What happened in the story ?   作:斬【Zan】

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新年あけましておめっとさんです。斬【Zan】です。
昨年は色々とお世話になりました。今年度も宜しくお願いします。

年末から更新にむけて書込していましたが、クリスマスでも投稿できず、とうとう年をまたいでしまいまった。 やれやれ。

何とか予告通りに最終話に向かっている訳ですが、今話が最終話でも良いんじゃね?
的に書いていましたが、1500行超えで2つに分けることに。
うん、小話が多かったんで、最終話は次になりそうです。

相変わらず内容無茶苦茶で後で再編集となるでしょう(確定)。
今回もモチベーションは駄々下がりの上、ヤケクソ上等で投稿します(万年言い訳)。

ダイジェストをチョロっと
・まぁーちゃんにプロポーズ
・モトコお義姉さん登場&食べちゃった(お手つきの意味)
・雪風ユニットって何?
・お気にのフェースマスクはS/Fとエクシアさん

と言うところです。

何時ものごとく、キンクリ的にご都合主義、よろ〜〜、でお願いします。

では、16話・前編です。 どぞ。


Muv-Luv 編 第16話・前編

2001年12月3日 月曜日 5時34分

国連軍横浜基地 地下5階 基地司令部付き特殊教導部隊V.E.D.

神宮司少佐執務室前 エイデン・ピアース

 

 

 

 つい先程、横浜基地に戻って来れた。

 

 出て行く時もそうだったが、帰って来る時も正面ゲートを潜ってやっと戻って来れた。

全く、あのクソ爺さんは、何かと俺とユーコさんを帝都城にまで引っ張っていこうとしやがって、俺達は

アンタ等の保護者じゃないってんだ、いい加減にしろっ!!

 

 羽田国際空港に到着した後に、俺達の乗用車であるランチャ・ストラトスの積み下ろしについても、

牛歩戦術で時間を稼ごうとしやがって・・・。

 最後にゃ俺が自発的にランチャ・ストラトスをWD的に回収をして、ユーコさんの手を引っ張って

空港からエスケープしてやったぜっ!!

 

  ”護衛を付けますから・・・”とか寝ぼけたことを言っていやがったから、『結構です。直にRBTできます

から。』って言って、瞬間移動宜しく横浜基地正面ゲート100m手前ジャンプしてやった。

・・・今度から攻機へのアプローチについては、要注意だな。

 

 ま、時間的に言えば、殿下には悪いけれど俺とユーコさんの買い物が終わった時点でRTBしていたと

したら、2・3時間は早く帰ってこれたのに、全く俺達の都合も考えてくれ、と言いたかったぜ。

 

 ・・・過ぎたことをいつまでもアレコレ言っていても始まらん。

それにこの時間帯ならば、多分まぁーちゃんのことだから、V.E.D.の執務室に来ていて執務準備を

やっていることだろうから、帰還の挨拶とプロポーズをしに行こう・・・。

 

 

 トン、トン、トンと俺は執務室のドアを3回ノックして、この部屋の主に入室の許可を乞うた。

そして、5拍ほど置かずに返事があった。

 

「・・・どうぞ。」

 

 ・・・うっ。 な・何か緊張してきた。

は・吐きそう・・・。 で・出直すか? いや、ここまで来たら当たって砕けろだろ?

い・いや、砕けちゃダメなんだが・・・、ユーコさん見たく断れでもされたら、俺泣いちゃうと思うんだ・・・。

まぁーちゃんがユーコさんよりも本命に近いという事も有り・・・・・・(云々、etc・・・)

 

「どっ・うっ・ぞっ!! 先程から待っているのに、入る気が無いのっ?!

 一体誰っ?! 誰かの悪戯なのっ?!!」

 

 俺がまぁーちゃんの執務室の前で色々とモンモンとしていたら、中からまぁーちゃんが半分以上

切れかかって、”ガチャリ”と執務室の扉を開けた。

 そこには当然俺が居たわけだが、彼女は俺が此処に突っ立っているとはツユにも思わなかったらしく、

勢い良く執務室から飛び出てきて俺と鉢合わせしてしまった。

 

「きゃっ?!」「うゎっと! あ・あの、ご・御免なさい。 だ・大丈夫?!」

 

 勢いが付いていたが、何とか鉢合わせた彼女を吹き飛ばさずに抱きしめることができた俺は、

ドサクサに紛れてそのまま まぁーちゃんを抱擁した。

 体全体で彼女を感じることができた俺は、先程まで緊張していたことが嘘のように思えた。

それと同時に、どうしてあんなことで悩んでいたのか自分でもバカらしく思いつつ、もう少しこうしていたい

と思っていた。

 

 一方のまぁーちゃんは、ホンの2・3日前に俺に抱きしめられていた感覚が蘇ったのか、最初は緊張

していたみたいだが、すぐに俺だと分かると彼女の体全体から安堵の雰囲気が感じ取れるようになった。

 

 暫く俺達は抱きしめあったまま無言のままだったが、挨拶しに来たことを思い出した俺から、言葉を

掛ける事にした。

 

「・・・・・・ ただいま、まぁーちゃん。 無事に帰ってこれたよ。」

 

「・・・はい。 お帰りなさいまし、旦那様。

 ホンの2・3日前の事なのに、こうして抱きしめられると、何年振りかの様に思います。

 あ・あの、本当にお帰りなさい。」

 

 まぁーちゃんの執務室出入口の前で暫く見つめ合った後、俺達は執務室の中に入っていった。

早速俺は、まぁーちゃんにユーコさんも俺の奥さんにすると断った上で、彼女にプロポーズをした。

 

 既にユーコさんと一緒に閨(ねや・寝所のこと)を共にしていたので、それ程躊躇されるとは思って

居なかったが、やはりまぁーちゃんも一人の女性であった訳で、一人に絞り切れていなかった性か

直に”Yes”とは答えてくれなかった。

 

 ただ、俺としてもどちらか一方としか結ばれないのであれば、二人共娶るつもりはない事を説明し、

ユーコさんもまぁーちゃんも満遍なく愛する事を誓ったので、何とか”Yes”を貰う事に成功した。

 

 で、早速お土産代わりに出したアイテムは、言うに及ばずティファニーで購入したエンゲージリング

その2だった訳で、ケースから出してまぁーちゃんの左手薬指に俺が挿してあげると、彼女は感激して

嬉し泣きしてくれた。 俺は彼女をそっと優しく抱きしめて、まぁーちゃんと暫くイチャつく事にした。

 

 ・・・その1 はどうしたかって? そんなのニューヨーク本店の中でユーコさんがサッさと指に嵌めて

いたよ、自分で。 俺の出番全くなかったよっ(泣)。

 

 良いんだ。まぁーちゃんが喜んでくれたから、俺としても報われた、救われた気分だったよ。

 

 

 

 その後、暫くするとユーコさんから内線で呼び出しがあった。

内容的には、お姉さんのモトコ女史に連絡を付けたから迎えに行ってこい、との事だった。

 その間にユーコさんは軽く睡眠を取り、休憩してから作業に入るとのこと。 その間に俺の方の仕事を

進めておけ、との事だった。 俺は了解を返事して本日のスケジュールを考えた。

その為、まぁーちゃんと霞を伴って、朝食を取ることにした。 先に霞を呼びに行こう。

 

 霞の部屋に到着し、ノックして中の様子をうかがうと、霞は既に基地内勤務に就いていた。

そう言えばあの娘は普段から、白銀君を起こしに行ったりして結構朝早くからマイペースに行動を

していたっけ?

 

 そうなると、いつもの霞のパターンを考えてみると、多分ユーコさんの執務室横のシリンダー室に

いる可能性が高くなった。

 俺は予定コースを変更し、シリンダー室まで霞を迎えに行った。

どうして霞にここまで拘るのか? と言うと、早くおみやげの縫ぐるみを渡してやりたかったからだ。

あんなにも苦労してGetしたのだから、喜ぶあの娘の顔が見たいという本音が駄々漏れだった。

 

 そして、ユーコさんの執務室横まで霞の回収に成功した俺は、そのまま彼女に縫ぐるみを渡した後、

まぁーちゃんが待っているPXに行くのだった。

 因みに、ユーコさんは先ほど連絡のあった通りに、仮眠中だったので起こさなかった。

そして、お土産を渡した時の霞の顔はというと、表情少なげに「・・・ありがとうございます」との事だった。

でも、何となくだが喜んでくれている様子だったので、俺的には善しとした。

 

 ついでのついでに言うと、霞が大はしゃぎしなかった理由を聞いてみると・・・、俺の想像の斜め上の

事を思っていた事が分かった。 霞曰く、『どうやって、部屋のドアを潜らせようか・・・』との事。

つまり、彼女の個室のドアよりも、お土産の”ウサさんの縫ぐるみ”の方が大きくて、部屋の中に入れる

事に悩んでいたとの事だった。

 

 しまった・・・。 そこまで考えて買って来なかった。 結局のところ、俺のWD的運搬方法により

何とか”ウサさん”を霞の個室に押し込める(?)ことに成功はしたのだが、縫ぐるみを床に座わらせた所、

座高の高さが150cmとなってしまった。已む無くベッドの上に置いたのだが、もうこの時点で2mを超えて

しまっているので、”ウサさんの席”を別途用意する羽目に・・・。

そんなに霞の部屋は広くないのに、縫ぐるみに部屋が占拠されるというオチになってしまった・・・。

 

 何とも傍迷惑なお土産だな、おい!(汗;)

 

「ご・ゴメンな? 霞。

 まさか、こんなにサイズが大きかったとは認識していなかったから・・・。」

 

「・・・大丈夫です。 イザとなったらウサさんと一緒に寝ますから・・・。

 ウサさんの上に私が寝転べば、多分大丈夫でしょう。 ・・・寝返りを打ったら転げ落ちますが・・・。」

 

 い・イカンな・・・。 兎に角早い内に何とか手を打っておこう・・・。 この娘に嫌われたら、俺、生きて

行けんわ・・・。 霞がグレない内に手を打とう。 うん、マジで・・・。

 

 

 微妙な空気を何とか誤魔化して、俺と霞、まぁーちゃんとで朝飯を喰った。

京塚のおばちゃんに『親子連れ その二』とか言われていたけれど、華麗に(?)スルーした。

 

 食後については、それぞれの任務に着くことになった。 霞はシリンダールームへ向かい、まぁーちゃんは

足取りも軽く教練に向かった。

 

 ・・・嬉しいのは分かるけど、スキップとかしない。 周りがビックリして、俺の方がちょい恥ずかしい。

浮かれすぎだぞ、まぁーちゃん・・・。

 

 

 そんで俺の方はと言うと、ユーコさんのお姉さん”香月 素子 医師”を迎えに横浜基地に近い民間の

総合病院に向かった。

 ランチャーストラトスで迎えに行っても良いのだが、余りにも趣味丸出しなのもどうかと思うので

軍用車を避けて、基地保有のセダンを借りて、普通に向かった。

 

 いきなり瞬間移動の様にはしなかった。 距離も近いし、初対面の人間なのだから、そこは”常識”を

踏まえて考慮した。 ・・・俺が言うのも今更だが、一応・・・ね。

 

 

「・・・初めまして、香月医師(センセイ)。

 私は香月副司令直属の部下でエイデン・ピアース中佐と申します。

 本日は副司令の勅令で医師をお迎えにやってまいりました。

 

 医師に於かれましては、大変お忙しいとは存じますが、何卒当横浜基地までご足労頂きたく

 お願いします。」

 

 ・・・できるだけ穏便にしたつもりなんだけれど、変なこと言っていないよな?

なにかこの医師(センセイ)の表情が読みにくいんだよな。 タバコを加えて無表情で、所謂”ポーカー

フェイス”な為に今一自分の言葉に説得力がない様に思う・・・。

 彼女の次の行動が読めない・・・。 な・なんか苦手だな、この人・・・。

(※作者注;以降「医師」は「センセイ」と読むことにします)

 

「・・・何時も内の妹がお世話になっているようね。 あの子、ワガママで大変でしょう?

 いつか部下の人に見捨てられるんじゃないかって、姉として危惧しているんだけれど、

 そこんとこどうなの?」

 

 その彼女からのお言葉。 開口一番がいきなりこれって・・・。

 俺は少々呆気に囚われて、つい本音を出してしまった。

 

「・・・は? ああ、いえ、そうですねぇ・・・。

 まぁ、もう慣れましたし、そこを上回るほどの可愛さも見れましたので、私は見捨てたりしませんけどね。

 むしろ、ユーコさんを怒らせて、俺の方が彼女に見限られる可能性の方が遥かに高い様な・・・。

 

 ・・・あっ、いや、もとい! そ・その・・・プライベートの事は、また別の機会に話し合ってください。

 私からはこの件については、しゃしゃり出ることは控えさせて頂きます。」

 

「・・・ふーーん。 何か暫く会わない間に、面白いことに成っている様ね・・・。

 ピアース中佐・・・だったかしら? アナタ、私の義弟(みうち)になる予定なの?」

 

 何処かの誰かさんは『でびる・ふぇいす』で良く笑顔を表現するが、この女医センセイは目は笑って

いないで某チェシャ猫の様な口元で、笑顔を作っている・・・。 や、それ、ちょい怖いですって。

 

 ま、舐められたままも困るから、一発釘を差しておきますか・・・。

 

「・・・香月医師。 どうか、真面目に対応をお願いします。

 副司令からどの様な内容で招聘されたかは小官は存じ上げませんが、今現在の副司令が抱えて

 おられる問題の内容を鑑みますと、どうしても香月医師の助力が無いと解決できない事が予想されます。

 

 特に医師が携わっておられる医療技術分野については、副司令も私も門外漢であるため手が出せ

 ません。 折角甲21号ハイヴを通じてBETA技術を取得できても、それを吸収・発展できなければ、

 この情報を掴むまでに払った犠牲者達に顔向けできない事でしょう。

 

 それに、あの香月副司令が、身内とは言え他の専門家を頼ると言う事自体、異例であるのです。

 それだけ香月医師に対する期待値は大きいと言わざるを得ません。

 

 重ねてお願い致します、香月医師。 どうか私と共に、国連軍横浜基地までご足労を願います。」

 

「・・・分かりました。 末妹(あの子)の呼び出しに応じ、横浜基地に参ります。

 エスコートをお願いします、ピアース中佐。」

 

 ってな遣り取りの後、無事に香月医師を横浜基地にお連れしたんだけれど、・・・ユーコさんが起きて

来ない・・・。 いやまぁ、就寝して約2時間に達しようかって、微妙な時間だから仕方がないんだが、

身内とは言え召喚したお客様を放っぽり出したままと言うのも、エスコートした俺的には素子女医に

申し訳がないので、詳細についてもある程度情報を渡すことにした。

 

 んでもって、地下19階に急造した思考情報処理技術研究室・通称『魔女の大釜(Large Kettle of

Witch)』に連れてきた。

 

 ・・・因みに素子女医には第四計画への参加了承は取っていない。

何となくだけれど”今更・・・”とか言われそうな気がして、”事後承諾”で押し通す予定だからだ。

 

 

「・・・こちらが、先程お話した最新の研究室となる、通称”魔女の大釜”となります。

 概要はザッとお話しましたが、要は『情報を思い浮かべるだけで、情報機器と会話するかの様に処理が

 行える』と言う、夢の様なコンピュータなのです。」

 

「・・・ふーーん。 そうですか。

 私は情報処理装置の構成云々はどーでも良いんですが、末妹(あの子)の好きそうな内容ね。

 で、この”玩具(おもちゃ)”がどうしたって?」

 

「(・・・いやいやいや。 ”おもちゃ”って評価が間違っているよ! どの国もこの技術を欲しがっているって

 のに”玩具”評価って、どれだけ見下してんのっ!!)

 

 まぁ、”百聞は一見に如かず”とも申しますし、一度体験されれば私が言いたかったことも分かって

 頂けるでしょう。 今、正式にアカウントを発行しますので、医師に於かれては、こちらのカプセルに

 入って頂いて、楽にしていてください。」

 

「・・・一応聞いておくけれど、私を眠らせてイケナイ事しようってんじゃ無いわよね?」

 

「アハハ。 しませんよ、そんな事。 それにこのコンピュータは眠らなくても勝手に情報が思考波として

 入ってきますので、レム睡眠状態とか、トランス状態にならなくても大丈夫です。

 

 まぁ、連続使用時間が決まっていますので、アラームが鳴ったら強制終了モードが働くようにしましたし、

 セーフティ・ロックを変更しない限りは安全ですよ。」

 

「その言い方だと、変更することはできるんだ? ・・・でもそうね、大方末妹(あの子)が無茶な使い方でも

 したんでしょうね。 ・・・因みにそのまま放っておくと、末妹(あの子)はどうなってしまっていたのか

 聞いても良いかしら?」

 

「・・・余り言いたくはないのですが、”暴走状態の特急列車”と同じであると申し上げます。

 つまり、自律神経など意図しないでも勝手に動いている分野に故意に干渉して、自分の首を絞めかけた

 事故でした。 咄嗟の異変に気づいて事なきを得ましたが、第三者が監視するか、それ専用の制御

 機構がないと”使えない代物”と言うことです。

 

 ですので、香月医師には、その様なことが起きないように、制御を強化した状態で使用して頂きます。

 一応の機能確認を目指して頂き、本格稼働させるのは後日にお願いします。」

 

「・・・あら? 何故私がそのナンチャラ・コンピュータを、後日も操作しなくちゃいけなくなったのかしら?

 

 相談事の詳細を聞かない内に、勝手にオルタネイティブ計画に参加させないで頂戴。

 そう言う面倒事が待っているのであれば、私はこのまま帰るわ。」

 

「・・・はぁ、それは別に構いませんが、お家の方に送り届けたら、恐らく良くて日本帝国政府が、悪くすると

 アメリカ合衆国やソビエト連邦のエージェントが、もっと悪くすると問答無用で中華人民共和国辺りに

 拉致される可能性が50%以上となるでしょう。

 

 この後も私達が護衛するのであれば、それら有象無象からお守りすることは可能ですが、ご希望なさい

 ますか?」

 

「・・・遠慮しておきます。 これ以上事態の悪化は下策以外の何者でもありませんから。

 と言うよりも、日本帝国政府は兎も角、どうして諸外国のエージェントが私を誘拐しにやって来る事が

 分かるのかしら?」

 

「ハハハ。 聡明な貴女様であれば推測されておられるでしょうに、お恍けがお上手ですなぁ。

 そんなの、この基地に勤務している外国人などが、アルバイト宜しく小銭稼ぎを行う可能性が高いから

 に決まっています。

 

 まぁ、貴女様の出身国である帝国政府であれば、ある程度の事情聴取で済むかも知れませんが、CIAや

 KGB辺りの尋問は常規を逸脱していますので、玄人でも苦労させられるでしょう。

 果たして貴女様が香月副司令のお身内の方である、と言うネームバリューがどの程度通用するかは

 やってみないと解りませんしね。」

 

「・・・解ったわよ。 癪に障るけれど、そちらの思惑に乗ってあげるわよ。

 でもその代わり、私を退屈させないでね? もしつまらない内容だったら、

 今度こそ本当に帰りますからね!」

 

 なし崩し的ではあるものの、本人の了解を得た上で、香月医師に担当してもらいたい事柄を思考情報

処理を通じて連絡を行った。

 処理時間的に言えば5分も掛からない短時間だったが、俺達第四計画首脳部の行いたいことや

医療技術に関する分野の事について、一定の理解を得る事ができたので、俺は横浜ハイヴに保存されて

いた鑑嬢の”実験経過映像”を通じて、BETA技術の一部を披露した。

 

 その上で、時間的経過を短縮しつつ、部位欠損から鑑嬢の様に脳と脊髄以外の成人女性体を丸々

一人分の体をこちらで構成するための術式について検討を行ってもらうように要請を出した。

 

 当然香月医師(センセイ)にとってもそれらの補助医療については知識はあったものの、人間の、

それも成人の一人分の生成については、手がかりが無いので無理である、と言う回答が返って来た。

 

 そこで俺は、人体の生成について、体細胞の元となるES細胞の提示とヒトゲノム情報より、体組織の

組成データ一式の提出等を行った。 それらの材料を吟味して、香月医師(センセイ)は、改めて回答を

寄越した。 つまり『人体生成は可能である』と。

 

 ここまでの遣り取りを思考情報処理を通じて行っていたのだが、資料を参考にして会議で論ずるよりも

直接ダイレクトに思考情報として扱うことができるので、実時間の大幅な短縮となったのだった。

そして、丁度設定していた時間と成り、俺と香月医師は、”魔女の大釜”から出て休憩を挟む為に、

地上のPXに出かけるのだった。

 

 

「・・・? あ・あれ? 香月医師じゃないですか?

 ど・どうして、横浜基地に居らっしゃるんですか?」

 

 俺と香月医師がPXに向かっていると、その反対側から涼宮中尉が旧知に合った事で驚きながら

こちらに駆け寄って来た。 その態度から、どうやら中尉の両足切断の際の擬似生体への移植再生

手術を行ったのは、香月医師だったらしく、隣にいる彼女も心なしか涼宮中尉を懐かしむ様な表情をした。

 

「・・・いや何、少し私用でこちらにやって来たのだが、ピアース中佐に案内がてらPXでお茶をする事に

 なってね。 そちらに向かう途中なのだよ。 そうだ、良かったら涼宮さんもご一緒に如何かな?」

 

 一応勤務中ということも有り、涼宮中尉はこちらに視線を向けてきたので、俺はそのまま了承の意味で

頷きを返した。 こうして俺達三人は揃ってPXに入っていくのだった。

 

 

 お茶休憩もそろそろ終えようかとしていた時、身だしなみを整えてユーコさんがやって来た。

どうやら、ようようやっと起きて来れたらしく、朝昼兼用の食事を取りに来たようだった。

そう言えば、ニューヨークから帰って来てからは、ろくに食事も取っていなかったっけ?

 

「・・・あら? あなた達も此処に居たの?」

 

 開口一番の彼女の言葉だった。 ・・・にしても、実の姉であり来賓扱いの香月医師に対して

そんな不遜な態度は無いだろうと思っていたら、案の定素子女史より、苦言が飛んできた。

 

「・・・貴女と言う人は、どこでそんなお行儀の悪い対応を覚えたの?

 それも、実の姉に向かってその様な不遜な態度しか取れないなんて、怒りを通り越して私は情けないわ。

 

 それと、夕呼? 調度良い機会だから、此処できちんと彼を私に紹介なさいな。

 

 貴女がどの殿方と付き合っても驚きはしないけれど、良い年の大人の女性なんだから、もっと礼節を

 重んじなさい。

 もう、私にこんな小言を言わせるなんて、こんなに見っとも無い子に育てた覚えはありません。」

 

「うっ・・・。 わ・悪かったわよ。 ピアースに素子姉さんを押し付けて、私の対応に不備が有りました。

 その件については、謝罪します。 御免なさい。

 

 それと、素子姉さん。 こちらのエイデン・ピアース中佐から求婚されていまして、

 この度私はこの方に嫁ぐことにしました。 事後報告では有りますが了承をお願い致します。」

 

「・・・そう。 ようやっと、貴女にもマトモに付き合うことができる殿方ができたこと、貴女の家族として

 大変嬉しいわ。 これでやっと家長の代わりとして、お父様とお母様の墓前に報告ができそうね。

 

 改めまして、エイデン・ピアース中佐。 不束者で要領の悪い所がある子でしょうが、実の姉として

 胸を張って貴方に嫁ぎに出します。 この様な不穏な時代ではありますが、どうか末永く幸せにして

 やって下さい。 末妹を宜しくお願いします。」

 

 と、素子お義姉さんから申し入れがあったので返事をしたのだが、この時にユーコさん以外に

まぁーちゃんも一緒に娶ることを話して、二人同時で片方だけの選択は俺にはない事を説明した。

 その上で二人から了承を貰っての結婚となるので、正式な挙式は上げず籍だけ入れる旨を説明した。

ついでに、今から種付けを行うので、来年の9月か10月辺りに最低二人の子供が家族として加わると

説明した所、素子お義姉さんから了承を得ることができた。

 

「・・・まぁ、釈然としないけれど、こんな時代だし当人同士が了承しているのであれば、外野が後ろ指を

 指すなどと無粋なことはしないでいてあげる。 その代わり、きちんと家族として愛することを私に

 誓いなさい。」

 

「勿論、その件については後日改めて近親者だけ集まって貰って、そこで誓いを立てさせて頂きます。

 私の様に、最前線で何時命を落とすかもわからない立場の者ではありますが、精一杯二人同時に

 愛することをお約束します。」

 

 こうして、俺と香月家との婚姻についての遣り取りは一段落を迎えたわけだが、この場にいて蚊帳の外

にいた一人の女性下士官は、その経緯を見ていて一つの衝撃的事実に直面していた。

 

「(・・・そうか、やっと分かったわ。 孝之くんとの事を水月と取り合って競争していたけれど、もっと

 根本的に、心の奥底で感じていた事って、こう言う事だったんだ・・・。

 

 私達も最初から孝之くんに二人一緒に娶ってもらっていれば、今頃はもっと違う形に落ち着いていた

 だろうし、何よりも家族が増えていたに違い無かったわ。

 

 むしろ優柔不断な孝之くんに迫っても、あの人のことだからどちらも選べなかったに違いないし、

 仮に私が選ばれなかったとしても、本音のところでは納得行かなかったと思うから、私達はもっと別の

 形で、私達の幸せを追求していたら良かったって事じゃないのかな?

 

 今となってはすでに過去のことだろうけど、この先の未来に於いて、一つの可能性を模索することには

 なるだろうし、近日中に水月に相談してみよう・・・。)」

 

 ・・・などと考えているとは露知らず、俺は何度か独り言を言い自分の世界に嵌っている涼宮中尉に

声を掛けたのだが、無反応だった。 本来ならば、上官からの問いかけを無視する様な娘ではないのは

知っていたので、此等の態度からユーコさんに状況を聞いてみた所、何でも彼女の恋愛事情で複雑な

事情があるらしく、恐らくその事で悩んでいるのだろう、との回答だったので、そっとしておくことにした。

 

 一段落したことも有り、ユーコさんはやっと朝昼兼用の食事を取りにカウンターに向かった。

その間、俺は取り残された香月医師の相手をする為に声を掛けた。 ・・・でも、此処は公私的に言うと

”香月医師(センセイ)”が良いんだろうな? いきなり”モトコお義姉さん”は、やっぱマズイよな?

 

「・・・ところで香月医師? 本人が隣にいるのであまり詳しいことは述べれませんが、例の案件について

 その検証として涼宮中尉を対象の一人として候補に上げたいと思いますが、医師の見解をお聞き

 しても宜しいでしょうか?」

 

「・・・あら、随分と他人行儀ね。 そこは”モトコお義姉さん”と呼ぶところじゃなくて?

 例の案件の検証 と言うと、先ほどまで説明を受けていた事で良いのかしら? ・・・確かに最終的には

 中佐が示唆する目的が本懐である事は認めますが、いきなり彼女を実験台であるかの様な対応は

 医師(いし)の立場上推奨はできません。 まずは動物実験などで検証することから始めないと

 ダメじゃないかしら。」

 

「香月医師の仰る通りだと思います。 ですので、私も『彼女を候補の一人』と位置付けたわけです。

 まぁ、動物実験の辺りもノウハウの検証と言う意味では、医師の仰る通りでしょうが、取り掛かる時期や

 時間的な物差しで言うならば、”5分が10分になる程度”と言わざるを得ないと思います。

 

 小官としては、倫理部分の検証も含めるのは”時間の無駄である”と申し上げたい。」

 

「・・・そう急かされても、思惑通りに行った試しは無いのが実際の経験則なんだけれどもね。

 とり急いだ結果失敗しました、では済まされないので、やはり此処は慎重に行きましょう。」

 

 ・・・やっぱり、お医者様としては、実験には慎重になるのは仕方がないのだな。

それと、”お義姉さん”と呼べとか言っているけれど、絶対そう呼ぶと”馴れ馴れしい”とか言われていたと

俺は思うな・・・。 怖い・・・、怖い・・・。

 

 では後は、こちらの”怖いお義姉さん”の今後の協力について、お話し合いを行っておこうかね。

 

 まぁ、この”怖いお義姉さん”も、本職である医業との兼ね合いもあるだろうし、勤務している病院への

兼ね合いについて、こちらも考慮する部分があるだろうから、この点を話し合って明日から協力を取り

付けておく必要がある、と言う事だ。 俺は香月医師を伴って、俺の執務室に同伴頂くようにお願いする

と了承を得たので、ユーコさんに挨拶してからPXを後にした。

 

 で、最後の残ったのはユーコさんと涼宮中尉だったのだが、相変わらずトリップしたままの恋する中尉は

結局ユーコさんが食事を終えるまでそのままだったそうだ。

 その様な中、正気を取り戻した恋する中尉にユーコさんは意見を言ったそうだ。

 

「・・・あのね、涼宮。 今回は別に良いんだけれど、何時もこんな感じでトリップしていたら、この先アンタ

 命が幾つあっても足りないわよ? ”恋をするな”とは言わないけれど、もう少しその天然ボケを

 制御することを心がけなさいな。 今までいろんな部下を見ている中で、比較的アンタは優秀な方

 だけれども、アンタの”天然ボケ”は魅力の一つであるのだろうけど、反対に弱点でもあるのであれば、

 結局はアンタの魅力も半減しているのだからね?」

 

「・・・は、はい。 何が起こったのか、未だ理解が追いつきませんが、中佐が此処にいらっしゃらない事

 から類推すると、私が粗相をしたことは理解出来ました。 以降気を付けます。 申し訳ありません

 でした、香月副司令。」

 

 ユーコさんはこの時言わなかったけれど、ユーコさんがこの涼宮中尉の気に入っている所は、ミスを

してもすぐにそれを修正して来て、改善した対応が直にできる点だと、後から聞いた。

 ただ、これを聞いた時に俺が思ったことというと、多分そう言う対応ができる・できないと言う点において、

ピアティフ中尉>伊隅大尉>涼宮中尉 と言う様な順位付けができており、”秘書官として頼りになる”

と言う部分が条件として入るとしたら、やはりピアティフ中尉が一番使いやすいんだろうなぁ、と思った。

 

 その後二人はPXを離れ、通常業務に戻ったとのこと。

 

 俺? 俺は、あの後も香月医師をエスコートして、明日以降の協力の取り付けを行ったり、”魔女の

大釜”に戻って、第5世代戦術機以降のシリーズの詰めを設計したりして、12月3日を過ごした。

 

 

 

2001年12月4日 火曜日 8時34分

国連軍横浜基地 地下6階 第10ミーティングルーム

特殊教導部隊V.E.D. エイデン・ピアース

 

 

 

 俺は些か緊張した面持ちで、V.E.D.が普段使っているミーティングルーム前に居る。

と言うのも、前日に起こったトラブルについて、所謂フォローの為に此処に来ている。

 

 些か過保護かもと思わなくは無いのだが、原因が俺にあるので、もう一方の当事者であるまぁーちゃんの

フォローをして於かなければという、”旦那”としての面目躍如のために此処に来た。

 

 今回に限りで言うと、80〜100%俺が原因だから、”やり逃げ”と揶揄されないためにも、このフォロー

は必要だろう。 まぁ、きっかけは”まぁーちゃんアタック”にあったんだけれどもね・・・。

 

 俺は意を決して、ミーティングルームの戸を開き中に入った。

 

 

「ッ!! 起立ッ! ピアース中佐に対して、敬礼ッ!!」

 

 ミーティングルームに入って来た俺を見て、一瞬怪訝な表情をしたが、上官に対しての礼儀を行うべく

部隊副長である伊隅大尉が部隊全体に号令を掛けた。

 

 それに対して俺は黙って答礼で返し、部隊員が着席するのを待った。

 

 何時もであれば、定時きっかりにまぁーちゃんが此処に立っていて、当日の訓練目標やら伝達事項を

指示しているのだろうが、あいにく俺はその様な内容については、全く理解していない。

 

 謂わば”手ぶらで”目の前の子犬たちを躾けないといけないのだ。 家庭を顧みないで仕事ばっかり

していた父犬が、急に母犬の代わりに躾に挑むような心境に立たされた。

 その様に考えると、BETAさん達よりもコイツ等の方が数段厄介だと言える。 ヤレヤレだ。

ったく、”身から出たサビ”とはよく言ったものだ・・・。

 

 ・・・っく! 何匹かの子犬たちは怪訝そうに俺を見つめている。 仕方がない。話を始めよう・・・。

 

「・・・お早う、諸君。 急に私が此処に出向いてきて、諸君等は面食らったと思うが、此処の部隊長である

 まぁー・・・、 もとい、 神宮司少佐は、一身上の都合により本日は業務が行えない。

 

 その為に、今日は私が代わりに諸君らの面倒を見ることにした。」

 

 と、ここまで取り留めもなく述べるのがやっとだった。

途端に数匹の子犬が”キャンキャン・バウバウ・ワンワンワン”と騒ぎ出す。

 そこに少し年長の”姉貴分”の娘ワン子が新人ワン子を黙らせると、その中の数匹が俺の言った言葉に

ついて質問を寄越した。

 

「あ・あの、中佐。 質問をしても宜しいでしょうか?

 どうして、神宮司少佐は本日は業務が行えないのでしょうか?」

 

「あーー。 それはだな、宗像中尉。

 とても極めてプライベートな事に絡んでいる事情があってだな、その・・・、端的に言うと体調を崩したのだ。

 ああ、崩したと言っても、体力の低下というものであって、病気とか疾病の類ではないので、心配は

 要らない。 ・・・多分。 恐らく今日か明日中には回復できているだろうから、心配は要らないと

 思うぞ。 ・・・多分。」

 

 と、ここまで俺が述べた内容について、とても頭の早い回転を見せたのは速瀬中尉(ワン子)だった。

彼女は悪巧みをしていそうな表情で、詰問を寄越してきた。

 

「・・・ちゅーさぁー。 真逆とは思いますが、この大事な時期に少佐を使い物にならなくなるくらいに、

 『酷使』したんじゃないでしょうねぇーー?!

 

 そりゃ、昨日はあんな物を魅せつけられたんだから、”そう”なるのは極自然なことだと思いますが、

 物事には限度というものがあるのは、ちゅーさであればお解りですよねぇー?」

 

 すげー勝ち誇ったかのように、速瀬ワン子は追求の手を緩めない。

コイツ、今日俺を黙らせても明日以降、まぁーちゃんに吊るしあげられることを計算に入れているのか?

この後もこの件について追求してきたら、まぁーちゃんにチクってやるッ!!

 

「・・・まぁ、今回に限って言えば非は私にもあるので、それについてはキツく言えないが、通常そう言う事を

 上官に言うと、上官侮辱罪で営巣入りになるから気をつけるように、速瀬中尉。

 

 ・・・大体は先程中尉が述べたことが原因だ。 ただ誤解の無いように言っておくと、昨日は余りにも

 彼女がしつこく迫ってきたから已むを得ず、そう言う対応をしたのだ。

 決して故意に諸君らの訓練を妨害するためではないので、そこは誤解しないように。」

 

 と、説明してやったのだが、速瀬ワン子は周りも誘導して「ワンワン・バウバウ・キャンキャン」と抗議の

声を大にした。 俺をやり込めて悦に入っているな、コイツ・・・!

 

「・・・コラッ!! お前たち、中佐に対して無礼だろうッ!! 黙らないかッ!!」

 

 流石、伊隅大尉はこの隊の副長を務めているだけはある。

沸点の低い俺が”切れる”前に収集を図るべく伊隅大尉がV.E.D.部隊員全体に吠えた。

これには速瀬中尉以下、全部隊員が皆、その姿勢を正したのだった。

 

「・・・済まない、伊隅大尉。

 さて、気を取り直して本日の訓練なのだが、ぶっちゃけ、諸君らの練度具合は私は把握していなくてね。

 どの程度使えるのかは、管理監督している神宮司少佐に聞かないと分からないのだ。

 

 その様な状況で訓練指導しても仕方がないので、皆の方でやりたい訓練などあれば、リクエストを

 聞きたいのだが、何かあるか?」

 

 面倒を見ると宣言した手前、何も考えずにやって来たので、手の内を晒して正直に提案をしてみたら、

いつぞやの続きをやりたがっているかのように、今度も麻倉少尉(子ワン子)が挙手をして来た。

 

「ハイハイ、はいっ!!

 やりたい事を述べさせて頂いても宜しいでしょうか、中佐っ!!」

 

「ぅん?! 何か、麻倉少尉?」

 

「ハッ! ありがとうございますッ!!

 あ・あのっ、やりたい事と言うのは、中佐が以前装備されていた宇宙服を着てみたいですッ!!」

 

元気よく、麻倉子ワン子はそう申し込んできた。 続けて、高原少尉(子ワン子)もその後に発言した。

 

「・・・あの、ピアース中佐は以前、『第五世代以降の戦術機システムに使用される予定』とおっしゃって

 おられました。 と言う事は、私達特殊教導部隊も、いずれはそれらの装備を着用することとなるはず

 なので、できればその新装備を試着してみたいんですが、ダメでしょうか?」

 

「・・・・・・フム。 なるほど。 確かにそう述べたな。

 ・・・ま、良かろう。 いずれはノーマルスーツも着用する事になるんだし、今試着しても問題ないな。

 

 分かった。 他の皆もノーマルスーツの試着と言う事で良いか?」

 

 何とかその場の雰囲気を誤魔化すことに成功した俺は、白銀君達V.E.D. の連中を伴って、

ノーマルスーツの保管場所に向かった。

 

 

 で、着せてみた。 そしたら案の定、ワン子達は白銀君も含めて、はしゃぎ回ってしまった。

そんなに衛士強化装備が嫌だったのか?

 一応俺も、自分の分を着込んでいるので、皆同じ姿となっている。

 

「・・・アンダーウェアだったっけ? ノーマルスーツを着込むんなら、アンダーの方は要らないんじゃないの?」

 

 とは、速瀬中尉(ワン子)の言い分だった・・・。

 

「・・・やっぱり、髪の毛が邪魔になるな・・・。 頭部がヘルメット内で圧迫されて、窮屈に感じる。

 折角ここまで伸ばしたのに、切れとか言われそうなのは、少し憂鬱かな・・・。」

 

 とは、御剣少尉(子ワン子)の言い分だった・・・。 意外だな、この娘がこんな事を言うなんて・・・。

 

「・・・ふーーん。 体のラインについては、特に気にならなかったけれど、ノーマルスーツを着ることで、

 スタイリッシュさが出て、返って女性的な雰囲気が強調されて色っぽいような気がする・・・。

 私は好きかな、このスーツ。」

 

 とは、柏木少尉(子ワン子)の意見だった・・・。 コイツくらいだよ、気を使ってくれているのって。

良え娘やなぁ・・・。

 

 し・しかし、柏木とか少数のワン子は良いとして、その他の連中には、好き放題文句を言われた・・・。

 

「・・・じゃお前ら、衛士強化装備だけで、宇宙空間に出ろって言われても文句は無いんだな?

 身一つをあんな薄い皮膜で覆ったハイテク・スーツでも平気で活動できるんだな?」

 

 俺も一応パクった方の人間だから、言えた義理じゃないけれど、例の”99式気密装甲兜(きみつそう

こうとう)”ってね、本当にうっすいのよ。 宇宙服様の装備じゃないよ。 重金属雲とか発生している

地上に於いて、汚染された空気を吸わないための装備、ただそれだけのものだった。

 

 そして、その流れで短時間であれば宇宙空間でも作業できる、とは言うけれど、それ目的に作られて

いないから、どこまで衛士強化装備っていい加減な規格で作られているんだなと思ったんだよ。

 

 だから俺は、ノーマルスーツを作る気になったんだ。

俺は明後日の方向を向きつつ、ワン子共を放置して”ボソッ”と言ってやったら、皆黙りこんでしまった。

 

 この沈黙を以って、連中の回答を聞いたので、そこに突っ込まないで続きを披露することにした。

 

「・・・さて、一応ノーマルスーツを着てみて色々と思う所はあるとは思うが、諸君はその装備を通じて

 受講しに来た候補生を、新戦術機構想である”思考情報処理”について教導を行うことになる。

 

 だが、いきなり「思考情報処理の・・・」と問われても分からない事の方が多いだろうから、ここは一つ

 レクリエーションを通じて、徐々に実感を深めて欲しい。

 

 そーだな・・・。 ヘルメットの対閃光防御用バイザーを閉めて視界を見えない様にしてもらおうか・・・。

 つまり、視界に依る情報を阻害して、完全に”個”としての自分を確立して、そこから何を感じる事が

 できるかを試して欲しい。」

 

 ま、そこは有無を言わさずに、イノベイター能力を使って、とっととバイザーを閉めさせた。

すると、視覚情報が入らなくなったワン子達は、幾人かの動揺を誘ったが直立した姿勢を保ち、

咄嗟の事態に備えた。

 

「・・・おい白銀少尉。 誰も見ていないと思って、他の周りの女性にちょっかいを掛けるんじゃない。」

 

 と、洒落にならない事を言って、白銀少尉(子ワン子)に濡れ衣を着せてやった。

 

「ッ?! ちょ・ちょっ、それ、洒落になってないってっ、中佐ッ!!

 み・みんなっ! 言っておくけど、俺はそんな事していないからなっ!!!」

 

 白銀少尉はそう弁明したが、彼の周りにいた女性隊員達は、咄嗟に身構えて何か触られていないか

警戒するような仕草を取った。

 

「・・・と、白銀少尉は言っているのだが、御剣少尉、どう思った?」

 

「わ・私は・・・、た・武の言葉を信じます。

 た・確かにお調子者では有りますが、武は無闇に不埒な事をする様な男子では有りませんから・・・。」

 

 その様な返事が返ってくるとは思っていなかったので、思わず舌打ちしそうだったのを何とか堪えると

次の手に移る事にした。

 

「・・・ホゥ。 白銀少尉は果報者だな。

 

 だがな、御剣。 白銀本人の意図していないところで、訓練分隊時代に破廉恥な場面に遭遇する事が、

 多々あったり無かったりしていたのではないのかな?

 そう言う事に心当たりは無いか、御剣少尉・・・?」

 

「・・・そ・それは・・・。」

 

 多々心当たりが思い出された御剣少尉は言いよどんでしまった。 それに便乗した形となったが、

”そうなる事が分かっていてワザと”発言をする女性隊員、彩峰少尉(子ワン子)が発言した。

 

「・・・同じく訓練校時代の時、屋上のフェンスの上に登っていた時、下からスカートの中覗かれた・・・。」

 

 途端に、白銀の周囲に居た他の子ワン子達は、より一層警戒を強めた。

そんな空気の中、決して本人に悪意はないのだが、空気を読まないとある女性隊員も爆弾発言を投下した。

 

「・・・そ~言われれば、ボクなんか初対面の筈なのに、いきなり”男が女装するなっ”って訓練学校の制服を

 脱がされそうになったなぁ・・・。 あの時は頭に来て締め落としちゃったっけ?」

 

 最早ギルティ確実か、と言う瀬戸際で、確信をもってアチコチから悪意ある噂が飛び交った。

それは・・・

 

「へ〜〜。 男の子だからねぇ〜〜。」と柏木少尉からフォローになっていない言葉があったり・・・。

 

「うわっ、さいてーー。」と余り事情を分かっていないのに、速瀬中尉から野次が飛んできたり・・・。

 

「あらあら、まぁまぁ・・・。」と高荷先任少尉から、どーでも良い感じの相槌があったりした。

 

 すっかり”嫌われ者”と言う看板を背負った喜劇の主人公・白銀 武少尉はと言うと、数々の素行の

悪さに葛藤宜しく、Org と地面に突っ伏していた(黒笑)。

 

「・・・では、皆で『誰が悪いのか』を指さしてみようか・・・。

 勿論、第六感でだいたい犯人が何処に居るのか皆分かっているだろうから、それを外す部隊員は

 居ないと思う。 だがそれにも関わらず、コレを間違って外した人間は赤っ恥も良い所だろうがな・・・。

 

 ああ、因みに仲間を揶揄したくない心優しい部隊員は、指ささなくても良い事にする。

 そこは個々人の判断に任せる。 では、”犯人を示せ”。」

 

 と、命じてみた。

すると案の定、207b訓練分隊出身では、冥夜タンとタマちゃんと委員長は指ささなかった。

先任少尉では、風間・雪代・高荷先任少尉は行動を行わなかった。 207a訓練分隊では、涼宮・柏木・

築地少尉は行動を行わずに突っ立ったままだった。

 

 それ以外の人間は参加したのだが、方向が完全一致したのは、伊隅大尉と宗像中尉、彩峰少尉と

高原少尉だけで、他の人間は明々後日の方角を指差す結果となった。

 

 伊隅大尉、何気に凄いな、君は。 伊達に部隊を率いていなかったんだな・・・。

 

「・・・フム。 ま、良いか。 では、結果発表〜〜。」

 

 俺は遠隔操作で視界を防ぐバイザーを一斉に外し、視野から情報を読み取ることができる様にした。

視界が有効となったワン子たちは、指さしていた者達は自らが指した方角が外れている者が多かった

ことに残念がった。

 

「・・・こら、速瀬中尉っ! ズルはいかんな、ズルはっ!!」

 

 そう。 ここに来て外れていることを認識した彼女は、ゆっくりと何事も無かったかの様に、白銀君に

指先を変更した。 全くコイツは、往生際が悪いぜ・・・。

 

 ま、いつもは”上げておいて落す”のだが、ここいらでフォローしておかないと、流石に白銀君が可哀想

だと思うので、フォローしておこうか・・・。

 

「・・・さて、すっかり白銀少尉の悪行をさらけ出せて、他の者も外聞による個人の風評を固定化できたと

 思う。 だが、先ほど私が言った様に、ノーマルスーツを着た後に”ちょっかいを掛けられた”女性隊員は

 居たのだろうか? 被害に合ったと言う者が居たら、声に出して報告を上げよ。」

 

 途端に、戸惑いを見せるワン子達。 もちろん”触られた”という者が居ないのは先刻から承知して

居る事なので、そんな被害者は当然居ない。

 

 俺はここで次のステップを踏ますことにした。

 

「・・・では、各自で先ほど感じた”悪漢”である白銀少尉を感じ取って、その方向を指した筈だ。

 だが結果はご覧の通り。 アレだけ毛嫌いできた訳だから、その人物が居る方向くらい感じ取る事も

 可能だったろう筈だが、諸君らの思考波と言うモノは、まだまだ改善の余地がある、と言う結果に終わった。

 

 今後とも、此等の感覚の訓練を積み、教導官である諸君らの実力を磨いて欲しい。

 今回のレクリエーションは以上とする。」

 

 すると、そこに噛み付いたのは、速瀬中尉(ワン子)だった。

 

「そ・そんなの無理に決まっていますよ、ピアース中佐っ!!

 いきなり思っただけで方角とか分かって堪るもんですかっ!!」

 

「・・・まぁ、正解した一部の人間にとっても”マグレかも知れない”と評される事は想像できるだろう。

 だが、今回参加しなかった人間の中で、私が感じ取れた中で思考波の強かった者はいる。

 雪代先任少尉、君だ。」

 

 普段から発する言葉は少ない彼女だが、こう見えてこの女性隊員は大の”小さいモノ好き”だったりする。

つまり、子供などの面倒見が良く、それとなく珠瀬少尉を視線で追っていたりしていたのだった。

 

 この能力の証明のために、俺は再び雪代先任少尉のヘルメットのバイザーを閉じて、彼女に指令を

出すことにした。

 

「・・・では雪代先任少尉。 もう一度バイザーを閉じた状態で、珠瀬少尉の近くまで移動しろ。

 君なら、珠瀬少尉を感じ取ることができるだろう?」

 

 その様に命じた所、彼女は確りした足取りで珠瀬少尉の近くまで、予想通り目隠し状態で近づく事が

できた。 その結果に、V.E.D. の各隊員も驚きの声を上げた。

 

「・・・御覧の通りだ、速瀬中尉。

 こう言うのは個人の潜在能力の高さが発揮できたりするものだ。 雪代先任少尉以外にも、御剣少尉も

 感覚的には同じ事ができると私は予想している。

 

 御剣少尉。 確か貴官は”無限鬼道流”剣術の免許皆伝を所持していた筈だな?

 私の記憶違いでなければ、その流派の技の中に、敵の気配を訓んで(よんで)倒すと言う剣技があったと

 記憶しているのだが、そう言う技に心当たりはないか?」

 

「はい、中佐。 その技は「幽玄(ゆうげん)」と申しますが、確かに有りますし、私自身も習得しております。

 先程、たける・・・、もとい、白銀少尉への濡れ衣についても、目を塞がれていたとしても、早くからこの

 剣技の応用で先に情報を読み取れておりました。 ですので、白銀少尉についての返答が行えたの

 です。」

 

「フム、なるほどな。 それは道理だな。

 では、貴官が白銀少尉に懸想していたと私は想像していたのだが、それは全くの外れであったと?

 コレは1本取られたな。」

 

 何とかと何とかのバカし合いではないのだが、俺と御剣少尉とでこの件を完結させてしまったので、

他の皆は”蚊帳の外”状態だった。

 

「・・・俺から1本を取れた褒美として、以下の隊員には訓練生用の衛士強化装備を一般の衛士強化装備へ

 変更して良い許可を出そう。

 

 まず、一番の被疑者・・・、じゃなくて、被害者である白銀少尉。

 続いて、伊隅大尉、宗像中尉、彩峰少尉と高原少尉は犯人を特定できたので、この4人も免除としよう。

 

 それで、俺が虚偽を言ったことを見抜き、犯人探しに参加しなかった風間・雪代・高荷各先任少尉達と

 御剣・珠瀬・榊・涼宮・柏木・築地各少尉達も免除とする。

 

 他の外れた者達は、残念ながらそのままとする。 ま、機会が在れば挽回できるだろうから、その機会を

 待つように。 では、各自ノーマルスーツの手入れなどを行え。 以降この装備は各自で管理する様に。

 

 伊隅大尉。 後日神宮司少佐を通じて、ノーマルスーツの管理マニュアルを発行しておくので、コレを

 参考にするように。

 

 以降は各自で自主訓練とする。 くれぐれも怪我などしない程度に訓練に励むように。

 では、解散っ!!」

 

「ハッ!! V.E.D. 全隊員ッ ピアース中佐に対し、敬礼っ!!」

 

 俺は答礼を返して、さっさと自分の仕事に戻った。 ったく、ワン子達のお守りもラクじゃない。

まぁーちゃんはホント凄い教官だよな。 こんなに大変な連中の面倒を良く見ているとつくづく感心するよ。

 

 そう思いつつ、俺は”魔女の大釜”を目指し、この後の仕事の段取りに思いを馳せるのだった。

 

 

 

2001年12月5日 水曜日 23時54分

国連軍横浜基地 地下19階 90番倉庫 特殊開発区画

オルタネイティブ第四計画 ”魔女の大釜”  エイデン・ピアース中佐

 

 

 

 ・・・もう数分で日付が変わろうとする時間帯で、俺は一人大釜の中で溜め息をついた。

やっとここまで漕ぎ着けた。 俺の持つ”チート”を情報として残す作業を行っていたのだが、

それが一区切り着くことができた。

 

 俺が残すことができたのは、今まで基本フレームだけの状態だった第五世代戦術機の標準外装骨格、

つまり換装装備(非武装)のCAD設計図、それと跳躍ユニットに代わる新推進システム・「雪風ユニット」

の作成が完了した。

 

 この事により、一応正規の第五世代戦術機・異端者(Ketzer(ケッツァー)・type-01G5)は、地球上の

何処にでも、軍事行動が可能となるだろう。 つまり、地上移動に加え、飛行能力が加わったことで

現状の第四世代機までの戦術機と同様に、軍事行動が可能となった。

 

 だが、流石にコックピット内は通常の密閉状態であるものの、完全気密機能は持ち合わせていない為、

水中や大気圏外の軍事行動は行うことができない。

 その先の”圏内”に行くとするならば、次の第六世代以降の装備が必要となる。

つまり、第六世代戦術機・挑戦者(desafiante(デサフィアンテ)・type-01G6)は機動空間戦闘向けなので、

宇宙空間であろうが、海神(わだつみ)みたく海中であろうが対応する事ができる仕様にした。

 

 ついでに言うならば、第七世代戦術機・御剣(type-01G7)も地上向けと言う位置づけではあるものの、

この機体の使用環境を考慮すると、地上に限らず海中においてもその威力を示さなければならないため、

敢えて、地上対応機としつつも、コックピットについては完全気密機能を持たせることにした。

使われるアウターOSも第五世代と同じ要素であるものの、海中における行動プログラムが入っている分、

アウター5とアウター7とでは、その点が異なっていると言える。

 

 そう考えると、第八世代機と第九世代機のアウターの違いは何かというと、使用しているエンジン部分の

制御が異なると言える。

 ぶっちゃけ、グレイ11を扱えるのは俺だけなので、その点だけが異なっているだけなのだが、対応できる

ファクター管理がアウター8とと比べると、アウター9は桁が全然違う。

例えるならば、8ビットOSと64ビットOS位に異なっている。 片や2の3乗、もう片方は2の6乗と言う位に

違っている。乗数が2倍に成るという事は対応できるパターンが何倍にも増える事を意味し、それは両者が

全く異なる物同士である事を意味する。

 

 そこまでの取りまとめていた規格を綿密なCADベースデータに書き換えることにより、”魔女の大釜”を

ベースにした生産拠点が必須となったが、一応「なんちゃって」的な生産から、現実味のある生産が行える

ベースに作り変えることができる様になった。

 

 ぅん? いくら生産母体が”魔女の大釜”を使っていたとしても、原材料はどうしたかって?

勿論、そこにも抜かりはない。 必要に迫られてではあるが、以前から”何でも無限”を具象化できる様に

と開発した「反物質反応炉」と「物質転送システム」を何とか形にできたので、コレを発展進化できたので、

スタートレックでお馴染みの『レプリケーター』の開発にも成功したのだ。

 

 勿論『レプリケーター』を使用する前に、元と成る物質の構成情報を取り込む必要性があるので、

幾つかの情報を精製したのだが、この情報を作成するネタとして、希望する物質を一旦原子崩壊・分解を

行って、その崩壊していく情報を細分化された重量毎に分類させながら取り込んでおき、これを反転再

構築させることで、元の物質を再現する事に成功した。

コレには物質の正確な原子モデル情報が確立できるまで精査したのは言うまでもない。

 

 そして”何でも無限”宜しく、再構築される物質の再生回数を無制限にすれば、制御された”無限化”も

夢ではないはずだ。 今のこの時代に於いて、それこそ穀物の備蓄から飲料水の確保まで行える事は

可能と成り、原材料の確保以上に商品自体を無限再生できれば、難民問題の解決に大きく貢献できる

だろう事は簡単に予測が付く事だ。

 

 元ネタとして、俺の元いた世界に於いての話だが、素粒子にもそれなりの重さというものが発見された。

確か、「ニュートリノ」と呼ばれる宇宙開闢に関わる時からあるとされている素粒子で、発見した学者は

その年のノーベル物理学賞を受賞した。

 

 その為、俺にも絶対シリーズの中で、重さに関する能力があるので、それの応用で物質を原子レベルに

至るまで、構成する原子とその重さなどに細分化させ、”物質”の持っている設計図、いや、構成図と言い

直したほうが良いだろうが、それを分解の逆転で再構築させる事を思いついた。

 

 つまり、どのくらいの重さを持つ力場であれば、どの原子を存在させることができ、重くなるに連れ比例

させて構築していけば、目指すものとなるのかを、分解と同時に分類し、補正・補完し、最終的に此等の

情報を逆再生させる段階で必要となる原子や素粒子やらの構築物の補完も組み込んだ情報体を管理する

機構を作ることに成功した。

 

 つまり、これが意味する所の本当の意味は、全く何も無いところから”任意の物質”を”いきなり顕現”

させるという突飛な事を指し、実際にコレの実験を行い成功させた。

 

 でも、一般の工作機械等では精製することはできないって事は、欺瞞情報とか混ぜなくても良くないか?

そもそも”魔女の大釜”を用いなければ制作が難しいのは仕方のないだから、それを考えたら一々欺瞞

情報とか入れなくても面倒な管理をしなくても良いような気がしてきた・・・。

 

《・・・ダメよ。 駄目駄目。

 まだ他の人類に此処の存在を気取られる事はできないわ。 時間を稼ぐためにも欺瞞情報を盛り込む

 必要があるのよ。 分かっているでしょう、あなた・・・。》

 

 つい先日まぁーちゃんと一緒に俺の種付け行為に巻き込まれて、12時間ほど前に完全復帰した

”愛しの妻そのⅠ”であるユーコさんから思念波でダメ出しを貰った。

 

 今俺達は魔女の大釜の中で、それぞれの研究や仕事を行っている。

今此処にいるのは、俺とユーコさんと香月女医の三人だけだった。

 

《・・・あのね、エイデン。

 良い加減”香月女医”とか他人行儀に呼ばないでよ。 そこは”お義姉さん”って呼びなさいな。》

 

 何か先日の結婚報告をしてから、一気に家族としての距離感が縮んでしまったように思う。

俺としては公私の区別は付けておきたい所だった。 ビジネスとプライベートを一緒にしてしまうと

どうしても個人的に甘えが生じるので、それを無くしたかったからだ。

 

《・・・そうはおっしゃいますが、お、お義姉さん・・・。

 一応今も勤務中ですし、公私の区別は付けるべきだと思います。》

 

《ハイハイ。 確かに貴方の言う事にも一理あるけれど、私としては折角できた義弟から『お義姉ちゃん』

 呼ばわりされたいって言う、願いがあったのよ。

 

 うちは夕呼も入れて全員女だけだから、義弟って、新鮮味があるのよね。

 だから、わ・た・し・のささやかなお願いを聞いてくれても良いでしょう? エイデン?》

 

 そこに”愛しの妻そのⅠ”から突っ込みが入った。

 

《・・・あのね、モトコ姉さん。

 一応、この人は私の旦那なんだから、義弟として甘える云々も程々にね。》

 

 一応釘を差してくれるユーコさん。 ひょっとして焼き餅焼いてくれたのか?

 

《・・・そんなんじゃないからっ!!

 奥さんとして、トーゼンの対応ってだけだからっ!!

 

 だからこの前みたいに、まりもと一緒に子作りとかしないからねっ!!

 ったく、何であんなにアンタって獣なのよっ!! 翌日も寝床から起きれないって酷いわよっ!!

 

 私はまりもみたいに軍人じゃなくて一般人くらいの体力しか無いってのに、あんなに全力で来られたら

 壊れちゃうわよっ!! あの件については、私はまだ怒っているんだからねっ!!》

 

 とか怒られた。 ま、やる事やっちゃったから、怒られるのは仕方がないよね。

反省はしているけれど、後悔はしていない。 今度はもうちょっとセーブしながら、子作りしようっと。

 

 その様に思っていたら、使用限界時間に達したみたいで、俺達は自動的に”魔女の大釜”のカプセル

シートから排出された。 どっこかの誰かさんはコレをしないで暴走したので、危うく命の危険に片足を

突っ込んだ経験があるから、そそくさと出てきていた。

 

 カプセルの外の空気をイヤに新鮮に感じながら、俺達は今日の作業を終了させた。

前の経験上12時間以上の使用には最低でも6時間の休息を必要とし、連続使用しないようにプロテクトを

掛けている。

 

 一応本日の作業はしゅーりょーと言う事で、俺達は充てがわれている自室に向けて移動を開始した。

帰りの通路は殆ど専用の一本道なので、他の人間に聞かれることもない為に、歩きながら本日の成果

について、報告しあっていた。

 

 

「・・・にしてもアンタ達、私に見せつけるかの様に、隣でラブラブでいちゃつくのは止めて頂戴。

 それって、私に対するイヤガラセなの?」

 

 一通り報告が終わって一分ほど間が空いた時、唐突にモトコお義姉さんからその様な事を言われた。

いや、別にラブラブといちゃついていないぞ?! 単にユーコさんが俺の肘に手を回して、二人並んで

歩いているだけだぞ? 

 

 そのモトコお義姉さんは、ユーコさんの隣におり、二人の間は約1m位しか離れていなかったりした。

 

 ・・・モトコお義姉さん・・・。 それは単に言いがかりです。

ひょっとして、貴女も俺達に焼き餅ですか?

 

「・・・べぇつにぃ〜〜。 ええ、ええ。 私は仲間外れですよ〜〜。

 こうなったら、霞ちゃんを叩き起こして、二人寂しく着せ替え遊びでもしていますよ〜〜。」

 

 ・・・何でこんなに拗ねているんだろう? それにこの時間は、霞は就寝しているはずだから、無理やり

叩き起こしたりしないで欲しいのだが・・・。

 

「もうっ! モトコ姉さんっ、いい加減にしてっ!!

 報告の会話をする時に、間に人間が居たら報告しづらいだろうから、エイデンを反対側に押しやって

 いただけじゃないっ!!

 

 何がなんでも、エイデンにひっついていないと気がすまないなんて、今どき小学校の女の子でもそんな

 拗ね方しないわよっ!!」

 

「どーせ私は、”大昔の”小学生ですよぉ〜〜。

 義弟君が私から離れていて、さ・び・し・い・よぉ〜〜。 エイデン成分が足りないよぉ〜〜。」

 

 ・・・などと言い、結局俺とユーコさんの部屋にまで押しかけてきた(まぁーちゃんも同じ部屋だったりする)。

俺達の生活環境の確認をしたかったらしく、夜中に押しかけてきた。

どうしたら良いんだろう? お義姉さんが姑さん化していて困っているんだが・・・。

 

「旦那様の危機に、まりも参上っ!!」

 

 ・・・どうやら本日の業務を終えた『俺の奥さん その二』が帰って来たらしい・・・。

何かこっちもヤル気が漲っている気がして、とても疲れるのだが、どうしよう・・・。

また、”痛い目”にあいたいのかな? お義姉さんもいるし・・・、ひょっとして、よ・4P?

体力持つのか、オレ?

 

 ・・・オレの明日はどっちだ?!

 

 

 

2001年12月12日 水曜日 05時24分

国連軍横浜基地 高度3万km 大気圏外 高高度機動試験中

オルタネイティブ第四計画 A−01連隊隊長 エイデン・ピアース中佐

 

 

 

 現在、第六世代機・挑戦者(desafiante(デサフィアンテ)・type-01G6)を用いての高高度機動試験中だ。

夜明けと同時に試験を開始して、何とかアウター6用の実用データの収集を行っている最中だ。

 

 0520に横浜基地を緊急離陸し、最速で大気圏突破を行った。

特に緊急で発進する事は無かったのだが、新推進システム・「雪風ユニット」の本領を試すために、

本気モードでぶっ飛ばしてみた所、約4分程で大気圏を突破できた。

 

 性能的に見てもまずまずの成果と言える。

あっ、勿論のことだが、オレの属性付加能力は使用していないでの話だから、そこは間違えない様に。

 

 勿論通常のロケットや航空駆逐艦の大気圏離脱にはもっと時間を要しているが、単体の機動兵器が

それらと同じ速度で戦闘行動をしていたら兵器として使えないので、この点を考慮して「雪風ユニット」の

仕様は従来の跳躍ユニットと比べて「別物」であるのだ。

 

 だが「別物」と言っても、機体に乗っているのは同じ人間であるため、「慣性の法則」などの部分は

どうしているのか、と問われれば、当然「それなりに工夫はされて」いる。

では、何をどの様に工夫したのかと言うと、「雪風ユニット」にもグレイ6による機構が備わっている。

 

 「雪風ユニット」は装着された機体全体において、一種の皮膜のようなフィールドを発生させ、

機体と空間の間に一種の壁を作り出している。

 

 その壁を隔てて外界と内側世界とで、異なる環境を生成させ、とても人間では対応できないような

「慣性の法則」に対応できるようにしている、と言うのがカラクリなのだ。

 

 コレを応用すれば、一種の特殊バリアーを張ることも可能であり、近い将来においてレーザー種からの

耐レーザー照射対策に対応できればと思っている。

 だが、今の所そこまでの研究・成果は行っていない。 取り敢えず”移動手段としての機能”を満たす

事に専念させた。

 どうしてそのようにしたのかというと、『バリアーを張ったままで飛行が行えるとは思えなかったから』と

言うのがオレの正直な感想だったりする。 それこそ飛行慣性と熱光線耐性の両方を研究しないと

咄嗟に行えるシロモノでないことは容易に想像がついたからだった。

(作者注:反対に地上において対レーザー障壁として展開すれば、その様に使用はできる設定とします。)

 

 

 ちょうど一週間ほど前に、新戦術機構想のアレやコレやをCADにデータ化できたのだが、アレから

お義姉さんとの絡みがキツくなって、現状一週間程逃げている羽目に・・・。

 

 いや自業自得ではあるものの、オレが望んだ訳じゃないのに釈然としないのはどうしてだ?

・・・つまり、あの晩嫁二人とお義姉さんを相手にしちゃいました。

それからユーコさんの機嫌が悪いこと悪いこと。

 

 ま、ヤっちゃってものは仕方がない。 モトコ義姉さんも”オレのもの”扱いにしないと収集できない

だろうから、この試験が終わったらハラを括るしか無い。

その線でユーコさんとまぁーちゃんを説得しよう。

 

 俺は機動試験を行うべく通信管制を切り替えた。 つまり、この先の機動については、誰の目にも

感知されたくないので、”光速移動”しつつ試験を行うことを意味していた。

 

 試験は順調で数ページに及ぶチェックリストの束を、地球を光速で回りつつ消化し、大凡機動試験は

それから5分くらいで終了した。 俺は試験終了を宣言し、RBTについたのだった。

 

 

「中佐っ!! ちょっとお伺いしても宜しいでしょうか?」

 

 第六世代戦術機を地上の戦術機格納庫に収めて、戦術機から出てキャットウォークでヘルメットを外し

ていたら、俺の後ろから速瀬中尉以下数名が駆け寄ってきていた。 何事だろう?

 

「・・・んあ? 何だどうした、速瀬中尉?!」

 

「ハッ! 今中佐が乗っておられた機体についてなのですが、こ・コレが新型機なのでしょうか?

 それと見慣れない跳躍ユニットですね? 情報の開示をお願いしても宜しいでしょうか?」

 

「・・・あーー、 機密情報だから、ダメだ。

 それとこの格納庫は、A−01用に割り当てられていたはずだが、どうして中尉達が入ってこられたのだ?」

 

 おかしいな? 一応宇宙空間戦闘向けの機体なので、機密性の高い建屋であるし、作業要員の出入口

には、専用の認識カードでないと通れない筈なのだが・・・?

 あっ?! ひょ・ひょっとして、認識カードの情報が旧A−01への登録内容のままだったりするのか?

でなければ、この格納庫への出入り何かできないものな・・・(汗;)。

 

「えっ?! いえ、普通に入ってこられましたけれど?」

 

 やっぱり。 情報の更新がなされていないんだ。 早速、情報の更新を掛けておこう。

 

「・・・まぁ、今回は不手際が有ったから不問にするが、明日から此処は関係者以外は立入禁止区画に

 指定しておく。

 それと、この機体はまだ、実験検証中の機体だから、詳細については情報の開示は行えない。

 

 と言うわけで、全員回れ右っ! とっとと、この格納庫から出て行けっ!!」

 

「そ・そんな殺生な・・・。 先程上空から帰還されていましたが、通常の速度じゃなかったし、その辺りに

 ついて・・・。 そ・そうっ!! あの加速度に馴れるには、相当の訓練を積まなければ対応できませんっ!

 今後の訓練の励みにしたいので、訓練内容を鑑みて中佐のご意見を伺えませんかっ?!」

 

 とか、必死に食い下がってきた。

むぅーー。 確かに言っている内容には間違いはない。 いや、機密管理に関してで言えば、問題大有り

だから普通はダメだが・・・ でも、コイツの性格を考えると口からデマカセを言っている可能性が残って

いるしなぁ・・・。 ま、そこいらの事も含めて、此処に居る全員を”実験台”に処するか・・・。

 

「ふーーん? まぁ、そうまで言うのであれば、その熱心さに免じてちょっとだけ遊んでやろう。

 いや何、此処に居る全員を一度この機体で飛行訓練を受けさせてやろうじゃないか。

 

 丁度、この機体は教導に使う予定でも在って、複座に成っている。 俺が機長をヤってやるから、

 お前たちは小パイシートで新型機を味わっていろよ。」

 

 ってな訳で、速瀬中尉以下の旧突撃前衛チームと補充の白銀君等の混成チーム(速瀬、神谷、築地、

彩峰、御剣、白銀)の6名をじっけん・・・もとい、訓練を付けてやることにした。

 

 んでもって、女性陣を血祭りにあげました(黒笑)。 雪風ユニットを用いての飛行なのだが、コックピット

内の慣性制御をオフ状態にして飛行させてみました。 俺は鍛えているので、飛行速度が光速であっても

耐えれるが、それ用の訓練を積んでいない人たちは光速の2割程度の出力でもかなり堪えたみたいです。

 

 そして、主人公たる白銀君なのだが、男の子と言う事もあり、女性よりは多少は耐久力がアップしていた

らしく、ヨレヨレになりながらも意識は失わずに済んだみたい。 チッ、主人公補正ってやつか?(黒笑)

 

「・・・ホゥ? 白銀少尉、貴様はネを上げていないな? どうする? もっとお代わりしても良いんだぞ?」

 

「・・・い・いえ、中佐・・・。 こ・今回はもう、この位でカンベンしてくらさい・・・。」

 

「・・・ま、良いか。 では、今度私が気が向いたら、この中から誰か一緒にテストに連れて行ってやることに

 する。 うん、コレ決定事項!」

 

 と、俺一人で盛り上がっていた。 白銀君以下は、白目をむいて気絶していて、後日俺からの通達を

白銀君から聞いて、顔色を青くしていたと後で聞いた。 ざまぁwwww。

 ま、取り敢えず”オシオキ”完了したので、俺はユーコさんが待つ地下19階の執務室に向かうのだった。

 

 あと、補足に成るが、この事を切欠として白銀・築地の二人を重点的に成層圏外まで”散歩”に

連れて行くということを行った。 最初の内は気絶仕掛けてきたが、暇を見つけて連れ出していると、

二人共3・4回目くらいでは慣れっ子になったらしく、気絶しないで済むようになったってさ。

馴れるって大事なことだと思ったと、記しておく。

 

 

「・・・やっとのご帰還とは、良い気なものね、あなた。

 ちょっと真面目な話があるの。 あたなが降りてくるのを待っていたわよ。」

 

 俺はモトコ義姉さんの件で説得したかったので、ユーコさんの執務室まで会いに来たら、開口一番に

ユーコさんからそう言われた。 何事だろうか?

 

「いきなりどうしたんだ? 緊急のことか?」

 

「緊急というわけではないけれど、第四計画としての成果について、あなたにも立ち会って欲しいのよ。

 つまり、涼宮の手術の件よ。 明日実施することにしたわ。」

 

「・・・そうか。 とうとう実用化の目処が立ったのか。 それは、おめでとう。

 成功を祈っているよ。」

 

「ありがとう、と言いたいところだけれど、その言葉は明日にお願いするわ。

 これで本当の意味で、第四計画を完了できるわ。」

 

「・・・そうか。 じゃ、俺の方の作戦が終わったら、民間に戻る準備を始めないとな。

 グズグズしていると余計な仕事を押し付けられてしまいそうだから、脱兎の如く逃げないと、な?」

 

「ええ、そうね。

 そ・それでね、エイデン。 此処を出たら、当然新居とか考えているわよね?

 まぁ、まりもの事を考えると、横浜から離れることはできないだろうけど、この際私の実家近くにでも

 引っ越さない?」

 

「んーー? まぁ、良い物件とかあるなら、そこでも良いよ?

 住むのは、俺と君と霞とまぁーちゃんとモトコ義姉さんの5人になるだろうけど、そう考えると結構な

 大世帯だな。」

 

「・・・どうしてそこで、モトコ姉さんが出てくるのよ?

 姉さんは関係ないじゃないっ!!」

 

「・・・うん、確かにそう思うよ。

 でも、俺と関係を持っている以上、知らん振りもできないだろう?

 多分だが、君やまぁーちゃん同様、モトコ義姉さんも妊娠している可能性が高いと思う。

 俺としては、同居する家族として迎え入れたいと考えている。」

 

「節操無く、誰彼構わずに引っ付くからよっ!! 私はイヤよっ!!

 姉さんと同じ男を共有するだなんて、酷過ぎるわっ!!」

 

 確かに、ユーコさんの意見も一理あるが、当の本人が居ない状態の”欠席裁判”で物事を決めて良い

訳でもないので、この件については、改める必要がある。

 

 そう思っていたら、突然執務室の扉が開き、モトコ義姉さんが入ってきた。

 

「夕呼、安心なさい。 私はあなた達とは一緒に住まないわ。

 私が彼の子種を欲したのは、香月家としての種を残すためよ。」

 

 突然ユーコさんの執務室に入ってきて、いきなりの爆弾発言。

俺は言葉を発せられずに固まってしまった。 しかし、ユーコさんはそのまま追求を開始した。

 

「ッ?! じゃ、姉さんは最初からピアースの事好きじゃなかったの?」

 

「バカね、夕呼。 いくら私でも嫌いな男性や何とも思わない男性と引っ付く訳ないじゃない。

 

 確かにエイデンを愛してはいるけれど、それと同じくらいに香月家の存続も私にとっては重要なのよ。

 

 最初にあなたには話しておくべきだったかもしれないけれど、エイデンが私のことも同居させようと考えて

 くれているとは思っていなかったの。 だから、折を見て私から離れようと思っていたのよ。

 

 だからね、エイデン。 貴方達は気にせずに幸せな家庭を築いてね?」

 

 多分コレはモトコ義姉さんの本音だろう。 だが、俺の本音は違う所にある。

例えそれを述べることで嫌われても良い。 きっと、目の前のこの女性は俺の真意を汲み取ってくれる

だろうから。

 

「・・・ユーコさん。 俺達の新居は、モトコ義姉さんの家の近くにしよう。

 

 それと、モトコ義姉さん。 俺は前線に出て現場を指揮しなきゃいけない立場の男だ。

 その為、死と言うものに一番近いのは、俺なんだ。 勿論タダで死んでやるわけには行かないけれど、

 後方でマゴマゴしていて良い男でもない。

 

 やる事を成し遂げた後は、死を受け入れるかも知れないけれど、そこに辿り着くまでは決して死ぬつもりは

 無い。 約束できるのは、今述べた事だけだよ。

 

 突拍子もない事を言う様だけれど、俺の命は、ユーコさんやまぁーちゃん、そして、モトコ義姉さん達の

 為に使うんじゃない。 酷な事を言うだろうけど、全人類に希望を残すために使う命なんだ。

 

 一つの家庭の幸せだけじゃ足りない。 それらを取り囲む周りの人々にも希望を与えないと、先の人には

 生きる道筋ができなくなる。 俺はそういうのはイヤなんだ。 だから、俺は前線に赴く。

 俺の後ろにいる皆が笑って暮らしてくれる為に戦う。 そして周りの戦友たちのために、俺も一緒に

 命を張る。 それが防人(さきもり)って奴だから・・・。」

 

 俺の話を聞いていた香月姉妹は、黙りこんでしまった。

俺の言い分もわかるモトコ義姉さんや、横浜基地副指令の立場であるユーコさんは、俺の言う内容に

その意味を汲み取ることができたから。

 

 だが、頭で分かっていても、愛するものが戦場に立つと言う事に女の立場では喜ぶことはできない。

 

 それは古今東西、過去から未来に渡る今であっても変わらない、悲哀だということだ。

理屈で分かっていても心情では納得できないでいる二人に対して、俺はこう述べて執務室を後にした。

 

「・・・大丈夫。 絶対に戻ってくるから、そんな悲しそうにしないで。

 未来に別れが来るのは仕方がないけれど、今直ぐじゃない。 心配は掛けるけれど勝利して戻って

 くるから、信じて待っていて欲しい・・・。」

 

 

 モトコ義姉さんからの申し出について、俺の見解を述べたのだが、内容が内容だけに気まずくなって

しまった。 だが、俺もうっかりとした約束は行えない。 俺ができる範囲でしか、約束したくなかった

からだ。 その様な事を考えつつ、何気なく訓練校のグランドにやって来た俺は、走り込みを行っている

二人の少尉を見つけた。

 

「(・・・白銀君と冥夜タン・・・か。

 相変わらず二人で一緒にペアを組んでいるな。 無意識にいちゃついていると思うけど、本人には

 その意識がない分、未だくっ付いていないのか。 奥手な恋愛原子核か・・・。 いや既に感染後

 なのかな?)」

 

 何となくその様な事を思いつつ二人を眺めていたのだが、気分転換に別のことを考えることにした。

・・・そ~言えば以前に二人に聞いてみたいと思っていたことをこのタイミングで思い出したので、良い機会

だから聞いてみることにした。

 

「お〜〜い、白銀少尉ーー! 御剣少尉ーー!

 ちょっと、来てくれないかーー?!」

 

 俺の呼びかけに気付き、二人一緒にダッシュで駆けて来た両少尉は、息を整えつつ敬礼してきた。

 

「「・・・お待たせしました、中佐! 何か御用でしょうか?!」」

 

 それに対して俺は答礼を返して、呼び寄せた事について聞いてみた。

 

「「??・・・・・・はぁ? 戦術機の顔、ですか 中佐?!」」

 

「ああ、そうだ。 第五と六のフェイスマスクは直ぐに決定したのだが、そのまま第七と八も同じにするのは

 少々捻りが無さ過ぎて、俺個人として嫌なんだ。 そこにジレンマを抱えてしまってな、ヒントが欲しいのさ。

 

 で、お前たちの好みを参考にしたいと考えてな、呼び寄せたということさ。」

 

 と言う事で、偶々持っていた幾つかのブロマイドを見せて、機体の好みを聞いてみた。

勿論持っていたのはMSのカタログを加工して、トレカの様にカードに仕立てた物を見せた。

 

 最初に喰い付いたのは白銀君だった。 やはり、男の子としては、ヒーローロボット物には興味があった

らしく、ストライクフリーダムに食いついてきた。 どうしてコレを選んだかを聞いたら・・・

 

「・・・だって、スッキリとしていて男前に感じたんです。

 センサーマストにゴテゴテとした装飾もないし、でも、強い意志を感じる目つきと頭部のアンテナ・メダルに

 視線が行ったので、コイツにしました。 ダメ・・・でしょうか?」

 

 ふむ・・・、なるほど。 言われてみれば確かに・・・。

隣で聞いていた冥夜タンも、なるほどと頷いていた。

 

 その次に言葉を発したのは、その冥夜タンだった。 白銀君の意見を取り入れて、彼女が感じ入った

のは、エクシアさんだった。 理由を聞いてみると・・・

 

「・・・そうですね。 この機体は他の機体とカブトの形状が異なっていて、女性的な雰囲気がありました。

 それと、お淑やかさの中に強さを感じました。 何より芯の強さが通っているような気がして、一目で

 気に入ったので、この機体が良いと感じました。」

 

 なるほど。こちらもそれ相当の理由はあるが、個人的なフィーリングということだろうな。

よしっ! 第七と第八の形状はその方向でまとめよう。 早速外装骨格のデータを洗いなおして

新たな情報に書き換えておこう。

 

 これで、新戦術機構想の基本設計関連のデータは揃ったことに成るな。

後は、試作機を作成して、問題が無いようなら、各初号機の作製に入ろう。 近日中に完成できれば、

二人にお見合いさせて、次のステージに対応させよう・・・。

 

「・・・なるほど。参考になった。 訓練中に済まなかったな、二人共。

 早速、次の仕事に取り掛かることにする。」

 

 そう切り出して敬礼し、この場を後にする俺だった。

 

 

 

 




はい。と言う訳で16話・前編でした。 今回も文字数だけなら3万文字オーバーらしいです。

 いやー、次話(最終話)に向けて執筆中ですが、年賀状も書かずに何やってんだか。
2週間ほど掛かると思うのですが、今年の冬休みは短いので、例によって1ヶ月超えるかもしれません。 亀更新で申し訳有りません。 もう少しだけお付き合いして下さい。

次回予告としては、メインが『ラグナロク』です。 で、そのままエピローグに入る予定です。

 やっぱし、バッドエンド的なハッピーにしたい願望があるので、しっくり行かない終わり方になる可能性が高いです。 何時も終わり方と言うか締め部分が未定であるため、此処の調整は悩みますね。 ま、何とかしますが・・・。

 上の方でもちょい書きましたが、正月を楽しんだりしますので、時間がかかります。
御免なさい。

 それでは、皆様も風邪など引かないように、元気にお過ごしください。
では、また。
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