What happened in the story ?   作:斬【Zan】

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ご無沙汰してます。 遅くなりましたが、05話目です。
何とか2月中に投稿できました。 お陰で試験はボロボロでしたが・・・(苦笑・自業自得)。

今話では、何かと調整のお話となります。
予告させて頂いた、『撃震モドキ』も登場しますが、まだ動きません。
精々手足が”ピクピク”程度です。

独自の妄想による”ナンチャって”エンジンとグレイ物質を掛けあわせた物に仕上げるつもりです。

相変わらずご都合主義ですので、苦手な方はリターンバック願います。

では、そんな訳で05話、どうぞ。


Muv-Luv 編 第05話

 

 

 

 

現在、2001年11月12日の午後1時30分を少々回ったところであり、甲21号ハイヴ・コアの撃破は

終了している。 昼食である携帯食料をかじりつつ、仮組みの撃震モドキの仕上げを行っている。

 

手元には、先ほどマニュアルに書き込んでおいた戦術機の改善ノートがあり、自分の能力である

「なんでも工作」で思いつく限りの工夫をこらした新機構を組み上げている途中だ。

 

 

そして今、その中でも一番の肝心の山場である所のメイン・エンジンについて作業を始めた。

参考とするのは、マブラヴ・トータルイクリプスで出てきた香月博士謹製のレールガンだ。

あの動力源は、グレイ物質を使ったモノで、謂わばBETAさん達の”ご飯”的価値が高い代物だ。

 

『グレイ物質を使ったモノ』と表現したが、そのものズバリはグレイ11のミニマム・スケール版の

試作実験ユニットのプロトタイプ。

つまりG弾が齎す効果を制御した形にするべく組み上げられた試作実験炉がその正体だ。

 

だから、俺が目指す戦術機のメイン・エンジンも、これに習ってグレイ11を使った物にしようと思う。

 

 

では、具体的な考察を始める前に、現状グレイ物質を使った一般例を上げるとすると、

そこはやはり”G弾”に集約される。

 

で、このG弾の正体は、特定の領域内部にて、素粒子の陽電子崩壊現象が発生し、その効果範囲内に

在るもの全てに対して異常重力力場、要は斥力の乱数的発生現象による圧縮・粉砕を掛けられ、

最終的には素粒子と力場ごと潰される、と言う現象を指す。

 

また、この現象の後遺症として、素粒子力場が無くなっても、動植物などに影響を及ぼすほどの、

重力干渉の爪痕が残り、その影響のため国連軍横浜基地周辺では、未だ植物を植樹しても

雑草ですら生えてこない有り様だ。

 

恐らくこれが意味する所には、人間や動物にはそれを感じることが極めて困難だと言えるが、

植物など大地に根を生やす生き物にとっては、重力場の大きい物、つまり地球、

いや、惑星の中心核の方向が重要な意味を持ち、その反対側(この場合は空)に芽を咲かせる為に、

それらの環境が整わない場合は、いくら水を与えようと芽を出し根を張り巡らせられない、

と言う事情が推測される。

 

人間や動物は、1G環境に置いてある程度の重力に異常があっても、他の引力などによる

部分で補正が働くのかも知れないので、今の所生活できないほどの環境悪化と捉えられていない。

 

 

兎に角、目指す所のメイン・エンジン部は素粒子の崩壊現象を管理できる様に制御し、

特定の任意の範囲はエンジン・ブロック内に、そしてその中で重粒子力場を複数形成し、

そこの力場からエネルギーを抽出して利用する。

 

これは、言い換えると特殊重粒子を任意に設定した運動力場、所謂人工重力力場の中で

制御されたエネルギーを取り出す事を意味する。正にその為のグレイ11だと言える。

 

しかし先に上げた「複数の任意の力場」とは、最終的にする形を指し、最初はたった一つの力場から

電力のみ供給させる事を目指す。

 

と言うのも、臨界状態にある領域内にて、複数の力場を発生させるには”走っている馬の目を射抜く”

ぐらい制御が難しいのは言うまでもない事実だろう。 それだけ複雑な管理OSが必要であり、

制御のためには専用の中央制御装置が必要だ、と言う事だ。

 

しかし、それらを経ても制御したい魅力が、グレイ11の中には在る。

それは”『平行多次元』での領域を用い、同一制御下で同じ現象を発生させる”事を意味している。

専らこれは応用技術として使われることなのだが、上手く活用することができれば人工重力下における

時間経過を調整することができ、作成するための所要時間が多い部品と同時並行で作業することが

できる、と言う事だ。

 

そのネタは、人工重力を持つ力場を一種のブラックホール的発想によるものだが、高重力環境にある

空間を用意し、その空間を直進する光(もしくは素粒子など)に影響を及ぼすことで、光の進行速度等に

影響を及ぼさせる現象を利用して、ある特定の細胞の成長促進を管理できたりする。

 

つまり、人工的に時間の短縮を行うことで、同時期に一つの個体を製造するという離れ業を

実際にBETAは実施している。

何を言っているのかというと、突撃級BETAユニットの製造において、これの記録映像にて、

部分的に製造過程で細胞の成長スピードが異なる部位(モース硬度が高い外甲殻)があり、

この部位が他の製造部分と合流する際に時間の短縮が行われている記録があったことに

基づいている。

 

恐らくだが、甲22号ハイヴである横浜基地の地下のハイヴ・コアにも、実験で使用した

人間の標本(鑑 純夏嬢、他)に対して臓器や細胞を強化した経緯があり、それらの

手術に於いて人工的に細胞を成長させたと思われる部分があったのを思い出した。

 

つまり、グレイ11には、重力関連の能力、及び応用技術も含まれている事が推測され、

また、因果導体となっている白銀君の件も含めると、平行時空間に対しても影響力を及ぼし

兼ねない事実から、任意に設定した運動力場とは、重力・時間・空間を任意に圧縮・

加速・減速・拡張・縮小 等に使用され、実用化されている事を意味している。

 

 

グレイ11を使った技術についての考察はこのくらいとし、次に参考にするのは、やはり香月博士の

レールガンの心臓部である、エンジン・コアだろう。

 

上記に述べたグレイ11を用いた技術の中でも、本当の基礎の最初の最初の最初、基本中の基本の

部分、膨大な量の電力を得る事に特化させた、比較的安全でコンパクトな作りを目指した物が

篁 唯依・日本帝国斯衛軍中尉が守ろうとしたエンジン・コアだ。

 

そして将来的には、戦術機自体を高速移動や飛行させるために特殊力場を生成したり、敵からの

攻撃を防ぐ為のフィールドを形成したり、空間レンズを応用した独自のリニア・レーザー・カノンの

(光線を曲げて軌道上を進む・別名『曲がるレーザー砲』)開発を目指す。

 

まぁ、追加部分については、最悪確立できなくても後から追加するとして、先に電力の供給を

行わないと、戦術機は指一本ですら動かせないので、最初は此処から始めよう。

 

 

グレイ11の使い方についての基礎的な部分は、予想からそう外れていないと思うので、

”なんちゃって”仕様になるかもだが、俺の能力である「なんでも工作」で具現化してみた。

基本的な考え方、先程の概要などをまとめ、その様な仕様を想像することで、実際に具現化する

能力なので、イメージに従い何かそれらしい物を作ってみた。

 

「・・・・・・う〜〜ん、多分・・・、こんな所で良い筈なんだが、ちゃんと動くのかな、これ?」

 

一応作成したエンジン・コアを、用意したエンジン・ブロック内に収めることはできた。

 

先程借り組みした撃震は、不要な重り、と言うか装甲を外し、頭から手・胴・脚を繋げたお人形

状態になっている。 俺は元からあった撃震の主機とは別に、サブ動力回線としてエンジン・ブロックを

用意し、配線を通じて主機とサブ動力回線とで切り替え可能状態にして、最低限の実験準備を整えた。

もちろん、修理完了状態となっているが撃震本体は、従来通り各動力やラジエーターやバッテリー等

他にも予備の蓄電装置や電磁伸縮炭素帯などは取り外している状態だ。

 

一抹の不安はあるものの、”通電できれば儲けもの”の様に感じつつ、従来の撃震のシステムを

起動させ、電力供給が行えるか確認した。

 

「・・・・・・上手く行ってくれよ・・・。

 あと、万が一に備えて俺の周りに耐物、耐電磁防御用フィールドを形勢しておこう・・・・・・。」

 

仮組みされた撃震の傍らで、ほとんど杞憂だと思いつつも、万が一に備える必要を思い出して、

俺の周りにだけフィールドを形成してから戦術機のシステムを起動させた。

 

低い独特の稼動音を立てつつ、従来の戦術機のメンテナンス時に用いられるシステム起動を

経て、戦術機全体の状況を確認ている。 勿論今の状況では主機であるメインエンジンには

火を入れない状況にしている。

 

この段階では、指の一本は勿論、何も動かすことはできない。

だが、戦術機は万全の状況と異なる起動に於いてはエラーを返す。

 

ま、戦術機に限らず普通のコンピュータでも同じだが、様々なシステムエラーからエラー・ログが

返されてくるので、俺はこの情報から必要でない部分を排除し、戦術機システム全体が

通電されている状況にした。

 

「・・・・・・フィーー。 やれやれ、やっと言うことを効いてくれる状況にできたな・・・。

 では、此処からサブ回線に設定した、先程作ったエンジン・コアを

 起動させてェー〜 からのォー〜 電力供給を ・・・っと。」

 

俺が用意したグレイ11を用いたエンジンは、タービンなどを回すような仕様にはなっていない。

 

寧ろ高温高圧に耐える専用のコア・ブロックを用意し、この中でグレイ11を用いた特定領域を生成させ、

更にその中から、一定条件化における素粒子の陽電子崩壊現象から齎される、特殊重粒子を発生

させ、その重粒子を用いて任意に設定した運動力場を形成させた。

 

一連の作業を簡単に述べたが、その間も装置は低い重低音を鳴らしつつ稼働していた。

 

すると、一応の成功は見られたのだが、予想外のことが発生した。

グレイ11を用いたからか、任意し設定した運動力場を形成したためか、ハイヴ・コアルーム自体が

全体的に光度を上げた。

普段から薄暗く黄緑色に発行しているハイヴ・コアルームは、いきなり黄色を強めつつ、段々と白く

発行してきた。

 

「・・・ッ!! My God!! フィールド形勢ッ!!」

 

俺と戦術機を包み込み、ハイヴ・コアルームとは一線を引いたような球状のエネルギー遮断

フィールドを形成し、エンジン・コアからの影響を遮断した。

すると、急に発光していたコアルームの壁は、徐々に元の色に戻り始めた。

 

どうやら、グレイ6はグレイ11からのエネルギー発生に於いては影響をモロに受ける性質を

持っているらしい。ハイヴ・コアが残っていたら、この事はあ号目標さんに知れてしまう所だったが、

それは何とか防ぐことができた。 ・・・多分。

 

そう思うと、余り此処に長居するのは宜しくない。 さっさと検証なりを進めないと、後手に回ってしまう。

腰を据えるのは横浜基地の方が良い、と言う事だ。

 

俺は作成したエンジン・コアに、先程張り巡らせたフィールド属性を追加し、エンジン・コア自体の

保全を追加した。

この状態でシステムをチェック。 うん、オール・グリーンを確認、っと。 よし、引き続き実験を継続しよう。

 

一応、システムの安全性を確認・確立できたので、続けて起動したエンジン・コアモジュールを安定

状態とし、コアモジュール内での重粒子力場を確認した。

飽くまでも今の段階では”安定”して”電力”を取るだけの力場に成れば良いので、その様に属性を設定し、

調整を加えたところ、目的通り電力の供給をサブ動力回路から得ることができた。

 

俺は、サブ動力回線をメイン回線に切り替えた。

すると驚く事に、通電が行えたら一気に戦術機各部署に用意したバッテリーに電気供給が行われ、

3秒掛からずに電力は満タン状態に成った。

 

「・・・ゲ。 マジですか・・・。

 何この電気量。 原子力発電所要らなくなるんじゃないの、これ?」

 

本当に、『予想外』であり『想定外』な状況に俺は呆れた。

 

・・・・・・ま、次に進もう。

 

一応戦術機システム上に於いては、正常に情報を拾えることが確認できたので、

一旦戦術機のシステムをオフにして、エンジン・コアモジュールを主機の代わりに組み込む事にした。

つまり、発電用のラジエーターや動作安定用の電力バッテリーを省き、反対にグレイ9を流用して

電力事情を安定化させた上での電磁伸縮炭素帯を生成し、関節の中にパワー補助を補うために

内臓されていた特殊パワーモーター付き関節を、その耐久力を強化したものと置き換えて、

全体的に撃震モドキをスタイリッシュ化していった。

 

また、電磁伸縮炭素帯の配置は、人体の筋肉のそれと同じようにした。

おかげで”重厚な”と形容詞が付いていた撃震は、”第一世代に見えない”スタイリッシュな撃震へと

再構築されていき、それを俺は勝手に『撃震モドキ』と呼ぶことにした。

 

電磁伸縮炭素帯を配備し直したら、全く機体のイメージが異なるって、『モドキ』で済むのか?

と頭をひねってしまった・・・(汗)。

 

 

ロボットなどの機械を人間のように動かし、更にそれらを人間的動作におけるパワーを出しつつ

動かすには、俺が省いた関節内部に特殊モーターを内臓したタイプと、電磁伸縮炭素帯の様に

所謂人工筋肉を用いて、それを人体の筋肉宜しく動かし、驚異的パワーを出すやり方が思いつく。

 

俺はこのネタを後者の方に置き換え、更に強化した人工筋肉を用いることで、不必要な構成を

できるだけ省くと言う構造に置き換えた。

正にグレイ9が持つ電気保有量を加味できたので、下手なバッテリーや電力生成用

ラジエーター等は省くことができたし、撃震全体的に装置の単略化を行うことができた。

 

兎に角、従来とは全く異なる原材料が数機分の”撃震だった”というだけの繋がりしか無い

”撃震モドキ”を組み立てた。

先程は、配線とか回路的に通電を確認できたので、今度が本当の意味の「組み立て」に該当する。

そして、準備が終わったので、早速エンジン・コアモジュールを起動させ、戦術機のシステムを起動させた。

 

すると、システム的にはさっきのテストではあれほどエラー・ログを吐き出していたのだが、今度は一つも

それらを吐き出すことはなかった。

 

ま、当然だな。 そうなる様に調整したのだから、ここでゴネられると白けてしまう。

 

続いて、今の段階でシステム状況の再確認と電磁伸縮炭素帯に内蔵されているグレイ9に供給されて

いる電力供給量などをチェックした。

 

「・・・・・・・・・うん。 予想通り電力の供給と蓄電率も十分蓄えが行えている、 ・・・な。

 って事は、この段階でなら、指やら腕やら、脚も稼働テストできるって事だよな。」

 

まぁ、動くとは分かっているものの、それでも俺は慎重を期す事とした。

戦術機のシステムには、稼働前のメンテナンスモードの中に、”稼働状況チェック”と言うモードがある。

これは、メンテナンスした段階での稼働率を機械情報からのデータをシステムが読み取って数値化する、

というものであり、作戦実行前の要求稼働率との差分をこのモードで確認する為のものである。

 

因みに、これらのモードは第二世代戦術機がリリースされた時に、戦術機システムのバージョンアップが

なされ、そこからチェックする体制をしいている。

 

そして、”稼働状況チェック”を起動した結果は、一応問題なく100%で稼働できることを表していた。

しかし俺はこの数字には嘘が含まれていることを見抜いていた。

 

それは、機体コントロールが撃震モドキには加味されておらず、従来の戦術機システムでは可動部分の

稼働率を割り出せても、余計な重りとなるラジエーターやバッテリー、装甲を省いた今の”モドキ”が

起動して機体を起こしただけで、立ち上がることができるかは、”100%”と言う数字にならない事を

意味している。

 

故に、これらのOSを最初から作り直す必要があった。

 

「・・・・・・折角機体を発展させても従来の旧OSでは動かせないって、片手落ちも良い所だよ。

 全く・・・・・・・・・。」

 

まぁ、”機体を起こす”なんて動作をしなければ、”装置が動くかの確認”位はできるので、

指とか首とか足首とか、動かしても問題ないところをピクピクと動かしてみた。

・・・・・・ま、一応成功とだけ言っておく。

 

 

って事は、後することと言ったら、むき出しになっている機体に、お粗末な装甲板を貼り付ける、

くらいしか残っていない、なぁ・・・・・・。

 

結局、組み立てた撃震モドキで颯爽と甲21号ハイヴを飛び立ち、横浜基地に飛んでRTBできないって

コトだな。

 

いや、守護天使特典の「何でも乗りこなす」と属性付加を使って、飛んで帰ることくらいはできるが、

それも1時間以内って、制限が付くのって何かちょっとヤダ・・・・・・。

 

まぁ、オカモチ付き出前バイクで移動すれば、良いか・・・・・・。 チョット地味だけれど。

 

 

エンジン・コアのテストにて、グレイ11を使った実験の内容があ号目標である重頭脳級BETAさんに

バレていないことを願いつつ、俺は撤収にとりかかった。

そこかしこに散らばっている部品やその他(おみやげ)を回収し、組み立てたマリオネット状の

撃震モドキと一緒に”戦術機”の括りで、Watch Dogsの装備として仕舞いこんだ。

 

改めて仕舞っておいた、オカモチ付き出前バイクを取り出した俺は、キック一発エンジンをスタートさせた。

 

「・・・・・・うん。 特に忘れ物は・・・無いな・・・・・・。」

 

周りの確認が終わったので、俺はバイクの移動について、属性の付加を行った。

勿論、チンタラ走る気はないので、【耐光速】【移動能力:光速】と【任意スピード】を追加し、

ハイヴ中央、つまり地上のモニュメントを突き抜けるイメージで移動を開始した。

 

俺は、対BETA対策で張り巡らせておいた『障壁』を光速移動中のバイクを用いて、壁を突き破りつつ

上昇を開始した。

ハイヴ・コアルームであるメイン・ホールから海抜0mまでは、約1,200mあり、更にそこから

300m上にハイヴ・モニュメントの頂上があった。

俺はこの1,500m程を一気に駆け上がり、後ろに在る地上を見下ろしてみると、濛々と土煙と共に

崩壊しているハイヴ・モニュメントを見る事ができた。

 

「・・・さらば、甲21号ハイヴ。 そして、お帰りなさい、佐渡ヶ島。

 ・・・願わくば、散りし英霊達の慰めと成らん事を・・・・・・。」

 

俺は、バイクの上から静かに黙祷を捧げた後、一路横浜基地を目指すのだった。

 

 

 

 

 

 

Side Other : モノローグ

 

 

 

それは唐突に起こった。

 

異形の侵略者が乗り込んできて、その島に住んでいた島民たちを、老若男女を問わず、女子供から

老人に至るまで万編に渡り、全島民たちを、暗く冷たい冥府に叩き込んだ。

 

その島が属する国の軍隊も急遽住人を救うべく駆けつけた。

実際に数人の住人は助けることはできたが、しかし、その犠牲と成った方の住人が多く、

また、救助に当たった軍人にも被害が多く及んだ。

 

それ程、異形の悪鬼である侵略者達・BETAの数は、圧倒的と言えた。

 

それらの不幸から、わずかに生き残った島民を避難させるべく、本国に移動途中の船の上で、

その国の軍人の一人は遠ざかりつつある島を睨みつつ”いつの日か必ず取り返すっ!!”と、

呪詛の言葉を吐き出した。

 

敵(かたき)である異形の悪鬼共の力は圧倒的であり、一個人の力が彼奴ら及ばないことは分かり

きっていたが、せめて犠牲と成った島民や自分の部下達に誓いを述べなければ、このまま島を離れる

ことができないと思う程、口惜しく呪詛の一つも吐き出さなくては、遣る瀬無かったからだ。

 

 

それから数年後。

 

またも、それは唐突に起こった。

 

あれ程、人間を無慈悲にも蹂躙し尽くしたそれら異形の悪鬼共は、その住処であるハイヴ・モニュメント

が崩壊した後、居なくなった。

 

誰もが到底叶わない願いだと絶望しつつ、しかし、身命を賭してでもその悲願を成し遂げたいと

国民の誰もが願っていた事が、原因もわからないまま、その悲願は唐突に叶ったのだ。

 

政府中枢に居る官僚は声高に言った。 「詳細を調査しよう! 国民に発表するのはその後で良い!」と。

だがそれは無意味だった。 何故ならばその島のハイヴ・モニュメントは、晴れていれば対岸からでも

見る事ができる上に、その島周辺に住んでいる者達は海上に漁に出る度に、忌々しくもその圧倒的な

モニュメントを島が奪われた日からずっと見続けていたのだから。

 

その日、突然起こった聞きなれない大音響と、その様を見た周辺住民の一人が叫んだ。

「さ・・・佐渡ヶ島がっ!! べ・・・ベータのハイブが、崩れていくぞーーっ!!」

 

そこからまたたく間に、その声は広まった。 とうとう国の中枢に知れる前にその国の全土に

その知らせが齎された。

 

その島から生き残った人間は勿論、その国の人間全てが、その島を取り戻すことを悲願としていたからだ。

 

ある者は叫び、ある者は泣いた。

 

早速島に渡ろうとする者も居たが、悪鬼と恐れるBETAの残党の確認が終わっていなかったので、

誰もが一日千秋の思いで待ち焦がれていたにも関わらず、その島に踏み込めずに居た。

 

佐渡ヶ島に異変があった日から、またも数日の時間が経過した。

 

そして11月23日の正午前。 その日の朝から日本帝国内閣府から国民に向けて重要な知らせが

発表されるので、できるだけ多くの国民はテレビやラジオのそばにて傾注する様にとの知らせがあった。

 

奇しくも11月23日は、日本帝国国民にとって忘れることが出来ない歴史的な日となる。

 

政府・内閣総理大臣・榊是親自らが、あらゆるメディアを用いて全帝国臣民に対し報告を、

そして同時に全世界に対して宣言をした。

 

「去る11月14日未明、軍の特殊作戦に於いて、甲21号ハイヴを攻略したとの知らせが、

 国連太平洋方面第11軍 横浜基地より、日本帝国内閣府に齎されました。

 

 この連絡を経て、日本帝国内閣総理である私は、政威大将軍であられる煌武院 悠陽殿下に

 事実詳細確認のため斯衛軍による出動を要請致しました。

 殿下は直ぐ様、城内省に事実確認を行う令を発せられ、斯衛軍第一連隊を派遣なされました。

 

 そして、15日午前0時、同第一連隊は佐渡ヶ島・甲21号ハイヴに吶喊を敢行。

 ハイヴ内は一切の抵抗なく、同第一連隊はハイヴ中心のメインホールにて、ハイヴ・コアの破壊を

 確認したとの報告を上げて参りました。

 

 また、ハイヴ内及び周辺を捜索の為、戦艦大和を旗艦とする、日本帝国連合艦隊第三戦隊、並びに

 本土防衛軍東北方面軍 第12・第13・第14戦術機機甲大隊から成る一個連隊を投入し、

 残存のBETAの確認を行いましたが、かの怨敵BETA共は、11月21日まで調査した結果、

 その一匹たりとも発見には至らないとの報告が上がってまいりました。

 

 これらの報告を総合的に検討した結果、私は佐渡ヶ島ハイヴは完全にBETAから開放された、との

 結論に致りました。

 

 拠って、我が日本帝国政府は本日、2001年11月23日正午0時只今を以って、佐渡ヶ島が

 帝国本土に復帰したことを、日本帝国皇帝陛下と全臣民の皆様にご報告申し上げ、同時に、

 全世界の皆様に対して日本帝国国土の回復を宣言致しますっ!!」

 

榊 是親はゆっくりと、しかし力強く涙しながら報告し、同時に世界に対して堂々と宣言した。

 

それを見聞きしていた日本帝国臣民は誰もが泣いた。

そして、流したその涙は嬉しさを表し、苦難から開放されたことに湧いた。 悲願成就なりっ、と。

 

全世界は驚愕した。 そして、国土を奪われた民達は絶望の中に希望の光が灯った事を知った。

いつかは自分たちも故郷に帰ることができるかも知れない、と。

 

 

 

だが、一部の日本帝国臣民は疑問に思った。

冒頭に、「国連横浜基地から齎された知らせ」とあった部分に”何故”と頭をひねったからだ。

 

そして、そこへと続くお話は、あと少しで明らかとなる。

 

ここでの『in the story』は、まだもう少しだけ続く・・・・・・。

 

 

 

Out of Side Other : モノローグ

 

 

 

 

 

※ 先ほどのモノローグから遡ること10日ほど前・・・・・・ ※

 

 

2001年11月13日 15時 少々過ぎ

日本帝国神奈川県横浜市 保土ヶ谷地区付近

 

 

佐渡ヶ島を後にした俺は、光速による移動を以って横浜市保土ヶ谷区に降り立っていた。

 

ここまで来れば、横浜基地は目と鼻の先にあるのも同然なので、俺は先ほどまでの戦闘体制を解し、

少しリラックスすることにした。

 

そう言えば、戦闘のために99式衛士強化装備を着たままだったためか、ちょっと汗臭く、自分でも

臭いと感じてしまった。

風呂には当面入っていなかったし、数日前にタオルをお湯に浸して身体を拭ったのが最後だった事を

思い出し、急に風呂に入りたくなってきた。

 

だが、ここで安ホテルなどで休憩を取るのは、幾ら何でも気を抜きすぎるので、シャワーを浴びるのは

もう少し先にすることにした。

 

「・・・とは言え、戦闘服着たままで一般人と会うわけにも行かないから、一旦元の衣装に

 着替えるとするか・・・・・・。」

 

俺は横浜基地近くのゴーストタウン化した柊町町内に赴いた。

そして、適当に物陰が残っている家屋を探し、そこで着替えを行った。

念の為、一応水道から水が出るか確認してみたが、残念ながら柊町は既に断水状態だった。

 

あまり期待していなかったので、多少落ち込んだあと今後の予定を建てるため、

”絶対的距離感覚”を駆使し、先に横浜基地の様子を伺った。

すると、基地施設内の訓練校だろうか、グラウンドに数人の人間を確認したので、誰かと思い

それらの人物を確認したら、信じられない者達を見てしまった。

 

あれ? とっくに終わったイベントだと思っていたのだが、あの演習ってまだ終了していなかったのか?

随分とゆっくりだな神宮司軍曹? あーー、それとも犬猿の二人の調整が終わっていなかったから

先に伸ばしたのかな?

 

Unlimitedの展開について、記憶が遥か遠くなので時系列での前後がよく覚えていなかった。

もうとっくの昔に戦術機教育課程に進んでいるものとばかり思っていたのに、何処で順序が狂ったんだろう?

 

すると、何気に彼ら第207b訓練分隊の面子と神宮司軍曹の会話を聞いていると、どうやら明日14日

未明に小笠原諸島の南洋に演習に出かけると言うセリフを聞いた。

 

「 ーーー ・・・・・・・・・よく、本日まで訓練を頑張ったな、貴様ら。

 ご褒美に、明日から暫く南洋に小旅行に連れて行ってやるっ!」

 

「「「「「「 ッ!! 」」」」」」

 

流石に白銀君達は、緊張の上に表情が引き締まった。

だが、俺は呆れてしまった。 チョ、ちょっと、遅すぎるよ、神宮司軍曹ッ!!

・・・・・・あっ、軍曹が演習に出かけるってことは、夕呼さんも付いて行って、バカンスと洒落こむって事?!

 

いやでも、俺が15日には戻るってこと、伝言していたわけだから・・・、

・・・ああ、ダメだっ!! 伝わっていない可能性もあるっ!!

それに、あの女性の事だ。 連絡されていたとしても、”唯我独尊”的思考で出かける!!

自分の都合の良いように正論を組み立て、己の欲望には忠実に実行するからなぁ・・・・・・。

 

・・・・・・・・・よしっ! もう、こうなったら、俺が介入して”修正して”やるっ!!

 

そうと決まれば、早速介入してやる。

ゆっくりと基地に侵入している暇はない。 あまり時間もないことだし、チャッチャとヤっちゃるッ!!

 

久しぶりに『ビジランテ』の格好に戻った俺は、”何時もの通り”にWD的介入を開始する。

 

傍らに泊めておいた、オカモチ付き出前バイクに颯爽と乗り込み(?)、キック一発スターターを起動させると、

バイクは少し甲高いスクーター音を轟かせた。 属性付加は相変わらず【光速移動】と【任意のスピード】

が付いたままなので、廃墟となった住宅から飛び出すと、そのまま横浜基地に突入をした。

 

一旦横浜基地上空1,000mの所に移動をして、訓練校のグラウンドに残っている神宮司軍曹と

207b訓練分隊の位置を確認し、その付近目掛けて急降下を開始した。

 

そして、彼らに当たらないような進入経路に変更しつつ、車体を横にスライディングさせて接地する。

 

丁度バイク音がしたと思ったら、訓練分隊の少し離れた所にオカモチ付き出前バイクにまたがった

不審人物が出てきて、バイクをスライディングさせながら現れた様に見えただろう。

 

それが証拠に、神宮司軍曹含め訓練分隊の面々は、一斉に驚いた顔をこちらに向けた。

 

「・・・・・・Hey, Hello everybody.

  Unfortunately , but tomorrow's excursion 's stop .」

(・・・・・・やぁ、皆。 残念だが、明日の遠足は中止だ。)

 

またバイリンガルか・・・。 それでも軍曹とメガネっ子と侍ガールと一番小さい子は、俺の言葉が

通じた様で、ちょっと不審な顔をした。

 

発音が悪かったのか、目つきの悪いショートカットの子が少々胡散臭そうに、こちらを睨みつけている。

 

もう一人ショートカットの子は”我関せず”を貫いていて、俺を無視してオカモチ付きバイクの方に興味を

持ったようだった。

 

そして白銀君は、最初から俺が何を言ったのか分からなかった様だ。 ・・・アホの子だな。 うん。

 

少しして、正気に戻った軍曹は、改めて誰何してきた。

しかも、俺が英語で話しかけたので、彼女も英語で対応してくれた様だった。

 

「・・・・・・You are saying suddenly what ? And you Who ?」

(・・・・・・いきなり何を言っている? そしてお前は誰だ?)

 

凄くゆっくりと、此処に居る皆に通じるだろう言葉を選んだ話し方をした。

さすが現役の教職。 そして軍曹は、相変わらず警戒を解いていない。 ま、及第点をあげようか。

そんで、そろそろ案内を頼もうか・・・・・・。

 

「・・・Sorry. My Code name is 『Watch Dogs of Chicago.』

 (・・・済まなかった。 俺のコードネームは『シカゴの番犬。』だ。)

 

 そして、軍曹とその教え子達を導く者だ。

 

 さて、早速で悪いが明日からのバカンスは急遽中止となった。

 この事を伝えに、香月博士の所まで行かなくてはいけない。 なので、軍曹には悪いが地下19階の

 博士の執務室まで案内を頼みたい。」

 

「・・・フン、寝言は寝て言えッ!

 誰が貴様のような不審人物など案内するものかッ! 反対に捉えてやる、そこを動くなッ!!」

 

「・・・・・・フゥ、仕方がないなぁ・・・。

 あまり時間がないので、本当に急いでいるんだが、軍曹は俺好みの美人さんだから、

 お手手をつないであげようじゃないか。

 

 しかし、そうなるとエレベーターのボタンを押す人間が居るなぁ。

 ・・・・・・よし、そこのアホ顔の男の子。 ちょっとこっちに来なさい。」

 

俺はバイクスタンドを立ててから、バイクの後ろのオカモチの方に移動した。

そして中から、甲21号ハイヴから持ってきた、ハイヴ・コアの欠片を取り出した。

 

あ、欠片とは言え、これってば、グレイ9の結晶で出来ていて、グレイ9の塊と言って差し支えのないものだ。

一見すると放射性物質のように、綺麗な黄緑色に光る岩ッコロにしか見えないけれど、大体約5kgくらいの

重さがあるので、これを白銀君に渡そうとした。

 

「・・・じゃ、これ持ってくれ。 ああ、この塊は博士用に持ってきたおみやげなんだ。

 乱暴に扱うなよ。 じゃ、道案内頼むよ。 大体5kg前後だから、君なら余裕だろ?

 それと、君のパスがあれば、博士の執務室には行けるんだろ? 白銀 武君?」

 

「ッ!! な・何で、俺が地下19階までのパスを持っていることを知っているんだ?!

 それと、俺の名前を、何時知ったんだッ?!」

 

「・・・何を今更・・・。

 最初に君と出会った時には、もう知っていたよ。 それに、博士と君が出会うように仕向けたのは

 俺なんだから、君がパスを持っていることくらい簡単に想像がつくよ。

 ・・・フゥ、こんな事、一々説明させないでくれ。 ホント世話の焼ける子だな、全く・・・・・・。」

 

俺は脱力感に囚われそうになったので、そのまま手に持っていた塊を、白銀君に投げ渡した。

白銀君は、ハイヴ・コアの破片を正面で受け取ると、胡散臭そうな目をこちらに向け、睨んできた。

ここで、こうしていても始まらないので、俺は彼を無視して軍曹の方に歩いて行って、両手を彼女に

突き出した。

 

「・・・ホラ、サッサと行こう。

 本当に時間が残り少ないんだ。 どうしても納得がいかないのなら、何処か内線が使える所で

 確認を取ってくれ。 それでも、博士が俺と会わないと言うのなら、仕方がない。

 その時は、取らまえるなり処分するなり好きにすると良い。 ま、多分そうはならないだろうけどね。」

 

そう言うと、神宮司軍曹は俺と白銀君を伴って内線のある廊下に移動した。

もちろん、訓練分隊は一時解散となって、残りの皆は別命あるまで待機となった。

 

その後、内線を使い香月副司令と連絡をとった神宮司軍曹は、俺が言った通りの言葉を聞き、

苦虫を潰した顔になった。

そろそろ、会話も終わりかけるタイミングで、俺は電話口に向かい博士に聞こえるように、一つ提案をした。

 

「・・・・・・軍曹、済まないが香月博士に伝言を頼む。

 特殊作戦を実施したのは良いが、此処数日風呂に入っていないのと、満足な食事を取っていない。

 博士の執務室に行く前に、これらの準備の為に1時間ほど時間が欲しいと博士に申し入れてくれ。

 

 いくら俺でも今のままはTPOに反するから配慮を願うと、シカゴの番犬が言っていると伝えてくれ

 ないだろうか?」

 

しっかりと、俺の声は聞こえていたらしく、最低限の検査を2時間で行うので、その後にシャワーと食事を

用意するとの回答を軍曹から聞いた。

 

「・・・という訳で、白銀君。

 そのおみやげを先に香月博士に届けておいてくれ。

 俺は、検査の後、博士と合うから君の立会は無くても構わない。」

 

「・・・・・・待て、白銀。 その得体の知れないものをそのまま博士の所に持って行くな。

 この男の検査が終わった時に、同時に検査する。

 そして特に問題が無いようなら、私がそのまま持って行くから、お前はこれから別命あるまで待機とする。

 良いな?」

 

流石に教育者の鑑。神宮司軍曹は白銀君を下がらせると、俺を検査する為の部屋に案内した。

そして2時間みっちりと俺を検査した後、俺はシャワーと食事を取ることが出きた。

 

ここまでは俺の希望通りの展開だ。

それでいよいよ”横浜の魔女”こと、香月夕呼博士と対面することになった。

勿論、神宮司軍曹と伊隅大尉という最強ペア付きで・・・。

 

俺は執務机前のソファーに独りで座らされた。 俺の背後には軍曹と大尉が立って控えている。

俺の顔を眺めつつ、獲物をねぶるかのような視線を投げてくる香月博士が、上機嫌のような声色で

俺に詰問を始めた。

 

「・・・初めまして、『シカゴの番犬』さん。

 先日は随分と巫山戯た真似をしてくれたわね。 どの面下げて私の前に出て来れたのかしら?」

 

「・・・どの面も何も、”入れそう”だったから入ったまでだよ。 Faxにそう書いてあった筈だ。

 

 しかも、そちらにほとんど実害の無いように、手を抜きまくったから反対に疲れたよ。

 殺さないように、ノックダウンだけで地下3階まで侵入したり、戦術機を囮に使ったり、コンピュータ

 ネットワークのサーバにバックドアを仕掛けようかと思ったけれど、流石にそれは貴女に気づかれる

 だろうから、敢えてしなかったけれど、さ。

 

 ま、腑抜けるにも限度がある。 本当にこの軍事基地の人間は弛んでいたよ。

 それは貴女が一番良く知っているはずだ、違うか?」

 

「クッ・・・。 コソドロ風情が威勢の良い・・・。 まさかの私でも、コソドロが居直り強盗になるとは

 想像できなかったわ。

 

 じゃ、ズバリ聞くわ。 貴方の目的は何? そして、背後に居る組織は何処の何?」

 

「・・・・・・フゥ・・・。 第五計画推進派・・・・・・と言いたいところだが、俺は単独犯だ。

 しかもCIAとかでもないし、非公認の現地職員でもない。 只の一般人。 チンピラ。 用心棒。

 

 故郷のアメリカで多少は兵役に就いていたので、銃器の扱いは長けている。

 ま、そんじょそこらの雑兵や新兵に遅れは取らないがな。 背後には何もない。」

 

「何ですって?! そんな馬鹿な事を信じろと?!」

 

「・・・・・・ああ、信じてくれ、とは言わない。

 信じたくなければ信じなくても良いが、事実は変わらないぞ。

 それに、そんな無駄なことをしなくても、もう、裏が取れているのだろう?」

 

「・・・・・・?? 何のことを言っているの?」

 

「・・・・・・社 霞だったっけ? 彼女の分析結果が、そちらの手元にでも表示されている事は知っている。

 それと、そろそろ本題に入りたいんだが、いい加減軍曹と大尉を下がらせてくれないか?

 と言うより、この二人に俺からの詳細報告を聞かせたいのなら、別にこのままでも良いが・・・・・・。」

 

俺はそう言うと俺の斜め後ろに立って控えている、神宮司軍曹と伊隅大尉を見つつ言った。

すると、大尉から詰問が飛んできた。

 

「・・・何を寝ぼけているんだ?

 何処の誰とも知れない奴を、副司令と二人っきりにするわけがないだろうッ!

 それよりもお前は何処から来た何者だ?!」

 

「・・・俺はアメリカから来た、コードネームが『シカゴの番犬』だ。

 

 本名はあるが、それは君が知る必要がないものだ。 それと、伊隅大尉率いるA−01の部隊は

 第四計画が現場で作戦行動に対応するために必要な部隊として、その存在が保証されているが、

 それ以外の第四計画の中枢に関する情報を熟知しておく必要のない部隊だ。

 

 故に、君も私の情報を知り得る権限がない。 その為、香月博士に対する俺の報告内容を聞く

 権限がないので、同席できない理由となっている。 以上だ。」

 

「何だとッ! 巫山戯るなッ!!」

 

「・・・巫山戯てなどいない。事実だ。

 

 俺はオルタネイティブ計画の中枢情報にアクセスできる権限を持っている。

 そして、君と違って現場でも、そして計画中枢においても、重要な役割を担っている。

 

 そうだな、線引きするとしたら、機密情報に関わる所で最初に君たちとは分別される。

 続いて、戦術機戦闘に於いても、君たちA−01連隊が襲ってきたとしても、1秒掛からずに迎撃できる。

 

 俺は、そう言う類の人間だ。」

 

俺と伊隅大尉とのやり取りを見ていた香月博士は、険しい顔をしつつ俺のいう言葉の一字一句を

聞き逃さないようにしてモニターを睨んでいた。

 

こちらを無視するとは良い度胸だ。 俺は此処で細工の一つを披露してやった。

 

コンピュータからの情報を確認していた博士は、途端にコンピュータ操作が行えなくなった。

 

仕掛けたのは博士のアカウント権限をロックし、その旨のメッセージを表示させてやった。

これで一切の操作が行えない。

 

直ぐ様香月博士は脱力して、座っていたソファーの背もたれに、その身を預けた。

溜息の一つを漏らしてから、突然怒鳴りだした。

 

「コラ、番犬! アンタ私のコンピュータに何してくれてんのよ? さっさとアカウント権限を返しなさい!

 大体、単独犯と名乗る人間がオルタネイティブ計画の中枢に入り込めるはずがないでしょう?

 その辺りの説明を省いて、話を進めようなんて勝手してんじゃないわよっ!!

 

 ・・・・・・もう良いわ、伊隅。 この男の尋問は私が行います。」

 

「ですが、香月副司令ッ!!」

 

如何にも胡散臭い俺と、自分たちの上司である副司令を二人きりにしたくない軍曹と大尉。

この両者に目に見えない、少し気まずい雰囲気が、香月博士の執務室内に漂ってきた。

両者とも言い出したら後に引かないのは、さすが親友と出来た部下みたいだな。

 

俺は気分を変えるために、とっておきの手品を行い煙に巻くことにした。

 

「・・・・・・よし、分かった。 では、一つの賭けをしよう。

 俺が今からある行動を行う。 それを見て、その仕掛けに気づくことが出来たなら、

 この賭けはそちらの勝ちとする。 お前さん達が望むあらゆる質問に、何にでも気の済むまで

 答えてやろうじゃないか。

 

 だが、仕掛けに分からないとか正解ではない場合は、俺を香月博士と二人っきりにしてくれ。

 こちらも仕事をチャッチャと進めたいんだ。」

 

俺は伊隅大尉から、大尉の拳銃を借りることにした。

 

「・・・ ハァっ?! 私の銃を貸せだと?! 巫山戯るなっ!!」

 

「だから、手品に使うんだって。 いいから大尉の銃を取り出して、弾倉から弾を抜いてテーブルの

 上に弾を並べてくれ。」

 

あくまで俺の指示には従いたくない伊隅大尉だったが、そこは香月副司令からの視線を受け、

渋々俺の指示に従った。

 

伊隅大尉の拳銃は、自動小銃であり15発+1発が装填された、軍事用の拳銃だった。

そして大尉は、俺の指示通りにテーブルの上に弾倉に収めてあった弾を取り出し、綺麗にテーブルに

並べた。

 

合計16発の9mmパラベラム弾(以下、9mmパラ弾と呼称する)が並び、「これで良いのか?!」と言う

視線を俺に出してくる大尉。

 

俺はそれに頷くと、自分の上着の袖をまくり、肘から先の肌を見せることにした。

 

「では、伊隅大尉。 空けた弾倉を軍曹に渡してくれ。

 軍曹は弾倉を確認したら、一回テーブルの上に弾倉を置いてくれ。」

 

「・・・・・・・・・・・・ハイ。 弾倉も確認したし、テーブルの上に置いたわよ。

 次はどうするの?」

 

「次は、俺の腕を確認してくれ。 この腕の何処にもネタとなりそうなものが仕込まれていないか

 確認してほしい。 怪しそうなら、その場で指摘してくれ。」

 

俺は両手を神宮司軍曹に突き出して、状態を見てもらった。

 

手のひらとか指とかを確認したが、特に何もないので検分はすぐに終わった。

 

「・・・・・・良いか? じゃ、始めるぞ。

 まず、先にテーブルに置いた空き弾倉を手に取る。

 

 続いて、テーブルに置いた拳銃の弾を一発だけ借りる。」

 

俺の一連の動作を見ている3人の美女達。 俺は気にせず作業を続けた。

 

「・・・そして、このままこちらの空き弾倉に弾を込め続ける。」

 

何時もの弾込めと同じ要領で、俺は「なんでも無限」能力を使って、次々に弾込めを行う。

最初一発しか持っていなかったはずの9mmパラ弾は、一発一発込める毎に次々と弾倉に収まっていった。

 

それを傍で見ている3人の美女は、信じられない現状を見て固まってしまった。

今何が起こっているのか分からないらしい。

 

全ての弾込めが終え、もう一発分を取り出して口に加えた。

手には最初から持っていた9mmパラ弾が1発のみ残っている。

俺は満タンになった弾倉を伊隅大尉に渡した。

そして、口に加えていた、最後に取り出した一発の弾も伊隅大尉に手渡して、こう言った。

 

「・・・・・・ハイ。 これで終了だ。

 最後に渡した一発分を予備として渡しておくので、チャンバー内に収めた後追加しておいてくれ。

 これで元の状態に戻るはずだな?

 

 では、テーブルの上から借りた、最初の一発目の弾を返すぞ。

 

 さぁ、ここまでくれば何を聞きたいか解るな?

 どうやって俺は弾を込めることが出来たのでしょうか? It's Thinking Time.」

 

「・・・・・・これって、マジック・・・なのよね?

 って事は、仕掛けとかタネがあるって事で良いのよね?」

 

香月副司令が確認のため聞いてきたが、当然俺は”知らぬ顔”でノーヒントを貫いた。

 

目を白黒して伊隅大尉と神宮司軍曹は、大尉の拳銃を見つめているが、どうやってもタネについては、

見当がつかない。 二人共満足の行く説明が行えず、ギブアップとなった。

 

「・・・んじゃ、そう言う事なんで、暫くの間は二人きりにしてもらおうか。

 そんなに心配しなくても良い。 別に取って喰ったり、口説き落とそうとか思っていないから。

 それでも、どうしても心配だというなら、話し合いが終わるまで廊下で待ってな。」

 

一応の助け舟を出して、二人を執務室から追い出したのだった。

 

 

 

さて、今後のことを話すわけだが、どうやって切りだそうか・・・とチョット悩んでいたら、

そんな事はお構いなしに香月博士から話しかけられた。

 

「・・・・・・ねぇ、さっきの手品なんだけれど、あれのタネを教えなさいよ。」

 

俺はこの言葉に、失意と苛立ちを覚えた。

 

「・・・・・・あのな、香月博士。 俺のことなんかこの際どうでも良いだろう?

 貴女にとっては、俺が信用のおける人間かどうかを推し量るデータとして捉えようとしている

 みたいだが、ハッキリ言ってもうそんな悠長に構えている時間は無いんだ。

 その事を自覚してくれ。」

 

「な・何よぉー、良いじゃない手品のタネを教えるくらいの時間はあるでしょう?」

 

「・・・・・・ハイハイ。 じゃ、答えを教えよう。 先ほどの現象は手品なんかじゃない。

 俺の能力『何でも無限』による物品の無限化の一例だ。

 俺が手に掛けた任意の物品は、先ほどのように無限に増やせるんだ。

 さ、この答えで満足か? さっさと話を進めるぞ。」

 

「・・・えっ?! そ・そんな、まさ「博士っ!!本当に時間が惜しいんだ。」か。 とても・・・。」

 

俺が怒っている風に博士の顔を睨みつつ、彼女からの抗議を押し黙らせた。

続けて俺から本題を切り出した。

 

「・・・・・・やはり、俺から自己紹介したほうが話がすすむから、そこから始めよう。

 俺のコードネームは予告してあったように『Watch Dogs of Chicago.』(シカゴの番犬)だ。

 で、本名をエイデン・ピアースと言う。 先程も言ったようにシカゴに住んでいた一般人だ。

 

 その一般人の俺が、何で第四計画や第五計画の詳細を知っていたのか、と言う貴女が

 一番気にかかっている謎の答えは、俺もこの世界の住人じゃないからだ。

 

 いや、正しく言えば、今現在もイリノイ州のシカゴの町に”エイデン・ピアース”と言う人物は

 居るかも知れないが、此処に居る俺とは似ていたとしても全くの別人だ。

 ここまでは良いな?」

 

「・・・・・・・・・続けて。」

 

「・・・では、俺が元いた世界についてでいうならば、今207b訓練分隊に居る白銀君と

 同じ世界の住人か? と問われれば、『No』と答えるしか無いだろう。

 『彼とも違う平行世界からやって来た』が正しい解答だ。」

 

「・・・・・・ちょっと待って。

 と言うことは、貴方の世界にもBETAは存在しない、と言うことを意味している?」

 

「That’s Right! その通りさ。

 ついでにいうならば、俺のいた世界では、此処の世界については『物語』として情報が残っている。」

 

「ッ!! な・何ですってッ!!

 それって、平行世界とかの話じゃないじゃないッ!!

 じゃ、この先の未来についても何が起こるか把握しているの?」

 

「・・・ああ、知っていた。 俺が此処に来るまでは、な。

 本当は俺も此処に来るつもりは無かったんだ。

 この先にどれだけの悲劇が待ち受けていたとしても、それを成すのはこの世界の住人がするべき事だ。

 

 俺の行動は、俺の知っている物語上にはなかった。 つまり、『物語上ありえなかった展開』を

 意味している。 俺達の世界じゃ『原作ブレイク』と呼んでいるが・・・。」

 

「な・・・ッ。 何て事をしてくれたのよッ!!」

 

「そうは言ってもなぁ・・・・・・。

 あのまま進んでいたら、俺が勝手に動いていたとしても第五計画が本格稼働する展開に変わりが

 無くなっていただろう。

 俺が目を塞いでいても開けていても、結果が同じであれば黙っていることに意味がない。

 だから今介入をしたんだ。

 

 大体、少しでも事態に変化を起こして欲しくて、あんな手の混んだ疲れる騒動を起こしたのに、

 何で結果的に変化がない方向に事態が修正されたんだ?

 物語では白銀くんと邂逅を果たすのに、貴女は1週間の時間を要していたんだぞ。

 だから早めに白銀君との邂逅を果たせていて、何で彼は戦術機教育課程に進んでいなかったんだ?」

 

「それは・・・、知っているかも知れないけれど、榊と彩峰の仲違いが解決していないと言う事と、

 白銀自身の体力不足が影響しているって報告が、まりもから上がってきていたわ。

 榊・彩峰の二人は兔も角、白銀まで足を引っ張るのでは到底合格は危ういから、鍛えてから

 演習すると言うことだったのよ。」

 

「・・・・・・それで、時間がかかっていたってのか・・・。

 ・・・ああ、いや、それでも、白銀君の戦術機適性については、神宮司軍曹はどう言っているんだ?

 まさか、適性検査していないって事は、無い・・・・・・よな?」

 

「・・・? いいえ。 戦術機適性検査は、訓練校に入学する前に簡易検査を。そして、総戦技演習で

 合格した者を対象に本検査するから、白銀は検査自体行っていなかった筈よ。」

 

「・・・・・・何てこった。 そりゃ、ダメだ。

 彼の戦術機適性は歴代の中でも類を見ないほどの適正値を持っている筈なんだ。

 それを知らないなんて、調査不足の上にノンビリとし過ぎだ。」

 

「えっ?! そ・そうだったの?」

 

「そ、 う、 だっ!! この後で良いから、戦術機適性検査しておいてくれッ!!

 じゃ、本題に戻って、続けて報告するぞ。

 

 そもそも、第四計画についてはニューヨークの国連本部からリミットの連絡が行われていない節がある。

 これはもう第五計画がらみによる嫌がらせとかのレベルじゃない。

 

 しかし、博士のことだから薄々気づいていると思うけれど、今年中に第四計画として何らかの成果を

 果たさないと2001年12月24日のクリスマス・イブに計画打ち切りとなって、翌日の25日に

 第五計画が本格始動する旨を全世界の国連基地で発表される。

 

 ああ因みに、第五計画が発動されて、移民船団の選別が始まるわけだが、

 香月博士は搭乗者名簿にちゃんと入っているから、この先も生き残れることは保証されていたぞ。

 あんまり嬉しくは無いだろうけどな・・・。」

 

本当にムスッとした香月博士の顔を見た俺は、続きを説明した。

 

第五計画が始まってから、アメリカ主導で選抜された人類10万人のみ宇宙船に乗せて、

遥かバーナード星系に避難した事。

そして、地球に残った全人類が地球上のハイヴに対して攻撃を開始した・・・・・・バビロン作戦の事を。

 

だが、The Day After(TDA)の結果を知っているので、その経緯も合わせて報告した。

・・・確信を持って俺は、第五計画派も見落としているだろう事を述べることで、バビロン作戦の

危うさを博士に伝えると、先ほどとは打って変わって、その危険性について認識を改めたようだった。

 

・・・・・・バビロン災害・・・。 アレだけは。 アレだけは行ってはならない。

あんな最後を迎えるために、人類は・・・G弾を使ってまで生き残ってきた訳ではない。

 

「・・・という訳で、第五計画主導のバビロン作戦に於いて、人類は滅亡の一歩手前まで追い込まれて

 しまった・・・。

 俺が知っている『物語』にはエンディング、つまり終局がどうなったのかまでは判明していない。

 

 だが・・・、希望的観測に基づいて、本当に仮にだが、その後BETAに打ち勝つ事が奇跡的に

 出来たとして、疲弊しきった人類がその繁栄を取り戻すには、相当の時間を要する事は、

 容易に想像がつく。

 

 つまり、生き残ったにせよ、全滅してしまったにせよ、確実に人類は後30年以内に滅亡の危機を

 迎えることが確定してしまう。

 

 先程も述べたが、俺がこの世界の事情に介入することは、ベストなやり方じゃなかったとしても、

 手を出さずにはおれなかった・・・・・・。

 だから、貴女に会いに来たってのに、貴女ときたら・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・わ・悪かったわねっ! あんなのを見たら誰だって気になってしまうわよっ!

 でも、アンタからの情報についても根拠がないのも事実なのよ。

 そうなってしまう可能性はあるけれど、そんな情報で動くわけには行かないのよ。」

 

「・・・・・・フン。 じゃ、根拠を先に示そう。

 

 先程述べた第五計画の欠点についてだが、バビロン作戦に於いて、『バビロン災害』と言われる程の

 人為的災害についてだが、ユーラシア大陸にあるハイヴに対して行う過程を調整すれば、その様な

 惨劇を回避できる。 つまり要はG弾の運用には、”面”じゃなくて”点”で行う必要があるって事だ。

 そうすれば、地殻変動の影響を受けないので、『大崩壊』の様な悲劇を回避することができる。」

 

「・・・・・・なるほど。 確かにG弾の運用面に問題がある事は事実ね。

 そして、地殻変動・・・。 確かにマントルの上の地殻の隆起に影響を与えなければ、対応可能だわ。」

 

「ああ。 まぁ、仮にバビロン作戦を実行するとしてでの話だがな。

 しかし、第五計画推進派の科学者で、これを計算に入れていない筈は無いと思うのだが、

 ワザと伏せたのか?

 もしそうだとすると、全人類に対しての利敵行為として、追求できるかもな・・・。」

 

「・・・・・・確かに。 その線で、計画中止について、草案を立てましょう。

 他に確証と成る情報はないの?」

 

「・・・・・・うーん。 あるにはあるが、自信はない。

 今現在の情報を隠匿されたら打つ手が無いから、謂わば諸刃の刃なんだが・・・・・・。」

 

「・・・何よ。 弱腰なんて、気味が悪いわね・・・。」

 

「・・・・・・いや、ダイタロス計画直後だったと思うが、バーナード星系に移住可能な星系が

 見つかったって事で、第五計画は移住計画を打ち立てたよな?

 でも、その移住先の星系の今の情報って、どうなっていると思う?

 最新の移住先惑星に関するデータって入手できるのか?」

 

「・・・・・・?? 多分、NASAに問い合わせたら入手できると思うけど、どうして?」

 

「・・・うん。 BETAの勢力情報がよく分からんのだが、多分我々の居る太陽系以外にも、

 奴らが分布していたとしたら、移住先も絶対安全じゃないような気がするんだ。

 これについての追求はどうなっているんだ?」

 

「・・・えっ?! ま・まさか・・・・・・。 いや、だって・・・・・・、ねぇ・・・・・・?!」

 

「・・・・・・情報の入手先をNASAの他に、日本帝国国防省航空・宇宙軍とJAXAにも依頼して

 最新の電波望遠鏡を用いて、バーナード星系の情報を取り寄せてくれ。

 ついでに、反射された電波などを情報解析して、より詳細なデータ収集が行えるように手配してみてくれ。

 

 下手をすると、観測したのが何年前かわからないが、状況に変化が出ているかもしれない。

 で、変化がなければ、このネタは使えない。

 

 でも、何かの変化が認められる場合は、何がなんでも移住計画を中断させろ。」

 

「・・・確かに諸刃の刃ね。 でも、分かったわ、調べてみる。」

 

「・・・で、続いてだが、俺が甲21号ハイヴで活動した証拠として、これを”みやげ”として持ってきた・・・。」

 

と言いつつ、辺りをキョロキョロとして見渡しているのだが、・・・・・・??

アレがない・・・・・・。

 

「・・・・・・何よ? ”これ”って、”どれ”よ 何が言いたいの?」

 

「・・・・・・すまん、手違いがあったみたいだ。

 チョット廊下に出て文句を言ってくる・・・・・・。」

 

俺はそう言うと、徐ろにソファから立ち上がって廊下に出た。

俺の不審な行動に、非難的な視線が後ろから感じ取れた。

 

香月博士の執務室の扉を開けると、そこには伊隅大尉と神宮司軍曹が歩哨よろしく警備していた。

俺と博士との会談が終わったと思ったのか、両人は一瞬緊張していた顔をゆるめた。

 

「・・・・・・軍曹、聞きたいことがある。

 俺は貴女達と会った時、白銀君に持ってくるように伝えたアレを、貴女はどこに持っていったのかな?」

 

一瞬怪訝そうな顔をする神宮司軍曹。 何を問うているのか分からない表情の伊隅大尉。

 

そしてしばらくしてから思いつくことがあった様に、表情を徐々に暗くする神宮司軍曹は

急に冷や汗をかき始めた。

 

俺は香月博士宜しく、デビル・フェイスで微笑みながら、できるだけ優しげな口調で軍曹に命じた。

 

「・・・・・・どうやら思い出せたようだね、神宮司さん。

 では、お手数だが、例のアレを持ってきてもらえるかな?

 ああ、そうそう。 届けて欲しい場所は此処の執務室じゃなくて、90番格納庫まで持ってきて

 欲しいんだが、頼まれてくれるよな?」

 

ギ・ギ・ギ・ギ と音がしそうにゆっくりと回れ右をする神宮司軍曹。

その彼女の行動に、ただならぬ俺達のやり取りは、伊隅大尉とっては怪しげに感じられ、

俺達の会話に横から割り込んできた。

 

「おいっ! 先程から何のことを言っているっ!! それと香月副司令との会談は終わったのか?」

 

「・・・何だ伊隅大尉。 仲間外れにされて拗ねたのかね?

 分かった。では君にもお仕事をくれてやろう。

 第09中隊は衛士強化装備着用の上、歩哨警備装備を持って、90番格納庫にて行う、

 博士との会談の周辺警護を行ってくれ。」

 

「フンっ、残念だが私達は香月副司令直属部隊だ。 誰が貴様などの命令に従うものかっ!!」

 

そのやり取りを、俺の後ろで聞いていた香月博士は、何時ものごとくデビル・フェイスで伊隅大尉に

命じた。

 

「・・・伊隅。 その男が言った様に、ヴァルキリー中隊は90番格納庫にて歩哨警備を実施させなさい。

 装備はアンタに一任するわ。 ま、動きやすい格好の方が良いとは思うから、衛士強化装備でも

 良いわよ。」

 

まさか上司からも命じられるとは思っていなかったらしく、苦虫を潰したかのような顔をする伊隅大尉。

 

「・・・・・・りょ・了解っ!!」

 

何時ものごとくカラカワれたと解釈できた彼女は、元気よく返事をすると、軍曹と一緒に部下を呼びに

エレベーターホールに向かって駆けて行った。

 

二人を見送った俺達だったが、不意に香月博士からこのやり取りの真意を聞いてきた。

 

「・・・で? ここの執務室じゃなくて、何で90番格納庫なの?」

 

「・・・・・・ああ。 まぁ、順序立てて説明すると、この部屋での会話、と言うか情報がBETAに知れる

 可能性があるんだ。」

 

「?! な・何ですって? どう言う意味よ?」

 

「・・・ま、それについては、現物を見ながら話したほうが良いか・・・。

 では、博士、隣の部屋に行って説明しよう。」

 

俺はそう言いつつ、香月博士の執務室を一旦出て、直ぐ左隣のドアを開け、例のシリンダーが

保管されている部屋に入った。 勿論博士も俺の後に続いてついてきた。

 

甲22号ハイヴの唯一の生存者が保管されているこの部屋には、常駐していると行って良いスタッフが

居た。 社 霞は、シリンダーから視線を外し、俺を一瞥した後再びシリンダーに視線を戻した。

 

俺は少女のそばに行き、彼女の視線に合わせるように、上体を屈め視線の位置を変えた。

 

「・・・・・・はじめまして。 俺の名前は、エイデン・ピアースと言う。 宜しく。」

 

俺はそう言いつつ、右手を差し出して握手を求めた。

 

「・・・・・・。」

 

だが、少女は頑なでシリンダーを見つめたまま無言だった。 香月博士は俺達のやり取りを黙って

見ていた。 俺は少女とコミュニケーションを取るために、話題を変えた。

 

「・・・・・・ところで、今日の彼女のご機嫌はどうかな? 何時もの様に『暗いイメージ』で頭の中が

 埋め尽くされているのかい?」

 

「・・・・・・いいえ。 今日は何も感じ取れていません。

 でも、恐らくこの後に、昨日と同じく『暗いイメージ』を持つと思います。」

 

「・・・・・・なるほど。 俺も甲21号ハイヴの中で、ハイヴ・コアにアクセスしたんだが、似たような状態を

 観測した、いや、味わったというのかな?

 多分だが、今は何も感じ取れないんだろ? と、言うことは・・・・・・。

 甲1号ハイヴのあ号目標がコンタクトを取りに来ている最中、と言うことだな。」

 

俺の突飛もない推測に、霞自身が驚いてその根拠を聞いてきた。

 

「ッ!! ど・どうして・・・そう思うのですか?」

 

「ああ。 経験則に基づいているから、かな? 相手が知りたがっている情報を持っていたとして、

 それを隠すにはどうしたら良いかを考えた時、『相手から問いかけが届いていない』状態にすれば

 誤魔化すことができる、と言うことだな。

 

 要はダンマリを決め込まれて、取り付く島を与えなければ良いってことだ。

 で、それをしているのは誰か? を考えたら、思いつくのは奴一人に絞れる、と言うオチさ。

 

 簡単だろ?」

 

俺からの言葉を噛みしめるようにしつつ、一人納得できたかのように頭のうさ耳カチューシャをピコピコ

動かしている少女の顔を、俺は黙って見つつ改めて手を差し伸べて挨拶した。

 

「・・・改めて。 エイデン・ピアースだ。 宜しく。」

 

すると目の前の少女は、今度は恐る恐ると言う感じに右手を出してきて、弱々しくこう言った。

 

「・・・・・・社・・・・・・霞・・・・・・です。」

 

「うん。 俺の事はピアースでもエイデンでも、呼び易いように呼んでくれて構わない。

 ああ、でも、『おじさん』呼ばわりだけはヤメてくれ。 まだ、そんなに老けていないからな。

 

 君のことは、霞 と呼んでも良いかな?」

 

俺は霞の右手を軽く握って握手すると、彼女に名呼びの許しを乞うた。

彼女は小さく頷いてくれた。

 

俺達の邂逅を黙ってみていた博士は、俺の後ろから絡んできた。

 

「・・・あらあら。 ここに美少女を口説いているロリコンが居るわ。

 まりもを呼んで捕まえさせないと・・・。」

 

「・・・誰がロリコンだ。 霞が美少女であと15・6年もすれば、貴女と並ぶかそれ以上の美女に

 成ることは確定しているが、別に霞を口説いてなど居ないぞ。

 放置されたからと言って、勝手にキレるな。」

 

「・・・”キレる”? 白銀と同じで、偶に訳の分からない言葉遣いになるわね。

 アンタの言語指導した人間っていうのは、どんな奴なのよ?」

 

「・・・(あー、面倒くせぇ) 言い間違えた。 ”拗ねる”だ。

 話を戻すが、香月博士、シリンダーの中の物質については、解析が終わっているのか?」

 

「いいえ、このシリンダーについての考察は行われているけれど、解析の方は未知の物質で

 構成されていて、その用途なども不明のままよ。 その事がどうしてBETAに情報が筒抜けに

 なるのかしら?」

 

「そうだな、そこの解析も行わなければ信じてもらえないだろうが、結論から言うと、貴女達が言っている

 この”ODL”って物の構成物質の中に、グレイ6が入っている、と言ったらどうする?」

 

「ッ!! 何ですってっ?!」

 

「ま、俺なりに解析したグレイ物質の特徴とその使われ方について、この後披露したいんだが、

 この部屋や隣の執務室だと、ウッカリすると情報が筒抜けになる恐れがあるから、場所を変えようと

 思う。 俺が思いつく場所としては、90番格納庫のド真ん中はどうだろう?」

 

「・・・・・・それって、配線すら何も通っていない場所、と言う意味なの?」

 

「ご明察だ。 流石、自称”天才”だな。」

 

「誰が、”独り善がりの痛い女”よっ!!

 良い加減その生意気な口調を改めないと、その口をホッチキスで塞いでやろうかしら。」

 

「(あ・アンタはどこぞのカニの精霊が取り付いた、質量がほぼゼロのツンデレ女か?!)

 いいや、極めて遺憾ながら慎重にご辞退申し上げる。

 

 じゃ、霞。 君にも一緒に来てくれないか。 色々と話さないといけないことがあるから。」

 

そう言いつつ、俺は香月博士と霞を連れて、地下22階以下にある第90番格納庫に出かけた。

勿論手ぶらで・・・とは行かず、二人を連れて出かける際に裏紙に使うための幾つかの用紙とペンを

持ってから散歩と洒落こんだ。

 

二人共怪訝そうな表情をしていたが、BETAに情報の漏洩が行われる可能性の詳細や、

俺が甲21号にて活動していた詳細を知るための措置として、協力をしてくれるそうなので、

その気になっている今、まんまと連れ出すことに成功した。

 

本日13日の18:30を過ぎた頃の、横浜基地だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リザルト報告:

 

 繰越経験値ポイント & SPポイント

  経験値ポイント : 0ポイント(繰越分無し)

  SPポイント : 5,115,350sp

 

 

 経験値取得

 

  内訳

 

   自己能力レベル上げ

 

 

    拾得物

        第9世代戦術機(プロトタイプ・『撃震モドキ(仮)』)

          仮組立中 達成率50%前後

 

   総合計 5,115,350SP

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、第05話でした。

次の話では、一発逆転満塁ホームラン的発想の巻き返しについて、お話を作っております。
上手く行けば今月中にだせるかも・・・(希望的願望)。

大体1話平均1000行で構成されているので、その分書きためてお話を進めています。
でも第05話は1000行+100行未満と、ちょい短めでした。

もうちょっとボリュームを削って、お話の構築できるように調整が必要ですね。
今後の課題です。
話の作り方と言うか、文章の構成も稚拙なため、説明する部分が多いし、これも今後の宿題ですね。

悩みつつも、今作を続けようと思います。

では、また次回まで。
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