What happened in the story ? 作:斬【Zan】
何故か筆の進み具合が良かったので、更新します。
最速記録じゃないのか、これ?
相変わらずのご都合主義で、苦手な人はーーー(キンクリ略)
今回のダイジェストは、11月23日に向けてのアレコレですね。
特に舞台裏事情ってヤツです、はい。
07話は、12月1日にむけての下準備、その他諸々で、
08話辺りで12月24日の作戦決行でしょうか。
あっ、作戦名考えなきゃ・・・。良いのが無いなぁ・・・。
そんなこんなで、06話です。どぞ。
2001年11月13日 19時13分前
国連軍横浜基地 地下22階 第90番格納庫
エレベーターホール前
地下19階からたったの3フロア降りただけだったが、それでもエレベーターに乗っている時間は
3フロア分どころか10フロア分の時間を要した。
つまり、この地下22階は第90番格納庫用のフロアであり、凄乃皇・二型や・四型を
格納・メンテナンスを行うために用意されたフロアだからだ。
そのフロアに俺と香月博士と社 霞の3名だけが降り立っており、その他の人員は未だ居ない。
「ふぁ〜〜・・・・・・。 流石にここまで来れば、この広さに圧倒されてしまうなぁ〜〜。」
と一般人丸出しの感嘆の声を上げてしまった。
俺のその態度が、先ほどまで威圧感たっぷりだった態度とのギャップがあったらしく、
香月博士がチョット意地悪気でドヤ顔で応対した。
「・・・ちょ・ちょっとッ、如何にも田舎者の様な態度は見っとも無いから、止めなさい。」
「ああ、こりゃ失敬・・・。
しかし、この広さは尋常じゃないね。 流石XG−70の格納場所だな。」
「ッ!! ピアース・・・・・・。 その情報をどうしてアンタが知っているの?」
「おいおい、そんなおっかない顔をしないでくれよ。
肝心のML機関を稼働させようにも、00ユニットが無ければ、”絵に書いた餅”なんだろ?」
「・・・・・・その事も、例の未来情報にあったの?」
「まぁ、この世界では使われることもなかった未来だった、と答えておく。
・・・・・・しかし、そんなに00ユニットが必要か?」
「当たり前じゃないっ!! 私がどれだけの想いで、毎日研究に勤しんでいると思っているのよっ!!」
「ふーーん、イヤ、全く存じ上げないけれどね。
確か・・・・・・、『手のひらサイズに収まる150億個超えるコンピュータの塊』だったっか?
”手のひらサイズの”って言う制限を取り外せれば、量子コンピュータなら作れるんじゃないのか?」
「ええ、確かにそれに近い電算機を作ることは可能よ。
でも、それでさえ不安定要素が多くて、更に安定性を求めるために、”因果律量子理論”が必要と
なったのよ。」
「・・・・・・でもな? 博士・・・。
その研究に勤しむあまり、タイムリミットを超えてしまったら、元の木阿弥じゃないか。
その手前で代替案なりを提示しようとは思わなかったのか?」
「・・・・・・目の前にスイッチとなる素材があって、後はそれを動かすための工夫を行えば終わる
話しなのよ。 もうチョットで完成できるのよ。 そんな所で諦めが付くはず無いじゃない。」
「・・・・・・ま、貴女の苦労は貴女にしか分からない・・・か。
確かに、貴女の恋人や両親や兄弟姉妹でも、その苦労がどれほど大変だったか、とか分からんわな。
しかし、俺は00ユニット無しにBETAからの情報を入手できたぞ。
俺という異常な例が目の前にいるのに、まだそれでも00ユニットを求めるのか?」
「・・・・・・じゃぁ、どうしろって言うのよっ!!
因果律量子理論の基礎理論は未完成だわ、その性で00ユニットも未完成だわ、第四計画として
結果が残せていない状況なのよっ!! 私にこれ以上、どうしろって言うのよっ!!」
「・・・・・・うん。 俺を利用すれば良い。」
「・・・・・・え?!」
「だから、イレギュラーである俺が居るじゃないか。
別に『因果律量子理論』に基づいていないけれど、00ユニットができていない性でXG−70シリーズが
稼働できない状況でも、それに変わる能力を持っている俺が貴女の目の前に居るんだ。
これを利用しない手はないと思うが、どうだ?」
「・・・・・・それは・・・・・・。でも、良いの? アンタ、この世界に関わりたくないんじゃなかったの?」
「・・・ま、”毒食らわば皿まで”とも言うしな。 今更だろ?
寧ろ安心しろ。 タダと言うつもりもないから、相応の報酬を要求するさ。 それで手を打ってやる。」
「・・・(クスッ) ありがとう、ピアース・・・。
でも、何を要求されるのかわからない分、ウッカリ喜んでも居られないわね・・・・・・。」
「ん?
貴女からすれば、『そんなモノで良いの?』と言ってしまう様な要求さ。
店終いのための大バーゲンセール、絶対お買い得! ”騙された”とか”大損した”とか言わさせない。
大丈夫、俺を信じろ。」
「・・・・・・だから、それが怪しいってのよ。 で、要求ってどんな内容なのよ?」
「まぁまぁ、そう急しなさんな。
俺からの要求を伝える前に、商品を見てもらおうじゃないか。
今正に棺桶の中に両足を突っ込んでいて、臨終間近の第四計画が、そこから一気に逆転できて、
第五計画をぶっ飛ばし、ついでにBETAに止めを刺す手前まで巻き返す、究極の満塁逆転
ホームランって奴さ。 絶対気に入る事間違いなし、さ。」
「へぇーー。 じゃ、その”究極の満塁逆転ホームラン”ってのは、どう言う状況を言うのよ?
簡潔に述べてみて。」
「んーー・・・・・・。 そうだなぁ・・・・・・。
まぁ、一言で言ってしまえば、『第四計画の終了』ってことかな?」
「・・・・・・・・・(゚Д゚)ハァ? アンタ、何言ってんの?!」
「あっ、誤解しているな?! 言っておくが未完了とか中断とかじゃないぞ。
第四計画の主目的である、”BETAからの情報収集”ができて、その中から”対応する手立てを得る”
と言う、目的を達成した結果、『計画通りに進んで完了した事による』終了だからな。」
「いや、だから、そう言う状況になるためにどう言う手段を講じたのか、その説明が抜けているじゃない。
そこはどうしたのよ?」
「うん、だから、俺が組み立てた戦術機らしき物を見てからにしてくれ、と言う事さ。」
そう言いつつ、俺は懐から”撃震モドキ”を取り出して、90番格納庫の床に置いた。
因みに撃震モドキは、足の裏を俺達の方に向けて、仰向けで寝ている状態だ。
簡単に”床に置いた”と表現したが、それを言葉に置き換えて描写で言うことはできない。
表現が難しいからだ。
しかし、よく似たシーンが某アニメのとあるシーンで映像表現されているので、それの様に例える事で、
大体の状況は理解してもらえると思う。
何を言っているかというと『よくドラ○もんが、彼自身よりも大きい道具を出す時に、その全貌が
出現するまで、ポケットからデフォルメされた描写がされている』と言えば、想像できるだろうか?
要はその様な描写があった。 ”ドン”と言う様な音と共に俺以外の香月博士と霞嬢は、床から20cmは
上方向に垂直で浮き上がって、1拍後に格納庫の床に着地した。
「・・・・・・ア・・・・・・アンタ、 今、 何を、 やった、 の?」
「ん? 見ての通りだが、それが何か?」
「”それが何か?”じゃないわよっ!! 一体それを何処から取り出したのよッ!!
物理法則を無視するのも大概にしなさいよッ!!」
「・・・オイオイ、それこそ”今更”だろ?
大体常識の範囲外の”オレ”の仕業だぞ? 今更戦術機の一機や二機を懐から引張り出して
きたところだとて、そこが驚くところか?
こんな事で驚いていたら、コイツの仕様を見たら、貴女の頭はぶっ飛ぶぞ。」
「・・・・・・頭が痛くなってきた・・・。 アンタは”常識”と言う言葉の意味を正しく理解しなさい。
理解していないうちから、アンタが常識について語ってんじゃないわよ。 ムカつくわねっ!
・・・・・・あーー、何かしら? 凄く嫌な予感がしてきたわ・・・・・・・・・。」
香月博士がトリップしている間に、俺は霞を抱きかかえ、そのまま香月博士に霞を渡した。
その次に、俺は香月博士をお姫様抱っこした。 まぁ、二人を一緒に運びやすいようにした訳だ。
二人はそのまま為すがまま状態だったが、俺はそれには構わずに、一気に二人を撃震モドキを駆け上がり、
腹部・前面にあるコックピット前まで案内した。
3人で撃震モドキの腹部辺りに並んで立つ。
俺はコックピットブロック前のハッチ付近を手動で開いた。
ハッチは腹部装甲が先に手前に開くのだが、現在撃震モドキは仰向けで寝ている状態のため、
腹部装甲が起立した状態となった。その下・内部にあるコックピット・ブロックとの間にある
中扉・ハッチが顕わとなった。
そのハッチを頭方向に横にスライドして開けると、コックピット・ブロックの内部が口を開いた。
コックピット内部は暗く、足元に暗黒の穴が開いている様に見えた。
通常コックピット内部には非常灯が点くように設計してあるが、それはハッチが締まってコックピットが
密閉された状態になった場合に対してなので、ハッチが開いている今の状態では、その非常灯ですら
点いていない。
コックピット内部には360°全天周囲モニター・リニアシートが取り付けている。 また、リニアシートの
後ろにあるコックピット内壁との接点である支柱の後ろ側にエンジン・コアモジュール自体が収められている。
ここでエンジン・コアモジュールについて、解説を挟むことにする。
エンジン・コアモジュールの仕様は第05話にて解説を行っているので、此処では省略する。
そして解説に追加したい事柄として、これの起動の組み合わせについて補足しておく。
このエンジン・コアモジュールについては、グレイ物質を扱う関係上、第七世代戦術機以降に組み込む
予定だ。 また、その機動についてはエンジン・コアモジュールだけではシステム起動できないような
仕様となった。 この狙い目としては、操縦者である衛士とエンジン・コアモジュールがペアを組んでいる
事を前提としているためである。あたかもそれは、衛士が”扉の鍵”であり、エンジン・コアが”家”の関係と
似ている。
主従と言う関係でも良いのだが、エンジン・コアモジュールに専用AI等は組み込まれていないので、
主従関係というものが成り立たない。 やはり、家とか車という関係となると思う。
このエンジン・コアモジュールはZガンダム系デザインのノーマルスーツと組み合わせて、初めて
起動できる様に仕様を変えた。
つまりこれは、機体のみでの作業はメンテナンス以外には使えないことを意味する。
その為、ノーマルスーツの内部に、衛士情報を登録しておく必要があり、専用の搭乗者でないと機体は
動かない上に、整備士も専任担当者以外が操作できないように仕様を変更した。
勿論俺は、作成者権限を持っているので、衛士と整備士の両方の権限を持ち、第五世代機以降の俺の
設計した戦術機システムを用いている全てに対して、無条件にて介入する権限を持った。
この権限は、操縦者である衛士や戦術機を所有する国家指揮官よりも上位に位置し、他者からの干渉を
尽く排除する仕様にした。
また、ノーマルスーツは一応宇宙服なのでヘルメットを着用させ、網膜投写の代わりにヘルメット内の
バイザーに2次的情報を表示させ、3次情報を全天周囲モニターに表示させるように配慮した。
(1次情報はグレイ6を通じて思考情報として、搭乗者に伝達・処理される)
因みに、コックピットブロックはグレイ6を通じて思考情報処理が可能なので、システムが起動していれば、
内部でミーティングしていてもキー操作無しでも情報の表示など行えたり、メンテナンス作業をしながら
システム情報を表示・調整できるので、効率向上に役立っている。
以上が簡単ではあるが、エンジン・コアモジュールの仕様の一つである。
閑話休題
一人真っ暗なコックピット・ブロックにて、手探りでコントロールパネルを探し、メイン操作パネルから
システム管理者として、タイピング・タッチによるコマンドを打ち込んだ。
途端にエンジン・コアモジュールが起動シーケンスを初め、コックビット・ブロック自体が操作可能状態に
移行した。 これにより、真っ暗だったコックピット内部は、密閉していなくても非常灯が点灯するので、
機体の外に居る香月博士と霞をコックピット内部に招き入れた。
「ようこそ、俺が開発した『撃震モドキ』へ。
もう察していると思うが、コイツの動力源にはグレイ11を使っている。
まぁ、香月博士が作った電磁投射砲を参考にさせてもらった。」
と、簡単に挨拶を行い、霞を抱えて、そのままパイロットシートへ載せてやる。
ノーマルスーツを着た状態でも余裕のシートなのだが、普段着の霞にはそれでも大きく、座り心地が
悪そうにしている。
「・・・・・・ありゃ? 霞、シートの座り心地は悪そうだな。
先に香月博士に座ってもらった方が良かったかな?」
シートの規格に比べ、身体が小さい霞は背もたれにも凭れられないので、上体が不安定だ。
また、戦術機のコックピットに滅多に入らないのか、香月博士は物珍しそうにコックピット内部を
あちこち見ている。
「・・・ねぇ。 この戦術機って動かないの?」
「ぅん? ああ。 まだOSが組み上がっていないんだよ。
一応システムの通電確認は終わっているので、手足とか首とかを”ピクピク”程度なら動くけれど、
立ち上がったり、飛び跳ねたりは今はまだ出来ないかな・・・。」
「ふーーん。 そうなんだ。
で、この”おもちゃ”がどうするって?」
「・・・・・・何か評価が低くて、説明したくない気がしてきたが、まぁ良い。
今はまだこんなだが、実はこの戦術機は世代的には第五世代以降の規格を持つことになる。
俺が作ろうとしたこの機体の規格は、第九世代機だな。」
「ちょ・ちょっと、待ちなさいよ。 簡単に世代機を言うのは簡単だけれども、現状でも第四世代機が
出始めた頃なのよ? それをいきなり第九? 寝ぼけてんじゃないでしょうね?」
「まぁまぁ。 俺が提唱したいのは第四までは世界各国で好きに作ってくれて良い。
ただ、第五世代以降は、革命的に仕様が変わることになるだろう。 それはズバリ、『誰もが乗れる
戦術機』だ。」
俺はそう言いつつ、出入口であるハッチを閉め、コックピットを密閉状態とした。
システム管理上、こうする事で外部からの干渉を防いでくれる。
また、360°全天周囲モニターを用いているので、頭頂上から足の先までの全方位の映像が、
そのままコックピットモニターに表示される。 これを見て香月博士と霞は驚きの声を上げた。
「・・・・・・・・・きゃっ! ああ、吃驚した。 お・驚かさないで頂戴!」
「ん? ああ、悪かった。 で、話の続きだが、戦術機適性を持たない一般人でも、戦術機を扱う事が
できる、そう言う規格を第五世代機以降につけようと思う。
この規格を取り入れることでどういうことが起こるか解るか?」
「・・・・・・つまり、衛士の補充を行い易くする、と言う事ね?
なるほど、戦いたくても戦えなかった軍人は大喜びね。 でも、どうやってそれを成すの?
とても容易ではないでしょう。」
「ま、通常ならな。 此処で関係するのがグレイ物質だ。取り分けグレイ6が関係している。」
此処で俺は、甲21号ハイヴ内部で収集した情報から、グレイ6/9/11のそれぞれの使い道を報告した。
その詳細内容を聞いていた香月博士は押し黙り、これらの情報について考え始めた。
取り分け俺が19階の執務室から、この22階の90番格納庫に移動した理由について、納得してくれた
様子だった。
この撃震モドキには、コックピットのフレームの中にグレイ6を流用した素粒子をフレームの中に組み込んで
いる。 つまり外部から拾えた情報を内部の操縦者に感覚としてイメージ伝達させることが可能と成る。
要は機外の情報を、操縦者に表示させる前に感覚的に分からせるようにする為だ。
この事から戦術機適性のない操縦者にとっては、感覚的に操縦しようとする戦術機の状況を把握する事が
できる事を示す。 つまり衛士不適合者の要因とは、操縦者の戦術機が取ろうとする機動概念が
生体概念とリンクしていない事による混乱が、適正値を大きく下げていることなので、これを取り除くことが
できれば、誰もがどの様な機体でも容易に操縦が行える事に帰結する。
ただそうは言っても、熟練の操縦者と全くの素人との感覚や技術的な能力差と言うものは存在するので、
実際に戦術機を操縦させようとするのであれば、それらの差分を埋めるように訓練しなければ、実際の
戦闘行動に耐えることは出来ないので、機種転換教導は必須と成るだろう。
第207b訓練分隊をこの一般兵達と混ぜて鍛えれば、例え近日中に任官しても、訓練時間の短縮が
できると思う。
それ以外にもグレイ6の特徴について解説をかさねた。
特に、執務室隣の予備室のシリンダーの脳髄に、グレイ6が使われている件について、BETAの情報
収集能力に舌を巻いた香月博士だった。
「・・・・・・道理で・・・。 だから、アンタは私達をこんな所まで連れてきた訳ね。 納得いったわ。
それにしても、あ号目標め。 姑息な手を使ってくれるじゃない。」
博士の怒りの原因は、自分にもあると判断した霞は、謝意を表した。
「・・・・・・済みませんでした、博士。 私がもっと情報の質について、具体的に説明できていれば
もう少し対応できていたかも知れなかったです・・・。」
「・・・いいえ。 これは社の責任じゃなくて、私の非よ。
私も社からの情報収集のイメージについて要領を得ていなかった所を上手く突かれていたわ。
今までごめんなさいね、社。」
二人の意見が合致した所で、俺からの解説は続いた。
「・・・と言う訳で、お二人を此処に連れてきた理由は納得してもらえたと思う。
ああ、ついでに言うと、このコックピットブロックには、グレイ6の効果を反転させる思考シールドが
張り巡らせてあるので、コックピット内情報がBETAに漏れることを防いでいる。」
「ふーーん。それ便利ね。 後でその仕様を見せてくれる?」
「良いが、執務室にこれを追加で展開するのなら止めておけ。
今甲1号のあ号目標に情報が流れないと奴が別の手段を講じる可能性がある。
その為、シリンダー内のあの脳髄についても、そのままの方が良いだろうな。 彼女には気の毒だが、
あ号目標を黙らせない内は、変更すべきじゃないと愚考するよ。
では続いて、此等の技術は第五・第六世代機に搭載する件について、もう少し詳細を述べよう。
第五と六の違いは、地上用と宇宙用と思ってくれて良い。 第六の機体は耐宇宙仕様となり、OSも
空間機動プログラムを追加した別の戦術機を目指す。」
「執務室の件については了解よ。 確かに今動くのは不味いわね。
しかしアンタの企画した戦術機が実現すれば、大幅な戦力アップにつながるわね。」
俺は此処で、グレイ6を使って思考で情報処理できるところを博士に見せてみた。
密閉されたコックピット壁となっているディスプレイに、思考情報である第五世代機から第八世代機の
情報を並べて、その違いを比べやすくして表示し説明を続けた。
「ま、できる人が居なけりゃ、できる様に仕込まなければ、先に進まないからな。
そして、この後に第七・第八世代に続くわけだが、こちらも地上用と宇宙用に分かれていて、
第五と第七の違いで言うと、エンジン・コアモジュールにグレイ11を使う・使わないに別れるんだ。」
「ふーーん。 と言うことは、第五世代機は、コックピットブロックにグレイ6を使っているけれど、
動力などについては従来の跳躍ユニットと内臓のラジエーターやバッテリーと言う事?」
「That’s Right! まぁ、いきなりギャップがあり過ぎて、全部第七世代機にしたら良いと言う意見に
成るだろうが、小出しにする方が有難味も増すってもんだろ?」
「・・・・・・それはどうかしらね? でも、電力事情が解決できるなら最初から用意しておいて欲しいと
思うのは人情じゃないかしら?」
「そうだな。 でも、第五と第七とでは、決定的に異なる要素があるんだ。
実は、第七世代機には、グレイ11エンジン・コアモジュールを積むこと以外に、もう一つ重要な要素が
あるんだ。 それは、グレイ9を用いて新たに作られた電磁伸縮炭素帯を人工筋肉の様に使っている
と言う事なんだ。」
「ハァ?! な・何その無駄な仕様・・・。 さっきの説明でグレイ9の特徴を聞いたけれど、真逆そんな所に
グレイ9を使うなんてね。 ・・・・・・確かに理に適っているけれど・・・。」
「まぁ、言いたいことは分かってもらえたと思う。
つまり、人工筋肉代わりに電磁伸縮炭素帯を使っているんじゃないけれど、要は電力の過剰なストック
先としてのグレイ9だということだな。 で、コイツを運用できて、レールガンやレーザー砲などを
持つことができれば、そっちの方が戦力的に大幅にアップできると思う。」
「なるほど。 ・・・いや待って。 第五世代機にもグレイ9を使った電磁伸縮炭素帯を搭載しましょうよ。
そうすれば、電気事情も改善されるから、レーザー砲は無理でもレールガンぐらいなら搭載可能よ。」
「・・・うん。それでも良いけれど、燃料補給の関係もあるから、あまり意味はないと思う。
グレイ11を用いたエンジン・コアモジュールが無いから、電力ストックがシビアだからなぁ。
それでよければ、移動砲台代わりに配置しても良いけれど、何処まで役に立つかは分からないぞ?
まぁ、戦国時代で言う『信長の鉄砲隊』的運用を行えば、ある程度効果的な結果が残せるだろうな。」
此処でディスプレイの表示は、撃震で作られた87式支援突撃砲を構える3グループの『鉄砲隊』の
イメージを表示させた。
「・・・・・・分かったわ。 此処の部分は後で検討しましょう。
しかし、第七世代機・・・か。 日本帝国はこの機体を欲しがるでしょうね。
特に斯衛軍には剣術の達人が揃っているから、戦術機で自分の剣術の技を用いることができれば、
天下無双を名乗りたがるでしょうから。」
「そう言えば、訓練分隊にもそう言う娘、居たなぁ・・・。
確か・・・・・・、御剣 冥夜訓練兵だったっけ? 煌武院 悠陽の妹の。」
「・・・・・・アンタ。 そう、そこまで知っているの?」
「・・・いや、アレはあからさまに分かるだろ? アレだけ似ていて、他人って事は無理があるぞ。
それと、斯衛軍第19独立警備小隊だったっか? あんなのが付いていたら、VIPが此処に居ますよって、
言っている様なものだ。」
「・・・・・・まぁね。 でも、この件については、政治的配慮が必要なのよ。
余りツッコまないで欲しいのだけれど・・・。」
「・・・・・・いいや、ダメだな。 時間も押していることだし、このまま彼女を国連軍の兵士として
任官させて良いのか、その辺りを整理しておいてくれないと、何時までも訓練分隊に置いておく訳には
行かないぞ。」
「・・・でも、まだ先のことでしょ?」
「いいや、もう直ぐそこまでに迫っているぞ。 少なくとも戦術機適性がそこそこある事が分かれば、
俺が責任者だったら、明日・明後日には少尉として任官させるぞ。」
「えっ?! いきなり任務とかは無理よ。」
「ああ、そう言うのは確かにな。
だが、どの道第五世代戦術機の教育を受けてもらわないと乗れないのだから、一般兵と混じって
訓練を受けていても支障はないと思う。」
「・・・そう。 先に任官させるつもりなのね。」
「ああ。 俺が責任者なら兵士は多い方が良いので、彼女も国連軍兵士として任官させるだろうな。
もしこれを変えるなら、早めに知らせてくれないと困る。」
「・・・・・・ごめん、これについても、後日にして頂戴。
とても私一人では決断できないわ。」
「・・・むぅ。 仕方がないな・・・。 しかし、『双子は国を別ける』か・・・。
今どきこんな風習が残っているとは、煌武院家とは、バカなのか? 戦国時代なら兔も角、
皇帝陛下を戴いている帝国に於いての武家社会の仕来りが、そこまで重要な訳はないだろうに・・・。」
「ちょ・ちょっと、ウチの国の仕来りについて、随分な言い草ね。」
此処で俺は、帝国の図式を表示した。
その表示は文字だけだが、『皇帝・帝室』と『五摂家・摂政』、『武家』、『国体』と表示させ、その間の
空白に相関図的な矢印を引っ張って描いてみた。
「・・・随分な言い草ではないだろう? これが帝室とかのお話ならば、俺とてその様な事は言わない。
この場合は本当に国を別ける事になるからな。 下手すりゃ内戦の火種だ。そりゃ配慮するのが
当然だろう。
だが現代において、高々武家や摂家衆の跡取り問題に限定できるのであれば、日本帝国自体には
それほど影響は出てこない。五摂家はあくまで摂家衆でしか在り得ないからな。
それらの家々は国を成す国体ではない以上、しかし、これを国体成立に関わるとして同一視している
輩が居るのならば、それを唱えている者こそ国家転覆を狙う大反逆者だ。
早急に取り締まなければならないだろう。」
「・・・・・・。」
「・・・つまりは、そこの意見を同一視する風習が蔓延ってしまい、今の帝国社会に悪影響を及ぼして
しまっているんだ。 そこまで帝国が”腐っている”状況だから、貴女の様な天才でも迷うんだ。
こんなの、外の世界から見れば常識だぞ。 まぁ、煌武院 悠陽が帝室に入ることが内定している
と言うのなら、また話は変わってくるんだがな。」
「・・・いいえ、その様な事は決定されていないわ。
煌武院 悠陽殿下は帝室に入らない。 むしろ摂家衆は帝室に嫁ぐ様には構成されていない。
飽くまでも摂政。 その役目しか与えられていないわ。」
「なら話は簡単だ。 本人が国連軍の衛士訓練校に在籍している以上、かの訓練兵・御剣 冥夜、
いや、煌武院 冥夜は、このまま国連軍少尉として任官させよう。
本人が此処に居る以上、他の誰からも文句は言わせない。 此処の貴重な戦力だ。 だろ?」
「(・・・確かにこのまま何時までも、と言う訳には行かないわね。前回は待ったが掛かったが、
今はそれもないし・・・。人質としての意味もまだ在るかも知れないから・・・。でも・・・)
分かったわ。但し、”御剣 冥夜”少尉として任官させましょう。 事後承諾するにせよ、そちらの名前の
方が都合が良いわ。 でも、どうしてそこまで御剣 冥夜に拘るのかしら・・・?」
「・・・言うまでもなく、御剣訓練兵は将来的に良い士官となってくれるだろうと言うことが分かっているから、
だな。 自らを犠牲にしてまで、与えられた任務を全うする覚悟の在る人間は、そうは居ない。
それだけでも、任官させる意味が在る人材だ。
それと、純真であり素直な人間でもある。 恋をして嫁げば、良妻賢母間違いなしさ。
ヘタすると、貴女よりも良い女に成長する要素を持っていると思うよ。」
「それだけ? 他にはないの?」
「うーーん、他にと言われると・・・・・・、あっ、そうだった。
戦術機への適性が高まってくると、ポジション的には近接戦闘に長けるようになるから、突撃前衛に
入ることに成るだろう。 頭も良い方だから、ヴァルキリーズの副長とかに向いているかも知れないな。」
「ふーーん・・・。 頭も良くて剣術は免許皆伝。 部下や仲間の面倒見が良い才媛って事ね。
完璧な女と聞こえるんだけれど、弱点とか無いの?」
「そうだな・・・・・・。 まぁ、敢えて言うなら、空気を読むのが下手、とかかな?
冗談が通じにくいところが、玉に瑕と言うところだったと記憶している。」
「なるほど。 ・・・・・・で、それらが未来情報として知っていた、と言う訳ね。」
「ああ、そうさ。 ついでに言うならば、例の第五計画の移民船団に選抜されて、バーナード星系で
生き延びる可能性が在る女の子さ。 仲間と別れるのが嫌で、当時の恋人に諭されて、やっと
旅立ちを決意するほどの頑固者でもあったな。」
「ふーーん。 そう言う事か。
その恋人って、もしかしなくても白銀の事で良いの?」
「ああ。 あの訓練分隊唯一の男といえば、白銀 武君しかいないからな。
初めての異性の友達は、彼女にとって初めての男性であり、旦那になった、とさ。」
「・・・・・・なーーんか・・・納得いかないわね・・・。」
「ああ、その感じは分かるよ。
『物語』としての内容の一部だし、あの訓練分隊にはその他にも謂わく有りの女の子が揃っていたから、
彼女らの数だけエンディングがあったよ。
ま、飽くまで主役は『白銀 武』君ということだよ。 世界の中心は彼だと言うことだな。
勿論俺や貴女や霞を含めたこの世界に於いてもそれは変わらない。 まぁ、主役をやりたいとは
思っていないから良いけどな。」
「・・・主役よ? 主役! やりたくないの?」
「・・・・・・いやいやいや、 面倒なだけだと思うぞ。
それに俺なら、本気で好いた女と一緒に居たいからハーレムは要らないし・・・。
まぁ、甲斐性が許すなら、嫁さんは二人ぐらいで十分だけれどなぁ・・・・・・。」
「へーー、一人前に色気もあったんだ。 で、因みにどの娘がお望み?
白銀から奪うの?」
「・・・人聞きの悪い事を嬉しそうに・・・・・・。 貴女って人は、悪い人の顔になっているぞ!」
「良いじゃない。 此処には私達しか居ないんだし、誰と誰をつまみ食いしちゃうの?!」
「・・・・・・仕方ないな・・・。 『香月 夕呼』と『神宮司 まりも』だよ。
俺の好みは、10代や20代前半じゃなくて、落ち着いた雰囲気の25歳以上の女性が良いんだ。
別に処女に拘りが在るわけじゃないし、普段は大人ぶっているけれど、甘え下手な所がコミカルに
感じられて、まるで子猫とじゃれている感じになる女と長く付き合いたいからな・・・。」
「ちょっ、・・・・・・バ・・・バカな事、言ってんじゃないわよっ!! //////
大体、だ・誰が甘え下手ですって?! それで口説いているつもりなら、その顔を引っ掻いてやるっ!!」
「・・・・・・そうそう。そう言う風に照れるとか、自分以外にもう一人指名しているのに、そこに踏み込んで
来ないところとか、カラカワれているのに気づかないで、後から独りで怒り出すところが、何か抜けている
子猫を想像してしまうんだよな。 神宮司軍曹は子犬のイメージだけれども。」
「・・・”横浜の魔女”と呼ばれる私をカラカウなんて、良い度胸じゃないっ!
さて、どうしてやろうかしら・・・・・・。」
こちらを睨みつつ威嚇してくる香月博士を苦笑いしつつ見ていたが、撃震モドキの足元付近、
ちょうどエレベーターホールに、360°全天周囲モニター越しに神宮司軍曹が降り立ったのが見えたので、
そろそろ与太話を切り上げる事にした。
「・・・ハイハイ。 そろそろ与太話を切り上げようか。
さて、もうちょっとで役者が揃うので、さっさと本題に入ろうじゃないか。」
俺はそう言い、香月博士を仕事モードに戻した。
「・・・大体の俺の手の内は出せたはずだ。 後は、軍曹に持ってこさせた甲21号ハイヴでの土産を
見てもらう必要が在るのだが、兎に角”究極の逆転満塁ホームラン”的な案について言うならば、
その骨子は、先に地球圏のハイヴ、とりわけ司令塔であるハイヴのコアを殲滅する、と言う事さ。」
「・・・? それって、甲一号ハイヴのあ号目標と言う事じゃないの?」
「違うぞ。 もう一度言うが”地球圏の”だ。 地球のじゃない。
そもそも国連が打ち出した戦略目標計画が間違っているんだ。 ハイヴ・コアにアクセスして分かった
事なのだが、ハイヴ・コアの命令系統は、”親”と”子”の関係に有り、地球上であれば、あ号目標が
”親”で、他のハイヴ・コアは皆”子”の関係となっている。
だが、此処で誤りが在る。 それは、あ号目標は、月から飛来している関係上、月のMoon1が”親”で、
地球のあ号目標はその”子”と言う関係にある事が見落とされている。」
「うん。 そんな事は分かっていたけれど、それってそんなに重要な情報なの?」
「・・・・・・何でそんなに呑気なんだ?
では、仮にあ号目標が無くなったとして、命令系統の空白が生じた場合、そのフォローは誰がするんだ?」
「・・・・・・月のハイヴから、別の着陸ユニットが飛んでくる・・・?。 あっ!! しかも・・・・・・。」
「そう。 しかも次も同じ地上とは限らない。 BETAさん達は海中であろうと地中であろうと
侵攻できるから、仮に着陸ユニットが海底とかに着陸されたら、今度は人類側に反抗作戦は
行えない。
幾ら何でも海の底に向けて核魚雷を打ち出すなんて無謀は、誰もやりたがらない。
放射能汚染された海の食べ物なんて食べれないからな。」
「・・・・・・そうか。 命令系統の検証と言う事はしていたけれど、これをハイヴ間の”親”と”子”の関係に
置き換えての検証は、ノーマークだったわ。 確かに、この情報は重要ね。
戦略目標が大分修正されることになる・・・・・・。」
「・・・その為、地球圏からBETAを排除する順序として、一つ目はあ号目標の排除。コイツは鉄板だ。
続いて間髪置かずの電撃作戦で、二つ目として月のハイヴ。 多分Moon1がその候補だろうな。
この二正面作戦で行くしか無い、と言う事だ。」
「何て事っ!! これは早急に検討が必要ね。」
「うん。 ・・・だが、第四計画としては、あまり時間は掛けられない。
敵が多いと言う事と、時間が足りないから、肝心のハイヴ・コア破壊は、俺に一任してもらう。」
「一任って、どうやるつもり? いえ、作戦内容もそうだけれど、貴方独りでできるの?」
「・・・舐めてもらっては困るな、香月博士。 自慢じゃないが俺は単独潜入で甲21号ハイヴから帰還した
男だぞ。 しかも500万体超えるBETAユニットを屠ってきた実績もあるし、何よりハイヴ・コアを
既に幾つか排除している。」
「な・何ですって?! 一体どうやったのよっ!!」
「既に見てもらったように、俺には常識では測れない特殊な”能力”を持っている。
霞のような読心の様なものだが、超能力というものではない。」
此処で俺の能力である、「属性付加」やそこからの発展での「認識内変動的攻撃」について
簡単に解説をした。 特に、甲21号ハイヴはもちろん、甲19号、甲20号、甲25号の各ハイヴ・コアを
迎撃済みであることを報告した時は、博士も霞も呆気に囚われた顔になった。
「兎に角、だ。 ハイヴ・コア、取り分けその中の司令塔を真っ先に潰す。その後で、全BETAユニットを
各個撃破するために、戦術機適性の無い奴も含めて、総力戦で排除を繰り返して行き、最終的に
地球圏の安定を図る。 これが俺が提示したい”究極の逆転満塁ホームラン”だよ。」
一通りの戦術機の解説が終わってから、第四計画としてのBETA対策の方針を説明し、これを以って
計画の基本方針とするシナリオを話した後、香月博士は溜息をついた。
「・・・・・・なるほど。 そう言うシナリオか・・・・・・。
確かに、スピンオフ技術を用いることで、対BETA戦略を構築し、成果を残すことができれば、
『第四計画完了』と言う功績は残る・・・・・・か。」
「どうだ? お気に召したか?」
「・・・・・・いいえ。 アンタの計画には穴があるわ。
それを埋めない限り、アンタの計画は実施できないわ。」
「ホゥ・・・・・・。 それはどんな穴なんだ?」
「・・・一番基本的なことを知らない様ね。
つまり、オルタネイティブ計画にて研究された成果については、『人類共通の財産とする』と言う
基礎概念があるの。
まぁ、そうは言ってもその基礎概念は建前だけのモノで、具体的な技術供与ともなると様々な
取引を経ない事には相手はその技術はおろか、ニュース・ソースですら辿り着くことは出来ない
けれどね。 兎に角、ややこしい手続きが必要となってくるのよ。
まぁ、アンタがオルタネイティブ計画中枢の基礎概念を知らなかったのも無理は無いけれど、
アンタが開発したこの『撃震モドキ』? の技術の提示が要求されて手続きが通れば、
その技術なりが相手に渡ってしまい、これを邪魔することはできないの。
でも、それをしたら・・・・・・。」
「・・・・・・なるほどね。 確かにそれは一番まずいな。
悪ガキどもが拳銃を弄くるようなものだからな。 でもまぁ、それだけならば、他にも対抗手段が
無いわけでもないが、ね。」
「・・・それって、どう言う事なのかしら・・・・・・?」
「簡単だ。 設計概念というか、プロトタイプで作戦を実行するのさ。
つまり、青写真はあるが、正式な設計図はできていない状態だな。
で、作戦は成功するが、肝心のプロトタイプの機体は故障とか放棄状態で接収しても役に立たない
状況であれば良い。
そうすれば、その後研究開発する時間が稼げるので、その間に状況を補正・対応する。
どうだ、この策は?」
「・・・・・・それでも、穴は塞がっていないけれど、でも『座したまま死を迎える』事はナンセンスね。
『できていないからやらない』は、言い訳としても見っともないし、何より私の矜持が許さない。
アンタの案は、その都度修正が必要で面倒だけれども、そのタイトロープさえ渡りきれば
私達の勝ち、と言う事で良いのかしら?」
「ああ。 タイムリミットが目の前だ。 今はそれしか無いと思う。」
「・・・・・・完璧じゃない所が大いに不満なんだけれど・・・・・・。 良いわ、アンタの案を買いましょう。」
「・・・よし、きた。 まかせろ! 絶対後悔はさせないからな。」
「じゃ、取り敢えずは、第一段階ね。 佐渡ヶ島ハイヴが無くなったことを日本帝国に知らせましょう。」
「ああ。 ついでにその手柄を日本帝国に売りつけてやろうぜ! せいぜい高くな。」
「なるほど、面白いわね。 そこから第二段階は、第四計画の完了報告ね。 何時にする?」
「そんなの、勿論決まっている。 2001年12月1日だ。
そんでもって、第三段階・作戦の決行が、同月24日だ。 忙しくなるな。」
「フーーン、クリスマス・イブか・・・・・・。
アンタがサンタ役をしたら、大概の子供は泣いちゃうと思うのだけれど・・・・・・?」
「言うじゃないか・・・。 じゃ、俺の代わりに貴女がサンタの衣装を来て、プレゼントを配ってくれよ。
勿論ミニスカなコスプレでな?」
「イヤよ! 何でそんな面倒なことを私がしなきゃならないのよっ!!
コスプレって、コスチューム・プレイって事? それなら適役がいるわよ。」
「ハハーーン、・・・・・・ズバリ神宮司軍曹だろ!
良いねぇ・・・。綺麗どころが二人か。 今年のプレゼン役は華やかで色気があって良いな・・・・・・。
霞も楽しみだろ?!」
「・・・・・・ハイ。 プレゼント、楽しみです。」
こうして俺達のミーティングは終わった。
俺達はミーティングを終え、コックピットから機体の外に出てきて、既に90番格納庫に到着した神宮司
軍曹と合流するために、エレベーターホールに向けて撃震モドキの上を移動をしている。
その最中、俺はこれからの作戦に必要な対価として、正式に第四計画関係者としての地位を要求した。
博士はその要求に了解の意を返してきて、俺をA−01連隊に配属する事を約束した。
「・・・で、アンタの階級なんだけれど、どのくらいの地位が欲しい?」
「・・・・・・そうだな。 貴女の次くらいが良いと思うから、少佐・・・、いや、中佐で頼む。
役職は、A−01の連隊長と言う事にしておいてくれ。」
「大きく出たわね。 でも、分かったわ。 他になにか必要なものとか在る?」
「ああ。 第09中隊なんだが、第五世代戦術機への機種変換教習の教導部隊としたいので、
伊隅大尉以下の”伊隅ヴァルキリー中隊”を配下に置きたい。
また、それとは別に神宮司軍曹を横浜基地司令部付き教導隊の隊長として、招集させよう。
当面ヴァルキリー中隊も神宮司軍曹の配下において、教導の為の訓練を受けさせて欲しい。
行く行くは、この教導部隊を第五世代戦術機向けの専門部隊として、世界各国へ教導に散らばって
もらわないと、とてもじゃないが兵隊の育成に間に合わなくなる。 それに備えたい。」
「・・・フム。なるほど。 では、まりもは軍曹じゃ無くなるわね。」
「ああ。 教導部隊長として元の大尉ではなくて、ここは一気に少佐に任命するよ。
将来的には伊隅大尉を副官としたほうが良いだろうな。」
「分かったわ。 その案で行きましょう。 他は良いの?」
「・・・今の所はそうだな。 多分この後で、相談すると思う。
それよりも役者がそろったようだな。 さっさと用事を済ませよう。」
俺はそう言うと、神宮司軍曹の所に向かった。
奇しくもその時、伊隅ヴァルキリー中隊も地下22階の90番格納庫に到着したのだった。
「中隊 せぇ〜い れぇ〜〜つッ!」
99式衛士強化装備を着込んだ伊隅大尉の前に並ぶ10数名の美少女たち。
号令を掛けているのは、水色のポニテの勝ち気な女性だった。 多分彼女が”速瀬 水月”中尉だろうな。
俺と香月博士がヴァルキリー中隊の前に到着すると、整列した伊隅大尉以下全隊員は、一斉に敬礼をした。
それを見ていた香月博士が溜息混じりに、その礼に答えた。
「・・・ハイハイ。 私に対してそう言うのは要らないって、何時も言っているでしょう。
今日集まってもらったのは他でもないわ。 新たにA−01連隊に配属になった人員を紹介するからよ。」
そこに待ったをかける人間が居た。 伊隅大尉だ。
「あ・あの、副司令? 我々はこの90番格納庫で歩哨警備の為に呼ばれたのでは?」
「ぅん? ああ、それもう終わったわ。 警備が必要かと思っていたけれど、アレの中で話し合いが
済んじゃったから、アンタ達要らなかったわ。」
アレと呼びつつ、香月博士の背後に仰向けに転がっている『撃震モドキ』を後手で親指で指して、
会談が終了したことを申し渡した。 伊隅大尉は態度には表さなかったが、幾分表情的に残念感を
漂わせた。 多分、何時ものごとく任務が空振りで終了させられて、虚脱感に囚われているのだろう。
「・・・ま、それは兔も角、新しい人員の紹介をしましょう。 もう察しが付いていると思うけれど、私の隣に
居るこの男がそうだから。 じゃ、自己紹介して頂戴。」
相変わらず不遜な態度で俺を簡単に紹介した香月博士。
伊隅大尉は怪訝な表情をしているが、他の隊員、特に速瀬中尉と宗像中尉は、人を舐めたような
”新人が来た”と言う思惑を持っている様に感じ取れた。 フム、他にも一名が同様か。
・・・まぁ良い。 相手の正体を知らないで小馬鹿にした報いは受けてもらうぞ。
俺は一歩を踏み出し、前に出た。
「・・・・・・香月博士から紹介して頂いた、この度配属となったエイデン・ピアースと言う。宜しく頼む。
役職はA−01連隊隊長であり、階級は中佐を拝命している。」
俺は余りパンチの効いていない紹介をしたのだが、伊隅大尉はじめ全隊員が、ピシッと音がする様に
姿勢を正した。 俺は続けてヴァルキリー中隊を挑発しだした。
「・・・フム。 どうやら、貴様らは軍隊と言うものを舐めているようだな。
この部隊は女子学校でもクラブの活動でも無いのだ。
命令されれば戦場に赴き敵を倒さねばならない。そして、敵とする相手は何もBETAだけとは限らない。
我々の敵対する相手に対して攻撃も辞さない覚悟が必要と成る。
分かるか? その対象が例え人間でも、或いは人間の非戦闘員でも、と言うことを意味している。
おいっ、そこのお前っ!」
そう言いつつ、俺は速瀬中尉を指差した。
速瀬中尉は姿勢を正し、直立姿勢のまま「ハッ!」と答えて一歩前に出てきた。
「・・・・・・フン。 どうやら幾分かの戦場は経験しているようだな。
では改めて聞こうか・・・。 先ほど私が述べたように、相手がBETA以外の敵勢力に対して
攻撃命令を下命しても、貴様はこれを実行することができるか?」
「は・ハイッ! 実行できます!!」
「ウン、返事は一人前に良いな。
しかし、私はアメリカ出身だ! 返事の前と後には、必ず『サー』を付けてもらおうか。
分かったかッ?! 返事をしろッ!!」
「さ・サー、イエッサー!!」
「・・・・・・フン。 よし下がれ。
では・・・・・・、 よし、まだ戦場を知ら無さそうな、オイッ、お前ッ!!」
俺はそう言いつつ、次に背丈は170cmくらいの新人少尉を指差した。
その少尉は「ハッ」と答えつつ、ゆっくりと一歩前に進み出た。
「・・・・・・何とも覇気が少ないな。 警戒しているのは分かるが、貴様それでも軍人か?
おいっ、伊隅大尉っ! コイツはこの中隊に配属されてどのくらいに成るんだ?」
「ハッ、その者は、柏木 晴子少尉と申します。配属は8月1日付けでしたので、3ヶ月少々でありますッ!
サーッ!!」
「・・・なるほど。 では、柏木少尉ッ!!
先ほどと同じ内容だが、少し趣向を凝らしてやろう。 貴様の家族に弟か妹は居るか?」
「は・はい。 弟が二人おります・・・。」
「・・・・・・返事の仕方については、先程中尉に言ったはずだがな? ・・・次は無いと思え。
では、改めて問おう。 柏木少尉、目を瞑れ。 そして、貴様の弟が目の前にいると想像しろ。
今貴様の弟が、そうだな、一番下の弟が伝染病に掛かったとしよう。 その伝染病の治療方法が
確立しておらず、放っておくと空気感染して伝染病が広がる恐れが出ている。
最悪の状況として、パンデミックが予想されるので、早急に対応策が必要である。
この状況下で我々A−01連隊に出動がかかった。
任務内容は病気に掛かった地域一帯をナパーム弾で焼却消毒しかない事になり、貴様も爆撃機に
乗り込むことになった。 勿論対象地域には貴様の実家もあり、当然貴様の弟達もその中に居る。
ナパーム弾の投下が間近に迫り、投下命令を俺が出した時、投下係のお前はその引き金を引けるか、
否か?」
顔面が蒼白と成り、極度の緊張をしているのが分かるくらい、柏木少尉は震えていた。
「わ・私は・・・・・・。」
それを見ている他の隊員も、同じく緊張をしている。
この手の命令には素直に従える筈もなく、柏木少尉の指導をしている伊隅大尉が動き出そうとしていた。
だが、その前に俺が動くことにした。
「・・・・・・もう良い。 下がれ柏木少尉。
どうやら、この程度がヴァルキリー中隊の限界、と言うところだろう。
余程、大事に扱われていたか、指導教官役の上位者が手を抜いていたか、だな。
伊隅大尉、この状況をどう説明する?」
「ハッ、大変申し訳ありませんッ!! サーッ!!」
「腑抜けたか、伊隅大尉?! 『申し訳ありません』が通じるほど、軍隊は甘くないッ!!
ましてや我々は特殊任務部隊だ。
オルタネイティブ計画が現場で作戦を実行する為、選抜された技量に長けた面子を揃えている。
だが現状で、この有り様は何だ?!
連隊長である私の命令を実行できない部隊員が紛れ込んでいて、満足に任務を全うできるのか?!
こんな状況で、特殊任務が実行できると、貴様は言えるのか?!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・どうやら本当に腑抜けているようだな。大尉?!
通常の一般物流で出回っている様な商品の中で、不具合品が混じっていたら、消費者はメーカーに
対して返品を行い、正常な品を受け取るか、商品購入の弁済費用を請求する権利があるが、
軍隊に於いて不良兵士が配属されたら、その請求はどのようにしたら良いのだろうな?
心得不覚悟の兵隊などは、教導した部隊に返品できれば良いのだが、通常の軍隊では解雇できない
事が多いので、最前線送りにしたり使い潰す方向で処理することが多い。
任官できたからと言って、一安心と言う訳ではない。 気を抜きすぎだ、貴様等。
ましてや貴様らは下士官として任官している以上、最前線に於いては部下を率いて敵中突っ込む事も
辞さなくなるだろう。
その時自らが死ぬのが嫌だから、命令を無視する部下に対して、腑抜けた貴様らがどの様な命令を
下すのか、教えてほしいものだ。
これ以上は時間の無駄か・・・。 伊隅大尉、この不良品共を引き上げさせろ!
そして、明日1000でミーティングを行う。 使えぬ貴様らの使い方を伝えてやる。
以上、解散!!」
一斉に俺に対して敬礼してきたので、簡単に答礼をしそれが終わって回れ右して、香月博士の元に
向かった。 そこには合流した神宮司軍曹も居り、軍曹は俺に対して睨んでいるように見えた。
徐ろに香月博士が俺に声をかけてきた。
「・・・ピアース中佐。 随分と飛ばしていたわね。」
「フン。 アレぐらいのことでヘコタレテは、この先が困る。
彼女らには何としても立ち直ってもらわねばならない。 全く手の掛かることだ・・・。
それはそうと、お土産は持ってきてもらえたようだな、軍曹。」
俺は気軽にその様に軍曹に声を掛けたが、彼女からの返答は他人行儀だった。
「ハッ、中佐殿! では、こちらの物はどちらに置きましょうか?」
「・・・・・・ああ。 そのまま、香月博士に手渡してもらえるかな。」
俺達のやり取りを横で聞いていた博士が疑問を口にした。
「・・・これが先ほど見せたがっていたお土産なの? この岩の様な物って、何?」
「ああ、この岩に見えるものは、甲21号ハイヴ・コアの欠片さ。」
俺はその様に答えると、博士に手渡そうとしていたお土産を、軍曹がそのまま床に落っことしてしまった。
後に霞に質問を受けた。
その内容は、「あのタイミングでその様な事を言われたら、だれでも落っことす」と言われ、
「ワザとタイミングを狙ってやったのか?」と聞かれた。
その解答として俺は、「勿論、ワザとだ。」と答えたのは言うまでもない(黒笑)。
ゴトッ!と音がするくらいの勢いがあったためか、ハイヴ・コアの欠片は幾つかの破片を格納庫床に、
散らばらせてしまった。
「オイッ、軍曹ッ!! な・何て事をするんだッ!!」 「あ〜〜ぁ、まりもったら、貴重な品なのよ、それ。」
「はわわぁゎゎゎっ!!!」
俺と軍曹は慌てて幾つかの破片をかき集め、程度の良い幾つかの小石状になったハイヴ・コアの欠片を
香月博士に手渡した。 残りのモノは俺が回収することにした。
「フーーン・・・。 これが甲21号ハイヴ・コアだったものか・・・・・・。
こうやって見ると、本当に只の石ね。」
「まぁ、な。 だがその小石程度の物でも、グレイ9の結晶でできているんだぜ?
重さ約1kgのグレイ9と同じくらいの密度を持っているから、BETAさん達からすると、
「ご飯だっ!」と言うくらい垂涎モノの超貴重品だよ。 それを・・・・・・・・・。」
先ほどまで睨まれていたのだが、反対に今は恐縮しまくって縮こまってしまった。
少々やり過ぎたか? 香月博士は、相変わらず人の悪い笑顔で俺を見ている。
「もっ、ももも・申し訳ございませんっ!!」
「まぁまぁ。 まりもも悪気があってやった訳じゃ無いし、私は気にしていないから、ね。」
「ハァ・・・。 まぁ、香月博士がそうおっしゃるなら・・・。
では、それはそれとして、神宮司軍曹には一つ仕事を頼まれてくれないか?」
「あ・ありがとうございます、香月博士っ!!
えっ?! し・仕事ですか? 中佐?!」
「ああ。 軍曹が担当している現在の訓練兵達の戦術機適性検査を、この後直ぐに行って欲しい。」
「あ・あの・・・、それは一体何故ですか?
それに、戦術機適性検査は、総戦技演習合格後に執り行う予定なのですが?」
「・・・それについては、6人の検査後時間を取って説明をする。
今はとにかく時間が惜しい。早急に作業にとりかかって欲しい。
それと、6人の検査結果が分かり次第、香月博士の執務室に連絡を入れるように。
最後に、白銀訓練兵についてなのだが、もし白銀訓練兵の適正値が他の5人以上であり、且つ、
歴代適正値の記録上位5位以内であった場合、戦術機の基本教習過程と応用教習過程の
全プログラムを連続で実行させてくれ。 その場合は彼だけは居残りで全プログラムが終了するまで
軍曹が監督を行うように。
霞、その際のオペレーターを頼む。 プログラム実行前に機体は全てスタート時のものに回復して
おいてから測定をしてくれ。
そして、最後の卒業試験向けプログラムの動作パターンはベリー・ハードで頼む。」
「・・・・・・分かりました。」
「あ・あの、中佐? 一体どういう「軍曹ッ! 命令を実行せよッ!!」ことーー ハッ、了解いたしました!!」
俺は神宮司軍曹を追い払うかのように命令を下した。
霞は軍曹と一緒に、適正値測定のため、シミュレーション訓練機の在るフロアに向かった。
「ふぅ。 さて、この後は・・・。
香月博士。 帝国の『微妙に怪しい人』を今から呼び出すことはできるか?」
「えっ?! あ・あいつを此処に呼ぶの?
まぁ、できるとは思うけれど、アイツと話すのって、変に疲れるから苦手なのよね。
私は研究に忙しいから、アンタが対応してくれるなら、呼び出してあげるけれど・・・。」
「・・・・・・いや、オルタネイティブ第四計画絡みの話なので、貴女が居ないことには始まらんでしょう?
兎に角、例の情報を帝国に高く売りつける必要があるので、鎧衣課長を呼び出して欲しい。」
「・・・ああっ、もう分かったわよっ。 呼べば良いんでしょう。」
俺と博士は執務室に戻ると、早速博士に鎧課長に連絡を取ってもらった。
俺は帝国に提出する予定のシナリオについて草案を纏め、ある程度まとまった所を博士に確認してもらった。
甲21号ハイヴについては、既に攻略済みなので、帝国臣民に分かりやすいようなセンセーションを
巻き起こし、国政を立て直す切っ掛けと成るようにするシナリオにしておいた。
また合わせて、第207b訓練分隊に居る訓練兵を近日中に士官させる旨を連絡することにした。
この時に、各家の事情に対しての許可は取らずに実行する旨を説明する。
「・・・・・・こんなものかな? あっと、香月博士。 御剣訓練兵についてなんだが、彼女って日本帝国と
アメリカ辺りとで、人質の役割もあって、この国連基地に入った経緯とか、あったっけ?」
「・・・・・・アンタって人は・・・。
ええ、そうよ。 でなければ、赤を賜る武家の御剣家の人間が国連に出向くなんて事はしないから。」
「では、その取引の中で、日本帝国政府はアメリカから食料援助とか戦術機の支援とかを取り付けた、
と言う事で良いのかな?
となると、彼女を仕官させるには、他の手を打つ必要があるのか?」
「・・・・・・前回の総戦技演習については、国連と帝国からストップが掛かったわ。
でも、今回は今の時点でも何も言ってこないから、ひょっとすると忘れているのかもね。
どうする? 本当に任官させるの?」
「・・・・・・任官させちゃおう。 一人だけハブるとか、可哀想だ。 ごちゃごちゃ言うなら、12月1日の
国連総会で有耶無耶にして、その件については忘れさせたままにしてやろう。」
「分かったわ。 その線で行きましょう。」
これで、白銀君含めて原作組を既存部隊の方に混ぜて、一緒に訓練を受けさせる算段が整った事になる。
一応一段落が付いた形となっているが、まだ神宮司軍曹からの連絡は届いていない。6人の適性検査に
どれだけの時間がかかっているのか、と思っていると、霞から内線で連絡がきた。
「ピアースさんですか? 先ほどの適正値の結果が出ました。
6人とも戦術機適性有りでした。 また、白銀さんなのですが、ピアースさんがおっしゃる通り、
歴代の適正値記録では、第1位の成績が出せました。」
「・・・そうか、やっぱりな。 でも、どうして霞が連絡してくれたんだ? 軍曹はどうした?」
「・・・神宮司軍曹は、白銀さんを褒めています。 ここまで良い所がなかった分、返って感動された様です。
他の皆さんも、嬉しそうです。」
「そっか。なるほどな。
じゃ、引き続きで悪いが、基本教習過程と応用教習過程と最後の卒業試験プログラムの方の
操作を頼む。 それと、神宮司軍曹と代わってくれるか?」
「・・・分かりました。」
暫くして、神宮司軍曹が電話口に出てきた。
「・・・代わりました、神宮司です。」
「・・・軍曹か? 任務ご苦労。
しかし、報告を霞に任せるとは、随分ゆっくりだな。 俺の方の連絡は教え子を褒めるよりも後なのか?」
「も・申し訳ありませんっ! 中佐っ!」
「・・・ま、貴様が嬉しがる気持ちも分からんではない。 出来の悪い子供ほど可愛いものだ。
だが、今回はこのくらいで済むが、重要任務でもこの様な有りさまでは困ると思うのだが、貴様はどう
思う?」
「ハッ、 中佐のおっしゃる通りだと思います。」
「・・・そうか。
意見の一致が見られるということは、俺個人が俺以外の皆から嫌われており、その様な対応に
繋がっている、と考えた方が良いのか? 俺がアメリカ人だからか?」
「いいえっ、決してその様な事は考えても居りません!!
これ以降は、この様な事の無い様に致します! 大変申し訳ありませんでしたっ!!」
「・・・・・・うん、分かった。 この件については、もう何も言わない。
それでだな、軍曹。 今後の訓練兵の鍛錬について、貴様と相談がある。
そちらの方の適性検査が終わったら、白銀訓練兵を除く皆を解散させて、白銀訓練兵のみ例の
シミュレーターを実施するように指導してくれ。
既に霞にはオペレーターとして、操作の方を頼んである。 恐らくだが、白銀訓練兵と言えども、
全教導を終了するのに3・4時間はかかるだろう。
その間に、相談したいので、シミュレーターが始まったら、一度こちらに顔を出してもらえるか?」
「ハッ、はいっ! シミュレーター実施後、地下19階の香月博士の執務室に出頭致します!」
「ああ。 では、宜しく頼む。」
そう連絡して俺は受話器を置いた。 この様子を見ていた香月博士がこちらに顔を向けて聞いてきた。
「例の適正値。 その様子だと皆合格したみたいね。」
「ああ。 早速任官の手続きについて、神宮司軍曹に動いてもらうように働きかけよう。
それと、衛士徽章は、やっぱりラダビノッド准将から授与されないといといけないだろうから、
一度顔見世も兼ねて挨拶に行ったほうが良いだろうか?」
「それは・・・そうね。
准将からの授与を以って国連衛士と成るわけだから、当然准将は抑えておかないとマズイわね。」
「分かった。明日・・・、は無理っぽいから、明後日とか式典しても良いか聞きに行こう。
それと、神宮司軍曹に新しい教導部隊を任せると言う件についても、一応基地司令部付きとするから
その許可も取らないといけないな。 こちらは書類による要請でなんとかなるかな?」
「そうね。 顔見世と同じタイミングで書類を渡して、承認のサインをもらいましょう。」
その様に打ち合わせをしてから、必要書類を用意していたら、神宮司軍曹が出頭してきた。
「・・・神宮司軍曹、出頭いたしましたっ!」
「ご苦労。 戦術機適性検査は皆合格ラインだったって? 良かったな、一人も欠けること無く
次のステップに進めて。」
「ハッ、 はい。」
「・・・何かまだ言いたそうな顔をしているな、軍曹? 緊張しているのか?」
「ハッ、 はい、その・・・。」
「・・・・・・まぁ、夕方に現れた不審人物が何らかの会合を経て、いきなり中佐とくれば誰でも怪しむか。
その様な事が原因か?」
「・・・はい。 ズバリお聞きしますが、中佐は本当に何者なのですか?
どうして、私達の前に現れたのでしょうか?」
「・・・・・・そうだなぁ。 軍曹はNeed to Know の原則は心得ているな?
いや、不必要な情報を持つことの危険性を承知しての質問なら答えようと思うのだが、その点は
大丈夫か?」
「は・はい。 心得ております。 先ほどの質問が分不相応な内容であることも、無理を承知してなお
お聞きしたいです。」
「・・・分かった。 全ては無理だが必要と思われる情報の開示は行おう。
さて、何処から始めるか・・・。 俺がこの横浜基地にやって来たのは、先月21日、いや、22日の
午前0時だ。 この日軍曹は何が発生したか覚えているか?」
つい20日ほど前の記憶を呼び起こしつつ考えこむ軍曹を見て、俺が横浜基地に侵入した件を説明した。
途端に敵を見るかのように表情を険しくしていたが、その後のダミー・ストーリーを展開させ、如何に俺が
第四計画として行動したかを解説し、甲21号ハイヴを攻略した事を話した。
先程、地下22階の90番格納庫にて、甲21号ハイヴ・コアの破片を実際手にしていた事を思い出した
軍曹は、それだけで俺がとんでも無い実績を積み上げた事実を知り、敵視していた表情が徐々に変わって
きた。 勿論、「認識内変動的攻撃」の様な情報の開示は行わないまま、第四計画にて培われた
スピンオフ技術を用いて、BETAの迎撃やハイヴ・コアからの情報収集を行ったことにした。
それらの報告を経て、俺は正式に第四計画に参加することと成り、今後の作戦の展開上現場にて指揮を
取る事になったことを話した。
「・・・・・・ま、大体は以上の様な経緯があって、この度中佐と相成ったわけだ。
で、聞きしに優る伊隅ヴァルキリー中隊との邂逅だったのだが、面合わせにて不審を抱くような勘が
働いた。 具体的には人を小馬鹿にしたような感じだったのだが、恐らく速瀬中尉と宗像中尉と
柏木少尉辺りから感じ取ったんだ。
だから、舐められたままでは居られないから、あの様に発破をかけ挑発したんだ。
ま、すっかり嫌われ者になっちまったけれどな・・・。 納得いったか、軍曹?」
「ハッ、 ご説明、ありがとうございます。」
「・・・そうか。 しかし、今だから言うが、22日の騒動を起こして逃げている時に、あんな所から博士が
出てくるとは思わなかったぞ。 気分転換の散歩でもしていたのか?」
いきなりダミー・ストーリーに博士を巻き込んで、当の本人は一瞬キョドってしまった。
「(こらっ、いきなり話を振るんじゃないわよッ)
・・・え?! ええ、全くね。 私もアンタが出てくるとは思っていなかったわよ。」
「ハハハ、全くだ。 しかし、これも奇縁と言うのかねぇ。
その接触が元で俺は第四計画に参加する事になるなんてな。
もし博士に会わなければ、俺は第五計画の立てたストーリーに従って、良くて国外脱出。
悪くすれば射殺で終わっていただろう。
勿論身分証明の類は一切持っていなかったから、第五計画派の関与まで辿りつけ無かったろうしな。
さて、軍曹の質問も終わったので、ここからはお仕事のお話だ。 夜もだいぶ遅い。さっさと済ませると
しようか、軍曹。」
早速、今日の戦術機適性検査の結果を受け、俺は第207b訓練分隊を早期に任官させ、
今の伊隅ヴァルキリー中隊と合流後に、第五世代戦術機向け機種変換の為の教導隊に編成し直す
計画を軍曹に説明した。
この中で、第五・第六世代戦術機の概念を簡単に説明し、それらの技術がこの度の甲21号ハイヴ単独
調査の結果で齎された最新技術であることを合わせて解説した。
また、戦術機への操縦については、白銀は兔も角他の女性陣は不慣れであることも考慮して、当面は
先任であるヴァルキリー隊員に教導を付けてもらい、その後一般兵士と共に再教導を受けることで、
技術面の補強を行う計画方針を示した。
「・・・・・・どうだろう、軍曹。 こう言う計画であれば、今の訓練兵達を任官させても問題ないだろうか?」
「ハァ・・・・・・、問題はないと思いますが、ただ一点、ご説明願いたいのですが、どうしてその様に急がれる
のでしょうか?」
「・・・フゥ・・・・・・、言っても信じて貰えそうにないだろうが、実は第四計画は近日中に計画完了の報告を
行う予定なのだ。」
「えっ?! ほ・本当ですか、香月博士?!」
「ええ。本当よ。 しかも悪いことに、今年中に何らかの結果を残さないと、計画自体が終了させられるの。
それ程切羽詰まっているから、その前に実績を残して店じまいしておきたいの。」
「ええ?! み・店じまいって、いやでも、計画の終了が迫っているのはわかりましたが、この第五世代
戦術機のシステム等は、とても画期的ですし計画延長を申請すれば何とか成るのでは?」
「いいえ。 それ程オルタネイティブ計画は甘くないわよ、まりも。
私達の計画が頓挫したとなると、直ぐ様あの第五計画が始動し出すから。
しかも、第四計画で培ってきた技術ですら、全部徴用されるから、奴らの一人勝ちとなってしまう
でしょうね。」
その言葉を受け、後の言葉を俺が引き継いだ。
「そうなんだ。そう言う事情もあり、使える兵士は誰でも使いたい。 つまり、教導官は多い方が、その分
世界中に居る、今まで戦いたくても戦えなかった戦士たちを教導してやれるだろう。
その先は、人類総攻撃でBETA共が居なくなるまで蹴散らし続ける必要がある。
その為にも、今は衛士としては未熟でも、教導に耐えうる人材を、一人でも多く鍛えあげる必要が
あるんだ。 それが、俺達第四計画の総意でもある。
その教導に、軍曹の力を借りたい。無理は承知で頼みたいのだ!」
俺はそう言い、神宮司軍曹に頭を垂れて懇願した。
ちょっと引き気味に、だが真剣な表情の軍曹は、俺達の申し出を引き受けてくれた。
「済まない軍曹。 では、早速で悪いが、明日か明後日に訓練校卒業式を執り行うように准将に申請を
行う。その為にも関連する書類の作成に取り掛かって欲しい。
それと、教導部隊の設立に関しての書類を作成してみた。 不備など無いか一応目を通しておいて
くれないだろうか?」
そう言いつつ、新教導部隊の設立申請書類を軍曹に見せてチェックしてもらったら、素っ頓狂な声が
帰ってきた。
「・・・・・・ッ!! あ・あのっ、ここの責任者欄なんですけれど、どうして私の名前が入っているんでしょうか?
しかも、”少佐”って、階級間違っていませんか?」
「いいや、間違っていないぞ。 君の教導部隊なのだから、君が責任者だよ。 当然じゃないか。」
と、俺と香月博士はデビル・フェイスで軍曹を説得した。 軍曹は”やられた”と言う表情で固まっていた。
何とか神宮司軍曹の件を片付けた俺達は、引き続き関係書類の作成に入った。
ラダビノッド准将へ挨拶は、明日の朝一で行い、訓練校卒業式を明後日に。教導部隊の設立は明日中に
実行を行う。
あとは、明日10時に伊隅ヴァルキリーズの今後の任務についての説明をして・・・。
いや、一悶着あるかも知れないので、模擬戦でも実施して天狗鼻をへし折っておく必要があるだろうな。
先任の連中は実戦での辛さを分かっているが、第207a訓練分隊だった者達は”死の8分”をクリア
しているかは怪しかった。 それらを誤魔化すために、アノように腑抜けているとしたら、中隊全体に
喝を入れ直す必要もある。 今のままじゃ使い物にならない。
そう言いつつ、今は香月博士の因果律量子理論の概論を読ませてもらっている。既存の論文でどこまで
出来上がっているか未定だが校了できる部分だけでも内容を把握しようと思った。
そもそも俺には、『完全記憶力』と『最善思考力』の2つの能力が有り、此等を組合わせて使用できれば、
大抵の失敗する事例を改善する手立てを構築することができるので、「あと少しで」と言っている理論の
完成を目指す。 第四計画を完了させるにあたっても、理論を完成させておく必要もあるからな。
飽くまでも論文の主流は香月博士がまとめる必要があるが、平行世界に赴いて完成した論文の回収が
行えないので、本当に本の手助け程度の助力となった。
「・・・で、ここの部分なんだけれど、どうして構成要素を増やしつつ、その無限ループを作ろうとするの?」
「だから、さっきから言っているように、構成要素が多い方があらゆる事象のデータとして捉えることが
できるって、言っているじゃないのッ! 頭悪いんじゃないの? だから素人に説明するのって
嫌なのよっ!!」
「いや、そういうことじゃないってば、量子理論の根本は、既存のデータの中から任意のデータを抽出
するんでしょ? 既存データの括りがおかしい上に関係しない余分なデータを引っ張り続ける意味が
分からないんだよ。
良いかい? 因果律に掛かるのは、過去から未来に於いての、”存在した”とか”存在するかも知れない”
と言う部分であって、確定されている事象なんだ。
箱の中の猫ってのも方便で、つまりは猫自体が居るか居ないかじゃなくて、猫という存在が居たとか
居る予定に掛かるんだよ。
その上で”生きている”と”死んでいる”と言う結果に別れるのであって・・・・・・。」
「そんな基礎は分かっているってば! アンタ私をバカにしているの?!」
「OK、ちょっとクールになろうか。 俺は貴女を決してバカにしていない。
貴女の理論は貴女にしか構築できないことも知っている。 だが、敢えてそこを聞くのは、何処までを
踏まえて考えを進めるかを知りたいからだ。
で、繰り返しになるんだが、結局因果律の彼方から、情報を引っ張ってくると言う部分についてだが、
不必要な要素をデータ上に入れる意味を教えてくれないだろうか?」
と、この様に不毛な会話のあと、二人共疲れ果てて、概論文をアレコレ見直し始めた。
ここで気になる部分があったので、赤ペンを用いて裏紙にチャプターと簡易式を書いて、概論文の
矛盾点を色々書き出してみた。
その中に、『考える頭脳は結局は一つに集約される』と言う文言を書いて、その横に箱の中にある
脳みそのイラスト、大凡5個から10個の絵を赤✗マークで記した。
続いて、因果律の線状を二本引いてその間に脳みそマークを書いて、情報をその二本線に交わるように
矢印線で引いて情報の交換を促す必要を記した。
最後に、『クソゲーはどんなルーチンワークで引っ張りまわして改善しようとしても、基本がクソゲーだから
ろくな事にならない。 面白くない。』と書いて、それらを香月博士の近くのテーブルに置いて、
「霞の様子を見てくる」と述べてから、執務室を辞した。
時間は14日まで、あと数分と言う時刻。
普通の一般兵士とかは、そろそろ就寝しようかという時間帯に、シミュレーター室に様子を見に来てみると、
相変わらずシミュレータが動いているのが分かった。
シミュレーター管制室には、何故か第207b訓練分隊の女の子たちが床に雑魚寝で残っており、
オペレーター席には、霞がチョコンと座って、操作していた。 シミュレーター制御室近くにあった
自販機にオレンジジュースがあったので、霞用に買い付け差し入れすることにした。
「・・・遅くまでゴメンな、霞。 これ、飲んでくれ。
どんな感じだ?」
「あっ、ピアースさん。 お疲れ様です。
白銀さんなのですが、現在最終試験プログラムの真っ最中です。 コンティニューが15回目です。
でも、今までで一番機動がぶっ飛んでいます。」
「・・・ハァ。 相変わらず、バッタみたいに飛び跳ねているなぁ。
何であんな機動しているか聞いてみたか?」
「いいえ。 それと何か分かりませんが、仕切りと操縦桿を乱暴に操作しています。
何か意味があるのでしょうか?」
「・・・・・・本人曰く『先行入力できるかも』とか、言いそうだなぁ。
そんな機能入っていないツーの。」
「??」
「ああ、良いから。 そのまま続けて。」
俺はひとつ溜息をついて、ポケットの中に手を突っ込んだ。
すると、今日の昼まで食べていた携帯食料が入っていることに気がついた。
俺はとあることを思いついたので、雑魚寝で寝ている少女たちを起こしにかかった。
相変わらず訓練生用の衛士強化装備は、女性は肌色の皮膜なので、ほとんど全裸の様な少女達は
眠気眼をこすりながら俺を見た。
「・・・あーー??」
「おい、起きろ。 こんな所で寝るんじゃない。風邪を引くぞ。」
「・・・・・・あっ、け・けけけ、けいれいっ」「はわわゎゎわっ!」「「「・・・・・・・・・」」」
「ああ、そう言うのは良いから。 ホレ、各自この紙コップを持って・・・。」
自販機でもう一度オレンジジュースを買い、自販機横のミネラル・ウォーター用に用意されている
未使用の紙コップを5つ少女たちに渡してやった。
一人づつ持ったのを確認してから、今買ったオレンジジースを注いでやると、「何でも無限」の効果で、
次々にジュースが空き紙コップに注がれていき、あっという間に人数分のジュースが揃った。
その様を不思議そうに眺める207b訓練分隊の少女たち。
続けて、俺はポケットから、携帯食料を一個づつ取り出し、少女たちに分けてやった。
「ホレ、腹減っているだろう? 食べなさい。 霞の分も此処に置いておくから、食べなさい。
オペレーションはその間、俺が見ておくから。」
とか言っていると、シミュレーターがドカーーンと派手な音を立てて、大破した時の音を出していた。
モニター越しで見てみると、白銀君が中で悔しがって居るのが分かったので、一声掛けることにした。
「はーーい。ご苦労さん。 ゲームオーバーだ。
とっとと、降りといでー、白銀訓練兵。」
「えっ?! あっ、こ・この声は、アノ時の不審人物っ!!
どうしてそこに居るんだ?」
「どうしてもこうしても無い。 いーから、とっとと、降りてこい。話はそれからだ。」
俺はシミュレータの画面を固定して、プログラムを一時停止させた。
こうなるとシミュレーターは一切の操作を受け付けない。白銀君は渋々ハッチを開き、観念して出てきた。
俺は彼用の紙コップにオレンジジュースを入れてやり、携帯食料を付けて手渡した。
「・・・シミュレーション訓練ご苦労さん。 ホレ、ぶっ続けで腹減っているだろ?
そんなので悪いが、腹に入れておけ。 それでどうする? まだ続けるのか?」
「も・勿論続けるっ!! 何としてでもクリアするっ!!」
「フーーン。 まぁ、俺の部下とかじゃないから、それは好きにしても良いが、でも良いのか?
お前さんを待って、彼女たちを付き合わせてしまっているんだぞ?」
「えっ?! ああっ、お・お前ら、先に帰っていろって言ったのに・・・。」
罰の悪そうな顔で、白銀からの解答に答えたのは”委員長”こと、榊 千鶴だった。
「だ・だって、アンタ一人だけ居残りで私達だけ除け者にされるなんて、納得行かないと言うか
何と言うか・・・。」
それを見ていて、俺が引き継いで答えた。
何でそんな事をしたのかって? そりゃこんな所でイチャラブされちゃ敵わんからなぁ(黒笑)。
「へぇーー、お約束で言うなら、『ツンデレ、乙』って言うんだっけ、こう言うの?
モテモテだな? 白銀訓練兵。」
「ッ!! あ・あんた、その言葉使い・・・。 ま・真逆・・・、お・俺とおなじ・・・・・・。」
「ぅん?! 俺がどうしたって? ま、それは置いておいて、この後もシミュレーターをするのは後一回だけだ。」
「な・何でそんなこと、アンタが言うんだ?!」
「( ´ー`)フゥー... そこまで考えが及ばないか・・・。 やっぱ、疲れているんだよ、お前さん。
無理して、シミュレーターの課題をクリアしなくても良いのに、それに拘るなんて・・・な。
良いか? お前さんが此処で粘るのは勝手だが、それに付き合っている霞の存在を忘れているだろ?!
この娘はこの娘で仕事があるんだよ。 それをお前さんの勝手で付きあわせていることを自覚しろ!
俺は霞に頼んでお前のシミュレーターに付きあわせたので、彼女を迎えに来たんだよ。
それと、もう午前0時を回ったぞ。 明日の起床時間は変わらないんだから、寝坊して軍曹に怒られる
のは、お前さんだけじゃ無くなるぞ!」
「あっ、 ・・・・・・うぅっ。 か・霞。 その、わ・悪かった、遅くまで付きあわせて・・・。」
「・・・私のことは良いです。 シミュレーター、あと少しです。 がんばりましょう、白銀さん。」
「と言う事だ。 だから、あと一回でしゅーりょーとする。 これ、絶対。 決定事項順守。
違反者は、当面シミューレーター室出入り禁止。 入り口に番犬張り付く。 無事通過不可。」
「・・・・・・分かった。 あと一回で終了させる。 それと何でそんな片言口調なんだ?」
「・・・俺の決意の現れ。 そんな事良い。 さっさと訓練始める!」
何かイイなこの言い方。 チャイカか006の張大人だな、こりゃ。
ま、そう言いつつ、シミュレーターに入って行き、きっちり10分後にクリアして出てきた白銀君。
へぇ、有言実行なんて、カッチョ良いじゃん。
「はい、ご苦労さん。 最終卒業試験シミュレーター、難易度ベリー・ハードを終了する。
まぁ、コンティニューが16回は多すぎだ。 コイツはそもそも一発勝負。 ノーコンティニューが
基本だ。 だがまぁ、難易度が最高のベリー・ハードでのクリアーはお前さんが初めてだな。
現役衛士でも、ノーマルかハードモードでのクリアがやっとだったからな。
さっさとこっちに上がって来い。」
白銀君が制御室の方に戻って来たので、シミュレーション後の総評を行うことにした。
他の第207b訓練分隊員も同じくその結果を聞いている。これが終われば彼らを解散させよう。
俺は、一連の動作ログを紙に出力しつつ、色々なアクションの数々を赤ペンでチェックしていった。
「・・・・・・白銀訓練兵のシミュレーション総評を行う。 全てのシミュレーションについては、このログ
用紙にその行動した結果が記録として残り、今後の機体操作の参考資料として検討を行うように
なっている。 諸君は今日が初めて筐体に乗り込み適性検査を受けた訳だが、いきなり白銀訓練兵の
様な機動は求められていないので、その点は安心しろ。」
榊はじめ、女性陣はホッとした溜息をついた。 白銀君はバツの悪そうな顔をしている。
「さて、初めてシミュレーションをして、最終テストをクリアできるとは思っていなかったのだが、
これを見事にクリアしたことについては、一定の評価を獲得したと言っても良いだろう。
で、ログを見なおして、改めて思ったのは、その機動が余りにも”デタラメ”だと言うことだ。
良くこんなので、クリアできたものだ。 プログラムのバグか何かか?」
前半俺が褒めたのに対して、鼻高々だったが、後半ボロクソに評価したので、派手にズッコケていた。
うん、お約束、ご苦労さん。
「ちょ、ちょっとぉーー!」
「何だ? 『上げておいて落とす』は基本中の基本だろうが。 な? 彩峰訓練兵?」
無言のまま、ウンウンと頷く彩峰。 ”あやや”は相変わらずの通常運転だった。
「大体だな、何でこんなに操縦桿を何度も操作する必要がある?
戦術機はその機構上、安全措置の一環で機体の動作前の”貯め”、或いは”硬直時間”が
設定されているんだ。 その間に操作情報を送っても処理しきれないから、全ての操作情報は
無効化しているんだぞ。それを、ガシガシと音がする様に乱暴に操作しているログが残っている。
これは何をしたかったんだ?」
そうすると案の定、『先行入力ができるかも』とか、寝ぼけたことを言い出した。
『そんな機能はない』と一蹴してやると、ブツブツと不満気なことを言い出したので、畳み掛けることにした。
「そんなアリもしないような”白銀基準”を戦術機に求めるな。
ま、そんな思い込みだけでクリアできた前代未聞な奴に言っても無駄かも知れんが・・・。
それは兔も角、これにて総評を終了する。 今後共訓練に勤しみ、自身の技に研鑽を積むように。
では、解散っ!!」
「「「「「「あ、ありがとうございましたっ!!」」」」」」
霞を回収して地下19階の香月博士の執務室に戻ってきた俺達。
実は、俺にはまだこの基地内のIDカードが発行されていない関係で、このフロアまで降りてくることが
できなかった。
その為、霞を連れての移動となっているのだが、既に”お眠状態”にある霞は、俺の背中でウトウト
しかけている。
「早々に博士にIDカードを発行してもらわにゃならんな。 それと制服も。
あっ、そう言えば、俺の部屋って、まだ聞いていなかった。 今夜の寝床って、どこなんだろう?」
そう言いつつ、執務室に続く廊下を歩いていると、背後に人の気配がした。
前を向きつつ、後ろの人物を観察していると、博士に呼び出してもらった、自称”帝国の微妙に怪しい人”
が、足音を忍ばせて俺の後ろ20mの所に居た。 やっと来たか。
「・・・鎧衣課長。 そんな忍び足で付いて来ないで、こちらに来られては?」
「ッ!! やぁ、私の尾行術に気づくとは、貴方相当に出来ますね?」
悪びれた様子もなく、スタスタと俺の横まで早足で追い付いてきた、鎧衣課長。
「まぁ、それなりには、私も防諜の心得は得ておりますので。
鎧衣課長はCIA局員のトーマス・ウィルキンソンをご存知で?」
「ええ。 CIAでは有名なやり手のエージェントですね。
確か今は、横浜の商社の営業部専務と言う役職ですが、非常勤局員としての役割も持っているとか。
彼がどうかしました?」
「いえ、別に。 ただ、私の防諜術は、彼のそれを真似ているもので。 特に師弟の関係ではありませんが、
参考にさせてもらているので、貴方の尾行術にも気づけたのですよ。」
「ホゥ・・・。なるほど。
それはそうと、私は香月博士から急な呼び出しを受けて此処に居るわけですが、
貴方何かご存知ですか?」
「ええ。 博士に貴方を呼び出すようにお願いしたのは、実は私でして。
実は早急に帝国側にお知らせしないといけない情報を掴みまして。 博士に相談した所、貴方の名前が
出てきた、と言う事ですよ。 日頃、美人の周りを小まめに出入りしていたお陰という、商社マン冥利に
尽きる、と言う訳ですな。」
「ハハハ、こりゃ手厳しい。
でも、そのお話、大変ありがたいものです。 実は主筋から、些細でも構わないから何か情報はないかと
矢の様な催促を受けておりましたので。」
「ああ、甲21号ハイヴのモニュメントが崩壊した知らせの件ですね。
確かにあれの破壊は爽快の一言でしたね。 噴煙がひどくて煙っぽかったのが玉に瑕でしたが。」
「な・何故それをっ!! ま・真逆、貴様の仕業かっ?!」
「・・・・・・鎧衣課長、口調戻っていますよ? 貴方ほどのエージェントともあろう人が、多少の驚異に
心を乱すなんて見っとも無い事は控えた方が宜しいですよ?」
「うぐっ!!」
と、この様に廊下で遣り取りをしていると、いきなり執務室の扉が開いて、半目でこちらを睨む博士が居た。
「・・・・・・何、廊下で言い合っているのっ!! 煩いから、黙りなさいっ!!」
相当論文の検証に手こずっているらしく、もの凄く機嫌が悪い事がひと目で分かった。
已む無く言い争いはその場で中断し、俺達はそのまま博士の執務室に入っていった。
リザルト報告:
繰越経験値ポイント & SPポイント
経験値ポイント : 0ポイント(繰越分無し)
SPポイント : 5,115,350sp
経験値取得
内訳
自己能力レベル上げ
拾得物
第9世代戦術機(プロトタイプ・『撃震モドキ(仮)』)
仮組立中 達成率50%前後
総合計 5,115,350SP
はい、第06話でした。
何か説明口調満載とご都合主義展開と駄文を披露して恐縮しきりです。
今回も約1500行と言うボリュームでした。
2話分相当って、どんだけ~。
ま、前書きにあったように07話仕込みに入っておりますが、こっちも1000行突破は確実でしょう。・・・多分(汗)。
まぁ、感想とか0なので、その分気楽ですが。
感想頂いてもちゃんと読みますけれど、本文を優先しそうで、その分返信が遅れるので、申し訳ない気分に成りますね。 ま、実績が0なので、偉そうな事は言えませんが(苦笑)。
相変わらずの亀更新ですが、
次回までお待ちください。
では。