」
「そうですかそうですか〜。」
「お前もDAに居たから分かるだろ?命令違反して単独行動するリコリスは要らないって。」
「まあ、それは分かりますけども〜。」
それはそうと、先輩はどうやら千束が言おうとしたことの続きを言いたいらしい。
「だからって、たきなちゃん1人に全部背負わせるのは違うでしょ〜。あれで左遷はやり過ぎですよ!上が決めたことかもしれませんが!」
「いいや、妥当だ。それに、後任ももう居る。たきなの居場所は無い。」
「なら作ればいい。助手その2とか、いくらでもやれるじゃないですか!」
「組織の定員や役職は決まっている。それを変えることはできない。」
「ふ〜ん。」
にしても、先輩は何を言うつもりだろうか………?
「じゃあ、たきなちゃんを戻さなかったら、今あるDAの仕事を辞めます!」
この人、自分の職を天秤にかけてきた‼︎嘘でしょ⁉︎あれ、かなりの高給ですよ‼︎そんな事したら、パチンコ打つお金なんかほぼ無くなるのに‼︎
「先輩⁉︎」
「仕事を途中で投げ出すとか、お前それでも大人か?」
「楠木さんのパワハラに耐えられなくなった、ってことで!」
「先輩、何を言い出すんですか⁉︎司令はそんな事してないのに‼︎」
「したことにすればいい。簡単な話さ!あと特許も貰っちゃおうかな〜♪今ある薬、使えなくなっちゃうかもね〜♪」
しかもこの人、司令のことまで脅しにきた。本当に厄介な人だ。
「さあさあ〜、DAの新薬開発がボロボロになっちゃいますよ〜♪」
「パチンコを打つ金が無くなるが、いいのか?」
「大丈夫っすよ〜!自販機の下には、夢が詰まってるんで!」
「まだそんな事をやっているのだな。下らない。」
「おっと、そろそろ化学部に戻らなきゃ!楠木さ〜ん、期待してますよ〜♪」
だけど、この人の薬学の知識は本物。懲戒免職になっても尚仕事を依頼されるなんて、普通じゃない。そんな人が辞めると言ってる。これはDAにとっても、かなりの損害。どうすればいいんだ?
千束視点
私はたきなと合流した。そこにはよく分からないクソガキが居たので、ちょっとシメといた。すると………
「アンタ誰っすか?」
「そいつが千束だ。」
「あっ、フキ先輩〜!それに司令まで。」
「コレが電波塔の………」
「コレって言うな!」
「いや、ただのアホだ。」
「あぁん⁉︎」
フキが楠木さんと助手を連れてやってきた。どうやら翔也は居ないっぽい。実験の続きに行ったのかな?
そして、たきなが楠木さんに向かって歩いていく。どうやら説得にいくみたい。
「司令、わたしは銃取引の新情報となる獲得し、提出しました。この成果ではまだDAに復帰できませんか?」
翔也が上手いことやってくれてたら、聞き入れてくれるんだろうけど………
「復帰……?」
「成果を上げれば、わたしはDAにも………」
「そんな事を言った覚えはない。」
「楠木さん⁉︎」
「司令⁉︎それじゃあ先輩は………っ⁉︎」
「アイツは勝手に仕事を辞めればいい。私をパワハラで訴えたいならすればいい。特許だけは取られると困るから、そこの対策だな。」
「そんな………っ!」
翔也は自分の仕事を天秤にかけて脅したか……っ!でも楠木さんは自分の首を切ってでもDAを守った。ここまでされたら、どうすればいいんだよ………っ!
「諦めろって言われてるの、まだ分かんないんっスか〜?」
「おい!」
「おお、怖……っ!流石電波塔のヒーロー様!迫力ありますね〜!」
「残念〜!話したかったのに〜!」
去ろうとするフキの手を掴むたきな。藁にも縋る思い。フキなら、なんとかしてくれる………っ!
「んだよ。」
「すみません。」
「あの時ぶん殴られたので理解してなかったか?だったら言葉にしてやる。お前はもうDAには必要無いんだよ。」
してくれな………っ!いや、私の方を見てる………?何か考えがあるのかな?とりあえず、挑発に乗ってみるか………?
「やめろフキ!」
「まだ理解出来ないか?なら今から模擬戦でぶちのめして分からせてやるよ。」
なるほど。無理ならせめてもの鬱憤を晴らせる機会を作るってわけ。やるじゃん。ならここで乗るまで!
「お〜お〜、いいじゃん!やろうたきな………って、ちょい‼︎」
「逃げるんっスか〜?」
と思っていたら、たきなが走って逃げてしまった。とりあえず追いかけないと‼︎
杏奈(楠木の助手)視点
フキ&サクラvs千束&たきなの模擬戦の司会中…………
「楠木さ〜ん、考えてくれました〜?」
翔也先輩が帰ってきた。荷物を持っているので、どうやら今日の分の仕事は終わったみたい。
「お前の職が無くなった。以上だ。」
「お〜!楠木さんがハラキリドライブするってわけですか〜♪」
「私がどうなろうと知った事ではない。ただ、お前に特許は取らせない。」
「まあ、特許は組織に宿るものですからね〜。」
そして、もうここに来ることはなさそう。薬の仕事が無ければ、ここに用は無いからね。
「まあまあ、たきなちゃんはここに居ても宝の持ち腐れですから!うちで沢山活躍してもらいますよ!」
「そうか。あとは任せた。」
「はいよ‼︎」
これでミズキ先輩に加えて、翔也先輩まで居なくなってしまった。残ってるのは私だけだと思うと、少し寂しい。いや、やっぱそんな事ないや。2人に振り回される事がなくなるわけだし。
模擬戦を見ていた私たちは、千束の話題になった。
「これが千束ですか。動きは初めて見ます。どういう魔術ですか?」
「卓越した洞察力で、相手の射線と射撃タイミングを見抜く天才。」
「要は、めっちゃ目がいいってこと!」
「目の前で撃っても、千束は避けられる。」
「だから最強リコリスなのですね………」
射撃を目で見て避けるなんて、控えめに言って人間離れしている。それがあの強さに繋がってるわけか。フキの動きを初めて見た時もかなり驚いたけど、千束のはそれ以上だ。
「まあ、それ以外は………生意気なクソガキだ。」
「楠木さんは喧しいクソババですけどね。」
「クソガキがもう1人………いや、お前はクソオジか。」
「ざんね〜ん、まだ27ですぅ〜♪」
「先輩、27はもう立派なおじさんです。」
「川瀬、それは私にもっと刺さるからやめてくれ。」
「あっ、司令!すいません!」
「杏奈ちゃん、いいぞ〜!もっと言ってやれ!」
「先輩はもっとちゃんとして下さいよ。」
「ガーン、杏奈ちゃん厳しい〜!」
それにしても、リコリコで2人の面倒を見ているミカさんは大変なんだろうな。ご愁傷様です。
それから数日後のこと。翔也先輩達も無事に帰り、司令とのんびり仕事をしていると………
「はい。リコリス司令部副官、川瀬です。」
司令室に電話がかかってきた。誰からかな?
「リコリコ支部のミカだ。楠木に変わってくれるか?」
「かしこまりました。」
噂のミカさんでした。もしかしたら、仕事の話か?それか、この間のたきなの話か?司令もこの人には頭が上がらないから、緊張するんだよな………
「司令、ミカさんからお電話です。」
「分かった。変わりました、楠木です。」
そんな事を思いながら、私は電話を代わりました。
そして、緊張しながら電話を待つこと1分。どうやら電話が終わりました。
「川瀬、1時間後にリコリコへ行く。同行願う。」
なんと、リコリコへ来て欲しいとの電話が。司令自ら行くって、なかなか無いことだ。いったい何があったのだろうか?
「どうしたのです?」
「ミカさんから依頼があってな。楢葉とミズキが手をつけられないから来て欲しい、と。」
やっぱり………。あの優しいミカさんじゃ、2人を抑えることは出来なかったか…………
「分かりました。全力でシバかせてもらいます。」
「そうしよう。」
ということで、私と司令はリコリコへ向かいました。
そして、店に着くと…………
「「酒を飲めやぁ、クソババァ‼︎」」
「がっ…………⁉︎」
なんとドアを開いた瞬間、いきなり翔也先輩とミズキ先輩が司令の口に酒を突っ込んできたのです。なんなんですか、この2人は⁉︎そりゃミカさんもお手上げですよ!ここは私がしっかりしないと‼︎
「2人とも、何してるんですか⁉︎」
「そりゃ、楠木さんだけお咎めなしはずるいからね〜♪」
「つーか杏奈、アンタも飲めぇ‼︎」
「ちょっとミズキ先輩⁉︎私は要らないですから‼︎」
「20歳過ぎてるのに酒を断る………?アタシはアンタをそんな風に育てた覚えはないわよ‼︎」
「私もお前達をそんな風に育てた覚えはないんだがな。」
「あなたの教育の賜物ですよ、楠木さん!」
そんな事を思ってたら、コイツら私の口にも酒突っ込んでくるんですけど⁉︎これじゃあ前と一緒じゃん‼︎
「ミカさん、これはどういうことですか⁉︎」
「すまんな、楠木。この2人に頼まれたんだ。」
「そんな………っ!」
しかも首謀はミカさん。まんまと嵌められたってわけですか………
「たきなちゃ〜ん!今から楠木さんが謝罪ダンスを踊るから、見てて〜♪」
「このおばちゃんのダンス、めっちゃ面白いから!」
「分かりました。」
「待って待って、私も見たい‼︎」
「千束ちゃんも見ようぜ!」
「待て、2人とも。そんな事を約束した覚えは………」
「「いいから飲めヤァ‼︎」」
こうして、私と司令はリコリコの泥のような飲み会に巻き込まれたのだった………
最後のシーン、クルミはDAにバレるとマズいので押し入れに隠れています。