What happened in the story ?   作:斬【Zan】

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 はい、皆さんおはこんばんにちは〜。斬【Zan】です。

 やっと最終話に漕ぎ着けることができました。大変お待たせして申し訳有りませんでした。
 前回のあとがきに有りましたように、ハッピーエンドに向けてのプロットの修正が大変でした。 本当にエタりそうでした。 で、ハッピーとなったかは見てもらって判断して下さい。 斬としては、一番無難に終わった方だと思いますが、誰にとってのハッピーだったかは斬でも解りません。 御免なさい。

 アレからお正月休みを満喫…していたのですが、いきなり急ぎの仕事が入ってしまい、更新スケジュールが大幅に狂う狂う。 お陰で3ヶ月も間が空いてしまいました。
やっと、仕事の方が一段落して通常運転できましたので、この間に温めていたプロットを立ち上げなおして、最終話をアップできました。

 相変わらず内容無茶苦茶で後で再編集すると思いますが、締め括りのお話と成ったでしょうか?

 今回もモチベーションは駄々下がりの上、ヤケクソ上等で投稿します(万年言い訳)。


 では、最後と成りますが何時ものごとく、キンクリ的にご都合主義、よろ〜〜、でお願いします。

 では、最終話・16話・後編です。 どぞ。



Muv-Luv 編 第16話・後編【完】

 

2001年12月13日 木曜日 09時22分

国連軍横浜基地 地下22階 90番倉庫 特殊開発区画

オルタネイティブ第四計画 ”魔女の大釜”  エイデン・ピアース中佐

 

 

 

 昨日にユーコさんから述べられた、部位欠損患者に対する再生手術の立会に、俺はやって来ている。

つまるところ、涼宮中尉の両足の再生手術の立会い、と言う事だ。

 

 9時丁度に手術は開始されたが、20分を経過する時間で、接合は終わり術式は完了した。

問題と成る部分は、昨日までに入念に繰り返したシミュレーションによってクリアーにされ、切断されていた

両足断面の細胞を活性化させ、クローニング技術を応用・発展させた新技法を用いて、新たに生成された

両足が”生える”形となった。

 

 時間して20分と言う時間は、文字通り”数十分で片が付いた”と言える。 いや、その様な”形”にした

と表現するほうが正しいだろう。

 事前にシミュレートした再生促進部分を術式空間に展開させたグレイ6とは別に、新たに生成される

領域にもグレイ6を用いた。 その中でクローニングされた細胞は拒絶反応を起こすこともないが、

ただ赤ん坊から生成されたかのような瑞々しい”生き返った細胞”は予定通りに予定の場所に収まる感じで

成長を止め、あたかも最初からそこにあったかのように生きたままの”元通りの”両足として、再生を終えた。

 

 再生具合については”完璧”であろうと予想していたが、これほど想定通りだと返って怖いくらいだった。

とは言うものの、後は術後の経過を見る必要があり、しかし、それについてもグレイ6を用いて、この後

精査し異常がなければ、完全に終了と成る。

 

「・・・各部拒絶反応を示す兆候なし。

 このまま後168時間分の経過予測情報を検討し、依然拒絶反応が皆無であれば、施術完了とする。」

 

 施術に関しての主治医はモトコ義姉さんが行っており、ユーコさんはその補佐として、”魔女の大釜”の

真下の作業場、今は手術室で作業を行っている。

 勿論グレイ6を使っての本当に168時間も経過を待つ必要はなく、涼宮中尉の両足の組織にのみ

特殊な力場を張り巡らして、検査時間分の予測映像をビデオテープの早送り宜しく観察し、その経過を

見ているに過ぎない。

 

 ともあれ、拒絶反応が皆無であれば、この施術は成功と言って良い。

此等の技術を普及させることができれば、第四計画は本当に成功裏に終わることができるのだ。

 

 

 それから約30分が経過した。 当初の予定通りに事は進み、無事に涼宮中尉の施術は終了した。

勿論本人の疲労もそれほどなく、数十分の歩行訓練を行った後、普通に歩いたりできるまで回復した。

リハビリに掛かった時間も含め、総合計時間は一時間半くらいで終了となった。

 

 だが、一応念の為、向こう一週間は様子見となるらしく、激しい運動は控えるように言い渡され、

通常業務には戻っても良いことになった。

 

 

「改めて、おめでとう、ユーコさん。

 これで、オルタネイティブ第四計画は、成功した形で終了したね。」

 

「・・・ありがとう、あなた。

 でも、私個人としては画竜点睛を欠く終わり方だと思っているわ。

 私の研究はまだまだ続けなければいけないから、その意味では終わりじゃ無いわ。」

 

「・・・そうだとしても、そこへ繋がる時間は稼げたと思うよ。

 第四計画の中での帰結じゃなくても、いつかユーコさんなら辿り着けると、俺は信じている。

 

 さて、と。 じゃ、後は俺の仕事だけだね。 ちゃっちゃとやって片付けてくる事にするよ。」

 

「ええ。 頑張ってね、あなた。 終わったら、お祝いをしましょう。 何かリクエストはある?」

 

「うーーん、そーだなぁ・・・。

 家族皆で水入らずで、温泉にでも行きたいなぁ。 年越しは、そこの温泉で過ごして、暫くゆっくり

 したいかも。

 ま、当てにはしていないさ。 単に希望を言ってみただけだから。」

 

「・・・そ? でも、一応検討しておくわね。」

 

 その様な会話のあと、ユーコさんは第四計画としての取りまとめ報告の作成に入った。

それから程なくして、国連本部に報告書を提出し、第四計画としての残りの仕事は、「作戦名:神々の黄昏」

のみとなった。 実に作戦開始一週間前と言うスケジュールだった。

 

 

 

Side Other : 白銀 武少尉

 

 

2001年12月14日 金曜日 11時10分

国連軍横浜基地 地下5階 基地司令部付き特殊教導部隊V.O.D.

神宮司少佐執務室 白銀 武

 

 

 

 突然神宮司少佐からの呼び出しにより、俺は今少佐の執務室に出頭している。

特にここ最近、勤務などにペナルティーとなる事はしていないつもりだが、何か在ったのだろうか?

緊張しつつ俺はドアを3回ノックして、入室の許可を乞うた後、執務室に入室した。

 

「白銀少尉、出頭しました。

 あの、神宮司少佐、何か御用でしょうか?」

 

 部屋に入ると正面奥に執務机があり、”まりもちゃん”は座ってこちらに視線を投げかけてきた。

どうやら、書類仕事が一段落した所でおじゃましたらしい。 ・・・そこには凛とした雰囲気があったのだが、

俺は前の世界で職員室に呼び出しを喰らったことを思い出していた。

 

 目の前に居る直の上司と言う現実と、俺の中の懐かしい担任教師と言う思い出のギャップに

少々気後れのような感想を思い浮かべたのだが、しかし、一士官としてはその感想に流されてはいけない

為に気を引き締めてしまっていた。

 

「・・・? 何をその様に緊張しているのだ?

 まぁよい。 本日特殊任務に出て不在の涼宮中尉の代わりに、部隊運用に必要な書類を作成して

 提出させるために呼んだのだ。

 

 少尉は、中尉からの薫陶宜しく、今現在は書類作成はできると聞いているのだが、問題無いか?」

 

 前の世界宜しく、何故か『怒られる』事に慣れていた性で、ここでもその様な癖が出てしまっていた。

俺は少佐からのその一言に、安堵の息を漏らしつつ返事をした。

 

「ハッ、何でも仰って下さい。 涼宮中尉から手ほどきを受けて、一通りの必要書類の清書は行えます。」

 

「宜しい。 では、早速用意し提出する書類について説明する。

 我が部隊から要員の異動に関する書類を作成してもらう。 送り先は基地司令部宛てと成る。

 

 ああ、それと言うまでもない事だが、人事に関する情報というものには守秘義務がついて回る。

 副長の伊隅大尉には私から通達するが、その他の中尉連中から聞かれてもうっかり返答して、

 情報を漏らす事は無いように注意を払いなさい。 できるな、白銀少尉?」

 

 言い方は微妙に優しいのは、”初めてのお仕事”としてのまりもちゃんの配慮なのかも知れない。

だが、その言葉の節々には、威厳がこもったアクセントがあった。 ・・・だが俺は、それにも掛からわず、

無意識に何処かで気の緩みを生じさせていた。

 

「ハッ。 お任せ下さい。

 それで、異動と成る人間とはどなたでしょうか? ま・まさか、自分でありますか?」

 

 その様に軽々と”気の利かない下手なジョーク”で返事を返した。

しかし、その返答が余りにも予想外だったらしく、困り顔でまりもちゃんは対応してくれた。

 

「・・・フッ、それは自意識過剰というものだろう。 心配しなくても少尉以外の人間が異動してくる。

 ここまで言えば、誰のことか分かるだろう?」

 

「えっ?! 部隊からの異動申請の書類を司令部宛で出すのですよね?

 でも、その人物は我が部隊に”異動して来る”と言う事は、現部隊の中での異動と言う事でしょうか?

 

 しかし、それに該当する人間なんて居たでしょうか?」

 

 えっ? 本当にまりもちゃんの言っていることが良く分からない・・・。

異動する人として来る人が同じ?? そんな人間ウチに居たっけ??

 

「・・・少尉。 その様な回答を本気で言っているのか?

 だとしたら、お前はまだまだ精進しなくては世間一般、特に会社組織の中でもやっていけないだろうな。

 ホラ、一人居るだろう? 部隊に所属していながら、”実働部隊に居ない”人間が。」

 

「・・・? 一人の人間で、ですか?

 うーーん・・・。 ・・・あっ、ま・まさか、ウチの”部隊の良心”と位置づけられている・・・」

 

「・・・フッ、やっと正解したか? 遅すぎるぞ、白銀少尉。

 本日特殊任務に出ている、と先ほど言ったが、実はあまり激しい運動が行えない状況にあるのだ。

 貴様のことだから、”何がどうして”と言う情報が無いと納得しないだろうから、先に述べておく。

 だから、絶対誰にも言うんじゃないぞ? 分かったな、白銀少尉。」

 

 さすが、まりもちゃん。 俺の性格を熟知していらっしゃる。

 

 だが半分脅される形だったが、涼宮中尉に起こった状況を教えてもらった。

だってそれは、内容を聞いた時に俺は化かされているって思ったんだ。

 しかし、その内容的に中尉の於かれている状況を把握し、近日中に中尉が現役復帰できるとのことを

聞き、疑問に思う以上に俺の感情が嬉しさの方に大きく振られてしまった。

 

 この事は、一刻も早く妹である涼宮少尉に知らせてやりたいと思った。

・・・多分この時の俺の顔は、誰が見ても分かるほどの表情をしていたんだろうな。

 

 すると目の前の上官は、その表情を厳しくしてこう言った。

 

「・・・白銀少尉っ、先に言ったことをちゃんと憶えているだろうなっ?!

 決して、誰にも、話すことを、禁じる! そう命じたことを忘れるなっ!!」

 

 うわっ! 急に怒声を浴びたっ!! あー、吃驚した。

 

 だけれども、そうだった。 異動に関する情報には守秘義務が生じているんだった。

でも、身内である涼宮(妹)の事を思えば、苦楽を共にした仲間に内緒にするなんて辛いと感じた。

 

「・・・ったく、お前と言うヤツは・・・。 そんなに感情を表情に出すな。

 まるで近所のおこちゃまを相手にしているお姉さんの気分だ。

 

 確かに、お前が喜ぶ気持ちは十分に理解できる。 私も手塩にかけて育てた娘の様な涼宮中尉が

 元通り元気に戻ってくる事は大変嬉しい。

 

 だが、今回の人事異動については、単に”人事の守秘義務”が生じているだけではないのだ。」

 

 と、一旦此処で言葉を区切られた。 一体何だ? 人事に関する以外の秘密って?

多分俺は、その時思った事をそのまま顔に出していたのだろう。 目の前の上官は、多少表情を引き

締め、俺に言い聞かせるかのように説明をしてくれた。

 

「良いか? 大凡今では今大戦の性で、属に言う”疑似生体移植による再生手術”と言うモノは一般化

 されている。 昨日までの涼宮中尉も例に漏れず、その再生手術によって、日常生活程度であれば、

 普通に生活できていたのだ。

 

 だが、そこへ今回導入された再生手術を行うことで、通常では不可能と言わしめていた衛士適正に

 言及できるまでの完全な復活が行える技術が導入されている。

 

 では、その技術と言うものは一体どういうものなのか? と疑問が湧くのが普通だろう。

 その疑問の解とは、とある機密情報を転用する事で可能となる。

 だが、その機密情報については、そうそう簡単に教えるわけには行かない。 理由は分かるな?」

 

 ・・・正直肩透かしを喰らったかのようにも感じたが、リアクションなどは一切行わずに、俺は冷静に

前にまりもちゃんから教わっていた「Need to Know」の原則について答えると、まりもちゃんは

少し頷く程度に頭を動かした。 続けて少佐は言葉を紡いだ。

 

「・・・今後共、部隊運用などの書類を用意する役目を担当するのなら、少尉はこれら機密情報の取り扱いに

 ついて、今以上に配慮を行わなければ、とても部隊運用は纏めきれない。

 貴様も実務経験を積む事ができる訳だから、そう言う配慮について私の親心を察してくれ。」

 

 その様に言われると、俺としても多少は落ちつくことができた。

 ・・・俺ってやつは、まだまだ成っちゃいない餓鬼と一緒か・・・。 情けないな・・・。

 

「良いか、白銀少尉? 何故に涼宮中尉の両足が復元する必要が在ったのかを考えてみろ。

 一士官の両足を再生させる手術とは、その背景に何があるのかを考えれば、それを知りたがる有象無象

 の輩が少尉にアプローチしてこないとも限らない。

 

 その時少尉は、今のように何も考えずに対応してしまったら、ひょっとしたら重要な機密情報も漏れて

 しまわないとも限らないのだ。」

 

 ここまで懇切丁寧に解説を受ければ、嫌でも今回の機密情報がどれだけの重要な事柄なのか分かる。

そして俺は、ここまでの事情について、俺の知り得ている情報から関連しているだろう、とある言葉が

浮かび、それを迂闊にも口にしてしまった。

 

「・・・その機密って、ひょっとして夕呼先生の”オルタネイティブ第四計画”での成果、って事でしょうか?」

 

「ッ?! 貴様・・・、何でその事を知っている?! 返答次第よっては勾留するっ!!」

 

 台詞を言い終わらない内にまりもちゃんは、執務机の向こう側から机を乗り越えて飛び出してきた。

俺も、咄嗟に捕縛から逃れるために、まりもちゃんとの間を空けた。 でもこれって、悪手だったらしく、

まりもちゃんはより一層の警戒を引き上げた。 このままじゃ、ダメだ。 何とか誤解を解かないと・・・。

 

「お・落ち着いて下さいっ、神宮司少佐っ!

 少佐も俺が夕呼先生の研究で偶に呼び出されているって、ご存知でしょう?!

 

 ですが最近は全然お呼びが掛からなかったから、俺は前に呼び出された時に聞いた計画の名称を

 単に述べたに過ぎません。 実際に計画が持つ機密内容の詳細は知らされていません。

 お疑いでしたら、直接夕呼先生に確認を取ってみて下さいっ!!」

 

 咄嗟に言い訳がましく台詞がスラスラと出てきた。 だが、述べていることに嘘偽りは含まれていない

ので、夕呼先生本人に確認を取ってもらえば、俺の無実は証明されるだろう。

自らの失敗ではあるが、俺はその意味を込めて落ち着いて対応した。 それを汲みとったかのように、

神宮司少佐は少し雰囲気を代えて対応してくれた。

 

「・・・フン。 ならば、確認連絡を取るから、そこで待っていなさい。

 だが、貴様の言葉に嘘が在った場合は・・・、分かっているな?」

 

 少佐は執務机上の内線電話を2箇所にかけて、夕呼先生の所在を探し出し、一連の事柄について

確認を取ってくれた。 そして、そのまま受話器を置いた。

だが、振り返ったその表情は厳しいままだった。 多少の安堵した視線をこちらに向けてつつ、電話口で

夕呼先生が俺に対して述べた内容をそのまま口にした。

 

 その内容は、平たく言うと叱責を受けた。 夕呼先生もオルタネイティブ計画の件でとても多忙である

のに、俺のことまで面倒見れないと言う内容と、何時までも学生気分が抜けない様であれば横浜基地

から追い出す、とまで言われた。

 

 た・確かに、今回の件については全面的に俺の落ち度だし、うっかり失言した事や事象の意味や

機密などの存在を考慮していなかった事など、一兵士としては失格だと言われても仕方がない。

・・・あれだけピアース中佐に注意を受けて、”自分に足りないものを探す”という事を心がけていても、

この様では中佐に合わせる顔がない。

 

「・・・分かりました。 今回の失態について、以降は細心の注意を払い対応致します。

 不用意なことを申し上げ、少佐に要らぬご心配をお掛けして、大変申し訳有りませんでした。

 

 あと、先ほど承りました関係書類について、今から作成にとりかかります。 提出は1700までに提出

 致しますが、それで宜しいでしょうか?」

 

 まりもちゃんは、俺に仕事を任せたままで良いのか一瞬迷ったみたいだが、司令部宛の関係書類の

提出は必要であるため、俺にそのまま仕事を任せてくれた。 ・・・せめてコレだけでも完璧に処理しな

ければ、俺の立つ瀬が全く無くなる。 俺の必死さが届いたのか、まりもちゃんは俺に仕事を任せてくれた。

 

 ・・・イカンな。 そもそも、目の前の人間は俺の直属の上司で”少佐”なんだ。

普通に考えて、その方を久しみを込めて”ちゃん”付けで呼ぶなど在ってはいけない事だ。

今回のことで俺は猛省しなくてはいけない。 その意味でも公私の区別はきっちりとするべきだ。

 

 いままで、俺が育ったあの世界の名残りを忘れたくなくて、以前のような呼び方をしていたが、

その区別をキッチリと行わなければいけない時期に来たのかも知れない。

 

 これからは自分の中でも”まりもちゃん”改め”神宮司 まりも少佐”と呼び方を代えるべきだ。

以前から少佐には『私をちゃん付けで呼ぶとは良い度胸をしているな?』と言われていたことを思い出した。

 

 目下から”ちゃん付け”呼ばわりは、余程親しい間柄でもない限り、在り得ないな。

親しみを込めすぎだろ、俺。

 

 その様に決心しつつ、神宮司少佐に退室の敬礼をして、俺は少佐の執務室を後にした。

 

 

 あの後、1630に再び神宮司少佐の執務室に趨き、作成した関連書類を提出した。

内容的にも不備はなかったので、一発OKだった。 多少、心の支えが取れた気がしたが、ここで油断する

わけにも行かず、滞り無く少佐の執務室を後にした。

 

 一仕事終えたわけだが、何故か俺の心は晴れ晴れしくならなかった。

その理由は既に分かっている。 それは、先ほど決意した内容について、自分の中で折り合いが付けれ

なかったからだと思う。

 

 既に本日の部隊での訓練など、一連の業務は終わっており、今は比較的自由な時間だ。

後は夕食や入浴など兵士としてのお楽しみが多い時間帯に成っているが、他の皆は恐らく各々に課した

鍛錬にとりかかっていることだろう。

 

 俺も自分に課した事柄を行わなければいけないのだが、先程の件について気分が晴れないまま

作業に入っても身につかないことが予想された。

 

 だからと言う訳でも無いのだが、以前第六世代機を見かけた速瀬中尉と共に押しかけた専用格納庫

の近くを通り過ぎ様としていたら、作業員出入口からピアース中佐が出てきた。

 ・・・今は最も出会いたくない人と出会ってしまった。 でも、挨拶無しで立ち去ることもできないので、

敬礼を行った。 うぅっ、今はこの人から早く逃げたい・・・。

 

「おっ、白銀少尉。 丁度良い所に居た。

 前やった雪風ユニットの新しいチューニングの試験を行いたいので、小パイ要員を探していたんだ。

 お前さん、今暇だろ? や・ら・な・い・か?」

 

 答礼しつつ、中佐はフレンドリーな対応でその様に言ってきた。 何かと言って気遣いのできる人だけど、

本当に今はこの人とはエンカウントしたくなかったので、何とか逃げようとしたのだが、上官命令とか

言われて、結局雪風ユニットの新チューニング試験に付き合うことになった。

(何か最後のフレーズは、俺的に”男の子”として身の危険を感じた。 ・・・気のせいか?)

 

 前に第六世代機に載せてもらった時は、酷かった。 辛うじて意識を保てたのは俺だけで、

それも失神する直前みたいな状態だったから、第六世代機には正直良い思い出がない。

 

 ・・・ホント、逃げたい・・・。

 

 そんなこんなな遣り取りの後、自分のノーマルスーツを着込み、第六世代機は一路成層圏外まで

跳躍した。 ・・・あれ? コイツって、こんなに乗りやすかったっけ?? 前はもっと酷かったぞ?

 

「・・・白銀少尉。 以前の試乗はお前らを懲らしめるために、ワザとああ言う載せ方をしたんだ。

 本来の雪風ユニットとは、今の運用が通常運用なのだ。 だから、前と違うとか戸惑うな。

 ってか、気づけ。 人が乗る兵器で、あんな暴れ馬、兵器としては三流だ。」

 

 俺が試乗に戸惑いを見せていたのを感じ取ったらしく、ピアース中佐がその様に解説してくれた。

参ったな。 中佐には何でもお見通しか・・・。

 

「・・・オイオイ。 何を気落ちしていたのかは知らないが、俺だとて分かる範囲でしか物事は分からんぞ。」

 

「ッ!? な・何でそんな事まで分かるんですか?! 中佐っ!!」

 

「・・・あー、うん。 種明かしして欲しいか?」

 

 その様に突っ込まれて、俺はその種明かしを教えてもらった。 それは先ほど神宮司少佐に指摘された

オルタネイティブ第四計画の機密、そのものだった。

 

「・・・えっと、宜しいでしょうか、中佐?

 そのお話の通りだとすると、現状俺の気持ちとか思考を、そのグレイ6を使ったフィールドを通じて

 感じ取り、それで対応していたから、と言う事で宜しいのでしょうか?」

 

「ああ。 それで間違いはない。

 コレの運用が行えるので、第五世代機以降の戦術機も雪風ユニットも、そして、ノーマルスーツでさえ

 その恩恵に預かっているんだ。

 

 そして、この使い方を発展させることで、文字通り『誰にでも扱うことのできる戦術機』が誕生する。

 応用方法となるが、その解説は行わなくても分かるよな?」

 

「・・・応用方法ですか? いいえ、解りません。 どの様にやったらそのように使えるのですか?」

 

「オイオイ。 それはV.E.D. 教導員としては、言ってはいけない対応だぞ。

 つまり、そう言うことを習いに来た人間に教導するのが、お前さんの仕事ってコトだ。

 

 この前、ノーマルスーツを着込んだ時にリクレーションをしただろ?

 目隠しして、目標の人間を探させたのは何のためだ? ”見る”事無しに”感じる”事で状況が分かったり

 できる様になれば、その状態にあっても自意識を確立できるのであれば、人間はどの様な物にも対応が

 行える。 つまり、戦術機適正が足りない人間は、その状態を把握できないから適正値が低いんだ。

 

 だとすれば、この点をクリアーできれば、誰にでも乗ることは可能だ。例えそれが車でも戦術機でも

 ロケットや潜水艦ですら可能と成る。 そう言うシステムを搭載したのが第五世代機以降の戦術機と

 言うわけさ。 具体的に例えるとな・・・こうだっ!」

 

 そう中佐は声を掛けた、次の瞬間、俺の右横にマッパーの中佐が居た。

いや、正確には中佐の亡霊というか幽体が居た。 どの様に表現すれば良いのか解らなかったが、

俺自身も何故か裸(マッパー)だった。 それ程身近に感じたと言う事だ。

 

《・・・ちゃんと俺を感じているな、白銀少尉?

 最初は気持ち悪いと感じるかもだが、慣れるとそんなに不愉快には感じなくなる。

 

 これがグレイ6を使った、意識体のみの会話となる。 コイツの恩恵は大したものでな。 言葉にする

 よりもダイレクトに意思や情報が伝わるんだ。 だから、実時間よりも長く会話していたとしても、

 実際に掛かった時間はホンの1分有るか無いかだ。 作戦行動中にコレを行えれば、詳細を解説しつつ

 完璧な作戦行動が行えると言う特典付きだ。

 

 また、このシステムの応用を行うことができれば、敵であるBETAユニットの位置が分かるようになる。

 後はその目標に向かい武器を向けて弾丸を撃ちこめば命中する。

 

 そんな親切設計にできているのが、第五世代以降の戦術機の通常(スタンダード)だ。》

 

《・・・え、えっと・・・ コレで良いのか?

 中佐っ! 俺の声届いていますか? いや、声でなくても良いのか? あ・あれっ??》

 

《ああ。 大丈夫だ。 俺の声も届いているよな? さっき説明した内容、解っているよな?》

 

《・・・あーー。 ハイ。 聞いていましたよ?

 いえ、ちゃんと分かっています。 凄いシステムですね。

 これが第五世代機以降のシステムなんですね。》

 

《・・・何で疑問形? ま・いっか。 対応できなきゃ、苦労するのは少尉だからな。

 

 それで、テスト前に落ち込んでいたのって・・・ ハハーーン、なるほど。 まぁーちゃんから叱責を受けて

 凹んでいた、と。 ま、自業自得だな。 以降は、気をつけろよ?

 

 それとこの際だから言っておくが、神宮司少佐を”ちゃん付け”で呼んで良いのは俺だけだから、

 岡惚れとかするんじゃねぇぞっ!!

 

 まぁーちゃんに手を出したら・・・、殺すぞっ、この餓鬼っ!!》

 

《は・ハイッ!! ぜ・絶対に手を出しませんっ!!》

 

「ぃよぉーーし。 言質は取れた。

 だいたい良い頃合いだから、試験を切り上げてRTBしようや。」

 

 唐突に中佐は意識体から通常の口頭に会話を切り替えた。 ・・・何かギャップがありすぎて困る。

言葉に発していないはずなのに、言質を取られたと言うショックもあるけれど、何か疲れた。

 

 大方のテストは終了したのは間違いがないらしく、成層圏外から横浜基地まで10分程で帰ってきた。

このスピードも出鱈目だと思ったが、中佐に言わせると「これくらいは慣れろ」との事だった。

どんだけ”トンデモ兵装”なんだ、雪風ユニットって・・・(汗;)。

 

 第六世代機を専用格納庫に格納して、やっと俺は開放された。

雪風ユニットの試験を行う前と比べると、幾分気分の方は晴れていると思うが、心身ともに疲労感が

ハンパ無かった。

 

 その様を見ていた中佐から「心身の鍛錬不足」との指摘を受けたので、明日以降も基礎訓練の

メニューを2倍に増やさないといけなくなった。

 ま、コレは通常業務なので体力が付けば多分平気になるから良い。

 

 しかし、これ以外にも中佐から体力向上の訓練を追加された。 空間認識を高める訓練として

トランポリンを使った体操訓練を取り入れろとの事。 それらのメニューを作成し、明後日までに

申請書類などと一緒に提出との宿題を貰った。 なんかもうどうとでも成れと言う心境だ。

 

 第六世代機格納庫から消沈したまま、重い足取りで本日の作業を切り上げた。

問題山積みの上、申請書類の作成などの宿題も在るためだ。 こんな時は気持ちを切り替えなければ

やっていられない。 早々に食事とシャワーを取って、早めに就寝して明日に備えよう。

 

 今日あったことは忘れられないが、せめて時間的余裕を以って事に当りたい。

連続で様々なことを流すのは良くない。 自分なりで消化してから対応したいからだ。

多分こんなことを言っていられるのも今の内だけだろう。

 

 でも、今は無理でも将来においてこう言う事に慣れなければいけない時代が必ず来る。

心構えに余裕を持って、それと体力と精神にも同時に成長させなくては、対応がとれない。

そのように考えつつ、自分専用のロッカーを目指すのだった。

 

 

Other Side Out : 白銀 武

 

 

 

2001年12月24日 月曜日 06時30分

国連軍横浜基地 第一滑走路脇 副滑走路入り口 戦術機駐機場所

オルタネイティブ第四計画 作戦名:『神々の黄昏』実施10分前

 同計画 作戦実行部隊 A−01連隊隊長 エイデン・ピアース中佐

 

 

 

 俺は、つい2日前にロールアウトしたばかりの第九世代戦術機・心神(type-01G9)の中で待機している。

その心神の外見は、シナンジュの様に単眼で、色は真っ赤ではなく、ティターンズ・カラーのmkⅡの様な

色合いをしている(ついでに第五と六の顔つきはオーバフラッグの様にお面顔だったりする)。

 

 元々、コイツの役割は”設計図も禄に用意できなかった実験機”と”辛うじてグレイ11を使えている”と

言う肩書を持つ戦術機であり、「誰にも操ることができない利かん坊」的な役割が与えられている。

 

 元はといえば、俺のナンチャってチート能力による賜物で作られた、撃震モドキがベースであるため、

他の勢力に渡すわけには行かない機体だった。

 

 今回の作戦で使い切る役割を与えられており、この世に残してはいけない戦術機なのだ。

 

 先日も”新戦術機構想”用データを取り揃えることができたが、この心神には”青写真”しか残せて

いない。 この後も、だれも心神を作成はさせないための処置なのだ。

 

「・・・作戦開始、5分前。 作戦参加各要員は最終チェックをクリアされたし。

 繰り返す。 作戦開始、5分前。」

 

 取り留めもないことを考えていたら、CPであるピアティフ中尉からアナウンスが入った。

既に、俺の方の準備は終了している。 チェックが終わっていなくても、そのまま発進できる態勢だった。

それに今作戦に参加するのは俺一人。 つまり、俺に最終チェックを行なえと言っているのだった。

 

「・・・こちら、A−01連隊隊長のエイデン・ピアース中佐だ。 現状機体に問題なし。 通信終わる。」

 

 機体のチェックが済んだら、後残っているのって、作戦方針とか攻略の順番だけだった。

一応俺の能力をフルに使えば、ほとんど検知されずに事が過ぎていく。 だが、それだとユーコさんに

怒られる。

 

 何故かというと、「どの様に事を成したのか、状況の経過も証拠として残す必要がある」との事だった。

ハァ、何とも面倒臭いなぁ・・・。 ま、仕方がない。 属性攻撃してはいけないとは言われていない分、

状況を見ている人間に印象に残るように、『ゆっくりと』経過を示してやろう。

 

 となると、移動属性に”光速の”は使えないと言う事か。音速の何倍と言う設定が必要だな。

間違っても”10倍”は不可だろうなぁ・・・。 マッハ5が限界だろうな。 仕方がないな。

それらの注意点を考えていたら、それまで長く感じていた5分は、アッと言う間に過ぎさり、いよいよ作戦

開始となった。

 

「こちらA−01・ラジオコール『ビジランテ01』、エイデン・ピアース中佐だ!

 これより作戦行動を開始する! Type-01G9 心神! 発進するっ!!」

 

 俺は副滑走路脇の戦術機駐機所から、そのまま垂直に、上空に離陸した。

搭載されている新推進機構である「雪風ユニット」は、今まで同様その荒ぶる息吹を開放するかの様に

機体を一気に成層圏を飛び超え、高度1万kmの衛星軌道上にまで機体を飛躍させた。

 

 すかさず俺は、心神を公転軌道上を秒速1万kmで移動させた。

 

 そして、ターゲットと成る獲物を探し始めた。 俺の狙う獲物、甲1号の重頭脳級BETAさんをはじめ、

甲22号以外の各拠点のハイヴコアと各拠点のアトリエがメインのタゲだった。

 

 勿論俺の絶対距離感覚を用いて、それらのターゲットを根気よく探した。 だが、絶対能力シリーズでは

その精度は10の16乗もあるので、探すだけであれば地球を一周する前に見つけることが可能だった。

いや、その意味で言えば、今居る位置から月面のターゲットを探すことすら可能だ。

 

 だが、地中深くに設置されている各ハイヴのターゲットを全て見つけるには、多少の時間を要した。

ま、地球は一周しなくても済んだがね。

 そして、次にグレイ11を用いた反物質反応から膨大な量の反応エネルギーを用いてコアとアトリエ

(BETAさん達の生産工場)を一気に素粒子に変換にした(灰すら残らないの意)。

 

「ひぃ〜、かぁ〜、りぃ〜、にぃ〜、なぁーーれぇぇぇぇぇえええええええええーーっ!!!」

 

 某GGGの勇者王宜しく、検知したコアとアトリエを纏めて、反応エネルギーで焼き切った。

そして、それらの膨大な量の熱反応効果を一気に、ニュートリノ素粒子へと変換させ、大気圏外に逃す

ことを行った。 だって、反物質反応とか地上に残すわけには行かんでしょ。 危ないから、念の為大気

の外に排気しましたよ。 ・・・んで、ついでに『とある場所に』 っポイしちゃいました。

 

 そんなこんなで、地球上にある俺の狙うターゲットの総数は約30個であった(正確には27個)。

だが既に、俺の手によりこの中の4〜5個は排除済みなので、実質的には25個無かった。

それと当然だが、鑑嬢を救出した後に対応する予定の為、甲22号は除外しています。

 

 その後、経過を見るために衛星軌道上を同じ速度で回り続けながらターゲットが確実に撃破した事を

確認できた。 また、横浜基地にちょっかいを掛ける”やんちゃなBETAさん”は居なかった。

まぁ、ある程度であれば、ヴァルキリーズに任せても大丈夫だと思っていたから、心配はしていなかった。

 

 だが、その他の地上での戦闘を見かけた。 どうやら地域に拠っては地上で侵攻してきたBETAさん達に

抵抗している現地軍が居たらしい。

 

「(・・・余計なお世話かも知れないが、助け手を出しておこう・・・。)」

 

 戦場的に劣勢なところも優勢なところも隔て無く、BETAによる戦闘が行われている所を見かけたら

現地軍の手助けとばかりに衛星軌道上から先ほどと同じ方式の攻撃を加えておいた。

 

 尚、現地軍の人員が反物質反応の熱にやられないように、属性付加を用いて使い見えない壁で保護を

しつつ、BETAさん達をピンポイントで狙いながら排除していたのは、言うまでもない。

 

 そうしつつ3周ほど軌道を回ってみても、俺のターゲット的に取りこぼしもなかったらしいので、

いよいよ月に向けての軌道を修正に入ることにした。

 

「・・・横浜HQ。 こちらビジランテ01。

 作戦名:『神々の黄昏』は、予定の行動を敢行。 現状問題なく予定通りの成果を達成した。

 

 引き続き本機は、第一段階の締めくくりである月面に対して迎撃準備行動に移る。

 

 現在、地球の重力を使った軌道変更準備のため、迎撃予定コースの算出と軌道変更中。

 暫くのインターバルの後に準備整い次第、迎撃作戦を続行する。」

 

「・・・こちら横浜HQ。 戦況報告了解。 ビジランテ01は引き続き任務を続行されたし!」

 

 次の行動に移るまで、約5分ほどの時間が空いた。

既に心神は予定軌道のコースに対して行動を開始しつつある。 だが、俺はこの場面において、

是非に述べておかなくてはいけない事について、実行に移すことにした。

 

 また、ユーコさんに『このタイミングで、何でそう言うことを言うのかしらねぇ〜』と呆れられるのだろうな。

だが、この後も戦うのは、俺以外の残される人々であるのは間違いがない。

だから彼等に対して、言葉の一つも掛けておかねばならないだろう。

 

 俺は徐ろにマイクのスイッチを入れ、一般公衆用ラジオを含む全周波数帯域に対して交信を掛けた。

 

「・・・あーー。 聞こえるか?

 

 私は、国連軍横浜基地所属 オルタネイティブ第四計画 実行部隊 A−01連隊隊長 ラジオ・コール

 ビジランテ01だ。 今この放送を全人類に向けて告げる。

 

 その内容とは、この後に展開させるであろうBETA大戦について、話さねばならない事をこれから告げる。

 全人類の皆はこの言葉を良く聞いていてほしい。」

 

 多分、地上では何が起こっているのか解らずに、聞いているのかもいないのかも定かじゃないが、

それでも良い。 誰かの耳に入れておきたいから、俺は告白することにする。

 

「現時刻は、2001年12月24日午前7時を回った辺りだと思う。 今現在、私は地表から高度1万kmの

 衛星軌道を周回する場所から、秒速1万kmの速度を保ちながら放送している。

 

 その宇宙に接するところから、私はとある迎撃任務を実施中だ。 この後もその任務を完遂しなくては

 成らない。 第一段階である本作戦の概要は、最終的には月面のBETA拠点に攻撃を仕掛け、戦略

 目標を殲滅させる事が任務と成る。

 

 先も述べたが、この任務の目標はとてつもなく遠く、絶望に満ちている。

 だが、それでも私は与えられたこの任務を成功に導かなくてはいけない。

 

 それは何故か?

 

 任務内容の詳細は省くが、現状地上のBETAハイヴのコアとアトリエと呼ばれるBETAの生産工場は、

 先程私の攻撃を受け、消滅した。

 つまり、本日以降は地球上のBETA達は、今いる個体がその全てとなった。

 

 言い換えよう。

 

 後は、BETAユニットを倒せば倒すだけ、我々人類の生存圏が確保できる事を意味している。

 もう故国から追い出されることもない。 我々は故郷と生存権を取り戻せるのだ。

 

 今まで終わりの見え無かった戦局に、やっと節目と成る状況が生まれつつ有ることを、全人類の皆に

 報告しておく。

 

 だが、全人類よ。 油断してはいけない。 それは先に述べた任務の第一段階の最終目標が月面に

 居るBETA拠点にある戦略目標の殲滅を行う必要が有るためだ。

 

 先も述べたが、何故月面のBETAを叩かなければいけないのか? 地球から約30万kmも離れている

 のであれば、放っておいても問題はない、と思う人が多いだろう。

 

 だがしかし、それが間違いなのだ。 よく考えてみてほしい。 地球上のBETA達の”親”は何処に居る

 のだろう、と。 そう、それは、月面のBETAから地球上に降下ユニットが落ちてきた事に由来している。

 つまり、月面に居るBETAを斃さなければ、地球圏の絶対的な安全は確保できないと言う事だ。

 

 私達オルタネイティブ第四計画首脳部は、その事実を先の甲21号ハイヴ攻略情報から割り出した。

 その為、現在私は此等の迎撃を行うための任務、迎撃作戦を実行中である。」

 

 俺は此処で一旦言葉を区切った。 一息に説明を続けても頭に入らないだろうから、区切りを入れる

事にしたのだった。 俺は、引き続き言葉を紡いだ。

 

「・・・先ほど私は『月面に居るBETA拠点の戦略目標を殲滅する』と述べた。

 正確には地球上と同様に、月面ハイヴのコアとアトリエの破壊を行うことを目指している。

 そして、幸いというべきか、月面には人類は居ない。

 故にBETAのユニットと呼ばれる個体が残っていても、それらがハイヴコアの代わりに成り得ないため、

 予定として此等の排除は今回は見合わせる。

 

 ただ、地球上のそれらと異なり、月面のハイヴの総数は100を超える。

 その為、それらの排除は困難を究めることになるだろう。

 

 それでも私達は力の限り戦い、此等に打ち勝つ。 勝利して戻る準備を行い、これに臨む。

 例え絶望の中にあっても、BETA達に勝利する事を証明してみせよう。

 

 ・・・ここまで聞いた皆は私のことを”英雄”と称するかも知れない。

 

 だが、その様な事は全くない。 私は”英雄”などと呼ばれる資格のない人間だ。

 だから決してその様に呼ばないで欲しい。 私は・・・、 私は単なる『防人』に過ぎないのだから。

 

 しかし、本当の英雄を求めるのならば、それは後に残る人類、この放送を聞き未来に於いて戦う全ての

 戦士たちを言うのだと認識を改めて欲しい。

 その者達は、本当に戦うことができる人間を指す。 つまり、衛士でなくても良い。

 己が身一つであっても戦える武人や戦術機適性から外れた人間でも、十二分に戦うことができるだろう。

 

 その為の準備を、私が所属する横浜基地に残した。 後はそれらを使いこなせるように準備し、

 対応できれば問題はないと思う。

 

 だから、今日を戦うのは私が行こう。 だから英雄たちよ、明日の未来を諸君らに託す。

 残った人類を守り、その上でBETA達に打ち勝って欲しい。

 

 重ねて言うが、我々が準備した装備は対人類に使わないで欲しい。

 攻撃する対象は飽く迄もBETA達だけだ。

 決して、人間が人間を攻撃することが無いように、細心の注意を払い倒すべき敵・BETAだけを屠る

 事を心掛けるのだ。

 

 その為の装備だ。 英雄達よ、諸君らに人類の命運を託す。

 その一言が言いたくて、今私はこの放送を行ったのだ。

 

 

 ・・・後述べる事として、何故私が”英雄”ではないのか?

 

 それは、近い未来に於いて、私は皆が必死に戦っていたとしても、その時には、もう戦えないからだ。

 

 正直に言おう。 私に残されている残生存時間は、とてつもなく短い。

 恐らく、皆と同じ時を一緒に過ごす事はできないだろう。 そのことが分かっていながら、無責任に

 戦火を押し広げてしまう人間を皆は”英雄”とは呼ばないと思う。 故に私は”英雄”たり得ないのだ。

 

 自ら戦うのは、己(おのれ)の意志だ。 それを他人に強制させる権利や権限を私は持っていない。

 

 しかし、この先のBETA大戦に於いては、その数に限りが見えるとは言え、全人類対全BETAユニットと

 言う構図になるだろう。 謂わばそれは、総力戦と言い換えても良いだろう。

 

 なのに私は、自らが戦えない事が分かっていながら、それでも手を出さずにはおられなかった。

 志半ばで潰えるというのであれば、私は介入を避けるべきが道理であるのに、それでも他の人間に

 任せられなかったのだ。

 

 それは、何故か? そんなの決まっている。 私は、 ・・・いや、俺は、あんな訳の分からない奴らに

 俺の部下や友人・知人、その他多くの人々、果ては全人類が負ける事に我慢が成らなかったからだ。

 

 これは俺だけの我侭だろうか? なぁ、お前たちは、それで本当に良いのか?

 俺は嫌だ。 理不尽に滅ぼされるがままで、このままやられっ放しで良い訳がないっ!

 

 だから俺は戦う。 今まで犠牲となった英霊たちに報いるためにも、俺は彼等の後に続いて、BETAに

 打ち勝ち、勝利を分捕るっ!!

 

 そして、その権利がないにも関わらず、無責任にも全人類に対して、この総力戦にお前たちを勝手に

 巻き込む。 そんな咎人を皆は”英雄”とは呼ばないだろう。

 

 俺は、咎人とか罪人と呼ばれるのが相応しいだろう。

 だが、例えその様に評じられても、俺は今、防人である事に後悔はしていない。

 

 存在証明とか生きる権利とか言う漠然としたものを、人類自らが勝ち取って欲しいが為に、

 無責任に戦火を勝手に広げてでも、俺が始めた戦いに人類を巻き込む。

 

 この放送はその事を知らせる為に行っているのだ。

 

 ・・・恐らく最初の内は馴れない戦いが続くことで、すぐにはその成果は現れないだろう。

 戦うべき人間が戦わず、逃げ出す人間の方が多いのかもしれない。

 

 だが、それであっても良いと思う。 戦える時に戦い、最後の最後に人として行動し、自分が行える範囲で

 良いから行動して、人として何らかの成果を残してくれれば、俺はそれで良いと思っている。

 

 だから、最後に言わせて欲しい。 全人類よ、生き残って欲しい。

 どんなに不様に逃げまわってでも良い。 生き残ることに信念と誇りを持って、明日を生きて欲しい。

 

 現状絶望しか見えていないのかも知れない。 だが、明けぬ夜はないのと同様に、この糞ったれな

 BETA大戦にも終わりは必ず来る。

 

 最後の最後に生き残り、人として生存することを分捕って、皆で生き残る様に努力してくれ。

 

 人同士が争う時代はもう終わっている。 国と国同士の取引も必要ないかも知れない。

 生存証明を確立したその先に必要とされるのは、人間が人間を生かす努力を行うことだろう。

 

 だから全人類よ。 今日戦うのは俺がするから、皆は明日を生きてくれ。

 その事だけを、皆にお願いする。

 

 俺から述べたい事は以上だ。」

 

 

 俺は放送を終えた。 一方的に言いたいことだけ述べた。 その中に謝罪などは一切なかったが、

何か後ろ髪を引かれる思いが、俺の心の中によぎった。

 

「(釈然としないのは何故だろう・・・? 言う前と言い終えた後とでは、何故こんなにも踏ん切りが悪く

 なるのか、理解できない。 ・・・多分、きっとこれが”自分の中の黒歴史”と言う奴かもな・・・。)」

 

 ま、言ってしまったものは消えない。 それに、内容に不備があって、謝罪して取り消したとしても、

その時何を思っていたのかと言う事実も消えないから、これで押し通すしかない。

 

 俺は自分だけでその理由を完結させると、HQに作戦行動継続の意を伝えるべくマイクのスイッチを

再び入れた。

 

「・・・横浜HQ。 こちらビジランテ01。 作戦継続準備完了した。

 引き続き、『神々の黄昏』作戦、第一段階を再開する。

 

 尚、これ以降の通信はビジランテ01からのみの一方通行とし、横浜HQからの指令は一切通じない

 ものとする。

 作戦内容変更等、オーダーを入れるなら今しか無いが、何か在るか?」

 

 すると、向こう側の横浜HQからユーコさんの怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「あるわよっ!! 何勝手なこ・・・「あー、小言も受け付けないものとする。 ってか、それら一切は帰って

 から聞くから、今は止めれ。 お願い。」

 

 と・・・、 ・・・解ったわよ。 アンタっ、その言葉に責任持ちなさいよねっ!!

 

 仕切りなおして、真面目にオーダーするとね、戦況報告の一方通行の件は了解したわ。

 こちらでもきちんと記録を取っておくから、何か在ったら直ぐに報告して頂戴。

 

 それとオーダーについてだけどね、地球側と月面側とでは、戦場環境が全く異なるわ。

 だから、目標の破壊が難しいと判断したら、とっとと戻ってくること。

 良いッ、絶対のっ、絶対に戻りなさいッ!! これは恥とかそう言う問題じゃないから。

 兎に角、生きて帰って来てッ!! お願いだからっ、良いわねっ!! エイデンッ!!

 

 貴方が戦死することは、作戦第一段階の失敗と同義なんだから。

 生きて帰ってくれさえすれば、後はどうとでも弁明できるのだからッ!!

 だからお願いっ!! 生きて戻って頂戴っ!!」

 

「あーー、気遣い、ありがとう? でもね、ユーコさん。 大丈夫だよ。

 目標の破壊だけなら何とかなるから。 それに、俺も死ぬ気無いし、最悪、月を吹き飛ばしてでも

 帰ってくるから。

 

 それと、俺の能力全開で使用するから、制限の中での作戦行動だろうけど、ヨユーで帰ってこれるって。

 だからそんなに心配しないで、ユーコさん。

 

 俺もね、要らない緊張はしたくないから、今から音楽でもかけて、リラックスしながらお仕事するから。

 そんな悲観的に自分を追い詰めちゃダメだよ。 ユーコさん。」

 

 俺はそう言いつつ、ノーマルスーツのサイドポーチに閉まっていたスマホを取り出し、イヤホンジャックを

通じて音楽を再生することにした。

 

 曲名は勿論劇場版OOガンダムから、『閉ざされた世界/THE BACK HORN』(5:06)を選曲した。

・・・同じOOガンダムなら、何で『FINAL MISSION~QUANTUM BURST』じゃ無いかって?

 

 Final Mission〜の方は歌詞がないでしょ。 歌詞がメッセージとなっているから、

『閉ざされた世界』にしたんです。 ま、予定通りなら5分掛からないでしょ。

 

 閑話休題

 

 曲の前奏が始まったので、俺は急いで作戦開始を宣言することにした。

 

「んじゃ、ちゃっちゃと、ヤってしまいますか?! もといっ!

 横浜HQ。 ビジランテ01は『神々の黄昏』作戦・第一段階を再開するっ!!

 

 目標っ!! 月BETA全ハイヴ郡ッ! その中の全コアと付属アトリエ全部っ!!

 Type-01G9 心神ッ! これより目標に対し、迎撃行動を再開するっ!!」

 

 俺は移動属性『光速移動』に『1/4』を追加して、一気に月面軌道にまで飛躍した。

そして先程と同じく月面衛星軌道を1万km毎秒で移動しつつ、目標と成るコアとアトリエと思しき生産

工場区画全部に目標を定めようとした。

 

 すると、BETAさん達からも迎撃用の攻撃がやってきた。 重レーザー級とレーザー級による遠方射撃

を衛星軌道上の俺に行ってきた。

 

 先程の地球の方ではその様な行動は行っていなかったのに、流石に月面のハイヴにそれをされるのは

BETAさん達でも嫌だったみたいだ。 ってことは、もっとヤってやる。

 

「・・・熱烈的歓迎だな、オイッ!! 先程とは丸で違ってんぞっ! コンチクショウッ!!

 狙いが定まり難いじゃねぇかっ!! ってねっ! はいっ、ロックオンッ!!」

 

 文句を言いつつも、ターゲットのロックオンは外しませんとも。 では、先ほどと同じくお約束って事で・・・。

 

「おぉ〜、じょぉ〜、せぇ〜、やぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっ!!!」

 

 大凡108箇所に渡って、コアとアトリエ(200箇所近く)は反物質反応により膨大な熱爆発を引き起こし、

余す所無く全てをニュートリノ素粒子に変換して、大宇宙のとある場所に、っポイされた。

 

 先程から、放り投げた先は述べていなかったが、それは火星や金星のBETAハイヴへ、丸投げしており、

ニュートリノ変換された素粒子は、地表などを通り過ぎコアの中心近くで、反応熱へと還元されて、2次爆発

させていた。 ま、これがホントの”一石二鳥”って事で、お後が宜しいようで・・・。

 

 

 ・・・可怪しいな? 一応”親”であるはずのハイヴ・コアを排除したというのに、一向に重レーザー級や

レーザー級BETAさん達からの遠方射撃が止まない・・・。

 普通指揮系統が潰されたら、即時撤退が鉄則だと思うのだが、BETAさんの社会では与えられた命令は

完了するまで継続するのかなぁ・・・??

 

 まぁ、当たらないように逃げまわっているから良いのだが、こんな調子で作戦完了しても良いのだろうか?

・・・ま・まさか、ひょっとして、何らかのバックアップ的な存在でも残っているのか?

 

 俺はその様に思い、月面の衛星軌道で根気よく各ハイヴの観測を続けた。

 

 すると、とても信じられないようなものを発見することができた。 た・多分、これって・・・アレだよな?

 

「・・・横浜HQ。 こちらビジランテ01。 第一段階・作戦続行中。

 戦況経過報告を行う。 当初の予定通り、108箇所のBETAハイヴ・コアの殲滅は完了した。

 また、それと同時にアトリエも198箇所の殲滅に成功した。 以上を以って作戦の第一段階の目標は

 排除したことに成る。 だが、此処で問題が発生した。 新たな戦略目標を確認したのだ。

 

 恐らく、このユニットはまだ発見されていない新類のBETAユニットと思われる。

 

 そのユニットとはコアのバックアップを行うためのBETAだと思われる。 保有されているグレイ9での

 エネルギーはコアの1/4以下だと思われるが、要塞級やレーザ級・重レーザー級の母艦と成りうる

 可能性が在る。

 

 詳細は省くが、全長約3.8kmもあり、通常の母艦級の約2倍長い個体らしい。

 そしてこの新種の総数だが・・・、 ひの・・・、ふの・・・、みい・・・、よん・・・、いつ・・・、むう・・・、なな・・・、

 ・・・ざぁーっと計測したので正確ではないとしても、大凡7兆8千億体前後のソレが月の地表以下の

 ハイヴ通路にひしめきあって、蠢いている。

 

 ハッキリ言って、傍で見ていてとても気持ちが悪い・・・。

 ミミズをkmサイズに拡大したら、多分良い勝負するくらいに、気持ちが悪い。

 

 どう言う状況か、理解してもらえただろうか? 数がとても多いのだが、此等の殲滅を行わなければ

 真の意味で『神々の黄昏作戦:第一段階』の終了はあり得ないだろう。

 

 故に、これよりビジランテ01は此等の排除を敢行する。

 まぁ、月面から遠方迎撃用のレーザー攻撃が飛んできているんだが、コレも合わせて対処する。

 

 以上、通信終わる。」

 

 ったく、数で迫れば良いってもんじゃないっしょっ!! センスというか、方針の立て方というか、

杜撰で計画性の欠片もないとはこの事だ。

 

 俺は文句を言いながら、次の曲の選曲を行っている。 もうこうなったら、気分アゲアゲで行きたいから、

『FINAL MISSION~QUANTUM BURST』とか、ノリの良い奴でBGMを固めてやるっ!!

 

 あっ、でも『こんごうパーク(15分バージョン)』は外しておこう。 コレ聞いていると、顔がニヤけてしまう

から、お仕事に成らない。 うん、今のノリに必要なのは燃えるタイプの選曲が必要だな。『真赤な誓い』

とか、その路線で選曲しておこう。 ・・・んっと、よし、準備完了。

 

「(・・・おっと、イカン忘れるところだった。 属性攻撃を行って1時間のリミットが有ったんだ。

 それを逆計算して、残り時間内に終わらせないとダメでしょ。

 

 って事は、攻撃方針として、反物質反応攻撃を複数で行いつつ、ハイヴの通路に蔓延っている”ミミズ・

 モドキ”(仮名)を迎撃する。 この際、月面の表層に近いところを優先して攻撃していき、地上にいる

 レーザー属性のBETAさん達も熱変換している所に巻き込む、と。

 んで、これら熱とレーザー属性のBETAさん達を纏めてニュートリノ素粒子に変換して、目的地にっポイ。

 それらの素粒子を火星と金星のハイヴコア近くで熱還元させて・・・。)

 

 よし、コレで行こう。」

 

 早速俺は、シミュレーションした攻撃プランに沿って、5つほどの小石程度の反物質体を音速でハイヴ

通路内に沿って飛ばしてみた。 すると当然ながら、ハイヴ通路内を占拠している”ミミズ・モドキ”に当たり、

それらは尽く反物質反応により反応爆発化して行った。

 

 そして、予定通り月面の表層部分に近いところを中心に反物質反応で連鎖的に拡大して行った。

ある程度の攻撃成果を確認したところで、それらをニュートリノ素粒子変換に巻き込み、火星や金星方向に

放逐した。 その後予定通りでは各星のBETAハイヴ・コア辺りで、いつもの通り熱還元させるルーチン

ワークを実施して、コレの対応にあたった。

 

 ある程度のルーチンワークは、自己能力の一つ”認識内変動的攻撃”化させたので、俺は気兼ねなく

小石程度の反物質を光速の1/2程度の速度に引き上げてかき回してやった。

 

 月の表面は、例えるならば”マスクメロン”の様に無数に走った線が、一瞬の輝きを見せたかと思ったら、

それらは元の状態になったと思う。 いや、正確には一瞬光ったと表現するのが適当だと思う。

実際には、ハイヴの通路に沿った形でのクレーターが生じており、のっぺらとしていた地表に新たな

クレーターができるという、”月面改造”が成されていた。

 

 当初の目論見通りに事が進み、いよいよ深度の深い所に居るミミズ・モドキに向かうことにする。

数が約8兆程居るので、コイツの排除には苦労しそうだが、認識内変動的攻撃のお陰で、単に反物質体を

飛ばすことに専念できた。 自動処理って素敵っ!

 

 その様にして、能力的に1時間内で処理していった。 勿論どの位処理したのかカウントをして、

それらのデータはHQである横浜基地に送信しながら行った。

 

 そして、何とか対応が終わった。 振り返ってみるとミミズ・モドキは約8兆8千億体程居たらしい。

カウンターの数字がその様な数字で終了していた。 我ながら予想以上のその数に辟易してしまった。

 

 俺は心神を光速で移動させつつ、月面上の戦略目標達が排除されたか観測した。

だって、後5分以内で予定の1時間に達するから、光速で確認しないと間に合わなかったからだ。

 

 で、結果的に迎撃作戦は、完璧に殲滅した。 よし、作戦第一段階は、本当に終了だ。

俺は心神を帰投コースに乗せると、月面の衛星軌道を離れつつ、第三宇宙船速に速度を落として

からHQに通信を入れた。

 

「・・・横浜HQ。 こちらビジランテ01。 戦況経過報告を行う。

 先ほど報告した通り、新たに確認された戦略目標の排除に成功した。 迎撃総数はデータ化して

 既にHQに送信済みであるので、そちらを参照されたし。

 

 また、迎撃後に残存兵力の観察を行った所、BETAユニットは多数確認が取れたが、予定通り新たに

 発見された新種の排除を完了したことを確認した。

 

 拠って、『作戦名:神々の黄昏・第一段階』はその全ての行動を完了した。

 これより横浜基地に向けRTB 以上、通信終わる。」

 

 既に月の引力圏は離脱しているので、空間攻撃でも受けなければ、俺の周りには敵は居ない。

 

 マイクを切って、ノーマルスーツのヘルメットを取って、携帯している宇宙用の軽食を口に含んだ。

作戦開始から、飲み物や食事は一切取っていなかったので、一息つきたかった。

帰還予定時間は、今の航行スピードであれば1週間と言う所だろう。 この後睡眠がくるので、

その後はスピードを上げる必要が在るが、それまでは一旦休憩とした。

 

「(・・・何やかやと疲れたな。 甲21号ハイヴの迎撃よりも疲れた気がする。

 ま、当たり前か。 ハイヴ・コアとアトリエ、それを地球と月の両方を相手して、その処理がⅠ時間で

 済めば、御の字だろう。

 

 後は、コイツ(心神)を大気圏間近で爆惨させてしゅーりょーか。 それまで一寝入りしよう・・・。)」

 

 その様に考えていると、案の定睡魔がやって来た。 疲れていたこともあって、予定通り睡魔に身を

任せる俺だった。

 

 

 

2001年12月24日 月曜日 21時44分

国連軍横浜基地 オルタネイティブ第四計画 作戦実行部隊

A−01連隊隊長 エイデン・ピアース中佐 L01に向けて航行中

 

 

 

 睡魔からやっとのことで開放された俺は、機内時間を確認した。 一応能力を使用するにあたっての

ペナルティとして、『最低4時間の睡眠』は行えているが、どうやら寝過ごした様にも思う。

 

 ・・・前から気になっていたのだが、徐々にではあるもののこのペナルティによる睡眠時間が長くなりつつ

在るように思う。 この睡眠でも約12時間は意識を失っていたと思われるからだ。

俺的には、そのことに多少の不安を覚えてしまっている。

 

「(・・・でもなぁ・・・。 最低時間としての4時間であるから、最長時間を計測していない能力の

 ペナルティについては、どうなんだろう?

 

 寝過ぎていないから良いものの、このままで良いのだろうか?)」

 

 ま、寝過ごしていないことで一応のOKと言う事にして、引き続き作戦を続行しよう。

この後の予定としては、心神の最後を演出しなくてはいけない。 俺は徐ろに属性付加を使って、

移動属性「光速の1/2」を追加させた。

 

 途端に急な加速で地球に突っ込む心神。 それと同時に俺のバイタルは偽情報を横浜基地に送信

しておいた。 つまり何をやっているのかというと、俺は今『気絶している』状態を演出したのだ。

謂わば、戦術機が勝手に”暴走”している状態と言う事態にHQでは大慌てだろう。

 

「(・・・ま・真逆とは思うが、ユーコさんシナリオの事忘れていないよな?)

 な・何か最近丸くなってきているから、本気で まぁーちゃんと一緒に慌てている様な気がする・・・(汗;)。」

 

 そんなこんなを考えていると、アッと言う間に地球の成層圏近くまで接近してきた。 コレだけ近ければ

通常の通信などが入ってきてもおかしくない。 そう思いつつ近場の通信等を傍受してみると・・・

 

「こちら国連航空宇宙軍っ!! ビジランテ01ッ、Type-019G 心神は機体トラブルが生じたのかッ!!

 応答されたしっ!!」 とか、

 

「オイッ! ピアース中佐ッ、応答し給えっ!! こちらは合衆国宇宙軍、地球衛星軌道警備艦隊の

 サイモン少将だっ!! 聞こえていないのか?! 応答せよッ!!」 とか通信が入ってきた。

 

 中でも一番心神に近い再突入型駆逐艦は日本帝国の再突入型駆逐艦「夕凪」だった。

確かあの艦は天体観測を行って貰った時に協力してくれていた再突入型駆逐艦だった様な・・・?

確か、艦長は一文字大佐だったような・・・?? その駆逐艦から通信が入った。 一体何が起きたんだ?

 

「こちらは日本帝国・航空宇宙軍所属、『夕凪』艦長の一文字大佐だっ!!

 エイデン・ピアース中佐ッ!! 応答してくれッ!! 機体にトラブルが生じている事はこちらでも確認

 しているッ! 早急に機体を捨てて、こちらの艦に乗り移るんだっ!! 猶予はそれほどないゾッ!!」

 

「 ・・・? あーー。 こちらビジランテ01。

 Type-01G9 心神に接近中の日本帝国航空宇宙軍・再突入型駆逐艦・夕凪の一文字大佐?

 現在本機は、国際条約に基づく大規模作戦実施中。 国際協定の最優先権限を発動している作戦中

 であるため、本機への不用意な接近は国際条約違反と成り兼ねません。

 

 拠って、可及的速やかに、本機より距離を置き、至急離脱されたし。

 

 と、言いますか、夕凪はそれ以上近づくと、人工衛星軌道を大きく外れ、地球への帰還が難しくなる

 可能性が高い。 早々に元の衛星軌道までお下がり下さい。」

 

 と、注意を呼びかけた。

 

 すると、3軍揃って、応答に対しての反応を示し、更にこちらに対して呼びかけを強くした。

と言うよりも、何でこちらのエンコ・シナリオをそちらが知っているんだ?

俺が気絶している最中に、俺の知らない事態が生じているみたいで、急に不安になった。

仕方がない。 横浜HQに通信回線を開くことにしよう。 あっと、その前に偽バイタル情報の送信は

オフにしておかないと・・・。

 

「・・・あーー。 横浜HQ? こちらビジランテ01。 たった今、眼が覚めた。

 済まないが、状況を報告して欲しい。 いつの間に本機は衛星軌道上まで帰ってきたんだ?」

 

「ピアースッ!! あなた無事なのッ!!」

 

 開口一番。 HQの通信相手は、ピアティフ中尉ぢゃ無くて、ユーコさんだった。

やっぱし危惧していた通り、エンコ・シナリオの事忘れているな?

 

「ああ、ユーコさん。 おはようさん。 ・・・いや、時計を見る限り”こんばんは”かな?」

 

「んな事はドーでも良いのよッ!! あなた、無事なのねッ!! トラブルとか生じているのッ?!」

 

「・・・えっと。 トラブルと言うか、予想よりも早くに地球衛星軌道まで戻ってこれたみたいだが、

 俺って確か第三宇宙船速で航行していた筈だよね? 何でもう、衛星軌道上に到達しているの?」

 

「それはこちらが聞きたいわッ!! L1付近に到達する前に、急に光速の1/2 の速度に変更して、現状に

 至っているのよっ!!」

 

「へぁ?! 嘘? 本当に?! っかしーなぁ? 何でそんなことになったんだ?

 ま、良いか。 んで、何で俺の周りに各国の航空宇宙軍の艦艇が近づいてきているの?

 国連宇宙軍は仕方がないとして、どーして合衆国さんと日本帝国さんは呼んでいないのに来てるんだ?」

 

「・・・御免なさい。 どうやら察するに、こちらの通信を傍受されていたらしく、日本帝国の国防省が

 一早く事態に乗り出したの。 そしたら、芋づる式に・・・。」

 

「なるほど。 確かにそれは問題だね。 一度基地周辺の電波状況を調査する必要があるね。

 ま、今はそれは横に置くとして、このままじゃ、彼等が邪魔でRTBできないんですけれど?」

 

「それについては、こちらから抗議するから、もうチョット待ってて。

 それよりもあなたは、心神にトラブルが生じていないか確認して頂戴。 先程の光速移動の事もあるし、

 ひょっとすると、こちらから救助の機体を出す必要があるかもだし。」

 

「・・・いや、その必要はないよ。 俺一人だけでもRTBできるから。

 ま、機体チェックについては了解した。 ホントに洒落にならないトラブルが発生しているかもだから。

 5分後にこちらから通信を入れるよ。」

 

 そっか。 基地司令部の通信を盗聴するとは、日本帝国もヤるねぇ。

鎧衣課長の置土産とか呪いの類に思えて来た。 あば良くば、心神を確保したかったのかな?

でも、そうは問屋なのだ。 コイツは衛星軌道では破壊できそうにないから、地球から太陽方向に向けて

の途中で爆破しよう。 早速、その様にプログラムをする。 グレイ11から反物質を生成している関係で、

爆破もこれを使った方法が良いな。

んじゃ、今の速度を維持したままで地球圏から離脱させてから爆破、と。

 

 念の為、爆発が拡散しないようにシールドを展開してその中で対処するようにしておこう。

っと。そろそろ5分経ったかな?

 

「横浜HQ。 こちらビジランテ01。 機体チェックを行った所、重大なエラーを確認した。

 機体にかなりの負荷が蓄積されていた関係で、エンジンに暴走の兆候有り。

 

 他にも、機体制御プログラムの一部にバグを発見。 今直ぐには爆発などしないが、極めて危険で

 あると判断。 使用しているグレイ11から抽出した反物質を扱っている関係で、地球圏内での破棄・

 爆破は避ける方針で対応を始める。

 地球圏から十分に距離を稼ぎ、安全圏に入ってから本機は機体を破棄・爆破処分することにした。

 

 これより本機は地球衛星軌道を離れ、機体遺棄が行える宙域に向け離脱する。」

 

「チョット待ってッ! あなたッ!!

 今迎えのための手配を国連宇宙軍か日本帝国航空宇宙軍に頼むから、それまでチョット待ってッ!!」

 

「(ユーコさん、本気で焦っているな? 必要ないって言ったのに、仕方がないなぁ・・・。)

 んーー? そうまで言うなら、白銀少尉をここまで寄越してよ。

 少尉には第六世代機で衛星軌道まで来るように訓練してあるから、彼ならここまで来れるはずだよ。

 

 そしたら、他所様の手を借りなくても、RTBできるでしょ? んじゃ、そゆことで先にやっておくから、

 後は宜しくー。」

 

 マイクの向こう側でユーコさんの怒鳴り声がまだ聞こえていたが、俺はそれを問答無用にたち切った。

・・・多分今頃は、白銀君にユーコさんから指令が飛んでいる頃だろうが、あの少年が此処に来るまでに

多分仕事、終わっちゃうな・・・。

 

 いや、一々待たなくても良いか。 白銀君が戦術機に乗り込む前に、事を終わらしてしまおうっと。

 

 

 じゃ、そう言う事だから、心神よ。 ここまで世話になったな。 お前さんは十分に役に立ってくれた。

 

 お前さんの基礎データは、お前の兄弟機達に確り受け継げた。 試行錯誤はしたけれど、その基本的な

ムーバブルフレームを用いた設計思想はそのまま受け継ぐことができたし、また、発展形として、コックピット

は完全に全天周囲フレームのリニアシートに変更させ、詳細な戦域情報を標示させるまで行わせた。

 

 ついでにグレイ6を使った思考情報処理とリンクさせることで、更に戦況判断をダイレクトにパイロットに

伝えることとなったが、それらの補助としてお前に使用した全天周囲フレームは、大いに戦況処理に

役立てることになった。

 

 稼働関節部分の確保と各必須装甲を破損状況に応じて交換することで稼働時間の短略化も行えたし、

何よりグレイ9を用いた半永久的な常温超電導技術で作られた、ジェネレーターや補助バッテリーを

搭載することで、様々な兵装を保たせることで従来の戦術機よりも大幅な戦力アップにも使えたことは、

俺にとっては嬉しい誤算だった。

 

 みんな、お前が居てくれたからここまで発展できたんだ。 本当にお疲れ様だった。

 

 本当は専用の格納庫とか戦史博物館などでゆっくりして欲しいのだが、この後の人類にお前さんを、

俺達以外の各国に提供するのは危険過ぎる。

 

 俺がいなくなっても、いつかユーコさんや他の研究者に拠って、戦術機用の量子電算機がつくられたら、

お前さんが再び活躍の場を持ってしまう。 それは、BETAさん達を相手にするんじゃなくて、多分

人類同士での戦闘となるだろう。 ハッキリ言って、お前さんの力はオーバーキル過ぎる。

 

 お前さんが人類の戦争の道具になった場合、人類が滅亡する可能性が極めて高い。

俺はそんな未来は見たくない。 いや、させない。 だから、慙愧の念に耐えないが、お前さんをここで

爆破して破棄する。 ゴメンな、心神・・・。

 

 

 俺はその様に思いながら、心神の自爆プログラムをイノベイター能力を用いて入力させた。

直ぐ様俺は、心神のコックピットから地球方向に飛び出した。 ゆっくりと慣性の法則に従い俺は心神から

離れつつあるが、心神は俺がプログラムした内容に沿って、光速の半分の速度を維持して、自爆させる

予定のコースに軌道を変更した。

 

 俺はその様を見つつ、心神の周りに自爆に依る影響が地球に及ばないようにシールド属性を展開した。

大凡、太陽方向の途中にある、金星の軌道に乗った辺りで、心神は予定通りに自爆した・・・。

 

 俺は静かに敬礼をし、その後地球まで属性付加を加えて帰還した。

 

 

 俺は、慣性移動していたスピードを、属性付加で光速に変更した。 そして一気に成層圏を抜けた。

この間大気摩擦などを考慮して、耐熱シールドの属性も付加してから成層圏を抜けた。

 

 既に、大気圏内に居るわけだから、空気は薄いが一応呼吸は行える。 この先のアクションとしては、

光速で移動すると、周囲に影響が起こるので、精々が音速移動となる。現在地表から約1万kmと言う

高度だ。 普通の旅客機が通る高さなので、周囲に気を使いつつ、音速の5倍位で移動を開始した。

 

 ユーコさんとの通信を切った時から数えて、13・4分後となると思うが、とある人間が第六世代機の

格納庫に向かって移動しているのを感じ取ることができた。 大凡高度2000m、横浜基地まで10kmの

辺りから、白銀君の存在を感知できたので、彼を目印に一気に移動をするべく、別の属性を付加した。

そうして、彼が格納庫の出入口の扉を開けようとしている真横に移動を完了させた。

 

 傍から見たら、多分テレポートしてきたように見えるだろう。

それはさて置き、俺は白銀少尉の腕を捕まえて、こう言った。

 

「こら、白銀少尉ッ! 今基地内は、戦術機要員は待機中だろっ?!

 何勝手に、戦術機に乗り込もうとしているんだ?!」

 

「なっ?! は・離せよっ!! こっちは副司令命令で、スクランブルが掛かったんだっ!!

 何も聞いていなっ! い・と・は・・・ ・・・・・・ちゅ・中佐ッ?!

 えっ、だって・・・?? ピ・ピアース中佐?! あ・あんたは成層圏の向こう側で・・・ ??

 えっ?! な・何で此処に、ピアース中佐が居るんですかっ?!!」

 

 揶揄かい(からかい)成功っ(悪笑)!

 

「コラッ! 白銀少尉ッ!!

 貴様上官に対して”あんた”呼ばわりとは良い度胸だっ!! 上官侮辱罪で営巣入りでもしたいのかッ!!」

 

「ハッ! も・申し訳有りませんッ!!

 で・ですが、私はピアース中佐の上官である香月副司令からの上位命令で動いておりますっ!!

 ご・ご容赦を願いますっ!!」

 

「うん。 多分そんな事だろうと思った。 だから、許す。

 で・だ、お前さんの受けた命令って、緊急に俺を迎えに第六世代機で大気圏越えをしろ、と言う命令

 だったんだろうが、生憎と俺は此処に居るわけで、今お前さんが副司令の命令を実行したところで、

 無駄足になっちまうんだな、コレが。

 

 ってな訳で、白銀少尉の命令は取り消しだ。 俺が許す。

 その代わりに、今俺が此処に居ることを司令部に報告してくれ。 多分ユーコさんのことだから、

 俺との通信が取れなくなって焦っていると思うんだ。」

 

「ハッ! 直ちに、基地司令部に通信を行います。

 ピアース中佐に於かれましては、スミマセンが暫く此処でお待ちくださいっ!!」

 

「あーー。 ハイハイ。 好きにして頂戴。」

 

 そんなやり取りの後、白銀君を通じて司令部へ報告してもらった。

その後、俺と白銀君は彼が司令部建屋から今居る第六世代機戦術機の格納庫までに乗ってきたジープに

乗り込み、司令部建屋に戻るために移動を開始した。 勿論運転は白銀少尉が行っている。

ジープが走りだして直に、俺は何気なく少尉に声を掛けた。

 

「・・・白銀少尉。 チョット疲れたから、暫く休む。

 基地の入り口に着いたら、起こしてくれ。」

 

「了解しましたッ。 中佐。」

 

 俺は、その返事を聞きながら、意識を飛ばせた。

月面からの帰還途中で十分睡眠休憩を取っていたのだが、何故か俺が意図しないのに、その様な事を

言っていた。 そうしなくてはいけない様に感じたからだ。

 

 

 

「(珍しいじゃないか。 随分と久しぶりだな、アテナ。)」

 

 意識を飛ばした俺は、目の前に俺の守護天使が居ることを認識したので、いつもの通りに対応した。

だが、普段でのコンタクトは、俺の目の前に彼女が現れることは無い。

 何時もと異なる対応に、本当は戸惑いを見せたいのだが、多分俺が思っているとおりだとしたら、

彼女は彼女じゃない。

 

< ・・・ホント。 随分とお話していなかったね。

 でね、今日はチョット相談があってきたんだ。

 

「(・・・ふーーん。 相談、ねぇ・・・。)」

 

<実はね、アンタの守護天使についてなんだけれど、ちょい天界の都合でね、継続が難しくなりそう

 なのよ。 ちょっと、私にも急なお仕事が入ってきて、アンタの守護とかやっていられない状況なのよ。

 

「(ふーーん。 それは大変だな。 で? 何時天界に戻るんだ?)」

 

<うん。 今直ぐってわけじゃないんだけれど、近い将来に於いて、とだけ言っておくわ。

 だから、アンタがこの世界に居られる時間もそれほど多くは居られないの。 御免なさい。

 

「(・・・そっか。 ま、しゃーなしだな。 元から天界の力を間借りしていたものだし、元々俺も2月中に

 息を引き取る、みたいなシナリオにしていたから、そう言う事もあるさ。)」

 

<なんか随分とあっさりしているわね・・・? なにか変なものでも食べたの?

 

「(オイオイ。 随分な言われ様だな。

 そりゃ、今まで担当してきた転生者にそんな事言ったら猛反対くらうだろうけど、貴女の場合は立場が

 あるだろうから、それは仕方がないと思うよ、俺でも。

 

 だけれども、良い加減正体を表したらどうなんですか? 貴女はアテナじゃないでしょ?)」

 

 俺は此処で言葉を強く述べた。

その様に感じたのは以前からだった。 具体的には最初の警告を受けた時からだ。

あの後、不安に思って霞に”光速攻撃の矛盾点”を相談した切欠は、正にこの女神様からの警告を

受けたからだった。

 

 ゼウス神やアテナ神同様、接触していない”第三の”眷属との邂逅だ。

 

 俺の自意識も、否応なくテンションが高まり、その対応に警戒心が強くなった。

反対に言えば、前二人の眷属は、俺に無礼な対応を取ったので、それを理由に舐めた対応に切り替えたが、

本来の眷属(神、悪魔など)の接触には神経を使うものだと俺は考えている。

 

 それは、人間(ひと)如きが逆立ちしても対抗できる存在ではないため、最低限度の”敬意”を払う

必要性があると俺は考えているからだった。

 

 のっけから、俺を謀る事はしていたが、”謎を匂わせる”様なアプローチから入ってきた辺りは

舐めた対応ができないことのサインだと思って間違いはないだろう。

 

<・・・どうして私がアテナじゃ無いと思うのかな?

 

 そらきた。 普通はそう言う対応から、アプローチしてくるのが定石だ。

前二人の対応が余りにも残念であり、アバウト過ぎたんだ。 俺は警戒を緩めず、言葉を選びつつ対応を

開始した。

 

「(そりゃ、今までもそう言う対応して来たじゃないですか。

 明らかに、そして露骨に正体を隠そうともしない口調で対応した事が、幾度と有りましたよね?

 俺が察するに、アテナの上位女神様の可能性が高いと考えたら、”ヘラ女神様”辺りしか思い浮かび

 ませんでしたよ。)」

 

<・・・くっ。 くくくっ・・・・・・。 くっゎあははっはははははぁーーー・・・・・・。

 ・・・フン。 流石に馬鹿な人間でも気づくか。 確かに私はアテナではない。

 

 正体については、お前が予想したとおりだ、人間。 だが、『ヘラ』と言う名称ではないな。

 その呼び名は、人間どもが勝手に呼ぶために付けた名よ。 ま、発音が難しいと言う事もあって

 仕方がないのは理解できるがな。

 

「(はぁ、そうですか。 ですが、私はゼウス神やアテナ神同様、ヘラ神の名称しか存じません。

 また、真名をお伺いしてもお呼びできないのであれば、申し訳有りませんが『ヘラ様』と呼ばさせて

 頂きたく存じます。)」

 

<・・・まぁ、良いだろう。

 して、先ほどの件だが、汝に対して神界の能力をこれ以上使うことは許されぬ。

 この先は、女神特典以外で取り入れた各能力は使えなくなるものと理解せよ。

 

「(・・・そちら様のご事情については理解しました。

 私としても、全ての能力を欲するのでは有りませんし、今生における私の残生存時間の残り全てを

 捧げても惜しく無いと考えております。

 その上で今一度、ヘラ神様のお力をお借りしたいのですが、宜しいでしょうか?)」

 

<何じゃ? 何を為すがために手を借りたいと申すのか?

 

「(ハイ。 この後に起こるだろう事態について、以下の準備を残しておきたいと思います。

 

 一つ、今の私の活動できる時間をお教え下さい。

 一つ、この世界に於いて私が考えました想定事項を残しておきたいので、その手助けをお願いしたい

 です。)」

 

<・・・何とも虫の良いことをヌケヌケと申したものよな?

 何故(なにゆえ)私がお前如きの願いを叶えねばならぬのだ?

 

 この様に最後通告してやるのだけでも有り難いとひれ伏すべきなのに、その上願いがあるだと?

 図々しいにも程があるわっ!!

 

 ・・・ま、普通はそう思うよな。 ・・・あとそれと、多分俺の意思や思考は相手の女神様には筒抜け

だろうから、下手な考えは起こさないように注意しよう。

 

 んでは、こちらの対応を特と御覧あれ!

 

「(はい。左様ですね。 仰られる通りだと思います。

 ですが、もう少々だけ御耳を拝借させて下さい。

 

 まず最初の願いは、私が活動できる制限時間を確認したいが為であります。

 先ほど残生存時間の全てを捧げると申しましたが、最低限の私が活動できる時間を確保した上で、

 残りの時間を全て捧げるという内容に変更させて下さい。

 

 そして、その次の願いは、想定した事態が発生した場合に備えて事を為すにあたり、ある程度の

 備えを残しておきたいのです。

 これの補完をヘラ神様の能力を使い行わせて頂きたくお願い致します。

 

 あと、最後にできればで結構ですが、アテナ神様にご挨拶したいと思います。)」

 

<・・・最後の挨拶云々についてで言うならば、もう既に此処にはアテナ神は居ない。

 故に、お前からその様な挨拶をしていたと言うことだけ、後から伝えておいてやろう。

 

 私ができることなどそれくらいだ。

 どうして私が態々お前の想定事項とやらを行わせるために力を貸さなくてはならないのか?

 

「(確かに仰るとおりですが、私ごときが上位女神様に対して、これ以上の供物はご用意できません。

 敷いてあげれるなら、とてもご満足頂けないとは存じますが、私自身の魂くらいです。

 

 それは、今は横に置くとして、今までヘラ神様の加護の元、異星のBETA共を駆逐して来た訳ですが、

 コレを途中で放り投げるというのも、”画竜点睛を欠く”行いであり、私などはそれが勿体無いと

 感じた次第です。

 それに対して、私如きが用意した準備では有りますが、是非完結させるための道筋を残し、多少なりとも

 残る者への餞にしてやりたいと思い、お願い致しました。)」

 

<・・・フム。 確かに汝が申すことにも一理ある。

 ・・・では、座興に過ぎぬだろうが、やり残したこととやらを上げてみよ。

 但し、途中でつまらぬことを申した時は問答無用に引き上げると思え。

 

 ・・・ふぅ。 何とか”首の皮一枚”で対応が続けられそうだ。

相変わらず気が抜けないし、相変わらず手のひらで踊らされているだろうけど、我が想いを成就させる

にあたっての道筋を立てなければ・・・。 気を抜いたら即ゲームオーバーだ・・・。

 

「(ありがとうございます、ヘラ神様。 ヘラ神様の寛大なるお心に全身全霊、感謝致します。

 

 では、私がやり残した事についてご説明します。

 

 その一として、私の身代わりとして鑑純夏の復活を行いたいと思います。

 何やかやと申しましても、私はこの物語の主役では有りません。 この物語を補助し別の物語に変更

 させるが為にしか作用できないのが私という立場です。

 ですので、本来の物語の主人公達の一人であり、ここまでに登場していない人物を投入することで

 物語本来のシナリオに戻らせる必要が有ります。

 

 その為の実験を涼宮中尉の両足の再生と言う別シナリオで確認したのです。

 

 ですから、本来の主役の一人である鑑純夏の完全復活は必要と考えます。

 また、現時点での彼女については、その背景を加味して、ヘラ神様の加護に依る特殊能力を

 持たせることを願います。 能力としては身体強化と彼女の必殺技が使えるようにする事くらいでしょう。

 主に白銀少尉に対しての制裁用能力と言ったところでしょうか。

 

 続いて、その二として、V.E.D. 部隊の教導官としての卒業を行います。

 主人公たちは結局の所、総戦技演習を実施せずに少尉任官致しました。 コレでは実際の戦闘経験

 が無い状態での教導官となってしまいます。

 

 通常の戦技教導官はヘラ神様もご存知の通り、百戦錬磨の古兵どもが行うのが通常です。

 新技術と新戦術をどの様に戦に役立てるのかを教導できない教官ほど役立たずは居ないことでしょう。

 それを補完するために、V.E.D. だけでハイヴ攻略巡りを実施させようと思います。

 

 最後のその三ですが、できればと成りますが、”温泉作戦”を実施したいのです。

 そ・その、恐らく主人公たちのフォローが及ばないサイドストーリーだと思うのですが、伊隅大尉の

 恋愛事情の助けとなれれば、この作品の主人公たちが関わっていただろう所を、私が代わりに

 行うことで、神々の黄昏作戦第二段階の終決を早めてくれるだろうと言う期待から、先付け代わりに

 褒美をやっておきたいのです。

 

 以上が私がやり残したことです。)」

 

<・・・・・・。 なん・何たる・・・。 ま、良いか。 所詮は人間のくだらぬ戯言よのぅ・・・。

 

 だがしかし。 何だその三つ目の願いは? 温泉作戦だと? 何だそれは?

 

「(はぁ・・・。 私も状況がよく理解しておりませんのですが、何でも伊隅大尉には他に3人の姉妹がいる

 そうで、4人同時に一人の男に想いを寄せているらしいのです。

 

 ですが、その男というのが白銀少尉以上の”鈍感”であり”優柔不断”な男らしいです。

 それで、その4人にそれとなく言い寄られているのに、くっつかないとか言うらしいです。

 何でも幼なじみはその手のサインを見間違える、とか見落とす、とか申しておりました。

 

 で、温泉作戦とは、伊隅大尉と想い人の男を一緒に温泉に入れ、大尉の好意を男に伝えて、

 一気に他の姉妹達からもぎ取り、大尉のモノにしてしまえ、と言う主旨の作戦です。)」

 

<・・・その企み。 面白そうじゃな。

 何時(いつ)その座興を行うつもりなのじゃ?

 

 おっ?! 意外にも食いついてきたな。 だけれども、準備とかコミコミで考えると、結構な手間が

掛かるんだよな、コレ。 伊隅大尉の想い人である帝国軍中尉だったっけ? を連れてこないといけ無い

し、温泉付き旅館の手配もしなきゃだし・・・。 悩むのは後にしよう。 今は全力で対応を続けないと・・・。

 

「(はい。 早ければ、今月末辺りが宜しいかと。 年を挟んで1月に行っても良いかも知れません。

 ですので、後三回は目覚める必要があると思います。)」

 

<・・・フム。 何か上手いことを言った積もりかも知れんが、そんなことくらいで私が動くとでも

 思っているのか?

 

「(いえいえ、そんな滅相もございません。

 ただどうでしょう? 高位女神様もお忙しい仕事の合間に、偶には温泉に入って骨休めすると言う

 座興があっても良いように思います。

 

 特にヘラ神様に於かれましては、ご自身のお役目については真面目に取り組まれることで有名ですので、

 その合間に休憩を挟まれても、誰も兎にも角にも言う神々はおられ無い様に思います。

 

 それに何時もお世話になっておりましたので、座興の一つとしてお楽しみいただければ、

 私にとっても恩返しのつもりで対応させて頂けたなら、それこそ望外の喜びであります。)」

 

<フン・・・。 汝の申したい事については大方理解した。 ま・良いだろう。

 

 別に温泉に惹かれたと言う訳ではないぞ。 その願いにお前の利となる部分が無かった事を

 鑑みて、自己の益を追求していない部分を汲んでやろうと言う事だけだからな。

 

 精々私に感謝して尽くすが良いだろう。

 

「(・・・貴女様による寛大なる配慮、感謝の極みに御座います。 ヘラ神様!

 先程の件、早速準備に取り掛かり、滞ること無く完遂させて頂きます。 あと、ついでにその他二つも

 同様にさせて頂きたく・・・。 宜しくお願いします。)」

 

<・・・良いでしょう。

 で? 当初の予定通りに2月中に息を引き取る、と言うシナリオで良いのか?

 

「(・・・はい。 私供人間の欲というものには、制限が有りません。

 それ故に、一つの区切りと言うものを設けなければ、何時まででもそれが続いてしまいそうで、

 私といたしましても、それは見っとも無い以外の何者でも無いと思います。

 

 折角得た二人の伴侶との別れはとても辛い物がありますが、儚いほど短いからこそ、お互いを大事に

 して参りたいと考えます。

 

 その為に2月中旬での寿命というものを自ら設定したのです。)」

 

<・・・些か身勝手であると思わなくはないが、確かに我等とその方等人間を同一視する方が問題か。

 では、貴様の生命時間を限定化して、その分の時間と命を私に委ねると言う事で良いのだな?

 

 その為の活動回数を設定したいと、そう申すのだな?

 

「(はい。 その様にご配慮頂けましたら、私が思い残すことは最早ございません。

 安心して冥府に趨き、後はヘラ神様の思いのとおりに処されても、文句など申しません。)」

 

<・・・・・・では、汝はコレ以降の睡眠は5回を限度とする。

 そして、生きている間は今までどおりの能力は使えるが、ある日突然使えなくなるかも知れぬことを

 わきまえよ。

 

 それらの不都合を解消するには、深い睡眠が必要と成るだろう。 但し、浅い眠りは回数には入ら

 ないが、能力の使用限界を飛び越えてしまうと、その分眠りが深く続く様になるだろう。

 

 リミットが2月15日正午0時を以って、汝の命の灯火は消え失せる。

 

 どの様な神的配慮が加わろうと、そのタイミングを逃せば、汝は一生後悔をするだろう。

 

 ・・・以上の条件を飲んで、汝は我との契約を受け入れるつもりは有るか、否か?

 

「(・・・謹んで、お受けさせて頂きます。

 再三に渡り同じ表現で申し訳有りませんが、ヘラ神様の寛大なるご配慮に、全身全霊を以って感謝

 致します。)」

 

 今回の会合と新たな契約を締結し、俺はこのオッカナイ上位女神様との邂逅を終えた。

俺の意識は、再び活動するために目覚めるのだった。

 

 

 

2002年02月14日 木曜日 13時04分

国連軍横浜基地 地上 PX内カフェテリア

エイデン・ピアース中佐

 

 

 

 ・・・おっかない女神様との邂逅から早くも2ヶ月少々が経過した。

もう明日は、俺の命の日が消えるという瀬戸際だが、今更後悔はない。

 

 この2ヶ月というもの、俺なりに必死にあがいて生きてきた。

チート持ちの俺が、形振り構わずにゴリ押しとも取れる方法で、色々な対応を行ってきた。

 

 ヘラ神との約束を基本として対応を行ってきたが、それ以外にもそれらを取り巻く諸般の対応に

迫られて対応した。 色々とやり損なっている事もあるだろうが、今の俺にはこれが精一杯だ。

 

 

 いつもの通り、それ程多くの量は必要としていないのだが、霞が同席している事も有り、定時の昼食を

取った後、霞が後片付けで離席している間に、俺は取り留めのない感慨深い心情に囚われていた。

 

 この様にカフェテリアの安楽椅子に腰掛けて、PXの外を眺めていると言うのは実に何年ぶりのこと

だと思う。 普段の生活であったなら、多分食事には時間を気にせずに過ごしているのだろうが、

”健全な生活”を心がけないと体調に変調が起こり、引いてはそれが原因で入院する事になるので、

朝昼晩と三度の食事とお昼寝という、どこかのご隠居さんの様な生活が一週間ほど続いていた。

 

 ・・・今の俺は、様々なチート能力が使用できなくなっており、肉体的にも70歳代の男性老人と

ほとんど変わらないくらいに、一気に老けてきている。

 

 この兆候が見つかったのが、ほんの10日前だったのだ。 その為、今では移動には電動車椅子が

必須と成り、通常生活のお目付け役に霞が着いてくれていた。

 

 やはり、ヘラ神様が仰っていたように、「ある日突然能力が使えなくなる」と述べられていたが、

この事を指しておられたのだと理解できたら、不思議と納得ができたのだった。

というのも、意識を失う程の深い眠りというものを、3回ほど行って周りが気を揉んでいたので、俺も周りも

徐々にそうなるのは、或る意味心構えができる準備期間のようなものかも知れなかった。

 

 

 ・・・それにしても、様々な事を精一杯にやって来た。 その中でも最初に思い浮かぶ事柄としては、

やはり一番手こずった”鑑純夏復活計画”だろうな。

 

 何が厄介だったかというと、脳と骨髄だけと成って、思考がマイナス方向にリフレインしまくっていて、

外部からの接触は甲1号の重頭脳級BETAさんだけとなっていた事が一番厄介だった。

つまり、それ以外からの信号を一切受け付けないものだから、BETAさん回線以外の取っ掛かりを探す、

と言葉にすれば簡単だが、この作業が一番大変だった。

 

 いや、違うか。 単にアクセスだけならば行えたからな。 本当の”鑑純夏”としての意識体にアクセス

するのが大変だったんだ。 如何に重頭脳級BETAさんと言っても、本来の”彼女”へのアクセスは行え

ていなかった、と言うのが真実だった。 まぁ、普通に考えて、嫌な相手に話しかけられたら誰でも無視

するのは普通の女性の対応だからな。

 

 如何に俺からのアクセスがBETAさん達からのアクセスではないと鑑純夏嬢に解らせるのか、が

第一関門だった。 ・・・何が厄介かだったかと言うと、アクセスした先が本当の”鑑純夏”では無かった

ことだ。 つまり、無数の空蝉相手に、砂上から珠玉を探しだすかの様な作業を延々と続けた。

 

 本人を見つけたと思っていても、次の瞬間には『ハズレ』と札が表示されるかのような作業だった。

・・・いや違うな。 例えるなら、もっとこう・・・・・・。

あっ?! 超地獄のモード6にループ2000回転を4〜5回踏襲して居る最中のパチスロと同じだな、ぅん。

この後にモード1の天国モードが待っていると思えばこそ、十数万を費やしている様な感覚かな?

ただ、それであっても手元がやっと取り戻せるかどうかの瀬戸際だと思う。

 

 下手打てば、モード6を繰り返す羽目に成るかも知れないからな・・・。

 

 んで、やっと彼女との邂逅ができたのだが、そこからの彼女自身を説得したのが、また一苦労だった。

第二関門は生きる希望を見いだせない彼女を説得して、何とか生きる手立てを見いだせる様に仕向けた

ことだった。 勿論この段階では、白銀君の事は引き合いに出していない。

 

 彼女の中では、白銀君は想像の通り、純夏嬢の目の前で惨殺されていて、彼の死は認識されていた

のだから、この時点で平行世界の白銀君が来ていることを教えたら、そこに意識が集中してしまう恐れが

あったので、先に彼女自身の生存意義を見出すことに前提をおいた。

 

 最後の第三関門として、生きてこの世界の末路について、見届ける為の知識や技術等を知らせた。

この第三関門の時点では、霞にも補佐を頼んだ。 ・・・多分、霞の補佐が無ければ純夏嬢と言えども

スムーズに事は運ばなかっただろう。 それ程、俺以上に純夏嬢は霞を信頼してくれた。

 

 それら一連の情報を理解した上で、彼女の肉体の再生を行った。

本人は肉体を17歳に戻すことを希望したが、俺はそれをさせずに23歳に設定した状態で構成を行った。

 

「・・・なっ?! 何でさっ!! 別に私の体なのに、好きにして良いでしょっ!!

 他人のアンタにそんな事する権限あるもんかっ!!

 

 ズルしているわけでもないのに、何で17歳じゃダメなのッ?!」

 

 ・・・とは、開口一番に、彼女からクレームを受けた台詞だ。

 

 確かに、普通に考えれば元の状態に戻りたいと願うのは、無理のない理由だと言える。

だが、如何に再現率が高いとは言え、復元した体細胞がそこから更に成長を行おうとした場合、

”過去の鑑純夏と同じ”に成るかは未知数だ。 如何に最新のクローニング技術を用いていても、新しい

体組織がデザインした通りに成るとは限らない。

 

 言ってしまえば、肉体の再生は行えても成長まで保証しているわけではない、と言うことが本当の理由

だ。 ある程度の調整は行えるが、必ずしも”元の鑑純夏”の状態に戻る保証ができなかった。

だから、成長期が止まり、体組織として成人化させることで、より完成度の高い肉体に精製することで、

今後の彼女の活動を支援したいと言う思惑で、ワザと年齢を23歳に設定し直したのだ。

 

 また俺は、此処で彼女に白銀君のことについて説明をした。

 

 死んだはずの白銀君が平行世界から来ていること。 その原因が彼女自身にあること。

 

 肉体を再生した後の彼女自身の立ち位置。 第二関門で決意した生きるための目標と、生き返った

後の彼女の立ち位置から、それを為すためには、若干”17歳の女の子”では立場上弱いので、23歳の

成人女性に設定したことを付け加えた。

 

 一応の説明はしたのだが、やはり平行世界から白銀君が来ていることに、純夏嬢は一番の衝撃を

受けたようだった。 この一連の遣り取りについて、彼女が納得するのにはかなりの時間を要した程だった。

 

 だが時間的にも押していることも有り、肉体の再生やら復活後のリハビリや一般人から軍人に成る

ためのブートキャンプや、精鋭と呼ばれる軍人教育に対応するまでを超倍速訓練を実施して、2ヶ月で

日本帝国皇帝陛下直属の禁軍士官に精錬できたのは、我ながら凄いと思った。

 

 ま、普通にやっていたら10年掛かっても終わらないのは想像に固くなかったので、そこはいつもの通りに

”魔女の大釜”を経由して一週間の間、つまり24時間✕7日間ぶっ続けで洗脳(?)教育した賜物であった

事は言うまでもない(作者注 : ・・・オイ、本当に鬼かお前は?)。

 

 ・・・いやまぁ、俺も大外だが半分以上は、絶対ヘラ神様の加護があって成功したのだと確信している(汗;)。

 

 そんなこんなで、2月に入って直ぐにV.E.D. 部隊の総戦技演習の立会に出かけたのだが、

その際に彼女を俺の補佐として、副操縦士として付き添わせて参加させた。

 

 勿論、まぁーちゃん以下V.E.D.部隊の誰にも彼女の存在を話していなかったので、演習中であっても

一時噂が立ったのは言うまでもない。

 心無いとある隊員は「中佐が浮気したっ!!」と言い、それに反応したまぁーちゃんを宥めるのには苦労

した。 結局純夏嬢は、ノーマルスーツのヘルメットを取らずにいたので、顔を見られはしなかったし、

精神感応についても、外部からの感応を一切ブロックしていたので、余計な情報はV.E.D.部隊にも

漏れてはいない。

 だが、スーツの外面からは、その人物が女性であることは周知された。 また、明らかに十代女性の

それでは無く、二十代女性が醸し出す”色気”や”凛とした雰囲気”も同時に知れ渡ったので、俺が女性

秘書でも随行させていると思われたらしい。 ・・・まさかその女性が純夏嬢であるとは、白銀君も理解

できていなかった。

 

「静まれっ!! 総戦技演習中だぞっ!!

 個人的な感情に左右されるなっ!! 目的を遂行するために、任務に集中しろっ!!

 

 それともコレがお前たちの限界かっ?! こんな事くらいで、お前たちの決心は脆くも潰えるのかっ?!」

 

 俺は思わず激高しかけた。 この時点での俺の能力は、辛うじて女神特典で”何でも乗りこなす”が

有効だったが、それでも70歳代の体力しか無い俺にとっては、戦術機の操縦は拷問に近い体感だった。

 そう言う事情を知ってか知らずとは言え、こんな結末を見たいがために、能力を幾つも失っている状態

なのに横浜くんだりから、隣国である韓国領江原道鉄原郡の甲20号ハイヴ最深部にまでやって来たのかと

思ったら、考えるより先に叫んでいた。

 

 俺の檄に感化されたのか、V.E.D.部隊はその後の演習に戻った。

そして、結局総戦技演習は成功裏に終わった。 俺は演習後にまぁーちゃんから制裁を受けたが・・・。

 

 ・・・ま、そんなこんなで、彼女は俺の後任として、今後はA−01連隊を率いてくれるだろう。

 

 

 

 あと、前後するが、成果の見返りとして、純夏嬢の錬成先として日本帝国の禁軍へ教導を頼んだ。

と言うのも、最初は煌武院殿下を通じてとある相談事が持ち込まれたからだった。

 

 曰く『日本帝国皇帝の病状改善に対応できる策はないか?』と言う事だった。

 

 どうして、日本帝国が皇帝からの勅命ではなく、摂政である”政威大将軍”が出っ張ってきているのかは、

最初は”そう言う世情”である為と思っていたのだが、違っていた。

 

 第二次大戦以降から10年ほどして、皇帝陛下は病気療養に入られており、小康状態を繰り返して

おられたらしく、政については内閣府が対応するが、その他の対応について、皇帝の代わりにはならない

ものの、国事の一部を代行させるために、政威大将軍が必要となった。

 

 また、第二次大戦における政威大将軍、つまり煌武院殿下の前任者は、九条 宗正公なのだが、彼は

第二次大戦における、日本帝国の敗戦の責任を取り将軍職を辞任した。

 その後、本人は責任を取って自害することで償おうとしたが、他の4家の摂家衆からの説得と、

何より皇帝陛下からの”やんごとなき御方からの”直令により、”摂家職を引退”と言う形で責任を取った。

 

 そんで、次代の将軍として、煌武院悠陽殿下が登場と成るのだが、殿下がその任に着いたのは、

今から4年前の若干13歳と言う若さだった。 それまでの数十年間は、将軍職は空位のままであった。

それは、他の3家の摂家衆(但し、斑鳩公は政に関しては無関与されていた。 彼の御仁は飽く迄も

実働部隊の指揮官としての立場を守り続けていた)が筆頭と成り、政に対応していたのだが、激化する

BETA大戦を経て、一人また一人と、有能な人材が目減りして行き、最後に残ったのが煌武院悠陽殿下

のみとなってしまった。

 

 つまり摂家衆としても、もう後がない状態であり、煌武院殿下とて起死回生の一手の為、神々の黄昏

作戦が終了してからの相談となった。

 

 対応方法については、思考情報処理を応用することで対応するしかなく、ぎりぎりでグレイ6を使用して

純夏嬢に用いた施術方法の応用を導入することで、皇帝陛下ご本人との意思疎通を行うという事を提案した。

 勿論、陛下のご高齢に拠る心身の衰えについては、対応外の事だったので提案しなかったが、あくまで

陛下ご本人への対応と、後継者指名などの諸般の手続きについて疎通を行うことに専念した。

 

 人間の寿命等を延ばす事もある程度は行えるとは思うが、延命についての倫理など、議論しなくては

いけない部分をすっ飛ばして良い訳もないのは一般論的に当たり前で、しかもそれが一国の元首の

場合であるので、その御方が倫理を曲げてまで延命を望まれるはずもなく、煌武院殿下もそこには言及

しなかった。

 

 それら諸々を含め対応を行った所、その功績として鑑嬢の錬成となったわけだが、この対応について

殿下以外の者から物言いが出てきた。

 

 それは一部の斯衛士官と国防省陸・海・空宙軍士官から、第五世代機以降の新戦術機の発注だった。

どうやら心神の成果を見ていて、俺が提唱している新戦術機構想と言う物の有用性を誤解した連中が

いたらしい。

 これについては、煌武院殿下から却下されていたのだが、どこをどうしたのか何故か皇帝陛下にも

それらの情報が伝播されており、殿下以上の最上位である皇帝陛下から問い合わせが生じてしまった。

 

 俺は一応、概要としての情報の開示を行い、第五世代機以降の役割を解説した。

 

 皇帝陛下に対しての回答を行う際に、立会として他の関係者も居たのだが、第七世代機の仕様について

披露していたら、斯衛軍の紅蓮大将から電磁伸縮炭素帯が、人間を含めた生物の筋肉に見立てた様な

仕様に成っているのか? との質問を受けた。

 

 それに対して”是である”と回答したら、戦術機レベルにて達人が行う剣戟の再現が可能か? と

続いて質問を受けた。

 コレについても同じく”是”と答えたら、興奮して第七世代機の発注を言われた。

 

 ・・・今思うと、この説明では失敗するだろうと思った。

 

 機体を納入するくらいなら問題はないが、結局ブッシュ大統領にしたのと同様に、新戦術機構想は

国家間の思惑に左右されない為の条件が必要であることを認めさせなくてはいけない。

 

 要は対人戦には使用してはいけなくて、その攻撃対象はあくまでBETAさん達一択でなくてはいけない

旨を解説した。

 

 当初の俺としては、紅蓮大将であれば説得できると甘い見通しを持っていたことは認めよう。

 

 俺は、紅蓮大将本人だけなら、直ぐに了承を得られると思っていた。 だが、それが国家における

軍隊に適用されるとなると、幾ら紅蓮大将相手でも飲んでもらえるかというと・・・

 

「・・・言わんとすることは分かるが、斯衛を始めとする日本帝国軍にとって、貴殿からの要請は

 了承しかねる。」

 

 その様に言われた。

 

 紅蓮大将であっても、俺が提唱する真意は理解できているが、”人殺しに使うな”と言われる兵器は

扱いきれないわな。

 

 ぅん。 若干期待はしていたが、そう答えられるかも知れないかも、と予想していたよ。

 

「・・・では、アメリカ合衆国大統領への回答と同じく、日本帝国の皆様にも同じように申し上げましょう。

 新戦術機構想や思考情報処理などの技術の提供について、今回特例として皇帝陛下の医療の手助け

 に回したもの以外の協力は、これ以上は行えません、と。」

 

 途端に雰囲気が悪くなった。 一介の合衆国人である俺と周りに居る日本人の官僚や政治家、軍人

達が敵対したと言っても良いだろう。

 

 だが、この日本人の中には、煌武院悠陽殿下もいらした。 彼女は険悪になる雰囲気を和らげ、

交渉については後日対応を行うと言う提案をし、この場を一旦預かりとした。

 この様子を思考情報処理を通じて見ていた皇帝陛下も彼女の提案を是としたので、一旦この問題は

棚上げとなった。

 

 ま、俺的には宿題が残っただけの形となったが、今急いても始まらないのだから、後日別の人間を

交えて対応してもらうことにした。 ・・・もう俺の預り切れる範囲を外れているのかも知れない、と思った。

 

 

 

 ・・・あとは・・・。

 

 そ~言えば、今年に入ってから、昇進しました。 何故か中佐から一気に中将に4段階も特進しました。

何故だろう?? 曲がりなりにも将官ともなれば、国連軍の顔としての役割が追加されると言うことと、

俺に足かせでも掛けたかったのかも知れないかな?

 

 ま、確かに現場に戦術機を駆って出かけるという事はできなくなったとは思うけどさ・・・。

でも、V.E.D.部隊の総戦技演習には鑑嬢と連れ立って出かけましたけど、あんま意味なかったね。

 

 ・・・ああ、そう言えば温泉作戦、したっけ・・・。

思惑通りに成功して、伊隅大尉は意中の恋人を奪取できました、とさ。 年末の忙しい時に行ったけれど、

よくあのタイミングで温泉旅館を貸しきれたと、今思うと感心するわ。

 

 ユーコさん、相当無理してたな。 ホント出来た女房だよ。

 

 

 後細々としたことを言えば、魔女の大釜や物質転送機、リプリケーターとかの副産次的成果物等を

纏めてとある場所に移し替えたな。 やはり、横浜基地に置きっぱはマズイとかになって、プトレマイオスⅡの

様な高速宇宙巡洋艦を用意して、その中に色々と設置した。

 プトレマイオスⅡは高速宇宙巡洋艦じゃないけれど、もう武装などが巡洋艦だと言って良いと思う。

 

 うーーんっと。 後は・・・ 後は・・・ ・・・・・・。

 

「・・・パパ、どうしたの? 難しい顔をして、何かあったの?」

 

 そう言いつつ、霞がトレーにマグカップを載せて席に戻って来た。

いつも俺の面倒を見てくれている霞が、何時も飲んでいる飲み物じゃないものをオーダーして運んで来た。

 

「・・・ああ、いや何でもないよ。

 色々な仕事が終わって、それを思い出していたんだよ。」

 

 ・・・あ、そう言えば、養子縁組して霞を引き取ったんだっけ。

戸籍上は、俺とユーコさんは夫婦と言うことになっているので、この戸籍の中に霞を養女として組み込んだ。

一応、それ以降は俺のことを”パパ”と呼び、ユーコさんを”博士”から”ユーコママ”に変更してくれた。

(因みにまぁーちゃんを霞は”まりもママ”と呼んでいる)

 

「・・・そう?

 はい、お待ちどう様です。 パパは甘い飲み物は好きですか?」

 

 そう言い出された飲み物はホットチョコレート(ココア)だった。 ぅん。今日はバレンタインデーだったな。

誰かに何か吹きこまれたのかもしれないな。

 

「ああ、ありがとう霞。 おや? ホットチョコレートじゃないか。

 これは今時珍しい飲み物だね。 ・・・甘い飲み物は嫌いじゃないが、実はコイツの飲み方については、

 ちょっと”俺風”で飲みたいのだが、良いかな?」

 

「・・・? ”俺風”??」

 

「ぅん。 実は個人的に、味が薄いように感じてしまうんだ。

 本来は”チョコレートの風味”を楽しめる飲み物だと思うんだが、お茶請けとして特別甘いお菓子とか

 無いと、俺は味が薄いと思うよ。 だから砂糖モドキを大量に入れたいんだけれど、良いかな?」

 

 その様に述べると霞は”子供みたい”と笑いながら、砂糖とホワイトの入った小瓶を提供してくれた。

俺はそれらを適量(傍から見ると大量に)入れて、甘々のホットチョコレートを飲んで、一心地つけた。

 

「 ・・・ん。 やっぱり、ホットチョコレートはこうでなくっちゃな。

 ありがとう霞。 娘から貰うチョコレートというものは、父親として結構嬉しいものがあるんだな。

 パパ、初めて知ったよ。」

 

 何か、どっかの”タマパパ”の事を揶揄できそうにないな。

霞は元から可愛い娘だったが、親子として考えてもこの娘は相当可愛いと感じた。

 

 ・・・だが、このお返しは時間的に無理がある。 この借りを返せない事を残念に思っていたら、

反対にある事について、改めて霞にお願いごとをしないといけないことに気がついた。

 

「・・・改めて、来月のホワイトデーのお返しができないことが悔やまれる。

 何か手持ちで、プレゼントできる物があれば良かったんだが・・・。

 

 ぅん? そう言えば、こんな物もあったな・・・。」

 

 そう言いつつ、俺はポケットに入っていたiphone を取り出した。

型としては古い5s の64GB と呼ばれている機種だった。 そうだ、コイツをプレゼントしよう。

使い古しの中古だが、もう俺には用のないモノとなるだろうし、多機能だから使い勝手は良いはずだ。

 

「こいつはね、霞。 パパが元いた世界から持ってきた携帯電話機なんだ。

 公衆回線がこの世界の規格に合っていないから、電話としては使用できないと思う。

 でも、この携帯電話には、様々なアプリが入っていてね。 霞なら使いこなせると思う。

 

 パパのお古で申し訳ないが、良かったら使ってみてくれないか?」

 

 その様に紹介して、iphone 5s の携帯カメラを使った写真やムービーを取ったり、録り溜めておいた

MPG3音楽などを聞かせてみせた。

 

 だが、機械類の操作については、さほど興味のなさそうな態度で俺の説明を聞いていた霞は、

一応譲ってくれるという俺からの携帯端末を受け取ってくれた。

何か反応が薄いな? 霞にとってiphone は興味のない機械なのか?

 

「・・・ほら霞。

 パパと写真を撮ろう。 取った映像データは、画面背景の壁紙に使えるから、覚えておくと結構便利だ

 と思うよ。」

 

 そう言いつつ俺は霞の顔を引き寄せて、二人の顔写真を取った。

そのまま、壁紙設定を行って写真立ての様にしてみた。 だが、その間霞は無言のままだった。

 

 俺一人ではしゃいでいる子供の様だったが、やがて霞は重い口を開いた。

 

「・・・私は、・・・写真よりも ・・・パパと一緒に ・・・居たい、・・・です。」

 

 ああ。 やっぱりこの娘は・・・。 俺の死期について感じ取ったんだな。

 

 何かにつけて感の良い子だからなぁ。 普段聞き分けの良い子だからこその、精一杯の”我侭”なの

だろうなぁ。 ありがとうな、霞。

 俺は、心の中で彼女に感謝の意を述べた。 そしてそのまま彼女を抱きしめて宥めるように背中を軽く

叩いてやると、暫くして霞は俺の胸に顔をうずめて静かに泣いた。

 

 そのまま彼女の気持ちが治まるのを待ってから、俺からあの事について切り出した。

 

「・・・なぁ、霞。 一つ霞に頼み事があるんだが、頼まれてくれないか?」

 

 俺から霞への頼み事。

 

 それは、BETAさん達を地球圏から一掃して、人間が世界を立て直した後の世界においての頼み事。

 

 多分、その頃には霞自身も成長を遂げ、立派な成人となっていることだろう。

その一生の中で、自由に動ける時間が取れてからで良いので、第四計画関係者に合って話をしてほしい。

 

 恐らく今居る人間で、幾人かは戦火で散ってしまったとしても、残った数人の人間は懸命に生き続けて

いるだろうから、その本人に可能な範囲で良いので”それらの人々と対話をする”事を頼んだ。

 

 特に家族など居なくて一人に成りがちだったり、一人きりの生活を望む者が居たら、それら対象の

人間に合ってやり、近況でよいので話をして欲しい、と頼んだ。

 

「・・・どうして、パパはそんな事を私に頼むのですか?」

 

「・・・ぅんーー。 どう言えばいいのかな? 多分、きっと、だけれども・・・。

 うん、必須だと思うんだ。 ”おとぎばなし”の締めくくりには”語り継ぐ”って事がね。

 

 キーワードは、”とても小さな約束”で、”でも、とても大きな約束”で、”とても大切な約束”だと思うよ。」

 

「??」

 

 先程まで涙目だった霞は、”キョトン”とした顔で俺の顔を見つめている。

この娘もこの様な珍しい表情をするのだ、と感慨深く思いつつ、先程の”約束”について、『とある人からの

受け売りだけれども』と前置きをしてから解説を行った。

 

 今の仲間たちと近未来において話し合うことで、仕事として行っていた第四計画の参加者各員の人生、

いや、”物語”をつなげると言う事と同じであると説いた。

 

 つまり、”白銀君のその後”と”鑑嬢のその後”と言う別々の”物語”を、霞がそれぞれに会いに行って話を

する事で”一つの繋がり”を持たせることができるのだ、と言う目的を解説した。

 

 例えその会話の時間が短くても、繋げることにより各員が持つ”物語”は新たな要素を取り込んで

大きくなって行く。 それがどの様な様相となるのかは分からないし、それに対して責任は取らないが、

それでも人が生きていく中で、一つの”アクセント”に成ることは確かな事だ。

 

 その様にして、皆には生きて人生を全うして欲しい、と”俺が言っていた”と伝える事をお願いした。

すると霞は・・・

 

「・・・分かりました。 そのお願い事、引き受けます。

 どの様な結果になるかは、私にも解りませんし、責任もとれませんが、やれるだけはやってみます。」

 

「ありがとう、霞。 でも、そーだな。 最初の一人目は誰にしようかな?

 霞は誰が良いと思う?」

 

「・・・えーーっと ・・・・・・ やはり、白銀さん ・・・でしょうか?」

 

 頬に人差し指をあてて、少し考えこむポーズを取る霞。 このポーズも滅多に見られないレアな

彼女の姿だ。 写真に撮ってラミネートカード化しようかと言う衝動にかられつつ、それを抑え少々彼女を

イジることにした。

 

「・・・フッ。 霞もまだまだだな。 ネタ的に皆が知りたがる情報を先に取りに行くのは、理に適っているが、

 それだと白銀君の近況を言い振らしに行っている様なものだ。

 

 ココは、とても厄介で情報を共有できそうにない様な人物が良いと思わないか?」

 

「・・・となると、ユーコママがトップバッターですね。」

 

「うーーん。 それは直球過ぎるな。

 もっと試合を面白おかしく展開させるには、変化球も用意してバッターを翻弄してやらないと、参加者も

 飽きてくるんじゃないかな?

 

 それにトップバッターに聞きに行ったら、それでハイおしまい、って対応したら面白くなくなるし、

 トップバッターは、複数回に渡って霞とお話できる特典を着けようよ。」

 

 俺が無茶なイチャモンをつけると、霞はいつもの表情を余り出さない表情になっている。

だが、見る人が見れば分かるのだが、眉の一部にとても小さな縦シワがみてとれるので、霞は少々

怒り気味である事が推察された。

 

「・・・じゃ、誰が良いんですか?」

 

 素っ気無く、言葉少なに”私怒ってます”アピールをしてくる我が娘に怯まず、俺は鑑嬢を推薦した。

すると霞は、納得したかのように小さく頭を縦に振っていた。 多分、何故に自分がこの件を託された

のかを納得しているのだろうが、違うよ霞。

 

 この頼み事は、君のためにお願いしているんだよ。

 

 君のことだから、仕事は山のように在るのだろうが、それは君の能力が高いから頼まれる仕事なんだよ。

君個人の人生をサポートする人が見つかるまで、この役割を持っていなければ、君のことだから為すべき

仕事が無くなったら、きっと目的探しの旅でも始めてしまうんじゃないかな?

 

 いや、若い内に旅を行うのは良いことだから、それはそれで構わない。

だが、この自分探しの旅は、世間的に平時であって、且つ平和な世界においてであれば問題ないと思うが、

世界的な規模で荒廃が進んでいる世間であれば、その様な旅は無謀であると言わざるを得ない。

 

 人々の心がそれ程荒んでいたのなら、他者の安全など構っている余裕はない筈だから、相応の覚悟も

無しに旅などしないで欲しい。 ま、兎も角、霞自身の幸せを願って、このお願いを彼女に課した。

 

 まぁ、鑑嬢を推したのは、実は彼女にも一つの宿題を課しているのだが、その答えの一部を君の伝言

によって伝えると言う、一石二鳥の策の為と言う意味もあったが、”三人よれば文殊の知恵”ではないが、

二人でその事について、アレコレ考えるのも一興だと思うよ。

・・・三人目って、いないよな? 加わるとしたら、誰が来るのかな??

 

 閑話休題

 

 ってな事で、そろそろお昼寝の時間だから、俺と霞は俺の寝室に移動する事になった。

これでもう、やり残していることはないだろう。 ・・・多分(汗;)。

 

 ・・・いや、在ったわ。 引っ越しの件、ユーコさんに丸っと任せっきりだったわ。

一応、俺もユーコさんも横浜基地から去る時期に来ているので、新居の手配をユーコさんに任せっきり

だったわ。 ま、ユーコさんの実家(モトコお義姉さんの家)の近くで物件を探しているので、俺は手を

出せないから、すっかり任せっきりとなってしまった。

 

 うーーん、でもこれって、今から騒いだところで間に合わんな。

ま、最悪、ユーコさんの実家に皆で厄介になる、と言うオチで落ち着きそうだな。 多分だけれど。

 

 ああ、そうなればそうなったで、賑やかで楽しそうではあるな。 ・・・俺はその中に居ないけれど・・・。

願わくば、皆が笑顔で過ごせる家になってほしいな、と思いつつ、俺と霞はカフェテリアを去った。

 

 

 

 まだまだ、木枯らしが吹いて春は来ないけれど、しかし後2ヶ月もすれば桜咲く季節がやって来る。

希望ある明日を夢見て、俺はそのまま就寝した。

 

 恐らく最後となる就寝であり、このまま目覚めることはないだろう。

事前に俺のPCには遺書データは収めてあるので、ユーコさんであれば、その通りにやってくれるだろう。

 

 この世を去るには、やっと40歳代はまだまだ若いのだが、その数倍も働いたと思う。

やり残したこともあるかもだが、俺的には満足してこの世を去れる。

転生者である、と言う事もあるのかも知れないが、中々に納得して旅立ちの日を迎えれるのは、滅多に

無いことだとも思う。 その意味ではアテナはじめゼウス神やヘラ神様には感謝の言葉しか無い。

 

 その様に色々と考えた後、ふと俺は意識を彼方に手放した。

苦しむ事もなく、痛がる事もなく、ただ普通に眠るかのように息を引き取った。

 

 

 2002年2月15日 正午0時00分10秒

  国連太平洋方面第11軍 横浜基地所属 基地司令部付き統括総合幕僚 兼

  オルタネイティブ第四計画直属 実働実行部隊 A−01連隊連隊長

  エイデン・ピアーズ 中将 享年41歳 永眠

 

 

 

 

 

< What happened in the story ? The END. >

 




 はい、と言うわけで、『What happened in the story ?』は一旦終わりです。

 この回で”最終話”宣言していましたので、何がなんでも終わりとしたかったです。
で、エディタからの情報だと、今回は4万5千文字オーバーだそうです。
(いつもの2倍分もあるだと? 中編・後編構成って、いつぞやの国連総会編と同じぢゃないか!)

 ま、与太話は横に置くとして、「本当にコレが最後なのか?」と問われたら「はい、そうです。」と答えたかったのですが、”実は・・・”バージョンが存在します。

 それも「エピローグ編」です。 3部構成を予定しています。
各部の構成を述べておくと、第一部は白銀編、第二部は御剣編、最後の第三部は鑑編となり、以上を以って本作のお話は全て終了となります。
 ま、予想の通り、各部の主役はその編のタイトルにある人が担当と成ります。
所謂Muv-Luvの主役陣が担当するわけですね。

 最後の最後、各部ダイジェストをチョロっと…。

第一部:VED総戦技演習の様子&白銀隊の活躍+地球圏の安全確立の様子を予定
第二部:VED教習の様子&斯衛軍への教導と武人としての葛藤を予定
第三部:地球圏の安全確立後のオルタネイティブ計画のその後を予定

 と言う様な内容なんですが、ココで一つの問題が…。
もうお察しのことと思いますが、このエピローグ編を実施した場合の執筆期間がやたらと掛かるという問題点がのしかかります。

 いくら2次創作作品で期限などあってないようなものなのですが、反対に言うと作者自身のモチベーションが続くかと問われると、コレがかなり怪しいのが実情です。

 「プロじゃないから」とか言い訳したく有りませんし、そんなに手を掛けなくてもと思わなくは無かったのですが、自分の中の妄想が止まりませんでしたので、一応ネタとしてのプロットだけがあって、日の目を見ないのは作り手としては悶々とする訳でこれに取り掛かろうと思います。

 でも、本編をそのままで放置もできませんでしたので、今回一旦の区切りとして「最終話」という事にしました。 良い加減、エイデンを開放してあげないとこの世界だけに留まり続けれませんしね。 だから、エイデンは此等の作品では、過去のエピソードとしてしか出てきません。

 なので、いつかはこの続きのエピローグ編をお届けできるかも知れません。 期待はしないで欲しいのと、待たなくても良いので、そんな作品が出たら「そ~言えばヤるって言ってたっけ」程度で良いので、その時また読んでくだされば本望です。

 何やかやと言い訳のオンパレードでしたが、取り敢えずこの辺で、失礼します。
また、お目にかかれる日を楽しみにしております。では、また。

 PS:
 その前に他のSS板のアルカディア様にやり残した作品(SAO→Another編と言う何それ無理ゲー的な作品です。しかもAnotherはご都合主義全開の解決と言う、原作でも完結はさせていないのに斬がどうこうできると思っているのか的なソレ)がありまして、それの方に止めを刺しに行かないといけないので、こちらのハーメルン様に再投稿するのはかなり先になると思います。

 そっちが片付いてから、先のエピローグ編に取り掛かります事を先にお知らせしておきます。
(因みにアルカディア様でも作者名は「斬【Zan】」で登録していますので、作者検索で、「斬」で調べていただければ、その作品は見れると思います。
 ついでのついでに申しておきますと、今後の活躍の場をアルカディア様から、こちらのハーメルン様に乗り換えようかと画策しておりますので、時期が来ましたらアルカディア様のアカウントは削除を考えております。 まぁ、予定としては2017年のいつかで退会の予定です)

 では、ホントのホントに以上です。
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