What happened in the story ? 作:斬【Zan】
前回よりは、小まめに書き貯めていたので、早くに仕上げたつもりですが、それでも半月はかかっちゃいました。
やっと国連総会にまで漕ぎ着けましたが、内容無茶苦茶で絶対後で再編集すると思います。
良い加減リリースしないと前回以上に間が開きそうなので投稿しますが、半ばヤケクソです(言い訳)。
ダイジェストをチョロっと
・攻機、再び?
・ヴァルキリーズが異動した件
・国連総会、掴みはトントン?
と言うところです。
何時ものごとく、キンクリ的にご都合主義、よろ〜〜、でお願いします。
では、14話・前編です。 どぞ。
2001年11月26日 月曜日 09時09分
日本帝国 帝都(旧東京都)内 某所 ??少佐
日本帝国がその本土の全てを回復したと世界に宣言して、週が開けての月曜日。
だが、その興奮は未だに収まっていなかった。
とは言え、国民の興奮は未だ冷めないのだが、そろそろ心情的に落ち着く気配も出始めており、
少し前に漂っていた暗い雰囲気を払拭して、多少元気になった感じがしている今日この頃だ。
私とて防諜に係る人間ではあるものの、一人の日本帝国臣民としての自覚や矜持を持っているのだから、
国土復帰宣言は本当に嬉しいものであったのは間違い無かった。
だが、職務上先にこの情報を知らされていたので、次の段階に進むべく、23日の宣言直後から対策に
明け暮れていた。
・・・一般国民のごとく浮かれていては、それこそ国防に影響を及ぼす事になりかねないし、また、先の
大戦やBETA侵攻で犠牲になった国民の無念を直接感じる部署に居るため、それらの感情は職務に
影響のない様に訓練がなされている。
今の私の主任務は、あの情報がとある国連軍士官によるものであると知らされていて、それらの情報の
収集方法や、その人物の詳細情報を収集している途上なのであった。
つい先日も、この情報を得るために古巣であった501機関の大尉と名乗り、とある過激派の集会に
飛び入りで参加したばかりだった。
その目標とする国連軍士官、『エイデン・ピアース』と言う男の情報を集めに、私が所属する部隊の
人間が渡米し、先ほど無事に帰還したらしい。
「皆、揃っているわね? では、イシカワ。
長旅で疲れているだろうけれど、早速収集した情報を皆に報告して。」
ミーティングルームは使用せず、部の取りまとめである荒巻部長の机の前のソファに座っている
部隊の人間は、イシカワに視線を集中させた。
イシカワと呼ばれた髭面の隊員も両肩を少し竦ませ、私に了解の意を返してきた。
イシカワからの報告は、通り一辺倒だったピアース中佐の情報を更に奥深く探ると言う物だった。
『エイデン・ピアース』は、アイルランド系移民の第二世代であり、イリノイ州から他の州に出ることは
あまりない人生を送っていた。 幼少の頃の家庭環境はそれほど裕福な方ではなく、寧ろ父親の荒い
性格をそのまま引き継いだらしく、荒む一歩手前の生活だったらしい。
その様な環境の中で育ったためか、定職に就くことも叶わず、地元の高校を卒業して直ぐに州立軍に
就職した。 こうする事で兵役が免除される制度を利用していた。
衛士としての資質も無かったらしく、BETA戦争に駆り出されることは無かったらしい。
しかし、その様に軍隊生活を送っていたが、体力の低下を理由に10年前に依願退職をしていた。
18歳から州立軍に就職し、30歳で依願退職。 今年の誕生日を迎えると40歳と言う、立派な中年。
だが、州立軍をやめてからの職業は、シカゴでフィクサーと呼ばれるエージェント、つまり、昔の「フリー
ランス」、今の表現ではファミリーに所属していない”ピン”のヤクザ(=フィクサー)に該当していた。
「・・・軍隊上がりでフィクサーって、何だかなぁ・・・・・・。」
イシカワからの報告の腰を折るのは、”バトゥー”と呼ばれる2m近い身長の体格の良い男だった。
先の会議には、「馬頭中尉」と呼ばれていた。
「・・・旦那の言いたいことは分かるが、取り立てて優秀でもない軍人の就業率の低さは、何処の国でも
大概一緒だよ。 薬に溺れていないだけマシな方じゃないのかな?」
バトゥーの受け答えをするのは、このメンツの中では一番最近合流したトグサだった。
同じく、先の会議では「渡草警部補」として出席していた。
トグサは元は本当に警視庁捜査一課の刑事だった。階級は巡査部長ではあったが、叩き上げの優秀な
警官であることは間違い無かった。
「ほら二人共、チャチャを入れないで。
イシカワ、続きを話して頂戴。」
話の腰を折られたイシカワは、多少気疲れたかの様な表情をしたが、毎度のことなので諦めていた。
気を取り直して、私からの指示に従ってくれた。
「・・・分かった、少佐。
驚くことに、この男。『エイデン・ピアース』の顔写真は、少佐が横浜基地で収集してきたものと比べると、
若干の印象が異なるものの、ほぼ同一人物であることは間違いなかった。
シカゴ警察の警部とか町中の人間に聴きこみをした所、大体がピアースであると証言した。
だが、そんな人間だが、米国国内を旅行することはあっても、他国へ移動することは無かったと言う
証言が有り、米国では出国記録は出てこなかった。」
そのイシカワの報告にバトゥーが突っ込みを入れた。
「・・・フン、そんなもの、軍事記録上どうとでもなるだろう。」
「いいや。 この件については、ペンタゴンのネットワークへ侵入して調査したが、エイデン・ピアースが
米国の外に移動したという記録は一切出てこなかった。」
「?? じゃ、横浜基地に居るピアース中佐は別人ということなのか?」
バトゥーの質問に答えたイシカワに更にトグサが突っ込みを入れた。
疑問が生じた内容については、各自が問答を行い共有情報の選査を皆で行うことで、
シェイプアップされた情報に昇華される。 勿論参加者が皆、それに長けたエキスパートだから
できる芸当だと言えた。
トグサの疑問につて、私から補足情報があったので、それを伝えることにした。
「それについては、鎧衣課長が調査していたが、DNA鑑定の結果、同一人物のものであるとの
確認がとれた。 つまり、エイデン・ピアースは同時に2人居ると言う事になるわね。」
「ハァ?! な・何だ、そりゃ!
つまらない冗談は止せ! まるで、ドッペルゲンガーとでも言いたいのか?
何処の誰の仕業か分からんが、片方はクローン体に決まっている!」
喧嘩を卦しかけられ、途中でそれを停められたかの様な闘犬宜しく、バトゥーが吠える。
意外にバトゥーは怪談が苦手なのかも知れない。
そんなバカなことを考えていると、私の上司である荒巻部長から決定的な結論が降ってきた。
「・・・・・・誰かの関与が疑わしい、 と言う結論だ。
イシカワ、出張ご苦労。 では、この明らかに怪しい国連軍中佐について、上からの注文(オーダー)を
述べておく。 当面我々はこの件については手を出さない、と言う事だ。」
意外な荒巻部長からの指令に、納得の行かないバトゥーが騒いだ。
「ちょ、何でそうなるんです?! 正気ですか、荒巻部長?!」
「已むを得ない事情があるらしい。
ワシも内務大臣や総理から直接言われるのかと思っていたのだが、そこから更に上の方に
直訴されれば、多少の不条理であっても手を引かない訳には行かなくなった。」
皆が同時に思った疑問。 ”そこから更に上の方”と言うと、もうあの人しかいない筈。
私の代わりにトグサが声に出した。
「えっ?! 内務大臣や総理の更に上?!
ま・真逆・・・、で・殿下がですか? 部長・・・。」
「ああ。 今朝早朝に帝都城に呼び出され、総理と内務大臣とワシ。
殿下と斯衛軍の紅蓮大将、月詠大尉の立ち会いのもと、その様に決定された。」
そのあまりの内容に、私は言葉が継げないでいたが、このタヌキオヤジが黙っている方が可怪しい事に
気づいた。 すかさず私は部長に突っ込みを入れることにした。
「・・・殿下が何を考えておられるのか、私などが考える事でもないので、そこは良しとしても、タダ同然で
諦める部長じゃないのでしょう? 反対に何をもらってきたの?」
「・・・色々と反論したいところだが、あまり時間的余裕がない。
結論だけ言うと、ワシと少佐はこれから渡米の準備に入る。 その間、9課は国内不穏分子の取り
締まりの為の証拠固めを執り行っておけ。 ワシ達が帰国した時には粗方の捕物が行えるように
しておけ。」
「・・・部長と”お出かけする”のは良いけれど、旅行予定は何日くらいなの?」
「・・・殿下からのお話だと、来月初旬、12月1日にニューヨークの国連本部大会議室にて、
緊急の国連安保理主催のとある会議が執り行われるらしい。
殿下も、これにオブザーバーと言う立場で会議に参加されるとのこと。
既に現地では外務省局員と言う立場で、鎧衣課長が現地入りしているので、斯衛軍と共に制服組
要員としてワシと少佐は殿下のサポートを行う。
総会の後、レセプションなどが予定されているらしいので、都合7日〜10日程の予定だそうだ。」
「・・・当然、”単なる”護衛で終わる訳では無いのでしょう?
向こうに行って、何処を調査するの?」
「詳細は鎧衣課長と合流してからになる、と言う事しか今は分からん。
だがあの男の事、ワシ等にしかできない厄介事を指示してくるに相違ない。
少佐は、現場対応できる”スニーカー”だ。 その腕十分に役立ててもらうぞ。」
「・・・随分とこき使われそうで、行く前から嫌になるわね。
まさか、ホワイトハウスの大統領の机の引き出しを開けてこい、とか言わないでね。
いくら私でも、そのオーダーは無理だから。」
「安心しろ。 そんな事でお前を潰す気はない。
それに”大統領の机の引き出し”は無理でも、その他の金庫や機密文書を探してこい、と言う類は
覚悟しておいてもらおう。」
私は予め予防線を張っていたのだが、それは無意味に終わった。
大統領の机の引き出しも、金庫の中の機密文書もそう大して違いはないからだ。
私達の遣り取りを、さも”自分を置いてきぼりにされた”と言わんばかりに、バトゥーが絡んできた。
「・・・で、部長達が”楽しく”旅行中にお留守番の俺達は、何処から八つ当たりしても良い
適当な”木偶人形”を引っ張ってくれば良いんですか?
部長が”お出かけ中”は、俺達は遊んでいても良いんで?」
「・・・そう拗ねるな、バトゥー。
それにワシがアレコレ言わんでも、もう目星はつけているのだろう?
お前の遊び相手は、その中の”大きい方から”適当に2つ3つ選んで引っ張ってこい。
タダでさえ国内事情が危うい中で、これ以上の面倒事を画策していそうな組織は、これを期に
片端からまとめて叩き潰す良い機会だろう。 思う存分、徹底的にやれっ!!
さぁ、給料分はキッチリと働いてもらうぞっ!! さっさと仕事に掛かれっ!!」
部長のいつもの檄を聞いた私達は、それぞれに担当する仕事に取り掛かった。
私も部長と出張が決まったので、留守の間に進めておく仕事の段取りについてアレコレ準備をしておく
ことにした。 それが終わったら、旅行準備だ。 今夜は深夜まで仕事が終わりそうにない。
宮仕えの辛い所か・・・。 ヤレヤレだわ・・・。
2001年11月30日 金曜日 23時19分
国連太平洋方面第11軍 横浜基地
A−01連隊第1大隊第9中隊 伊隅ヴァルキリーズ エイデン・ピアース中佐
約2週間強ほどの短期間であったものの、何とか中隊としての最低限度の練度を持った中隊ができた。
だがそれは、「普通の」中隊であればであり、今の段階ではとても「特殊任務を担う為の中隊」とは
言いがたかった。 まぁ、2週間程度であれば、多少の不満が入っていても、それは仕方のない事と
言わざるを得なかった。
だが、207b訓練分隊の連中からすると、この2週間は想像もできない程、ハードな状態になっていた。
それは、大部屋での共同生活に拠るところのものが大きかったと思う。 今でも人間関係が改善した
とは言わないまでも、榊少尉と彩峰少尉の関係は同じ隊の中の人間として機能できていた。
また、御剣少尉や珠瀬少尉、鎧衣少尉も個人としてではなく、積極的に集団としての行動力が身に付いて
来ており、自ら自覚できるほど”群れ”ではなく”集団”という社会構成について、互いを尊重できるほどの
人間性を確保していた。
そして一番の問題児、白銀 武少尉はと言うと、驚くことに一人前の兵士としての体力向上と、部隊運営に
おける諸手続きに馴れ、更に部隊運営と同じく作戦立案や対戦闘能力の向上が見られるように成った。
後は経験を積んで、更なる精進が必要であるが、それは本人も心得ている事なのだった。
ついでに述べておくと、白銀少尉のPTSD治療の方も進んでおり、完治の見通しが立てられる様に
なってきている。 もちろん、暗示には懸らず、ほとんどが本人の気の持ちようが向上していたが、
白銀少尉自身はその事については知らされていなかった。
で、今現在、A−01として特殊任務に対応できるかの最終確認を、仮想シミュレーターにて、部隊全体で
テストを行っているのだが、しかし、如何に個々人が頑張っているのは分かっていても、それでも任務に
放り出すと恐らく・・・・・・。
「(・・・間違いなく第207訓練小隊はもちろん、それ以外にも3・4人はあの世行きだろうな・・・・。)」
シミュレーター制御室からその内容について観察を行っていた俺は、そう結論付けた。
「圧倒的に時間が足りない。」 それは比喩でも何でもなく、純然たる事実だった。
これの意味する所は12月24日の第四計画としての最後の作戦、『神々の黄昏(オペレーション・ラグナロク)』に対応できる人員が、やはり俺だけと言うことに他ならない。
つまり、この作戦の参加人数は俺一人だけ、と言う事が確定した。
御剣少尉や白銀少尉に第七世代機『御剣(type-01G7)』と第八世代機『白銀(type-01G8)』を託すには
更に時間がかる事を意味し、そこに至るまでに色々と教導を重ねないと両人が部隊を率いて展開する
と言う事は難しいと言うことだ。
何より現状では第五世代機『異端者(Ketzer(ケッツァー)・type-01G5)』がロールアウトしているものの、
俺以外の人間は誰一人として乗りこなせていない。
こうなってくると、俺がリタイヤした後に俺に変わる防人が必要となってくる。
「(・・・・・・やはり、あ号目標を沈黙させた後に、彼女を目覚めさせる用意が必要だな・・・。
だが、そう簡単に彼女の調整が行えるのだろうか?
よしんばできたとして、反抗作戦を展開した時、俺以上に戦果を上げてくれるだろうか?
そこは彼女の戦闘センスに期待するしか手がないか・・・。)」
思考の坩堝に嵌りかけていた俺を、その海から引き上げてくれたのは同室に居た涼宮中尉だった。
「・・・? 中佐? 如何なさいましたか?」
「・・・・・・! あ?! ああ、いや、何でも無い。
どうかしたのか、涼宮中尉?」
「あ、いえ。 ただ、中隊のシミュレータ試験、全て終了しました。
中佐からの指示待ちですが、如何が致しますか?」
「・・・そうか、済まなかった。 少し考え事をしていて、呆けていた様だ。
中隊はこの後、シミュレータ後のミーティングを行う。 30分以内にドレッシングを済ませ、ミーティング
ルームに集合すること。 私は一足先にミーティングルームに向かっているから、後片付け頼むぞ。」
「了解しました。 その旨を伝えます。」
それから30分後、日付も12月1日に変わっていた。
何時も使用しているミーティングルームに向かうと、既に伊隅大尉以下ヴァルキリーズの面々は集合を
終えて俺を待っていた。
俺が部屋に入ると全員が起立して敬礼してきたので、俺は答礼をしてヴァルキリーズを席に座らせた。
「では、本日のミーティングを始める。」 俺はそう宣言して、決定事項を話すことにした。
今回も手法としては”上げておいて落す”になると思いつつ、説明を始める。
まずは”上げる”方からだ。
最初に短期間にも関わらず、訓練を行い一応の形は整うことができた旨を伝え、その成果を褒めた。
すると、古株以外の面子は安堵の息を漏らした。
だが、学習したのか速瀬中尉はじめ先任少尉連中は苦い顔を残していた。
・・・おや? 一応自分を恥じるくらいの気概は、まだ残っていると見える。 及第点はあげておこう。
ではご期待に答えて、”落す”方をやろうかな。
「・・・静かにっ!! だが、ハッキリと述べなくてはいけないことも在るっ!!
それは、今のレベルで諸君らが特殊任務に出撃すると、間違いなく此処に居る半数は戦死する。
遺体が残れば良い方で、大半は間違いなくKIA 扱いと成るだろう。
この事実は特殊部隊にとっては、致命的だっ!!」
つまり、”特殊部隊”という看板は掲げていても、その任務を達成できないので、ヴァルキリーズは
開店休業状態であると宣言されたのと同じだった。
新米達はここでやっと古株連中が苦い顔をしていたその意味を理解した。
自分たちが足を引っ張っている、と言う事実を。
俺は説明を続けた。
「・・・だが、それは”特殊任務部隊”と言う事での話だ。
実力が伴っていないが、”教導”についての任務であれば、まだ対応できるかも知れない。
拠って、第9 伊隅ヴァルキリーズ中隊は、部隊全体で異動を言い渡す。」
ここまで黙って聞いていたが、とうとう伊隅大尉が異論を挟んだ。
「ちゅ・中佐っ!! そ・それは、私達はクビと言う事ですか?!」
「・・・悪い表現をするとそうなるな。」
俺から最終宣告を受けたがん患者宜しく、ガックリと頭を垂れる伊隅大尉。
まぁ、話しを途中で遮ってしまったからショックなのは分かるが、話は最後まで聞いてほしい・・・。
「だが、諸君らが特殊任務を全うできないからと言う理由での異動ではないと言う事は述べておく。
これは当初から予定されていた事だったのだ。 故に予定通りに、諸君等は部隊ごと異動となった。
単にそれだけの話だ。」
当然室内はどよめき出した。 俺はそのまま説明を加えた。
「・・・傾注せよっ!!
動揺が在るのは仕方がないとして、説明は最後まで聞くように。
それでは諸君らの異動先について、説明を始める。
現状諸君等の技術レベルは、とても特殊任務には向いていない。
それは当然で、2週間でそれらの技術的収得は不可能なことは最初から分かっていた事だからだ。
だが、教導を行うくらいはギリギリ堪えることができるレベルではあるので、その次の段階に進むべき
であると、私が判断を下した。 まぁ、本職の教導官が聞いていたら、抗議されるかもだがな・・・。
では続いて、諸君らに下される新たな任務とは、当初から予定されていた通り、新たに設計された
新世代の戦術機、それも第五世代戦術機の教導を行う為の部隊に異動が内定している。
本日は、その教導部隊の部隊長を呼んであるので、皆に紹介する。
少佐、入室し給えっ!」
ミーティングルームに入ってくるドアの一つから、その人物は堂々と入室してきた。
今や俺のもう一人の恋人であるのだが、その表情にはそう言う色恋沙汰を感じさせる色は一切入って
おらず、颯爽と、凛とした雰囲気を纏いながら、俺の横に並んだ。
そこには、ヴァルキリーズの面々は勿論、第207訓練小隊の皆にもお馴染みの軍曹が居た。
だが、襟元の階級章はいつもの軍曹のそれではなく、既に少佐の物になっていた。
「・・・では、改めて紹介しよう。
本日、2001年12月1日付けで、当横浜基地司令部付き教導部隊隊長に就任した、神宮司まりも少佐だ。
少佐には、新概念戦術機構想・第五世代戦術機教導部隊 通称:BETA駆除犬部隊(V.O.D.)を
率いてもらう。 少佐、新入り共に一言頼む。」
「ハッ!!
・・・先程のシミュレーター訓練を別の回線で視聴していたが、特殊部隊としての行動としては
最低だったと、述べておく。
これから私がお前たちの面倒を見ていくことに成るのだが、まずは基礎を徹底的に叩き込むっ!!
私が率いる部隊には”落伍者”はいない。 つまり、落伍する前に徹底的に扱くからだ。
お前たちは未だ未熟な新米兵士と何ら変わらんっ!!
古参を気取っている先任少尉や中尉にしても同様だ!! 『訳も分からん内に死んでしまう』事の
無いように鍛え直すから、覚悟しろっ!! 返事はどうしたっ!!!」
神宮司少佐の檄が飛び、ミーティングルームに居たヴァルキリーズの面々は、一斉に起立して少佐に
敬礼をし『宜しくお願いします』と答えていた。
少佐の怖さを身にしみている、大尉や中尉達は勿論、俺を除く全員が少佐の教え子だったのだから、
この女性の恐ろしさに反抗できる様なバカは居なかった。
全く、俺の時とは大違いだ。 母犬に任せていれば、子犬共はバカをやらずに済みそうだ。
早速、神宮司少佐は用意していた部隊章であるワッペンを配布した。
俺がデザインした柴犬(子犬)は少佐には受けが良く、一発採用された。
柴の子犬が誇らしげな顔をしてリボンを首に巻いている。
正面左側のリボンの端に星が付いており、部隊長である神宮司少佐の星は3つ。 続いて、星2つの
ワッペンは伊隅大尉に渡された。 そして、星1つの教導員を示すワッペンを宗像中尉、風間先任少尉に
渡された。 他の隊員は無星のリボンだった。
「えっ?! どうして、私は無星なんですか、少佐?」
同じ中尉であっても、星の在る無しは沽券に関わるのだろう。 突撃前衛長としてのプライドが許さない
のかもしれない。
「・・・そんな事も分からないのか? 速瀬中尉?
単に、戦闘力を前面に出すだけでは、教導は務まらない。 全体的な視野を持ち、部隊を指揮する
能力に長けなければ、長を名乗れる訳はない。 つまり、そう言う事だ。」
「ぐぬぬぬ・・・・・・。 はぃ、分かりました。 今後共精進し、絶対星を取ってやります。」
ワッペン内に星マークが在るものは教導員として認められていることを指しており、無星の者は、
同じ教導隊に所属しているが、教導を受けるものと言う役割が在る。
これは、新人に混じりながらどの様に教導を進めるのか、肌で感じさせ一人前に昇華させたり、
現場にて技術的なサポートを要する場合の要員だったりする。
その為、先程の速瀬中尉の返事は、内容的には残念なのだが、本人の意気込み的に言えば、
素直に反応していてくれているのが分かるので、神宮司少佐はその事については何も言わなかった。
どうやら、引き継ぎは順調に進んでいるように思える。
俺が此処に居なくても、後は神宮司少佐に任せていて良さそうだ。
そう判断した俺は、少佐に目配せして、ミーティングルームを退室することにした。
「では、これにて最終シミュレーション試験のミーティングを終える。
残りは神宮司少佐に一任するので、伊隅ヴァルキリーズ中隊の諸君は、本日12月1日付けを以って、
横浜基地司令部付き教導部隊と名乗るように。
この後、神宮司少佐から教導部隊規則の説明があるので、しっかりと任務に励む様に。
では、解散とする!」
「全員、ピアース中佐に対して、敬礼っ!!」
俺からの退出の挨拶を行ったわけだが、最後に少佐から敬礼が来た。
俺はその礼に答礼で答え、ミーティングルームを後にした。
俺も、本日の正午までに米国はニューヨーク州の国連本部にまで行かなければいけないのだ。
今から博士と打ち合わせて、準備に入らないければ間に合わない。
続いての任務に向けて、移動する俺だった。
2001年12月1日 土曜日 1時30分
国連太平洋方面第11軍 横浜基地 自室 エイデン・ピアース中佐
深夜に伊隅ヴァルキリーズ中隊を神宮司少佐のV.O.D.に引き渡し、国連総会についての打ち合わせに
望んだ俺と香月博士は、最終ミーティングの後、俺の自室で荷造りを行ってから仮眠を取った。
俺と博士が仮眠をとっていると、仕事を終えて少佐が俺達の閨にやって来て、一緒に仮眠を取った。
と言うのも今日から3日ほどは、アメリカ行きが決定していて、少佐は霞共にお留守番となるので、
俺と博士がイチャイチャしないようにお邪魔に来たらしい。
「バカね、まりも。 私がそんな事するわけないじゃない。」
「夕呼はね。 でも、旦那様の性欲が強いのは事実でしょ?!
押し倒されたら、夕呼は抵抗しないでしょ?」
「・・・まぁ、・・・それは・・・そう・・・かな?」
「だから、邪魔しに来たんじゃない。」
はい、ユーコさんダウトーー! そこは意地でも抵抗してくれなくちゃ・・・。
話を切り替えるために、俺も会話に参加することにした。
「・・・まぁーちゃんは、考え過ぎだよ。 それよりも、そっちこそ留守中に霞を取らないでくれよ?
あの娘に無視されるのは、俺くらいの年齢の”お父さん”には堪えるんだからな?」
「あらっ?! 何時から社は、アンタの”娘”になったのよ? このロリコンっ!!」
「酷い言いがかりです、旦那様っ!! 人聞きの悪い事を言って、私を貶めないでくださいっ!!」
いや、俺は純粋に霞が可愛いだけなのだが、それを愛情が逸れたと勘違いした二人の妻から抗議の
言葉が飛んできた。 俺、傷つくぞ・・・。
まぁ、その様にバカをやって5時間ほど仮眠を取った後、渡米するための支度をして、午前8時30分には
基地正面玄関前の駐車場に居た。 会議関連資料や滞在中の着替えなど、私服や制服込みだと、
トランクケースの数は結構な量になってしまった。
にも関わらず、乗って行く車はユーコさんのリクエストでランチア・ストラトスだと・・・?
しかも後年のストラダーレ量産期の過給器取り込み部が付いたターボ仕様だった。
車体全体は、赤色が強い橙色(ヴァーミリオン)。 エンジンはフェラーリ・ディーノ246GTSと言う
豪華仕様。 ・・・一体何処にこんな車保存していたんだ?
コックピットの真後ろは、直でエンジンが入っている「純粋に走り屋の為の」車だ。
一体何処に荷物を仕舞えと? ・・・・・・あっ、そうか、そう言う事か。
ったく、俺はユーコさん専用の移動用トランクじゃないんだぞっ! 俺は車に荷物を運ぶ振りをしつつ
WD的格納で、旅行用荷物を仕舞うことに専念した。
ユーコさんや霞は俺の能力を知っているので、特に何も思っていないらしいが、この基地内から
チャーター機を飛ばすと思っていた まぁーちゃん は、何処か忙しなさ気に俺を見ていた。
「あ・あの、旦那様? 米国に行くための機体なら、基地内から飛んだ方が早いし便利なんじゃ・・・?
ワザワザ民間の空港に行くのは、非効率的だと思うのですが・・・・・・?」
手荷物とか書類用ケース鞄は手元に置いていても良さそうなので残した。
粗方の荷物を格納できたので、まぁーちゃん からの質問に答えることにした。
「・・・へぁ?? 空港? 行かないよ、そんな所。
今から直で渡米して、ニューヨークに行けるから、何も心配しなくても良いんだよ?」
「・・・・・・・く・車で? ですか??」
「まりも。 今更こいつに何言ったって、無駄よ。
私も今更、『物理法則に従え』って突っ込んだところだとて、無駄って分かっているわ。
それに、この時間帯から渡米したって、とても今日の国連総会に間に合うわけ無いじゃない?
私はもう、諦めたわよ。」
ユーコさん・・・。
貴女が言わんとする内容には突っ込まない(多分俺はその通りに実行するから)けれど、
多分その言い方だと、まぁーちゃん は、誤解していると思うよ・・・。
「あ・諦めるって、何言ってんのよ、夕呼っ!!
会議っ!! 間に合うんじゃないのっ?! えっ?! ま・間に合わないの?!
た・大変じゃないっ!! 航空駆逐艦を使って衛星軌道上まで、すっ飛べば何とかなるかもっ!!
中佐っ!! 早く、発着場に向かいましょうっ!!」
あっ、やっぱり誤解した・・・。 狙ってワザとだな、ユーコさん・・・。
デビル・フェイスで笑っているよ、 この人・・・。 後でお仕置き決定っ!
「・・・まぁーちゃん、落ち着いて・・・。 ユーコさんは君をからかっているんだよ。
現状、特に何も問題は起こっていないから安心して。
さて、荷物の積み込みは終わったから、いよいよ出発するだけだ。
一応、会議後のレセプションとか在るらしいから、帰還するのは12月3日辺りになりそうだけれど、
その間、横浜基地を頼むよ、神宮司少佐。
霞、まりもママの言う事を聞いて、良い子にしているんだぞ。 お土産買ってくるからな。」
「・・・はい。 お土産は大きなうささんの縫ぐるみが良いです。
抱っこして眠りたいので・・・。」
「了解。 霞が抱っこしたいのか? それとも抱っこされたい方かな?」
そう聞くと抱っこされたいと答えられた。 そんなビックサイズのうささんの縫ぐるみって在るのかな?
どうやら、ニューヨーク中のファンシーグッズショップを虱潰しに回らなければならなくなった様だ。
俺と霞の遣り取りを傍で見ている、我が女房二人組は、ほのぼのとして見ている。
・・・と、そこへ片方の女房がもう一人に、お土産にビーフジャーキーを買ってくるとか言ってからかい
始め、それに反感を持った女房は、鞄とか装飾品の類を要望し、二人の間で小競り合いを始めた。
時間が迫っていたこともあり、二人を宥め博士を車に押し込み、俺達は出発することにした。
「・・・まぁーちゃん へのお土産は適当に見繕って買っておくよ。 じゃ、行ってくる。」
俺はランチアのアクセルを静かに踏み込んだ。
正面玄関からゲートまでは普通に進んだ。 まぁ、ラリーにも対応できる車種なので、音の方は凄く
”ウルサイ”のだった。
ゲートを潜って敷地の外に飛び出した車は、文字通りの行動をした。
それは、大人しく坂を下るのではなく、ゲートから坂の縁までの短い距離だったにも関わらず、それだけの
距離で飛び出し、車体は空中にあった。
流石ラリーにも使われる暴れ馬。 フェラーリー系エンジンは気を抜くと明後日の方向に飛んでいく
らしい。
俺は自分の能力、『何でも乗りこなす』を用いて、空中に飛び出した車体に属性を付加した。
最初に【耐光速運動】。続いて【慣性運動無効化】を付加した。 これでコイツがどれだけ暴れ馬であっても
中の人間が振り回されることはないだろう。
続いて、俺自身の認識できる最大距離の絶対的な距離感覚・100kmをフルに使っての【空間跳躍】を
追加した。つまり、100km毎に空間を移動するのだ。 その間に障害物がどれだけあろうと、ランチアが
存在できる空間(縦4m,横2m)があれば、連続で移動することができるのだ。
感覚はおまかせでも大丈夫だが、それほど時間を掛けるつもりはない。
また、一回の跳躍に掛かる時間は、精々1秒くらいだろうか?
「(・・・でも、ここからニューヨークまでって、確か1万1・2千kmくらいあるんじゃなかったっけ?)」
幾ら1秒毎に移動できても、100km単位で繰り返したとして、回数的に最大で120から130回の跳躍に
なる。全ての作業時間を1から5秒間としても、六千から六千五百秒の作業とか、俺の能力ギリギリだな。
う〜〜ん、もうちょっと、こう・・・、楽に行けないものかな?
「・・・ちょっとっ!! 何ゴチャゴチャ言ってんのよっ!!
これっ、状況的にどうにかしなさいよっ!!」
奥様そのⅠから、現状空中に飛び出している中について、クレームが来た。
確かに今のままだと事故るのは確実だから、とりあえず【空間跳躍・100km】を使って、跳躍することにした。
でも、それすると、多分海ぽちゃに成っちゃうだろうから、高度は1000mくらいにはしておいた方が良い
だろうな・・・。 俺は、【海抜:1,000m】の属性も付加してから跳躍した。
見渡す限りの大海原の上、俺とユーコさんは正面に空と海との境界線を見つめながら、一瞬固まった。
いや、正確にはユーコさんだけが、だった。 その直後、某どこかの”SKI MISSION”のノリで叫び声を
上げるユーコさん。 状況として、この車には落下傘とか洒落たものは積んでいないから、文字通り
”墜落中”というものだった。
まぁ、こうなることは予想済みだった俺は、隣の叫び声は無視し、次の跳躍先を距離感覚で探ろうと
していた。俺の限界距離数は100km。多分この距離で次を跳躍しても、この景色に変わりはない、と
思いつつ、次の跳躍先を探していると、何故か太平洋のど真ん中の筈なのに、身近に島がある感覚が
伝わってきた。
「(・・・えっ?! ・・・な・何で、こんなところに島が・・・??
いや、他にも車とか、人とか、建物とかがある?? えっ?! ここ、何処だ??)」
冷静に集中力を使って、注意深く観察してみると、道路標識に『Pearl City(パール・シティ)』とか
『Honolulu(ホノルル)』などを見て取れた。
「・・・・・・(Pearl CityとかHonoluluっつったら、オアフ島だよな?)
ってことは、これってハワイ諸島ってこと? えっ、ちょっと待って・・・。」
いや、俺の絶対的距離感覚は10の6乗だから、100kmの筈・・・??
・・・いや、待てよ・・・。 そう言えばちょっと前にレベルアップしていて、確か『絶対的シリーズ』は
最大値を3つとも揃えてレベルが16にしたっけ?? ってことは、10の16乗分だから・・・・・・、
{10、000、000、000、000、000m}ってことだから、1京m・・・? キロメートルに直すと、”0”を3つ
落とすから・・・10兆km・・・? いや、それで行くとメガキロメートルとしたら、100億Mm・・・。
ああ、もう益々訳が分からんっ!! もうとりあえず、Pearl City近くのバーキングエリアに跳躍しておいて、
ちょっと落ち着こう。
その様に決心して、おれは跳躍を開始した。
横浜から100kmの空間跳躍を行い、次の跳躍先はハワイ諸島のオワフ島に跳躍した。
横浜(ほぼ東京)とハワイとの時差は約19時間なので、横浜を出たのが約8時30分過ぎだったので、
こちらでは11月30日の昼13時30分を少々回ったあたりだった。
自分でも距離感覚のレベルアップのことを忘れていて、その距離的に10の16乗mもの距離を推し量れ
なかったので、オワフ島に寄ることは想定外だった。
現状俺達は、オワフ島・Pearl City近くの路地裏に停車していた。
同乗者であるユーコさんも、先程のフリーフォール状態から脱し、パニックも収まっている。
だが、いきなり心臓に悪い旅立ちだったので、少し休憩が必要だろう。
おれは、途中の道路標識に”Shopping Center”の文字を見つけたので、その場所に立ち寄り、
パークエリアに駐車してから、施設内のCafeで一度休憩をすることにした。
「・・・あーー、びっくりした・・・・・・。 本気で死ぬのかと思ったわ・・・・・・。」
「いや、本当に悪かった。 この前レベルアップしていた事を、自分で本気で忘れてたわ。
俺の認識している絶対距離感覚は、100kmじゃなくて、10の16乗だから、1京mくらいだったわ・・・。」
俺はそう言いつつ、カフェテリアに陣取った香月博士の前に、買ってきたホットコーヒー(ブラック)と
ドーナツの入った皿を置きながら謝罪した。 すると、ユーコさんは・・・。
「・・・? ・・・(゚Д゚)ハァ? い・今、アンタ、何つった??」
「・・・いや、本当に申し訳ない。 ずっと100kmだと思い込んでいた様だ。
まさか、万単位から3段階も単位が上回っていたなんて、思わんでしょ?
ってな訳で、どうやら俺ってば、地球を中心として月軌道までを半径として考えて、40万kmの2乗✕
約3くらいの面積4、800万平方kmの領域は軽く認識できるらしい。
まぁ、ぶっちゃけ、1光年先くらいなら大丈夫だと思う。」
つまり、地球圏でならどこにでも、瞬時に移動できると正直に述べると、ユーコさんは真っ白に成った。
「・・・もう何度となく言っているけれど、ホント勘弁してほしいわ・・・。
一体何処までチート野郎にできているのよ、アンタって人は・・・・。」
どうやらユーコさんは俺のチート能力については、最早言及するだけ無駄と悟ったようだ。
くっつく前なら、今飲んでいるコーヒーをぶっかけられて、往復ビンタのフルコースぐらいしていただろうが、
惚れた弱みか、それはしないでいてくれた。
「・・・・・・そ・そんなんじゃないわよっ! 公衆の面前とかTPOの関係よっ!!
わ・私だって、時と場所は選んでやるんだから、惚れた晴れたとか思ってんじゃないわよっ!!」
「えっ?! 今、俺声に出ていたか?」
「・・・あのね、それこそ惚れた弱みだから、旦那が何考えているかぐらい、女房ならすぐ勘付くわよ!」
と照れ怒られされてしまった。 ・・・ユーコさん、可愛いぃ。
ドーナツひとつを平らげて、コーヒーで流し込んだユーコさんは、さっさと駐車場に移動した。
俺もそれに合わせて、自分のコーヒーとドーナツを平らげ、彼女の後を追った。
オワフ島現地時間的に言うと、14時を少し回った辺りだったが、此処からニューヨークまでの時間差は、
約5時間であり、距離的に言うと9,000kmくらいだった。
今度は空中に飛び上がる必要はないので、そのまま空間跳躍で一気に9,000kmを飛び越え、
ニューヨークの適当な路地裏に移動した。
俺達は一旦此処から国連軍統括本部の在るビルまで移動することにする。
明日の総会手続きや、本日泊まる予定のホテルについて、チェックインの手続きがあるからだ。
そして、それが終わったら、煌武院殿下が手配してくださった、鎧衣課長による第五計画派が隠している
情報というものについて、在日本帝国大使館にて打ち合わせを行って、総会本番に備えるまで行う予定だ。
2001年11月30日 金曜日 22時12分
アメリカ合衆国 ニューヨーク州 ミッドタウン・イースト
ハイアット48レックス ペントハウススウィート 香月 夕呼&エイデン・ピアース
明日の会議に備えて、様々な打ち合わせを行い、早々に夕食をホテル内のレストランで済ませ、
本日の泊まる部屋に戻ってきた。 生涯この様な高級な部屋に泊まるなどと想像していなかった俺は、
何か落ち着かない。 一方、ユーコさんはと言うと、さも当然という様な態度で、夕食用に着替えたナイト
イブニングのドレスの上着代わりのファーをソファの背もたれに掛けてくつろいでいた。
「・・・まぁ、婚前旅行としてニューヨークっていうのも、良いわね。」
のっけから既に明日も仕事が在る人間の言葉とも思えないリラックスぶりだった。
「・・・おいおい(汗;)。
ここまで来たらジタバタしても仕方がないから良いんだが、反対にそう堂々とされていたら、
こちらはどう返して良いのか分からないよ。」
「あら。 安保理事務局で指定されていたような安ホテルでなんかじゃ、私はくつろげないわよ。
せめて、5つ星ホテルを指定するのは当たり前じゃないかしら。」
「・・・分かりました。 奥様の言う通りに致します。 私は何も口を挟みません。」
よろしい、との返答を戴いたので、俺はC型軍装のネクタイを緩める。
もう襲撃でも受けない限りは、俺も仕事モードはOFFだ。 俺もソファに背を預け、寛ぐことにした。
ユーコさんの言う通り、国連軍の上位組織である、国連安全保障委員会、通称安保理の事務局が
指定したホテルは、それでも3つ星のホテルだったが、今居るハイアットと比べるまでもないくらい
ハッキリと俺でも分かるくらいのグレードの違いがあった。
事務局指定を蹴っ飛ばして、ユーコさんは”基地副司令官”の肩書をフルに活用してこのホテルに
予約をねじ込み、宿泊した。 当然、必要経費以外の出費なのだが、給料を余り使わない環境だった
ので、クレジットカードはブラックで3日分前払いでチェックインした。
まぁ確かにここなら、下手な客は入ってこれないし、他国の大使や首相や大統領が遊びに来ても
対応できるだろう。 俺はそれまで脳天気に構えていたのだが、第四計画の店じまいの他に、
俺が主導で導入させた”第五世代戦術機構想”などという、『美味しそうなネタ』はその筋の人であれば
垂涎モノの格好のネタになりかねない。 そう言う意味もあり、ここにしたのだと理解した。
とは言え、”エイデン・ピアース”にとってこの合衆国は『生まれ故郷の国』なのだが、基本と成っている
俺はアメリカ人としての感覚は全く持っていない。
だから、横浜基地以外で在る為、明日以降の情勢次第では、敵地と大して変わらないと言えなくもない。
少なくとも、今の時点で盗聴とか盗撮の類がないか、ざっとで確認すると、驚くことに盗聴機が3つ程
隠れていることに気がついた。 俺は胸ポケットから小型のマイナスドライバーを取り出すと、
”聞き耳”を立てているそれらを排除することにした。
「先に、お風呂頂くけれど、良いかしら? それとも一緒に入る?」
「・・・どーして、旅先でそう言う冗談を言うかな? 俺をからかって楽しいのか?」
「うんっ! 貴方から主導権握れている内は、とっても優越感が漲っているから!」
嬉々としてそう言われてしまうと、最早何も言えねぇ・・・・・・。
「・・・じゃ、後でお邪魔するよ。 背中流すの手伝ってくれ。」
手をヒラヒラさせて了解の意を返しつつ、浴室に向かうユーコさん。
こちらも入浴準備しなくてはいけないのだが、先に盗聴器を片す必要があった。
「(・・・まぁ、コップの中に水入れて、その中に入れておけば大丈夫だろうが、
こういうのって排除した事がバレたら、他の予備とかまた配置されるのかな?)」
ちょっと気になったので、イノベーター能力を駆使して、電波の発信した元を辿ってみると、
情報を収集している人間の特定が行えた。 犯人は3つ居て、CIAとKGBと地元のマフィアだった。
? 何で地元のマフィアが、ハイアットのスウィートルームを盗聴するんだ?
ま、良っか。 お仕置きとして、凶悪なウィルス性マルウェアを盗聴元の機器を通じて、ネットワーク配線で
送りつけておこう。 マルウエアが起動したら、関連する各PCは勿論、親機・子機に至るまで、全PCネット
ワークに同一のマルウエアを送信の後、尽くバックドアを仕掛けて管理者権限を奪取し、利用者からの
操作を受け付けないようにしてやる。
時間的には・・・、そうだな、明日の昼まで猶予をやって、それ以降は一切の情報が引き出せない様に
しておいてあげましょう。 しかも対策ソフトに感づかれても、ゲリラ戦宜しく、無限コピーで居残り続け、
感染した電子機器から情報を全て盗んでやる。 フン、対応できるものならやってみろっ!!
目的とする、盗聴元にウィルス性マルウエアの送信を終えた俺は、コップに水を張って盗聴器を入れて
から、ユーコさんの待つ浴室に向かうのだった。
ゆっくり入浴した後、リラックスした感でキングサイズベッドの上でくつろぎながら、シャンパンを飲んでいた。
入浴前に俺がしていたことについて聞かれたので、先程の盗聴器の件を報告した俺は、この後はそのまま
就寝することをユーコさんに提案した。
「やぁーねぇー。 全く無粋だわ。
このクラスのグレードのホテルなら、そう言う煩わしさから開放されると思って此処にしたのに、
期待が大きかった分、残念感が半端ないわ・・・。」
「ま、そう言うなって・・・。 ああ言うのって、時や場所や人を構わず仕掛けてくるから、在る意味有名人は
仕方がないのかも知れないよ。
寧ろ、こっちがその意味で”業界人”だから、そう言う仕儀も仕方無し、ってことだろう。
だから、今日の所は大人しく就寝しよう? 横浜に帰れば、好きなだけできるんだし・・・。」
「むぅーー、まりもも居ないから、折角婚前旅行気分が味わえると思ったのにぃー・・・。」
「ユーコさん。 此処にはお仕事できているって、分かっているよね?
それに、まぁーちゃん 抜きだと、一人で俺の相手しないといけなくなるよ? 保つの? スタミナ?」
少しムクレタ風を装い、俺の腕に自分を押し付けるように甘えてくるユーコさん。
子猫とは言わず、大人な女豹が甘えてきているかのように感じつつ、飲んでいたシャンパングラスを
サイドテーブルに置きつつ、抱き合ってそのまま就寝した。
浴室でも何やかやと色々していた訳だが、浴室でひっくり返ると洒落にならなかったので、控えた。
その分今は寝台の上なので、その気があれば再開しても良いのだが、先程の盗聴の件もあり、
自制心で控えることにした。 それを分かって甘えてくるユーコさんを宥めつつ、とっとと就寝した。
2001年12月1日 土曜日 13時00分
アメリカ合衆国 ニューヨーク州 ニューヨーク市マンハッタン区 国際連合本部ビル
国際連合安全保障理事会 軍事参謀委員会 オルタネイティブ計画本部 緊急対策会議会議場
オルタネイティブ第四計画 計画主幹委員長 香月 夕呼 博士(<<<<<)
オルタネイティブ戦略実働(A−01)連隊 連隊長 エイデン・ピアース 中佐(>>>>>)
オルタネイティブ計画に関する国連の総会は、通常の安保理委員会とは異なる。
それは、オルタネイティブ計画自体が前身の「ディグニファイド12」も、正式な小委員部会ではなく、
緊急的な特殊性を持っていたから、と言う経緯を持つ。
その為、計画全体の方針や新計画立案など、オルタネイティブ計画に係る会議を開く際は、形式的に
軍事参謀委員会直下の非公式・非公開の会議として運用されている。
非公開のため、この会議に出席できる要員は物凄く限られてくる。
軍人はもとより、一部の政治家、国務(外務)省に属する役人、或いは国家元首クラスの国を代表する
政治家も、立会いの意味を込めてオブザーバーとして参加することも在る。
それら草々たる面子が集う大会議室の前方に「C」を形どったテーブルが用意されており、
その会議の主要メンバーが此処に着席していた。 座席の数は全部で12席しか用意されていない。
この中に、香月夕呼博士とエイデン・ピアースは並んで座っており、緊急対策会議が始まるのを、
じっと待っていた。
今回の対策会議を任されたのは、常任理事国であるアメリカ国防省から派遣された空軍大将である
ネーサン・トレイシィー空軍大将が着席しており、その彼から会議の開催が宣言された。
「・・・それでは、定刻となりましたので、オルタネイティブ第四計画 計画主幹委員長 香月博士から
提唱を受けた緊急の対策会議を始めます。
本会議に参加されておられる全ての主要メンバーに於かれましては、忌憚のない真摯な答弁を
望むものであります。
尚、他国への批判、中傷等のマナーに反する内容が在った場合は、速やかな訂正と謝罪を行って
ください。 本会議は国家間の諍いの場では有りません。
拠って、対立が激しくなり正常に会議が運営できないと判断した場合は、これを中断されることも
有りますので、その点は十分ご留意戴くことをお願い申し上げます。
最後に、今回は世界各国から主要な政治家・軍関係者の方々が多く参加されておられますが、
飽くまでもオブザーバーの立場であり、本会議に対しての意見・質問は控えて頂きますよう
お願い致します。
それでは発起人であります、オルタネイティブ第四計画 計画主幹委員長の香月 夕呼博士から
今回の議題の定義、概要の提示をお願いします。」
<<<<<
草々たる面子が揃っている。 その中の2つ、つまり私の味方は旦那様であるピアース中佐しかいない。
第四計画派というものが在るのなら、他の8割は議長も含め”味方ではない勢力”と言えるわね。
敢えて”敵方”と言わないのは、私達の答弁でこの状況をひっくり返せる見込みがあるから、と強がって
おきましょう。 さ、八面六臂の大活躍、とくとご覧あれ!
「・・・それでは、オルタネイティブ第四計画(以降、第四計画と呼称する。同様にオルタネイティブ各計画
を”第三計画”や”第五計画”と呼称する)の研究成果、及びその効果と対策について報告させて
頂きます。
先の第三計画が終了した後、それらの研究成果を引き継ぎ、我が第四計画が95年から始動して
現時点で五年もの歳月が過ぎようとしています。
その間、様々な犠牲を伴いつつも研究を続行しておりましたが、今年の10月初旬まではこれと言う
成果もなく停滞が続いておりました。
当初目的としておりました”手のひらサイズに乗る150億以上の電子計算機能を持つ電算機”を、
私の自論でも有ります、『因果律量子理論』を基礎とする技術を元に、超超高性能の量子電算機の
開発を行い、これを対BETAからの情報収集にあて、直接BETAの弱点となる情報を引き出す、
と言う、一聞すれば正気の沙汰を疑うような難題に挑んでおりました。
ただ、徐々に研究を進めていても、決定打となる肝心の基礎研究の発展には更なる時間がかかり、
先に述べました様に今年の10月初旬の時点では、到底間に合わないと言う局面に立たされて
おりました。」
私は一旦此処で言葉を区切った。 あー、面倒臭っ!
他の対策委員の顔も、神妙にしているけれど、その腹の中はしたり顔であざけ笑っているに違いない。
フン、今にその顔、吠え面に変えてやるっ!!
「・・・そこで、私は一旦研究の方向性を見直す作業を行い、因果律量子理論の応用技術を用いて、
超超高性能の量子電算機、私は仮称としてこの電算機を『00ユニット』と呼んでおりましたが、
00ユニットへの組込前に、その持てる機能が確立できているのを確かめる方面で、テストを行う
ことにしました。
研究内容については専門知識を必要としますので、簡単に概要をご紹介して、先に結果を述べさせて
いただきますと、実験は成功し当初予定していた能力以上の結果を確認する事が出来ました。
その具体的結果が、先月日本帝国 榊首相による、日本帝国の国土完全回復宣言につながった訳で
あります。」
「っ?! ちょ、ちょっと待ち給え、香月博士っ!! その結論に至る前に、博士がどの様な実験を行い、
予定以上の能力を確認されたと述べられたが、その内容を報告して頂けないか?!」
統一中華戦線軍から出向してきた軍事参謀の一人が、中国の主要メンバーが座っている座席の後ろの
補佐席の中から声を上げて抗議してきた。 話しの相の手ご苦労様。
「あら、これは失礼。 ・・・私とした事が、肝心の詳細を述べるのを飛ばしてしまいましたわ。
私が行った実験、それは、因果律量子理論を用いての、”最善の結果”を引くための道筋を調べ、
その結果を確かめる、と言う事ですわ。 その様に思い立ったのは、その効力が他の対象でも同様の
能力が発揮されるかを確認する為です。
そもそも「00ユニット」とは「生物根拠0 生体反応0」であるため「00ユニット」と呼称したとご理解
ください。 しかし、この00ユニットの基礎ベースは人間だったもの、つまり素体には人体を用いる
予定でありました。
その”生物”であった事実、つまり”生体反応が無い物”としての構築方法に問題が在ると思い、
実験では、この要素を外す事にしました。」
次にこの報告を聞いていた、フランスの主要メンバーである科学者から挙手が在ったので、一旦報告を
中断した。 すかさずその科学者は質問してきた。
「ドクター・香月。
先の発言、それは”生きた人間”を、つまり、直接の人体実験を行った、と解釈して良いのかね?」
「ええ、その通りです。 被験体は、私の隣に座っている、ピアース中佐です。」
この確認に、議場が騒然とした。 フン、今更人道云々言うつもりかしら、笑わせてくれる。
第三計画の成果の一つと言って良い、「ヴォールク・データ」を取るためにどれだけの人員がその犠牲に
なったと思っている? それを公認したのもこのオルタネイティブ計画本部の面々だった筈なのにね。
また、社を初めとする”ESP発現体”の開発にどれだけの新生児をその犠牲にしたのか、忘れたとでも
言うつもりかしら?
あら? 隣に座っている旦那様が文句言いたそうにしている。 何かしら?
「ゆー・・・、 香月博士。 その話は本当なのか? 私は何も聞いていないぞ?!」
「・・・あら?! 言っていなかったっけ?」
旦那様から、苦虫を潰したかの様な表情をされてしまった。
昨日の時点で、会議の進め方について二人でシナリオを考えて検討した時に言ったつもりだったけれど、
この様子じゃ私が話を盛り込み過ぎて付いて来れない、と言う事ね。 失敗失敗。
ま、後で甘えて誤魔化しておきましょう。 今は話を進めるのが先、っと。
・・・とか思っていると、議長役のトレイシィー空軍大将から旦那様に質問が飛んだ。
「・・・少々質問があるのだが、良いかな、中佐?」
「ハッ! 何なりとお尋ねください、大将閣下! サーッ!」
「うむ。 その香月博士からどの様な実験に参加させられたのかね? その時の状況を説明し給え。」
「・・・ハァ、その、何と言いますか・・・。 その時とある筋からの任務を請け負い、国連軍横浜基地に
潜入を行った私は、その次の段階に取り掛かるために、基地内のとある場所にて潜伏を行って
おりました。 丁度そこへ、何故現れたのかはよく考えなかったのですが、一見すると色仕掛けを
以って接客するホステス、後で香月博士本人だと分かるのですが、に遭遇しまして持っていた液体、
その時博士は『ヤケ酒に付き合え』と言い、私に酒の入ったコップを薦めて来まして・・・。」
「・・・? ま・まさか、その酒とやらを飲んでしまった、と?」
「は・ハァ・・・。
確かに酒のような味覚を憶えておりますが、トニック系だかウォッカ系だかのキツイ酒だった様に
思います。 それを無理やり飲まされて、十数分間意識がぶっ飛びまして、次に気がついた時、
香月博士から、『佐渡ヶ島に行って、隠密行動で情報を仕入れてきたら雇ってやる。帝国軍や一般の
気質の民間人に迷惑はかけるな。』と言われ横浜基地から追い出されました。」
「・・・で・では、貴官が気を失っている間に、香月博士は実験と称する仕込みを行い、結果を
見極める為に、その様な無茶な任務を貴官に押し付けて、今に至ると言う事で良いのかね?」
トレイシィー空軍大将は呆れ顔で私達に確認を取って来た。
私は一番の笑顔(デビル・フェイス)で、旦那様は渋々頷いて肯定を表した。
あらあら。 会議場も何か微妙な雰囲気が漂ってしまっちゃったわ。
仕切りなおして、話を先に進めましょう。
「んんっ! もとい。 続きを報告させて頂きます。
事の経緯はさておき、私がピアース中佐に投与した”薬”により、如実に成果が出てまいりました。
中佐が気を失っている際に氏名を尋問した所、最初は全然別の人名、『ジョン・ウー』と名乗って
おりました。 この人物を調査した所、横浜のマフィアの一人で”武器窃盗”の常習犯でした。
恐らく当日も横浜基地に潜り込み、窃盗行為の最中だったに違い有りません。
その者に薬を飲ませ、本人以外の因果律を取り込むことで、全く別人となるかのテストを行った所、
何度かの質問で『エイデン・ピアース』で固定となりました。
また、”薬”の投与で、特殊性の在る能力を発揮し、その効力を確認できました。
その効力とは、『イノベーター能力』つまり、脳などの思考波を電子機器などに関与させることで、
遠隔で操作することが可能となっていました。 具体的には私のコンピュータ内に在るファイルの内容
を逐一細かく朗読したり、離れている箇所の機器を操作できたりしていました。
私は中佐が”酩酊”している間に、暗示を掛けて実験について、条件を付けておきました。
恐らく単独行動中に、それらの条件を満たすように行動したはずです。
では、これらの能力がどうして発揮されたのかについて、もう少し具体的に解説しますと、
投与した”薬”の主要素として、”真反対因子”と言うものを取り入れました。
これは対象となる実験個体の因果律上での特性が、真反対の要素を持つ者を顕現させる効果が
あります。 この真反対と言う要素を”ジョン・ウー”に投与したところ、真反対の要素を持つ”エイデン・
ピアース”が顕現した、と言うことです。
この現象の確認に至ることができた成功例だと言えます。
後日、ピアース中佐に『何故横浜基地に来たのか?』を問うた所、『とある筋からの潜入ミッションを
受けた』と答えました。 これは、ピアース中佐の意識が在った世界の話しであり、今現在私達が居る
この世界での話ではないと言う隔たりがあり、且つ、能力の差はあれど、片やコソ泥、片ややり手の
エージェントが、横浜基地に”潜入していた”と言う、因果律上の一致が有り、そこから真反対の
属性、つまり、大凡起こりえないような特殊能力、便宜上”チート能力”を引きずり寄せる、と言う
大掛かりな結果となりました。
それが『イノベーター能力』であり、人知を超えた能力であると言えると思います。
これらの実験により、因果律量子理論上では起こりえる事象というものが確認できたので、
初期段階の実験としては概ね成功したと言えます。 問題はその成果と言う事で、結果的には
佐渡ヶ島ハイヴ・コアの破壊となった訳です。
此等の結果から、次は00ユニットが起動しない状況について、対処方法の対策に入りつつ有りますが、
本格稼働するには、後数年の時間が必要となり、現状00ユニット稼働の見通しは立っておりません。」
私は一旦此処で報告を区切った。 と言うのも、主要テーブルのアチコチで報告内容について相談を
始め、私の報告を聞く気がないのが分かったからだ。 ま、嘘要素120%で凝り固まっているから、
内容を容認できないのは仕方がないかもしれないが、こちらはこれで押し通すしかないから、このまま
続けましょう。
「私が行った一連の実験の概要とその成果については以上です。
そして、現状では動かない00ユニットを用いるのには時間的余裕が無いため、急遽ピアース中佐から
齎された収集情報を元にBETA情報の選査を行った所、重大な発見があり、今回皆様に招集を
お願いすることとなりました。 詳細については、ピアース中佐より発表させて頂きます。」
まぁ、ここまでは前座。
元から説明のつかないことが多いし、真実を語るわけにも行かないから、前日に打合せた時に決めた
方針で、”嘘報告120%増し(当社比)”で行くことにしたのだけれど、この後の旦那様からの報告は、
正真正銘のBETAハイヴ・コアから入手した情報だから、信憑性が高まるでしょう。
・・・あらっ?! でも、飛ばしすぎている感が否めない気がする・・・?
ま、でも良いか。 この後苦労するのは旦那様だし、目論見が在るみたいだから、何とかしてくれるでしょ。
・・・してくれるわよね? 頼りにしているんだから、期待に答えてよね?!
・・・・・・後で思いっきり甘えて誤魔化しておこう・・・。 うん、そうしましょう・・・。
to be continued・・・・・・
リザルト報告:
繰越経験値ポイント & SPポイント
経験値ポイント : 520ポイント(繰越分)
SPポイント : 2,615,350SP
経験値取得
内訳
開発中
第9世代戦術機(プロトタイプ・『撃震モドキ(仮)』→『心神(仮)』)
仮組立中 達成率50%前後
OS部分達成率20%
(アウター9開発中+空間戦闘機動用モジュール未開発)
戦術機本体部分達成率80%
(ムーバブル構造体。本体駆動部など未調整部分多数)
総合計 2,715,350SP (繰越ポイント:520追加)
初めての『to be continued・・・・・・』と言う終わり方。
後編はサクっと行ってみましょう(希望的願望)。
では、この後もお楽しみください。
(亀更新だから、1週間程、時間が必要です)