ニチアサ魔法少女モノに転生したら性癖終わってる奴らしかいない件 作:レイ
『あっちに魔力の気配を感じるフェニ!きっとアポカリプスの幹部がいるフェニ!』と飛び出して行った妖精フェニィを追うように俺達4人が辿り着いた場所は、この街の大型商業施設の屋外に面する市民の憩いの場である広場だった……ここはかつて俺が初めて魔法少女となり、そして己の不甲斐なさを嫌というほど突きつけられたトラウマとも呼べよう場所だ。真夏のギラついた太陽がアスファルトを焼き尽くすように照らす中、その中心に立っていたのは。
「―――フフフ、相変わらずしつこいものね貴方達は。私が居る場所どこへでも現れちゃって、全くストーカーなのかしら?いいわ、いい加減私が引導を渡してあげる。出てきなさい!我が僕……ハカイダー!!」
アポカリプスの女幹部であるブレイクであった、彼女ともドゥームと同様に俺が魔法少女になった後に既に何度か対峙している相手だ。今更な説明になってしまうが、アポカリプスには幹部が3名存在する。ドゥームにブレイク、そして……最後の一人に関しては正直名前を挙げる事すら嫌かも、あの性格の悪さと生意気っぷり、こちらの人格を根本から否定してくるような毒々しい言葉の数々……いや今は目の前の敵と向き合わなければ。
ブレイクが鞭を空間にしならせると―――
「ハッカイダー!!!」
全長3メートルを超す巨躯を持ち、重厚な鋼の装甲を纏いながらその右腕には食らったらタダでは済まないであろう凶悪な回転ドリルが付いているハカイダーが現れた……正直ハカイダー自体は幹部達が毎度繰り出す一怪物に過ぎない。だが俺にとっては違う、今まで何度もまともに戦う事すら出来ず醜態を晒してきて……だからこそ今度こそは絶対に同じ過ちを繰り返してはいけないのだ。ここから変わる、いや変わってみせる。奴がその―――記念すべき最初の敵だ。
「行くよ、みんなっ!!」
「ええ、この街は私達が必ず守ってみせます!」
「……倒す」
日向さん、彼方さん、長崎さんの3人が己のルミナス・ジュエルを握りしめ、そして「「「オープン!」」」と声に出すとその体が眩い光に包まれていった。相変わらず絵になるなぁ……そして俺も彼女達と同様にジュエルを握りしめ。
「―――オープン!」
身体が眩い光に包まれ、全身を駆け巡る魔力が俺の衣装を瞬時に再構築していく。頭部には小さな真珠と銀の繊細なティアラが戴かれ、肩から胸元にかけてはフリルとパールラインが施された、可憐でありながら格式高いドレス調の魔法少女衣装へと変化した。背中には天使の羽根を模したシースルーの小さなリボンが揺れ、腰元からは幾重にも重なった真珠色のフレアスカートがふんわりと広がっている。脚部を包むのは清潔感あふれる純白のニーハイソックスと、可憐なリボン付きのパンプス。
俺は魔法少女―――マジカル・パールへと変身した。
「ルビー・クリスタル・バスター!」
「エメラルド・グリーン・アロー!」
「サファイア・フリーズ・プレッシャー!」
戦いの火蓋は切って落とされ、マジカル・ルビーの撃ち出す紅蓮色の光弾にマジカル・エメラルドの正確無比な緑色の矢と、マジカル・サファイアの極寒の氷結波がハカイダーの巨躯めがけて向かっていく。
だが……
キィィィンッ! ガキンッ!
「そんな!?」
「なっ……!?」
「……効いてないっ!」
ハカイダーは右腕のドリルを使いそれらの攻撃を完全に相殺し……今度はこちらのターンと言わんばかりに奴はドリルを心臓に直接響き渡るような爆音と共に再度高速回転させると、重圧な一閃を薙ぎ払うように振り抜いた。
ドガァァァァンッ!!
「きゃああああっ!?」
ドリルが巻き起こした凄まじい衝撃波と突風により、3人が吹き飛ばされ、地面へと激しく叩きつけられてしまった。あの強い3人が一瞬で苦戦を強いられるほどの圧倒的な装甲とパワー……あのハカイダーは今までの奴と比べて相当手ごわい。
「これは……厄介ですね……」
「うん……っ」
「でも、絶対に倒さなきゃ……!」
「フェニ……」
叩きつけられた衝撃から地面に膝をつき、3人は上手く立ち上がる事が出来ない。そんな彼女達を心配するように悲し気な声を漏らすフェニィ……苦戦を強いられてる状況の中、俺は静かに両目を閉じた。
吸って、吐いて……横隔膜を下げるイメージ、深く、深く……
先週買った呼吸本に書かれていた手順を忠実にトレースする、家で繰り返し何度も何度も行ったので本に記載されていた全ては己の頭に叩き込まれている。鼻から深く息を吸い込み、下腹部に意識を集中……身体の隅々にまで酸素を行き渡らせ、ずっと上手くコントロールする事が出来なかった肉体と精神を一つにリンクさせていく。変身時でも同じようにやれるか不安だったが、明らかに今までと違う。これなら―――
「……あ」
ふと、俺の心に恐怖が顔を出してきた。また失敗したらどうしよう、ただでさえ苦戦して傷ついている3人の足を更に引っ張ってしまったら?足がガタガタと震えだし、呼吸が浅くなりかけたその瞬間……脳裏に浮かんできたのは、仲間である3人の顔だった。彼方さんの凛とした眼差しが、長崎さんの無表情ながらもその心に秘めた正義の心が、そして。
『想いは絶対に自分を裏切らない、愛音ちゃんはちゃんと魔法少女として戦えるようになる』
そう言ってくれた、日向さんの明るい笑顔が―――
俺は……一人じゃない! それに言ったじゃないか!3人と肩を並べられるぐらい強くなるんだって!
「―――行きます」
俺は目を見開き、力強く地面を蹴った……精神と肉体をリンクさせた俺の身体は今までとは違い頭で思い描いた動作と実際の動きがすれ違う事なく噛み合う。そして俺はそのままハカイダーの懐へと飛び込んだ。
「なっ……!? 速い……!?」
ブレイクが驚愕の声を上げる中、俺は全身の捻りを右拳へと一点集中させた。
「はあぁぁぁぁっっ!!」
ドォォォォンッ!!!!!
真珠色の魔力を纏った一撃が、ハカイダーの巨大な腹部装甲へと炸裂した。金属が歪む音が響き渡り、3メートル超の巨体が弾丸のような勢いで吹き飛んでいく。
「くっ!?」
だが、こちらも攻撃を当てた後の勢いを押し殺す事が出来ずそのまま地面へ体を強く打ち付けてしまう。
「愛音ちゃん!?」
「浅上さんっ!」
「愛音……!」
3人が悲鳴のような声を上げて駆け寄ろうとするが、俺は大丈夫だと言わんばかりにガバッと立ち上がった。全身が痛むし膝は笑っているけれど、意識はハッキリしている。まだやれる。
「これくらい……平気ですよっ!」
俺は痛みに耐えながら、心配させまいと3人に向かって優しく微笑んでみせた。
「ああ……なんて覚悟の籠った凛々しく美しい瞳なのでしょう……♡」
……彼方さんが頬を赤らめ恍惚とした表情を浮かべているように見えるのは気のせいだとして、俺はステッキを握りしめ、体内の魔力を限界まで練り上げた。今までは上手く魔力の方もコントロールする事がままならなかったが、呼吸法を習得し……出来ないと焦り嘆くのではなく、大自然の森林の中に身を置くように冷静さを持って扱うという事が大切だと気づかされた。そして俺は高らかに。
「―――パール・グラン・シュート!!!」
ステッキを掲げながら言い放つと、巨大な真珠の形をした高密度の光弾が螺旋を描きながら一直線に打ち出された。その光弾は先の受けた攻撃から何とか起き上がろうとしていたハカイダーへと完璧に着弾し……
チュドォォォォォォォンッ!!!!
眩い光の柱が立ち昇り、ハカイダーは跡形もなく砕け散り消滅していった。
「そ、そんな、あの役立たずだったパールがまさか……きょ、今日のは所詮まぐれよ……! 調子に乗らない事ねっ!」
ブレイクは悔しそうに歯噛みをすると、捨て台詞を残して紫色の空間の歪みの中へと姿を消したのだった……ああ。
「やった……倒せた……」
戦闘が終わり、張り詰めていた緊張の糸がプツリと切れる。
「愛音ちゃん!」
「浅上さん!」
「愛音……!」
3人がこちらへ駆け寄ってくるのが見える、俺は彼女達に向けて親指を立ててグッドサインを作ってみせた。そして―――
「もう、限界ですぅ……」
俺の体力メーターは完全にゼロとなり、地面へ勢いよくぶっ倒れそのまま意識が暗闇へと遠のいていった……
「あぁっ♡ ボロボロになった愛音ちゃんの姿……儚くて、でも同時に可憐ですっごくエッチだよぉ……♡♡」
「愛音の脇が丸見え……っ♡ 感謝、神に感謝……♡」
「二人とも!仲間が倒れたというのに、何を変なこと言ってるんですか!?いい加減にしてください!!」(彼方沙織の性癖は眼球フェチ、だが今はその瞳が閉ざされている状態な為、唯一彼女の性癖スイッチだけがオフ状態である。なので正気らしいよ、こっわ)
二人から湧き出る異常な熱気と、一人突っ込みを入れる彼方沙織。そんな混沌とした光景を、空中に浮遊する妖精フェニィは死んだ魚のような目で見つめていた。
「……フェニは、この子達が本当に正義の魔法少女を名乗っていいのか分からないフェニ……」
何はともあれ……こうして、TS虚弱魔法少女こと浅上愛音は見事初勝利を果たしたのであった。
次回から各々のキャラを更に深掘りする個別編に突入します。
まずは日向葵がメインのマジカル・ルビー編となります!