What happened in the story ? 作:斬【Zan】
予告通りと言いますか、何とかアルカディア様向けのSSに区切りをつけまして、「さぁ、エピローグ編に取り掛かるか。 ぅん?何やら感想欄にコメントが・・・」と言う事が有りました。
プロットも手直しなどが必要なので、本当にとりかかる直前に、とあるユーザ様から指摘を受けまして、そこからの指摘された内容を鑑みて、「・・・とりかかる前にもう一つ話を入れておく必要がありそう・・・」と判断しまして、今話を投稿しました。
まぁ所謂、”中の人のその後”と言う物を番外編として設定しておこう、と言う事です。
ついでに言うと、『What happened in the story ?』の完了指定をし忘れていましたので、今回それを行うと言う目的も有ります。
今話を挟むことで、次のお話に繋がる”接着剤”的役割を持たせたいと思います。
斬【Zan】が投稿する転生者を題材としたお話は、この番外編を通じて展開されていると思って下さい。
長々と解説して申し訳有りません。
では、番外編です。 どぞ。
最後に息を引き取って、幾許の時間が経過したと思った。
だがしかし、何時からか夢を見ている様な感じがしている。
と言うのも、そのどれも同じシーンを繰り返していて、特に変化はない。
・・・中身を吟味しなければ・・・。
シーン的には同じであっても、繰り返している内容については千差万別だった。
そう思うのも無理はない。 オレ自身が居て、目の前に別の誰かがいきなり出てきたと思ったら、
オレと重なると言う行動を繰り返している。
それもホンの1秒位の時間だけ交わっているのだが、ぶつかり合うこともなく素通りして突き抜けて
逝くだけなのだから・・・。
そのシーンと言うのが奇妙ではあった。それは、どれも『誰かの』最後の間際だった。
漠然と『誰か』と言うのも奇妙なものなのだが、そうとしか言いようがなかった。
それは、善人だった・・・。
またある時は、悪人だった・・・。
老人だった・・・。
赤ん坊だった・・・。
男だったり、女だったり・・・。
対象は老若男女。いや、動物だったこともあったりしたかも知れない。
圧倒的に生き物が多かったが、物だったこともあった。
ま、魂があったらしいので、今はそれ程気にしていないが・・・。
コレが”転生”と言うものなのか?
経験したことがなかったので、そう言う物だと思った、最初の内は。
だがしかし、あの傍迷惑な女神が守護天使として付いて来た先は、絶望渦巻く「Muv-Luv」世界
だった。
しかも、アンリミテッドと言う、本当に「何その無理ゲー? コンティニューは何回までOK?」と聞いて
しまいたくなるような世界だった。
チート能力がなければ、完結対応出来ないし、原作ブレイクなんて以ての外だ。
よく両方に対応して、転生できたなオレ・・・。
・・・?
じゃぁ、今まで見ていた此等の臨終間際の様々な対象の魂の一生を垣間見ているこの『夢』は、
何なのだろう??
苦しみは、あった。
偶に達成感も味わうことになったが、大抵は後悔とか残念とか、漠然とした”負の”感情だった。
様々な魂のそれまでの一生に交わって、その一瞬入れ替わった時に、オレの中に入ってきた。
そうすることで、オレは俺になったり、私になったり、我輩になったり、ウチだったり、ワシだったり、
バブ(?)だったりした。
そして決まって「死にたくない」と、偶に達成感である「もう死んで楽になりたい」と言う感情を感じ
取ったりしていた。
・・・思うに、この”何かの”経験を経た魂の記憶が入り込んでくることで、オレの記憶が混ぜ返されて
行く様な感じがした。
つまり、”魂の浄化”と言う様な作業を繰り返しているのかも知れない。
・・・・・・このままで行くと、オレはそれまでの記憶や経験則などを忘れてしまうのだろうか?
だが、様々な魂の記憶が入り込んできて、自我が徐々に薄れつつあるのは事実だ。
でも、オレの記憶は根本の所で何とか踏みとどまっている。
・・・些か不本意だが、その原因はオレの名前に由来しているからだと思う。
どこに行ってもついて回る、オレ自身が忘れることの出来ないコンプレックス。
それに対しての”怒り”が、オレをオレたらしめているとは皮肉以外の何者でもない。
■□◆◇◆□■
オレとしての一生において、その名前はやはり一番最初から蹴躓いて(けつまずいて)いたと思う。
大昔に読んだ絵本の中に、名前に関する記述を読んだ記憶があった。
その中にあった、「名前」と言うものとは、親から子に向けて与える一番最初の”プレゼント”なのだそうだ。
また、とある小説、陰陽道とかを取り上げた、その当時流行ったライトノベルだった記憶があるが、
それに拠ると、使役する”鬼”に名付ける行為を以って、主従の契約と為すらしい。
いや、そう言う設定だけの話かも知れないが、しかし、オレの中では納得の行く説明だったと思う。
そこから理解した事柄は、「名前」と言うものは個々人にとって重要なファクターを持つと言う事だ。
つまり、呼称であるのと同時に、名に意味が籠められる場合が多いため、間違っても冗談やノリで
名付けて良いものではない、と言う事を理解した。
だから、語呂合わせのようにいい加減に名付けたりしたりするのは、それらの資料を参考にしてオレが
得ることができた真実だと思う。
この性で、オレは小中高とイジられる事が多かった。
やはり我慢が出来ないくらいに苦痛だったし、その度に屈辱を味わった。
本来ならば、オレの両親がその様な事に真っ先に反対するだろう筈だったが、クソジジイの性で
クソオヤジが折れてしまった。 母親は何も言えずに黙認してしまった。
例え語呂で決められる事があったとしても、その意味する所がその人物の一生において励みになったり
意味があるものだったりする場合は、ある程度考慮されたものだと言えなくはない。
だが、完全にノリだけで決められてしまっては、名付けられる子にとっては「嫌味」以外の何者でも無い。
オレの名前。 オレは”越智 雄造”と言う。
・・・間違わないで欲しい。 決して”オチ マサナリ”では無い。 ”オチ ユウゾウ”と読む。
意味するところはない。 ノリで決めたとクソジジイは言い切った。
オレの両親は、クソジジイに次のように説得された、と言った。
「七難八苦の苦行に打ち勝つくらいに強い子に育つ様に、語呂の良い名にしようと思う。」と。
それなら、”強い子の名前”と言う物が有るだろうに、態々「オチ言うぞう」に聞こえなくても良いように思う。
そして、クソジジイの建前である目的は達せられなかった。
幼少の頃はこの名前の性で散々イジられ揶揄された。
その度にオレは負けた気になった。 名付けられた目的には程遠く、幼少期のオレは敗北感に挫け
まくっている子供だった。
その揶揄された一例を上げるとすると・・・。
「何か面白いコト言ってみろよ。」「つまんねーヤツ。」「名前に偽りありだよな、お前って。」
・・・名付けられたオレにどうしろと言うんだ。
こんな名前のオレは、生まれた瞬間から一流のお笑い芸人や落語家でなければいけないのか?
俺の周りに味方は誰一人としていない。 この名前を聞いた人間は誰一人として、オレの悲しみや苦しみ
を理解できなかった。 学友は勿論、近所の住人。 隣近所に居た幼なじみや生みの親、肉親や親戚で
すら敵とだ思った。
物心着く頃には、俺は孤独だった。 誰一人として俺は信用しなかった。 いつも一人で居た。
”こいつであれば”と信頼を寄せようとしていた幼なじみ(女の子)ですら、最終的には”信用できない奴”
だった。
・・・ま、それはそうか。
オレと言う人間と一緒に過ごすことは、その幼なじみにとっても”苦痛”だったから、仕方がなかったんだ。
散々言われ続けたオレの心は、もう良心の欠片は残っていなかった。
人間不信からオレは感情が爆発して、暴力行為にうったえた。 物に八つ当たりし、人や動植物にも
対象を移行していった。 そこで初めて周りの人間はオレを危険視しはじめた。
そんな日々が続いている最中、オレが10歳になる直前位に、クソジジイが逝った。
そして、日々荒れ狂っているオレを見かねた両親は、流石にこの名前が原因で社会適合性が著しく歪んで
いると認識を改め、故人の呪縛からオレを解き放つために、区役所に名前の変更届けを出した。
漢字を代えずに”ユウゾウ”じゃなくて”マサナリ”と読むように変更したんだ。
だが、そんな行為がどれほどの効果があったかと言うと、全く役に立たなかった。
暴力行為に及ぶくらいに追い詰められていたオレは、その頃には地域社会から爪弾き状態にあった。
結局、小学校は途中から不登校。 中学校も地元の市立中学校に進学した。
生活環境が変わることに合わせて、オレの生活も一変するかもと思い通ったが、結果は同じだった。
GW明けから不登校にシフトした。 何処に行っても何も変わらない。
”ユウゾウ”から”マサナリ”となっていても、態々「ユウゾウとは読むな」と言い含めていても、
その様に読むのが自然だと思い込んでしまったら、何処に行っても誰もから「オチ ユウゾウ」と
呼ばれた。
一人で居る時間がまた増えた。 何もすることがなかったので、興味を持つ事を探した。
基本家から出なかったが、図書館とか本屋に出向き、興味を引く書籍を片端から読み漁った。
丁度インターネットが普及し始めていたので、早速家にも回線の早い物を取り入れてもらった。
有名進学高校に進学する事を条件に、両親を説き伏せた。
そこから知識を取り入れ、自分で調べる技能を磨いた。
どの様に情報を収集すれば効率が良いとか、お小遣い稼ぎに、オークションサイトで物品購入と売買を
行い、小銭を稼ぎまくった。
勿論、両親の扶養に組み込まれているので、高額取引には手を出さないで、年150万を超えることは
しなかった。
勉強面については、有名高校の入試問題を解き、問題の解き方や入試対応の知識を調べた。
最初は何を問われているのか全く解らなかったが、インターネットでの情報収集を駆使し、その根本に
ついて調査して、自身で納得できるまで調べまくった。
その様に入試に関しての傾向を調べていたので、必要と思われる知識だけは収集することができた。
勿論、実際の入試環境に馴れるために、模試試験は積極的に受けた。
この試験くらいだけだった。 他人から何も揶揄されずに目的を遂行できるスマートさが、オレは気に
入っていた。
ついでに言うと、ランキングが報告されるので、それに対して向上心が湧き上がったので、
中学校に行っていなくても、オレは自分で学ぶことはできていた。
そして、満を持して、地元じゃない東京や大阪などの都会にある、有名な進学高校の入試に挑んだ。
結果は合格。 主席ではないが上位者10人には入っていたと、後から担任から聞かされた。
入試に打ち勝つことができたことに気を良くしたオレは、意気揚々と高校デビューを果たした。
また、この学校は勉強を優先するものと思っていた。
だから、オレの名前の読みは、最早関係ないとか思っていた。 だが、そうじゃなかった。
人間関係を形成する部分にとっては、そこは逃げられなかった。
自己紹介において、正しい読みを披露しても結果は同じだった。
小学校と同じ種の揶揄が飛び交った。
従来のオレであれば、此処は暴れ狂うところだろうが、流石に高校生ともなると暴力行為に訴える事は
避けた。
年齢が年齢だし、少年院や刑務所の厄介になる事のリスクは考慮したからだ。
もうこの頃になったら、社会については絶望しか無かった。
生きている価値すら見いだせなくて自殺も考え始めたが、しかし自殺する勇気はなかったので、
抜け殻のような生活を送っていた。
勿論高校は一学期途中で自主退学。
退学するにあたって、たった一つ両親からクレームがついた。 義務教育は終わっているのだから、
学校に行かなければ就職するなりしろと言われた。
インターネットを駆使して、物品売買で商売をはじめても良かったかも知れないが、拠点となる自宅を
追い出されては、運用面に不安だったからできなかった。
・・・未成年者が居を構えるには、それなりの理由が必要だったからだ。
運悪くオレはその理由を満たすことができなかった(社会的に保護対象と成らなかった、の意)。
「または、高校卒業と同等の資格を保持しなければ、家から追い出す。」と言われた。
反対に言えば、コレをパスできれば、後は遊んでいても何も言わないとの”お墨付き”を突き付けられた
ので、その通りにした。 だから大検をクリアーして、大学入試資格は所持した。
大検をパスしてから、自由になる時間を持て余していた頃に、TVゲームに嵌った。
PCゲームでも同じなのだが、MODを組み込めば、ある程度のチートが行えるので、そこには興味を
見いだせなかった。 代わりに市販のコンシュマー機でのゲーム環境・PS4のゲームにのめり込みんだ。
そう言えば、高校に居た悪友(?)に一人面白いヤツが居た。
ヤツも名前にコンプレックスを持っていて、その意味でオレのことを理解しているかに思えたが、
何か胡散臭さも持っていて、あまり近寄りたくなかったことを覚えている。
先の「Muv-Luv」なるゲームについても、ニュースソースはそいつだった。
ヤツほど熱く「Muv-Luv」を語る人間をオレは見たことがない。
・・・どうやら、オレも仲間に加え、所謂”信者”を増やしたかったのかな?
・・・・・・名前は、確か・・・「おおさか ひょうご」、いや違った。
「逢坂 兵吾(おうさか ひょうご)」だった筈だ。
大検に取り掛かっていたし、忙しかったから何度か誘いを受けていたが、無視していたら何も言って
来なくなった。
チートと言う言葉の意味と、PCゲームにおけるパラメータ・データの改ざん方法、それら諸々の
「他人を唆したらダメよ」的な内容を言ってくるので、そう言う内容が鬱陶しいかった事を覚えている。
だから反抗の意味を込めて、チートが一切できない状況で、ゲームすることが返って面白かった。
そして、とあるタイトルのゲームを見た時に、そのゲームにのめり込む自分が居た。
そのゲームタイトルを「Watch Dogs」と言う。
主人公は、身内を謎の組織との抗争で亡くしたフィクサー(ピンのヤクザ者)が、自分を嵌めた犯人を
追い詰める、と言う内容の物語性と仮想環境がかなりリアルで、現代社会を模している部分が気に入った。
チート機能の無いゲームは簡単に死ぬし、上手くゲーム条件をクリアー出来なかったりした。
だが、徐々に難易度が上がるに連れ、すっかりその世界にハマり込んでいった。
ネットを通じて対戦もした。 アカウント名は「ネバー・アンダー」にした。
”オチは無い”をイジりたかったので、ワザと頭の悪そうな名称として登録した。
その中で対戦相手が固定し始めた。
でもまさか、対戦相手がアノ様なトンデモな人(女神様?)とは夢にも思わなかった。
で、その結果、死んだ。 死因は”ゲームのやり過ぎによる心不全”なのかな?
まさか、対戦相手に殺されたからとは、オレ以外の人間は想像もつかないだろうな。
その詫びとして、今現在、転生している途中なのだが・・・。
いつその転生が始まるのだろう?? ずっとこのままの状態なのかな?
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あれ程嫌になるほどの”人生の末路”を味わい、暫く時間が経過した、と思う。
いや、ハッキリとは数えていないし、どう言う経過を経たのか認識していないが、気がついたら
オレは何処かの世界に居た。
どんな状態でそれを認識したのか、と言われると、何となくとしか言えないが、兎に角自我のある
状態で居る自分を認識した。
その様は、手も足も無く、胴体や頭、目や口鼻も無いが、自我だけは保たれる状態だった。
そしてその状態で居た時、オレ以外の何かが近寄ってきた(?)
いや、そうと感じるが、どの様な状態なのか認識できていなかった。
そして、オレ以外の何かがオレを取り込んだ。 いや、喰ったという方が的確か?
痛みなどはなかったが、オレでない何かに取り込まれるような、オレの一部だったものが徐々にオレでなく
なる様を見ている自分が居た。
俯瞰的観測が行えないので、想像でしか無いのだが、多分今のオレの状態は”捕食されている”状態
だと思う。 時間を掛けて、オレはどんどん取り込まれていった。
そして、オレの体に迫ってきた何かに取り込まれ、オレの自我は消えた。
多分食われて亡くなったのだろう。
そしてまた、気がつくとオレが居た。
先程とは別のところだと思うが、やはりオレに迫ってくる何かが、しばらくしたら出てきた。
そして先程と同じように、オレを補食しだして、結果的にオレは食われて死んだ。
反対のこともあった。 オレが移動して別の何かを取り込んだ。 多分取り込んだものを”捕食”した
のだと思う。
吸収することで、オレが拡大したように思った。 容積が増えたとも言うが、そんな表現であっている
のかは自信がない。
それを繰り返していると、ふとした瞬間、世界が終わった。
捕食されたわけではないが、いきなりオレ自身が死んでしまった。
痛みや苦痛はなかったが、オレの自我はそこで途切れた。
その様な行為を何回か繰り返していた。
もうこの頃になると、オレは自分の自我が薄れかけているのが分かった。
名前についてのコンプレックスですら辛うじて思い出せる程度だ。
その様な状態になっていると、どうしてあんな理由で荒んでいたのかと思える自分が居た。
変われば変われるものだと思った。
ある時、やはり捕食されるパターンの時、後もう少しで取り込まれそうになっている時に、それは突然
起こった。
本当に自我がギリギリ残っている様な状態で、オレが相手を取り込むことに成功した。
途端に、オレはその容積を一気に増やした。 ・・・オレってこんな器用なことができたのか?
そう思っていたら、途端に世界が終わった。 そしてまた時が流れた。
■□◆◇◆□■
気がつくとオレはそこに居た。
前と異なり、そこは何処かの世界ではなかった。
誰かの一部と成っていた。
オレの他にも、隣近所しか解らなかったが、同じような”細胞”が取り囲んでいた。
正に自我のある細胞の一つがオレだった。
そこから暫くたった頃、オレという細胞は何の細胞か分かった。
それは心臓の筋肉の一つの細胞だった。
何故このことがわかったかというと、オレを含む筋肉細胞達の宿主が特殊な力を持っていて、
その力を行使する時に、その余波が心臓から発せられるため、一番最初に特殊な力の恩恵に預かれる
事になったからだ。
そして今、俺がどこの誰の細胞となったのか自覚した。
信じ難い事だが、とある女神様の心臓の筋肉細胞の一つと成っていた。
まさか、あのオッカナイ女神様。
オレが「ヘラ神様」と呼んでいた、最上位女神様のソレとなっていた。
・・・転生って、こんな事も含まれるのか? 想像していた転生とは異なることに吃驚した。
もっと違う物語などの世界の人間と成り、チート能力を駆使して原作ブレイクとか、物語介入とか、
物語破壊とかを行う行為が”神様転生”と呼ばれるものの主旨だと思い込んでいたからだ。
だが真逆、知り合いの女神様の体組織の一細胞に転生するとは夢にも思わなかった。
だって、そうだろう。
普通命は一人だけで構成されているものだ。
いや、体細胞に命が宿るとは、そう言う設定でもない限り在り得ない事だ。
・・・オレの頭が硬いとか、そういうものでもない。兎に角変な現象が起こっていた。
自分の存在と何処に居るのかは理解できた。
だが、それとて大した事では無いのかもしれない・・・。
と言うのも、オレ自身単に一つの細胞だけでしかない。つまり、ヘラ神様がどう言う事情を持っていて
何にどう対処したのか、については全く感知できないでいたからだ。
また、自分が生きていると言う事は分かるが、それ以上のことは解らなかった。
心臓の筋肉細胞の一つの寿命と言う物が、良く分かっていなかったからと言う事もあるだろうが、
思考とかしなくても生きていられるから、特に問題ということもなかったんだ。
だが、どの様な形にせよ生まれたからには、将来的には”生きている”と”死んでいる”の究極の二つの
状態になる事は必然だと言う事情から、いずれはオレもその寿命が尽きるものだと思っていた。
さすがに今の状態では何も出来ようが無かったので、そのままの状態で時が過ぎていった。
そしてある時、いつまでも続くと思っていた状況に一つの変化が起こった。
久々に感じるソレ。
いつか体験した、何かのソレに取り込まれると言う、感じがした。
何かに取り込まれ、自分が捕食されると言う感覚。
そう言い直した方がシックリと来るのは、体験談だからだろうか?
兎も角、オレが今居る場所からそれほど遠くない箇所の心臓の細胞の一部が変異した。
寿命が尽きて死んだのではなくて、生きているが本質が変異したと言い換えた方が良いのだろう。
人間だった頃の言葉で言うならば、「癌」化したと言ったほうが分かり易いと思った。
心臓筋肉の一部が腫瘍化した。
それにより、宿主であるヘラ神様の生活にも変化が訪れた。
まぁ、普通に考えて、健康体から病気状態に変化したのだ。
? おかしい??
だって、単に心臓筋肉の一つが癌化したくらいで、健康体から病気状態になる筈はない。
他にも何処か悪い部分が増殖しており、そのアオリが心臓筋肉に移転した、と考える方が自然だった。
そしてオレが思っていた通り、心臓に影響を及ぼしたのは、体中の循環を行っている心臓が取り扱う
血液の中に居た。
それも質が悪く、リンパ腺にも影響を及ぼしていて、そこを通じて全身の各部分に影響が出ていた。
オレのいる心臓以外にも、肺や胃、じん臓に肝臓など、大凡係ると完治の難しい部位が多かった。
オレが気がついたのは、心臓細胞の一部が癌化したからだが、オレが気づく前に既に全身中に
悪影響が出始めていて、とうとうヘラ神様はお倒れになってしまった。
外に居る他の神々は大慌てだっただろう。
多分、一番慌てたのは旦那であるゼウス神だった筈だ。早々に施術を行うことになったらしい。
そして不思議なことに、神様といえども自身の病については他の神に治癒を行ってもらわないと
いけないらしい。つまり、自分の傷は完治できても病は他者の手を借りる必要があるらしいんだ。
それから、ゼウス神の献身的な介護により、手術は上手く行ったかに見えた。
現に先ほど悪くなったとされる臓器類は、悪くなった部分の再生を行い、施術は一旦終了となった。
だけれども、オレは安心できないでいた。
それは、オレの近くの心臓細胞の一部は、依然として腫瘍化したままだったからだ。
また、相変わらず、血液中の癌因子は取り除かれていないので、また時間を経れば他の細胞が
癌化する事が考えられる。
オレが人間だった頃でも、癌は再発する可能性が残る病魔であり、油断が出来なかった。
だが、今のオレは単なる細胞の一つ。
いくら神様の体の一部とは言え、思うような行動が取れるはずもなく、悶々としていた。
何故かって? そんなの決まっている。宿主(ホスト)であるヘラ神様が万が一お亡くなりになったとして、
オレを含め心臓も止まることは、即ちオレ達ヘラ神様の体を構成するその全ての死と同義となるからだ。
確かに、ヘラ神様には多大なる恩恵を受けたこともあるが、この方には病魔如きで生命の危機に
なってほしくない。
ヘラ神様には尊敬と敬愛の念があるため、その様に感じたんだ。
■□◆◇◆□■
あれから少しの時間が経った。
相変わらず心臓筋肉細胞の一つである所のオレは、変化しない状況にイライラしていた。
と言うのも、オレの近くにできた癌細胞の侵略が始まったからだ。
そして、オレがイライラしていた性なのか、その腫瘍した細胞はオレの方に向かってきていた。
このままでは以前に経験したように、あの癌細胞に取り込まれてしまう。
そうなるとオレはジ・エンド。
つまり、”一巻の終わり”と言うことだ。
このまま何も出来ないまま手をこまねいたままで終わるのかと思うと、無性に腹が立つ。
活躍できないこともそうだが、”詰み”状態であることに対して、一種の不公平感を持っていたのかも
知れない。
決して「原作ブレイクが・・・」などと奢ったことを言っているのではない。
何かにつけて対応した結果、目的を果たせなかった事については、ある意味”しゃーなし”で良い時も
あるが、何もしないでは”しゃーなし”には成らないからだ。
失敗したことも、次に繋ぐ事ができれば貴重な経験だろうが、それすらさせて貰えなかったと言うのでは
自分でも情けなく思うからだ。
しかし、現状何も出来ない状態なのは変わりない。
だから、イライラしている自分が居ることを認識していた。
そんなことを思っていたら、とうとう腫瘍化した細胞が間近に迫ってきた。
いよいよオレも腹を括る必要があるらしい。
そう言えば、以前にも散々他の細胞に取り込まれるという経験はしたが、これほど気をもんだことは
なかった。
何の抵抗も出来ないが、オレとしては、最後の最後、その直前になるまで自我をしっかりと持って
おこうと覚悟を決めた。
対する癌細胞は、その全体見ることは出来ないものの、異質な物が近づいてくる気配は感じ取れた。
それで、その全体の大きさはと言うと、最早数個の細胞が合体した様な大きさではなく、傍目で見ても
”これ癌細胞ぢゃね?!”と分かるくらいの大きさ、恐らく2cm程にはなっているように思えた。
この時のオレの状況はおそらく、物理的には腫瘍細胞に迫られて、そして精神的には自分の恐怖心と
焦燥感と無念とか残念と言う様な負の感情が渦巻いていた。
つまり、「自分で自分を追い詰めている」状況だと言えた。
それで、極限まで追い込まれていたオレは、とうとう切れた。
余りにも追い詰めすぎた”オレ”という存在。
心臓筋肉の細胞の一つに過ぎないオレという立場ではあったが、余りにもその追い詰め方が大きすぎて
オレ自身のキャパシティーを、あっさり天元突破してしまった。
叫び声はなかった。 だって口がないから・・・。
いや、他に何か表現があったのだろうが、以前にもあった『なぜか取り込まれようとしていた細胞が
居なくなった。』現象が、この場面で顕現した。
それはオレという細胞に接触しようとしていた癌細胞との接する部分に、オレが持っていた固定能力
がその時発揮された。 その能力の名称は”殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)”と言う。
・・・口説いようだが、眼は無いが・・・。
俺が転生とかする前に、ライトノベルとか読んだ時に、偶々ネタとして興味を持った能力が、これだった。
主人公のライナが用いている”複写眼(アルファ・スティグマ)”よりも強力だと思ったことが原因で、
これについて”うぃき先生”で調べたことがあった。
その説明から、興味を引いた部分を抜粋すると次のような記述だった。
『・・・世界の魔道学における気の流れ、もしくは精霊と言われているものを吸収することにより超人的な
身体能力を得ることができる。
魔法、もしくは人間の肉体を直接喰らう事によって効率よく力を得ることが可能であり、また空間から
直接精霊を吸収することによって力を得ることもできるが時間が掛かり得られる力も小さい。・・・』
いや、その時の設定はそうだと言うだけで、本来は違うのかも知れないが・・・。
兎も角、その様な能力であれば、咄嗟に使用できれば護身術の代わりになるかもと言う下心と、
前の転生世界の「Muv−Luv/UL」においてのBETAさんを食することができるかも?
と言う頓珍漢な事から、気軽にこの能力を取り込んだは良いものの、一回も使用すること無く放置した
ままだった。
すっかり、前の転生世界の終わりくらいに、ヘラ神様からチート能力が徐々に無くなる、と宣告を受けて
ある程度の覚悟はしていたが、オレやヘラ神様もすっかり忘れていた能力だ。
・・・どうやら、徐々に無効となって行く他のチート能力を傍目で見ながら、ちゃっかり『殲滅眼』は
そのままオレの中に引き継がれていたらしい。
で、その能力が発揮された。 文字通り、相手を”喰った”んだ。
元から人間の肉体等を直接取り込むことができる能力なので、”オレの細胞と接する癌細胞をそのまま
取り込む”と言う表現が正しいのだろうが、それが起こった。
オレに迫っていた腫瘍化してしまった癌細胞の一帯がオレに取り込まれ、そこに居た筈の細胞が
ぽっかり穴が空いた様なモノになった。
だが、それらの穴を埋めるかのように、周りの筋肉細胞が詰め寄り、その空間は徐々になくなりつつ
ある。
オレもそれらの筋肉細胞と同じく、そのぽっかり空いた穴を埋める為に、反対側の細胞に押され、
少しずつ移動している最中、オレは他の事を考えていた。
■□◆◇◆□■
それは、今回の能力の発揮について、発動の条件について考えていた。
その条件とは、感覚的にしか分からないが、多分、対象となる者や物を見極め、それに対して”抵抗して
やる”とか念じる事で発動するらしい。
兎に角、一つの細胞であるオレはそのままの状態で、侵略してきた癌細胞だけが取り込めた。
体積やら容積は変わらないが、取り込んだヤツの能力や情報は取り込むことに成功したらしい。
一応の脅威は去ったが、取り込んだヤツからの情報から無視できない事柄が分かった。
どうやら、侵略してきた腫瘍細胞(ヤツ)は、リンバ線からの転移された癌細胞だったらしい。
と言う事は、転移してきた方にも癌細胞の本体とか関連する組織が残っていることとなる。
また、既に血液中にも癌細胞と成りうる因子が混じっていると言うことも分かった。
そもそも癌細胞と言う物自体の成り立ちはわかっていない。
それが分かれば誰も苦労せずに、予防対策などが行える。
だが、実際に健康体であるはずの人でも、ある日突然細胞の一部が腫瘍化する。
取り込んだ癌細胞からは、それら腫瘍化する因子と言う物は漠然としか分からないが、今は此等の
関連する因子を一纏めにして、ヘラ神様の体外へ排出しなくてはいけない。
そう考えてオレは行動を開始した。
方法としては、オレにとって唯一残された能力である”殲滅眼”を駆使する。
要はこの殲滅眼で、腫瘍化する因子を体中を循環しているヘラ様の血液から抽出して取り込む、と言う
事だ。
一応殲滅眼の特徴である『・・・また空間から直接精霊を吸収することによって力を得る・・・』と言う
部分を使うことにする。
そう言えば、アニメ版の伝勇伝での紹介で、殲滅眼の使い手は魔法が一切使用できなかった。
それは、自分の周りにいる精霊の力も常時”喰っている”から魔法が使えないと言う意味らしいが、
要はこの様な使い方を血液の循環を司る所に網を張り、監視すれば良い。
丁度オレが居る場所こそ打ってつけだろう。
何せヘラ神様の心臓を構成する筋肉の中に居るんだから・・・。
暫くの時間が経過した。
やっと目的とする腫瘍化する因子を、ヘラ神様の血液中から抽出する事に成功した。
腫瘍化する要因が減ったことにより、全身の各器官等に癌と成りうるリスクは減ったと思う。
そして吸収した因子は、オレを通じて癌細胞として心臓の上に突き出る様にした。
あとは、この余分な癌細胞とオレ毎を摘出してくれれば、ヘラ神様の健康を阻害することは無くなると
思う。
だが、今じゃない。 もうチョット時間が必要だ。
それは、血液中の腫瘍化細胞因子の取り除きは行えたが、肝心のリンパ腺にある腫瘍化因子の
排除が済んでいない。
コイツを行って、他に腫瘍化していなければ、もう転移する可能性は無いので、目的は達成したことになる。
また、リンパ腺に干渉することで、恐らくヘラ神様は再び体調に不調を来すだろう。
・・・直に原因を調査して、オレ毎サッサと摘出されたら、目的を達成できないかも知れない。
先に全身を検査して、他に転移した部位の調査を行ってから、リンパ腺に取り掛かろう。
リンパ腺上の腫瘍化因子の大きさも、この調査である程度わかると思うので、その様にした。
結論を述べると、危惧した腫瘍化因子が他の部位への転移は認められなかった。
また、リンパ腺上の腫瘍化因子は、ヘラ神様の体中のリンパ腺の系統に細かく分布されていた。
これを取り除くには、多少の時間が必要となるので、一気にリンパ腺に介入するのではなく、手足とか
胴とか部分を特定しつつ、干渉することにした。 リンパ腺は全身に張り巡らされている神経と同じく
重要な免疫器官の一つだから、そこはデリケートに対応した。
そして、目的は達せられた。
一応リンパ腺上の腫瘍化する因子もくまなく調査・吸収を行い、目的を達成できた。
これにより、ヘラ神様が今後腫瘍により癌化する可能性は極めて低くなった。
・・・いや、癌化するメカニズムの解明が終わっていないから、”当面は”と言う接頭語は付くのだろうな。
兎に角、一応の目的は半分は達成したので、次の行動を開始する。
不本意だが、もう一度ヘラ神様にはお倒れになって頂いて、再度腫瘍細胞の摘出を行って頂こう。
だが、あのゼウス神の事だから、腫瘍がした細胞を再生化するかも知れない。
此処は、オレ毎摘出して欲しいので、その様な行動に出た場合は、殲滅眼で対抗しよう。
・・・できるできないは今は考えない事にしよう。
■□◆◇◆□■
Side Other :
その知らせを聞いた主神であるゼウスは、表情を曇らせていた。
自分以外に”一番オッカナイ神様”であり、自分の妻であり、最上位女神「ヘラ神」が病に倒れたからだ。
しかも今回は2度目と言う事もあり、以前倒れた時に対応した処置が不十分だった、と言う結論に
心を痛めていた。 ・・・何せその対応を主導して行ったのは自身であるゼウス神だったからだ。
・・・いや、心の片隅では再発の可能性について、頭を掠めていた。
だが、その様な事は起こるはずもない、と自分を誤魔化して今日まで過ごしていたのだ。
そのいい加減さが我が事ながら嫌になって、その事も合わせて表情を曇らせていた。
ヘラ神が倒れ寝所で横になっている所へ見舞いに来たゼウスは、口頭一番にこう言った。
「・・・ヘラよ。 その・・・、済まぬ。
また貴女をこの様な状態にさせたしまったことを詫ておく。
そ・それで、前回の汚名返上の意味を込めて、今度こそ完全に復活できるように対応する。
だ・だから、もう一度ワシに貴女の看護をさせてくれないだろうか・・・。」
いつもよりも殊勝な態度に少々面食らった所はあるものの、それでも一番長く今まで居たのはヘラ神に
とってはゼウス神しか居なかった。
はるか大昔のティターンズ戦役を共に生き残り、そんな彼女にとってゼウス神とは、苦楽を共にした
掛替えのない仲間なので先の看病について感謝することはあっても、今回の事について不備があったとは、
ヘラ神は思っていなかった。
「・・・いいえ、貴方。
前の時もそうですが、今回のことについても貴方様を恨んだりしておりません。
何より、私以上の神力を持っているのは貴方様しかおられません。
ですので、今回も手術とその後の看護をこちらからお願いしたいのですが、宜しいでしょうか?」
「おお! 勿論だとも。
今回は、前回よりも更にしっかりと対応させてもらう。」
その様なやりとりの後、ゼウス神は早速問診から始めるのだった。
そして、今回倒れた件について、大凡の問診が済んで、ゼウス神は一つの仮説を建てた。
今回ヘラ神から聞いた範囲では、全身が疲れやすくて、しかも理力や神の力を行使しようとしても
発動しない現象が見受けられる、との事。
この事から、ゼウス神は免疫に関わる病の可能性と、神様にとって心臓とは神界の力を用いる時に
なくてはならない臓器であるため、此等のことに留意して調査を始めた。
そして調査の結果、懸念されていた事柄がその通りであった。
つまり、心臓付近に免疫に係るリンパ腺に影響を及ぼしていそうな腫瘍を見つけることに成功した。
早速、ゼウス神は神の力を用いて、ヘラ神から病巣を取り出そうとしたが、神の力は思惑通りに使え
無かった。 それは、各神様が固有で持っているの神力的力場に邪魔されていたからだ。
当然ヘラ神もその様な力は作用していた。 無意識レベルで構成されているものなので、故意に止める
と言う使い方は出来ない種類の力だった。
その為、前回もゼウス神はヘラ神の体を最小限度開いて、具合の悪い器官の再生を行うという
手術を行った。
前回同様今回も、その方式で対応するため、早速準備に入った。
そして、腫瘍化した細胞の再摘出手術が始まった。
今回の手術では、腫瘍化した癌細胞の再生は行わなかった。
いや、目的とする腫瘍の大きさが、予想以上に大きかった事もあったが、ゼウス神の神力を以ってしても
干渉できなかったからだ。
何故か、腫瘍化した癌細胞事態が、自己防衛のためか理力を用いていて、外部からの干渉に対して
防御してきた。それはまるで、あたかもその様に予想していたかの様に対抗してきたのだ。
その事実にゼウス神は焦った。
まさか、癌細胞が意思を持ったかの様な事ができるとは思っていなかったからだ。
いや、一番最初に驚愕したのは、腫瘍化した細胞を再生することで対応を行おうとしたが、出来なかった
事に驚いた。
それは、腫瘍のある部位を切除しようとした時に、その部分に見えないバリアーの様な障壁が
展開された。 幾ら理力を駆使しても腫瘍細胞の切断は行えなかった。
この事実にゼウスは初めて戦慄を覚えた。
癌と言う病魔に意思が感じられたからだ。
残された対応方法としては、腫瘍細胞を切除するのではなく、心臓筋肉の根本からの切除を行う事を
真剣に考えなければなれなくなった。
だが、ゼウス神は此処で諦めることをしなかった。
ゼウス神本人も不本意だったが、已む無く腫瘍化した癌細胞と関連する周りの細胞も含めて摘出する
方向に手術方式を変更した。
だが、此処で一つ、神界においての掟がその行為を躊躇させた。
・・・ゼウス神が躊躇したのかと言うと、神同士において相手を無闇に傷つける事は行ってはいけない
事になっていたからだ。
力が強いとか弱いの差があったとしても、神々同士での傷つけあいは行ってはいけない。
それは、下手をすると千日戦争を行うことと同義であるため、どの様な理由があっても相手に刃を
向けてはいけなかった。
だが今回は、ヘラ神を救済するための行為として、ゼウス神は事前に例外として手術に臨んだ。
意を決して、ゼウスはヘラ神の心臓筋肉の一部を含め、細胞の摘出施術を敢行した。
すると驚くことに、今度は一切の抵抗を受けることなく、目的を達成することができた。
切り取った腫瘍部位は別の取り皿に移し替えて、切り取った部分の再生を実行、心臓筋肉の再生は
無事完了し、傷口も完璧に縫合して手術は完了した。
術後にゼウスは違和感を持った。
それは、腫瘍細胞の摘出について、一切の抵抗が無かったからだ。
取り皿の上に置いた腫瘍細胞を暫く見ていたゼウスは、その後『滅の壷』に入れ、始末した。
『滅の壷』とは、文字通り対象を滅する事ができる壷であるが、中に入っている物は無い。
詳しく言うと、神々ですら『滅する』事ができる空間と繋がっている、『入り口』が壷の形をしている、
と言う方が正しい。
持ち運ぶことができ、滅することのできる空間を任意に繋げている、と言う方が正しい。
今回摘出した腫瘍細胞は、曲がりなりにも高位女神の体の一部だった。
また、摘出手術にあたっては、意思を持っているかの様に抵抗もした。その為、通常の細胞の焼却等で
滅することよりも、確実に『滅すること』にしたのだった。
処置が済み、一安心したゼウスは、ヘラ神が眠っている病室へ移動した。
■□◆◇◆□■
手術が成功して、しばらくした時間が経過した。
術後の経過としては、ヘラ神は順調に回復している。
もう2・3日程安静にしていれば、退院しても大丈夫だとゼウス神は判断した。
今日も術後の経過を見るため献身的にヘラ神の看護をしているゼウス神は、手術中に感じた
違和感について、ヘラ神と話し合った。
「・・・と言う事で、目的の腫瘍部分の切除は行えたのだが、貴女はこの事についてどう思う?」
何気ない会話が途切れ、躊躇いがちに相談するゼウス神を見て、ヘラ神も少し奇妙な感覚を
持ち始めた。 そして、摘出行為に抵抗したという、その腫瘍細胞の様子について、ゼウス神の記憶と
同調し、その時何が起こったのか一緒に検証することにした。
そして、暫く無言のままの二人だったが、その沈黙を破ったのはヘラ神だった。
「・・・ゼウス神。 先ほど同調した貴方の記憶について間違いがなければ、これは確かに私と貴方以外の
第三者が居たと言うことだと思います。
また、抵抗した理力についてですが、これについての心当たりは、私には有りません。
ですので、手がかりとしては、この第三者の特定を行うことで、私に病魔を齎したのかを検証する必要が
あるのだと考えます。」
この意見については、ゼウスはある意味同意し、想像通りの回答だと思っている。
だが、手術中に感じた”違和感”、いや、ゼウス神の持つ第六感は、それを”否”と否定していた。
「そうだな。 確かに貴女の仰る通りだと思う。
ただ・・・。 これは私の”六感”が言うのだが、怒らないで聞いて欲しい。
どうも今回の病魔については、その第三者は関わっていないような気がする。
いや、その第三者は貴女に病気を齎したのはではなく、寧ろ病巣を取り除く手伝いをしてくれた様に
感じるのだが、そう言う意味の心当たりは無いだろうか?」
「・・・?? いいえ、全く・・・。」
その様に答えるヘラ神を見つめていて、ゼウス神自身も答えにたどり着けない事について、もどかしさを
感じていた。
その・・・、何かヒントとなるものが在れば、答えに辿り着くとは思うのだが、その切欠が足りなかった。
その様に思っていたら、丁度ヘラ神の病室にお見舞いの客がやって来た。
一応、ギリシア神話では有名ドコロである、”アテナ神”だったのだが、このアテナ神は人間界で言う所の
”チョット残念な”女神だった。
「チィ〜〜ス。 お母様、もう病気治った?
ってか、早く病気治して仕事に復帰してよね。 じゃないと、代役している私が別の病気になるかもよ。
全く、私の趣味の時間(ゲームする時間)が削られるなんて冗談じゃないわよ、ホントにもう!」
この様な”残念な”女神に育った態度を見て、ゼウス神とヘラ神は同じタイミングで溜め息をついた。
「・・・あ・あのな、アテナよ・・・。
いくら手術が成功し、心配は要らないとは言え、だ。
病人に対して、早く復帰しろとか無茶ぶりはどうにかならんのか?」
「・・・流石の私でも、その”お見舞いの言葉”にはドン引きするわ。
照れ隠しと言う次元を下回るって、言っている意味分かるかしら?」
アテナ神としては、ゼウス神とヘラ神が会話をしている雰囲気と言う物はいつも緊張感が張っている
ので、その環境を少しでも和ませようとワザと憎まれ口を叩くような挨拶をしたのだったが、
しかし、その余りにも”残念”なお見舞いの言葉はレベル内容が低すぎて、二人の神様から怒られるのを
通り越して呆られてしまった。
この対応についても、両者は”いつもの事か”と割り切り、反対にアテナ神は、目的は達成できたものの、
『試合に勝って、勝負に負けた』的な敗北感を感じていた。
だが、アテナ神の本心は、予想以上にヘラ神が元気だったので、多少の自分を貶めたとしても良しと
することにした。
ま、ヘラ神にはアテナ神の本心は分かっていたので、敢えて叱責することもしなかった。
そして、変に気を使われることも避けたかったヘラ神は、ここで話題を変える事にした。
「・・・ところで、アテナ神。
少し貴女の力を借りたいのだけれど、良いかしら?」
「・・・えーーっ、これ以上私に仕事を押し付けようとしています?
もうこれ以上は、マジで私余裕ありませんけど〜〜?」
「・・・いや、仕事云々じゃなくてね、少しゼウス神から記憶をリンケージして、とある映像を見て貰いたいのよ。
貴女なら、その現象について、何か心当たりがあるんじゃなくて?」
「・・・??
えっと、お仕事のとかではない、と? ま、そう言う事なら、拝見しましょう。
じゃぁ、パパリン。 カマンッ!!」
「・・・あ・あのなぁ、ワシ一応このギリシア神界の主神じゃぞ?
何じゃその態度は? ホントいい加減にその態度を改めないと、カミナリを落すぞ・・・。」
と言いつつ、ゼウス神から問題の手術に関して、摘出した腫瘍細胞の記憶映像をアテナ神にも
見せてみた。
そして、2・3分程黙っていたアテナ神は、先程とは打って変わって真剣な表情で思案しだした。
暫しの沈黙の後、アテナ神はその重い口を開いて次のように言った。
「・・・なるほど。 先の腫瘍細胞はヘラ神様から摘出された、癌細胞の本体と言う事ですね?
で、摘出中に理力を使われて抵抗してきた事について、それの正体について心当たりがないかと、
ヘラ神様は仰りたいのですね?」
「そうよ。 しかし、その様子だと、何か知っていそうですね?
一体この現象は何だったの、アテナ神?」
「・・・まずこの理力についてですが、私がよく展開する符丁が感じられます。
恐らく過去に置いて、私が誰かに付与、若しくは貸与した能力の一つだと思います。
記憶映像のみ見ただけで詳細は分かりかねますが、恐らくこの力は『殲滅眼』と呼ばれる能力だった
はずです。
それでこの力を欲した人間がおりました。 ・・・酷く自分の本名にコンプレックスを持っていた者で、
その者の希望により、彼は”転生者”として、その後の人生を繰り返していると記憶しています。」
と、ここまで黙って聞いていたゼウス神は、人間で”本名にコンプレックス”を持ち、転生を繰り返す者に
ついて考えて、一人の人間を思い出した。
「・・・・・・ッ!! そ・そうかっ!
ワシが感じた違和感とは、昔にその者と邂逅した際の感じを思い出したのかっ!!
名前は確か『越智 雄造(オチ マサナリ)』だったはずじゃ。 『オチ言うぞう』と呼ぶなと説明を
受けたな。
なるほど。 確かに彼なら転生途中で、偶然にもヘラ神の細胞の一つとして生まれ変わったとしても
不思議ではない。
・・・いや、だが待てよ?!
その者は転生に置いて、それらの能力を引き継いがないままの状態で転生した筈・・・。
どうして『殲滅眼』を保持したまま転生できるのじゃ?」
一つの疑問に解が齎され、3人の神々は人心地を着けたのだが、新たに判明した疑問により、
また閉塞感が生じてしまった。
しかし、この疑問については、ヘラ神によって解が提供された。
ヘラ神は申し訳無さそうに、小声で述べた。
「・・・そ・それは、多分・・・私が消し忘れていた、と言う事だと思います。
い・いえ、その・・・、彼の者もその能力については忘れていたらしいので、私としても全く着目して
いなかったのです。
でもしかし、『殲滅眼』とは、主神であるゼウス神の理力すら跳ね除ける事ができる能力なのですか?」
ヘラ神の解答に他の二人の神は、微妙に残念な表情をしていた。
そして、ヘラ神が齎した、次の疑惑について、アテナ神が解を引き継いだ。
「・・・いいえ。 通常であれば、その様な事は起こりようも有りません。
確か私が齎した時の『殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)』はレベル1の初期状態だった筈です。
ですので、ゼウス神の理力に対抗できるような、能力では有りません。
ま、でも、使い込んでレベルが高くなっていたら、どうか解りませんが・・・。」
ここまで聞いていたゼウス神は、そもそもの疑問を聞くことにした。
「・・・なるほど。 原因については何となく分かったが、アテナ神が危惧するように、修練を積む事で
能力のレベルが上がる事は考えられるな。
一体、転生者”越智 雄造(オチ マサナリ)”は”通常”の転生ルートに乗っているのか?
ヘラ神よ。 貴女は彼の者の魂にどのくらい干渉したのだ?」
この問い掛けについても、ヘラ神の返答する声は小さかった。
「・・・彼の者の魂を回収した後、”通常”の外史世界へのルートに乗せようとして、そのまま忘れていたと
思います。
その後”転生する”部分が機能したとしたら、私の関係する世界などに転生したのでは無いかと・・・。
恐らく、私を崇める信者の魂に憑依したりして、”通常”ではない転生を繰り返していたのでは
無いかと・・・。」
「何と言う事だ。 貴女の関係する世界と言う事は、頂点である貴女は勿論、類が及んだ英雄や神々も
対象と言う事か?
と言う事は、彼の者の魂が憑依を繰り返し、その時々で『殲滅眼』を使いレベルがアップしていた
可能性があるということだな・・・。」
「・・・貴方の理力を弾く、と言う事実から類推するに、恐らくは・・・。
多分ですが、時間的には1万年は経過しているはずです。 その間中、転生を繰り返したはずですので、
経験値の蓄積という意味では、レベルは最低でも100は超えているはずです。」
関連する謎は全て解けた。
と言うのに、ゼウスとヘラの二神は意気消沈している。 この様に多少の不安を感じたが、アテナ神は
雰囲気を変えようとして、ゼウス神に甘えることにした。
「・・・ま、良いんじゃないの、パパリン?!
って事は、今彼の者は此処に居るってことよね? よしっ、いつぞやのゲームでの借りを返しちゃるっ!!
パパリン、『Never Under』は何処に居るの?」
脳天気に聞いてくるアテナ神の問いかけに、ゼウス神は言葉少なく返事をした。
「そ・その・・・。 彼の者は・・・、もう・・・居ない。」
「居ない? だって、手術でヘラ神の体内から取り出したんでしょ?
腫瘍細胞になっていたとしても、推定で『殲滅眼・レベル100超え』を使いこなせているってことは、
越智君は自分の意識を保ったまま、って事でしょ?
何処にやったのよ、パパリンッ!!」
「・・・確かに摘出はした。
・・・その後は、そのままにしておくことはできなかったので、・・・その、処分した。
『滅の壷』に・・・。」
「・・・? へぁ?!
えっ?! め・『滅の壷』?!?
あ・あの、私達神界の者をも『滅する』事ができる、あの『壷』の事??
じ・じゃ・・・、越智君は、も・もう・・・。」
「ああ。 確実に『滅された』のじゃ。
最早、彼の者は”転生者”ではない。 もう、何も無い状態となった。
・・・まさか彼の者とは、ワシも思っておらなんだ・・・。
もし知っていたとしたら、別の形で保護していたのじゃが・・・。
あの者には可哀想な事をした・・・。」
何故に二神が意気消沈していたのか、その理由が分かったアテナ神だった。
流石に自分の不注意で、この様な事になるとは思っていなかったヘラ神も、今回のことについて
感想を述べた。
「・・・確かに、あの者は少し変わった者でした・・・。
ですが、私も決して嫌いでは有りませんでした。 自分を犠牲にしてまで目的を敢行する崇高さ、
いえ、一途さに共感を覚えましたし、好意を感じる程度には評価しておりました。
それに私としても、結果的に人間に借りを作ったまま、と言う事は我慢できません。
もし叶うなら、もう一度会って私の加護なりを与えても良いくらいには思いますが・・・。」
もう居ない事が確定したことに、アテナ神は悪態をついた。
「・・・ったく、最後まで私に反撃させないで、勝ち逃げなんてズルくない?
カッコつけ過ぎなのよ、アイツはいつもいつも・・・。」
その転生者の結末に、三神はそれぞれ彼が滅された事を偲んだのだった・・・。
: Side Out Other
■□◆◇◆□■
あれからオレは、真っ白い空間に居た。
オレは意識体が、と言う方が確実なのだろう。
見覚えのない体に成っていた。 五体満足ではあるものの、オレとして記憶している手や足では無かった
と言う事だ。
キンクリ的に「何を言っているのか・・・」な状態であった。
いけない・・・。 自我が崩壊しそうだ・・・。
直前にあった事を思いだせ・・・。
今、”オレ”が俺であるために、何か起点となるポイントを確立するために”思いだせ”・・・。
確か、腫瘍細胞化した癌細胞と一緒に取り出された俺は、恐怖すら感じない何か別のものに
入れられた・・・、いや、放り込まれた・・・??
そ・それから、俺を構成していた癌細胞は崩壊して行ったんだ。
多分、”殺す”ではなく、”滅される”と言う表現が正しいのだろうな?
癌細胞がスローモーションの様に粉々になって行くサマは、その全てを物語っていた。
で? 俺はそれからどうした??
・・・あーー? た・確か、殲滅眼を使って、抵抗した?
・・・・・・いや、そうしようとしたけど、全く刃が立たなかった。
・・・そんで、崩壊した細胞の現象をとり込もうとしたんだ。 正しく言えば、
「崩壊する=滅される」のであれば、「崩壊/滅する前にソレに同化する事で、滅する事を回避する」
を目指したんだ。
殲滅眼の基本仕様には、『精霊界からの力を取り込む事ができる』とあった。
そのスピードは凄くゆっくりらしいが、常に精霊の力を取り込むことで、魔法一切は使用できないけれど
それに対抗する力は手に入れる事はできるのだ。
ま、俺の殲滅眼はレベルが1ではないらしいが、瞬時に魔法要素や精霊の力を取り込むのであれば、
理力等が全く効かない、特殊な力場すら取り込めるかも知れない。
俺は咄嗟にその様に考え、それを実行した。
この間の時間は、約Ⅰ秒と言う極限状態だった。
俺が取り込んだ腫瘍細胞部分が崩壊するさまを見ながら「い〜ち」と数えていたんだから、間違いない。
自分でもよくこんな思考が行えたと思う。
今更ながら、これがどれ程無茶な行為だったか、振り返ってみれば、それはとても恐ろしい行為だった。
だが、その様に抵抗していなければ、俺が終わってしまう。
何かして、結果失敗しても”しゃーなし”で済む場合がある。
でも、何もしないで”しゃーなし”にはしたくない。
それは、俺の最低限のポリシーだ。
だから、咄嗟だったが、迷うことなくそれを実行した。 結果は今の俺の状態だ。
・・・そんで? 今の俺は、結果的には”生き残った”のか??
・・・いや、直前の事や、俺のポリシーが云々と言う部分、俺は生き残ったと言って良いよな??
でも、今の俺は自分が思っている通りのことはできていない・・・。
と言う事は、どう言う事だ??
その様に思っていたら、何処かから声ではない答えを感じた。
ソレが言うには、今の俺はその声がする何かと同調したのだ、ということだった。
「・・・?? 同調、だと?
一体俺は何と同調したんだ?」
俺は声を出さずにその様につぶやいた。
するとまた何処かから、声なき答えが返って来た。
ソレが言うには、俺が思っていた崩壊する現象とは、次元世界との接触により次元世界で存在できない
者は崩壊と言う結果に終わる。
だが、俺は直前に次元世界での存在を、殲滅眼を通じて取り込めたので、今の次元世界との同調が
可能となった、と言う事らしい。
「・・・それは理解した。
だが、どうして、俺と同調する気になったんだ?
と言うか、今の俺は”何”になったんだ??」
その答えとして、俺は驚愕の事実を知ることになった。
俺が理解できるような言葉で言う所の”宇宙のヒモ”だそうだ。
「・・・えっと・・・。 ちょい、待ち。
そ・その、”宇宙のヒモ”って、あのスタートレックに出てきた、ソレの事??
い・いや、ホントに待って。 ”宇宙のヒモ”って、超弦理論の元ネタでしょ?
あれって、意思を持つ生命体? いや、生命体って言う定義自体も間違っているのか??」
俺が混乱をきたしていると、フォローの声が方方から聞こえてきた。
ソレ等が言うには、一番近いイメージが”宇宙のヒモ”と言う事らしく、決してスタートレックに出てくる
宇宙のヒモと同じではないらしい。
それと、意思云々の部分では、感情とかは無いらしいが、現象に対する原因と結果について、理解は
行うことができるらしい。
「・・・うーーん・・・。
何か釈然としないけど、何となく分かった。
でも何で俺と同調しようと思った? 特に同調しなくても良かったんじゃ無いの??」
それについては、明確な答えが聞こえてきた。
先に述べた「現象に対する原因と結果」を探る上で、一定の基準を満たした俺が同調してきたので
受け入れただけ、との事だった。
また、俺と同調できたことで、様々なファクターにも対応することができたので、決して同調しなかった
事よりも、同調できたことは”是”であるとの事だった。
つまり、俺と同調する事で、知識として理解する範囲が広がったことが、嬉しい・・・?
いや、楽しい・・・? ・・・うーーん?
何と言って良いのか、理解に苦しむが、兎に角、歓迎してくれている事は理解できた。
それと今の俺を定義するとしたら、多分「高次元界生命体」とか言うのかも知れない、と思った。
・・・えっ?! こう言う風には呼ばないの? 生命体とかでもないの?
生きる死ぬの定義が間違っている??
神や悪魔、善悪や正負(プラス・マイナス)でもない、存在するが無いも同じ? 零?
確実に言える事として、それ等一切を凌駕している? 神様を凌駕している存在って・・・??
ま、時間を掛けて此等の定義には模索しないといけないのだろうな・・・。
・・・・・・ぅん? 何だ??
依頼というか、俺にしかできない事? を頼みたいだと?
・・・”転生”と言う、輪廻転生と言う概念に基づいて、様々な一生をサンプルとして取り込みたい、だと?
・・・あ、そう言う事か。 今の俺は、謂わば”宇宙のヒモ”化してしまって、転生者じゃ無くなっているんだ。
でも、そう言う事態だとしても、転生できないんじゃ、どうこうできないよ?
・・・俺自身を情報の取り入れ口にしたい・・・? まぁ、そのくらいならやっても良いけれど、肝心の俺は
どうしたら良いんだ?
・・・?? へぁ?
俺の意識体のみ、次元を挟んで多次元に飛ばして、それぞれの世界の輪廻の輪に混ぜる・・・??
その上で、経験値をこちらの「宇宙のヒモ」方向に引き戻して、情報を得る??
いや、理屈は分かるけど、ホントにそれ、できんの??
あ、できるの? ・・・そう。 分かった。 やらせて頂きます。 後で、方法教えてね?
・・・ぅん?? 通常の何も力を持たない人間とかのサンプルと、特殊な力を持つサンプルが欲しい?
あーー。 チート在る/無しの違いは持ちたい、と。
でも、チート使うなら、その世界に混乱というか、濁りと言うか、変な要素が加わると思うよ?
・・・。 うん。 だから、そうならない様に干渉する対象を特定しないとね?
・・・・・・。 そうだね。 例えば一例なんだけれど、物語上の世界があったとして、これを正視世界と仮定
すると、外史世界と言う観念もあって、一種のパラレルワールドの事なんだが、この外史世界なら正視
世界とは隔離されているので、サンプルが増えたとしても、物語上影響を受けない、と言う概念があるんだ。
こいつの良い所は、正視世界である物語の概要は影響を受けないんだ。
だから、「○✖の戦い」と言う展開があったとして、その戦いへと続く背景などは変更できないんだ。
いや、戦い自体を回避するには別の筋立てが必要なので、その様な展開する場合、事前策が必要と
なる訳で、所謂これが”二次創作”に該当するんだよ。
え・・・? さ・採用? 外史世界をサンプル干渉世界として、承認??
わ・分かりましたよ。
そんで、いつから始めるの? えっ?! さ・早速今から??
い・いや、急過ぎる様な気がするんだが・・・。
何か人使いが荒いような気がする・・・。 ・・・や、た・確かに、今は人じゃないけれど・・・。
何かこんな事になっているけれど、俺の転生らしきもの(?)は、まだまだ続くらしい・・・(汗;)。
■□◆ ー 『それから、その転生者は・・・』 ・ 完 ー ◆□■
はい。 と言う訳で番外編でした。
越智君の名前の元ネタは、斬が関西人と言う事もあり、社会人1・2年目の歓迎会の時に、「何か面白いことを披露して」と無茶ぶりされた事が元ネタです。
明石家さんまがTVで面白おかしく”下品な関西弁”を話すから、それを受けてでしょう、全ての関西人が面白おかしく対応できるかというと、そうではないんです。
人との会話が苦手な人間も当然居るんですが、某有名人等がTVでやらかすことで、固定観念的なイメージを植え付けられるので、斬としては、若い時の歓迎会とかは苦手でしたね。
話を戻して越智君は、結果的に転生者で無くなってしまいましたが、結局同化した高次元の”宇宙のヒモ”の様な集合体とか複合体(?)に拠って、様々な外史世界に分身を飛ばして情報を取り込む役目をもって、この後も物語を紡いでいってくれる、と言う事です、かね?
(何故疑問形?)
ついでに言うと逢坂さんなんですが、アルカディア様向けのSSに登場した主人公でしたが、実は高次元的な集合体の越智さんが放った分体の一人だったりします。
無意識ですが、このお話と繋がっているんですよね。
ついでのついでに言いますと、過去のあの人も分体の一人で、その影響で越智さんの物語に続いていたりしています。
今回の番外編は、斬のその後の投稿にも影響を与える要素があったので、その意味でも書いておかないといけなかったんです。
勿論、逢坂さんも過去のもう一人も、意図していないで行動していますので、越智君のコンプレックスはホントの本当に偶然の産物では在るのですが、結果的に物語は繋がっている、と言うことです。
高次元の集合体は「現象に対する原因と結果」について情報を求めていますが、この越智君関連の巡り合わせについて、高次元の集合体が深く関わった要因だった事は、実は認めていたりしています。
いくら殲滅眼を通じて高次元の存在と同等に成り得たとしても、関連する要素が無い他者と同調して同化は本来しません。
関連する要素があったので、同化したんです。越智君はその事の説明は受けていませんが、この先何かのはずみで知ることになるでしょう。
ま、この番外編の関連情報はこの位として、この後なんですが「Muv-Luv 編」は予告の通り、エピローグ編に取り掛かります。
ですが、時間もかかるので優先順位がどの様になるのかは、未定です。
「What happened …」のお話は今話を以って完了としますので、次に投稿するとしたら、エピローグ編とかの別のタイトルを付けて投稿する事になると思います。
あと、プロット事情についてですが、エピローグ編のプロットはその意味で、全く仕上がっていません。
詰めないといけない部分が多いということと、他に用意したプロットが有り、そちらが先に仕上がることも予想されます。その為、他の作品が先に仕上がる可能性が有ります。
投稿する順番が滅茶苦茶となるのは、申し訳有りません。
作品ができて投稿できる準備が整い次第、披露させて頂きます。
では、いつか次回にお目にかかれる事を願いまして、最後のご挨拶とさせて頂きます。
以上、ありがとうございました。