What happened in the story ?   作:斬【Zan】

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はい、皆さんこんにちは。斬【Zan】です。

前回の後書きにて、感想0で気楽とか言っていたら、ちゃっかり2件感想が届きました。
しかも誤字脱字と設定ミスの指摘でとても恥ずかしい思いをしました。

いえ、斬にとっては、大変ありがたかったので大助かりなのですが、油断していたのでビビってしまいました。

宛:ナトリウム水素電池 様
ご返事した内容を07話に盛り込もうとしましたが、話の展開上08話になりそうです。申し訳有りません。

と言う訳で、今回少なめで1000行くらいでお届けします。
いつもの通り、ご都合主義ーー(キンクリ)でいきます。

ダイジェストとしては、御剣姉妹の下りが割り込んできて収まらなかったので、そこに届く前の段階ですかねー(何のこっちゃ)。

では、07話です。 どぞ。


Muv-Luv 編 第07話

 

 

2001年11月14日 0時34分

国連軍横浜基地 地下19階 香月副司令執務室

 

 

 

 

 

俺が霞を迎えに行こうとした時よりも、何故か執務室の中は散らかっていた。

それは言わずと知れて、散らかしたのは香月博士しかいなかったので、彼女の仕業なのだが、

部屋の主でもある彼女がどの様に散らかそうが、他人には一切関わりのない事情と言えるだろう。

 

そう、『一般的には』と言う条件がつくが・・・。

 

その散らかり具合もさることながら、相変わらず彼女の研究検証が上手く進んでいない事も有り、

その部屋の主は怒りと苛立ちを顕わにしつつ、俺と呼び寄せた自称”帝国の微妙に怪しい人”の両人を

睨みつけこう言った。

 

「・・・鎧衣課長。 呼び出したのは他でもないわ。

 詳細はアンタの隣に居るエイデン・ピアース中佐から説明してもらうけれど、第四計画の今後について

 修正部分が生じてしまいました。その事と関連して、とある提案を提示しますので、それを持って

 帝国政府と城内省に報告して下さい。

 

 じゃ、ピアース中佐。 あと、宜しく。」

 

かなり乱暴なそのお言葉に対して、俺は溜息を付きたくなったが、午前0時を回っていることも有り、

俺自身眠りにつきたかったので、鎧衣課長への要件を済ますべく、単に頷いて案件を引き継ぐことにした。

 

俺は背負っていた霞を、博士の執務室前に設置してあるソファに寝かせた。

勿論ソファの上に散らばっている論文などを片付けて、彼女が寝易い様にしてから、博士がよく使う

布団代わりの予備の毛布を掛けてやった。 頭に付いていたカチューシャはソファの背もたれの上に

掛けておいた。

 

鎧衣課長を執務室の出入り口付近に待ってもらい、先ほど作成しておいた、23日用の原稿を探し、

簡単に補足事項を裏紙に書き込んだ。

また、関連する補足情報などの資料を探し、それも添付して鎧衣課長の近くに移動した。

 

「大変お待たせ致しました。

 こちらが今回博士から言い使かりました資料と成ります。ご一読下さい。

 あと、質問など有りましたら、その都度対応させていただきます。」

 

「ハァ・・・。 では失礼して・・・、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・ッ?! ・・・・・・・・・!! こ・これはっ?! ほ・本当に?!

 本当に甲21号ハイヴを陥落させたと言うのですか?!! 中佐っ!!」

 

「・・・ええ。 まぁ、『辛うじて』と形容しておきますが、一応甲21号ハイヴのコアの破壊を完了しました。

 こちらがそのハイヴ・コアの欠片となります。」

 

「おおっ!! 中佐っ、そして香月博士っ!! 帝国を代表して御礼を申し上げますっ!!

 我が帝国の悲願を、よくぞ成し遂げて頂きました!! 感謝の言葉しかありませんっ!!

 本当に、本当に感謝いたしますっ!!」

 

「あーー、ハイハイ。

 ・・・・・・・・・ちょっと興奮するのは分かるけど、もうちょっと静かにしてっ!!

 これ以上大声を出すつもりなら、この部屋から叩き出すわよっ!!」

 

「すみません、鎧衣課長。

 博士も本当は嬉しいのですが、自身の論文が完成に漕ぎ着けないので、

 現在すっごく苛立っておりまして・・・。

 

 それと、もう一つ謝罪をしておきます。 それは帝国政府に届け出ずに勝手に隠密作戦を展開して

 しまいました。 本来は第四計画で培った技術テストのつもりで、単独による潜入調査を敢行

 しておりましたが、全くの偶然にもハイヴ・コアを破壊する機会に恵まれまして、つい手を出してしまった

 のです。 その為、本当に甲21号ハイヴの破壊については、予定外で行われた仕儀でした。

 

 この件については、帝国側の関係各所に影響が有りまして、その件を申し訳なく思っております。

 ですので、その様に恐縮がられると、反対にこちらの方が萎縮するしか無くて・・・・・・。」

 

「いやいやいや。 例えそれが事実でも、です。 甲21号ハイヴの陥落は我が帝国の悲願でした。

 いつか自分たちの手で攻略する事を夢見ていたのです。

 一つだけ不満があるとすれば、それを日本人の手で行えなかった事ぐらいで、それもお門違いな

 願望であることも十分承知しております。

 

 いや、何につけても、これ程嬉しい知らせは今までにありませんでした。

 本当にありがとうございます。」

 

「・・・・・・では、その報告書の次のページをご覧になって頂けますか? 鎧衣課長。」

 

「は?! 次ですか? どれ、拝見します。

 ・・・・・・・・・・・・・・・?! えっ?! あ・あの、こ・これはどう言う??」

 

「ええ。 そのままの意味です。

 今回の成果、我々第四計画の、では無く、日本帝国政府と城内省、そして政威大将軍殿下の復権に

 お使いなされた方が宜しいでしょう。」

 

「し・しかし、これほどの功績を・・・。 いや、その見返りに、そちらは何を求められるので?」

 

「おお、話が早くて助かります。 本来であれば『何も』と申し上げたいのですが、

 実はお預かりしている御剣 冥夜様の件について譲歩を頂こうかと。」

 

「・・・はっ?! ああ・いや、それは何ともデリケートな問題ですな。

 またぞや、アメリカ政府が難癖でも付けて参りましたか?」

 

「いえいえ。合衆国政府は何も動いておりませんよ。

 あくまで、第四計画の一環として、御剣 冥夜様を国連軍少尉として仕官する事を了承頂きたく。

 宜しく、お願いいたします。」

 

「・・・・・・その様に、軽々と・・・・・・。

 それについては、私の一存では何ともお答えできる問題ではありませんな。

 かなりの時間を要する事になるでしょうな。」

 

「そうですか・・・。

 ですが、かの訓練分隊は近日中に訓練校を卒業し任官予定の過程に入っております。

 帝国側の検討結果を待つ時間はありませんので、事後承諾という形で先に任官させることを

 お断りしておきます。」

 

「い・いやっ、 その様な無理難題を言われても、帝国としても・・・・・・。」

 

俺と鎧衣課長の声のトーンが段々と大きくなって行き、そして、とうとう・・・・・・。

 

「うるさぁーーい!! 静かにしろって言ってんでしょっ!!

 そんな些細なことは廊下でもやっていろぉーー!! 出てけーー!!」

 

・・・噴火した。 香月博士が。 肩で息をして、今にも暴れそうになっている。

 

俺は咄嗟に鎧衣課長を連れ立って、博士の執務室から飛び出ていた。

 

「ああ、やっぱり怒られた。 この後、機嫌取って宥めるのって手間掛かるんだよなぁーー。」

 

「それは、何ともご愁傷さま。 だが、中佐。 先ほどの件、看過できんぞっ!!

 幾ら何でも、事後承諾など以っての他だ!! 再考を検討し給えっ!!」

 

「そちらのご都合については、個人的には事情がわかる分、何とかして差し上げたいのですが、

 そもそも、博士が急に持論である『因果律量子理論』の完成を成そうとされるのには理由があるのです。」

 

「ホゥ・・・。 それはどう言う理由が有るのかね?」

 

「・・・・・・鎧衣課長。 貴方、お解りの上でその様におっしゃっておられるでしょう?

 貴方のことです。 我々第四計画の打ち切りを、オルタネイティブ計画本部が画策している事など

 既に情報を入手済みの筈。

 その事が博士の耳に入り、第四計画としての実績を急遽まとめる事になった次第でして。」

 

「ああ。その事か。 なるほど、確かに。

 しかし、妙だな。タイムリミットは来年だった筈。 違っていたか?」

 

「・・・それ、ガセですよ。 タイムリミットは今年の12月初旬。少なくとも10日までに成果が上がらない

 場合は、同月24日に正式発表と成るでしょう。 そうなってからでは遅いのです。」

 

「何とっ?! そんなバカな?! あ、い・いや、失礼。

 そうか。そんな情報が有りましたか。 しかし、どこからその様な情報が博士に齎されたのだろうか?」

 

「とある任務で私が横浜基地に侵入しまして、その後第四計画に参加した際、私の口から博士にお伝え

 しました。 ですので、ニュース・ソースは私です。」

 

「は?! ・・・・・・・・・いやいやいや、少し待ち給え。

 失礼だが、ピアース中佐? 貴官は一体どちらの関係者なのだ?」

 

「・・・・・・その事は、日本帝国にとって、それ程重要な情報でしょうか?

 

 それに、『聞けば何でも答えてもらえると、本気で思っておられる』訳ではないのでしょう?

 少なくとも防諜の、情報部に席を置くのであれば、ご自身で調査・確認されるべきでは?」

 

「くっ・・・・・・。 なるほど、確かにこれは一本取られたな。

 では、中佐の件については一旦棚上げさせて頂くとして、私とて引き下がれない案件も有る。」

 

「・・・御剣訓練兵の任官の件が、それ程帝国政府として、或いは城内省として重要な問題ですか?

 

 失礼ですが、高々一摂家の跡取り問題を、一国の、或いは全人類規模の作戦実行計画に鑑み、

 照らしあわせて語るほどの重要性を持っていると、鎧衣課長は本気でおっしゃっておられますか?」

 

「しかし、中佐っ!!

 当初、御剣訓練兵をこちらの横浜基地にお預けする際の約定と、そちらから齎された情報は、

 かなりの齟齬を含んでいるのだぞ。 それを看過するほど帝国政府や城内省は甘くないぞ!!」

 

「左様ですか。 しかしそれとて、その時の情勢によるものであり、しっかり帝国側は見返りに

 得るものは得たはずです。 状況が刻一刻と変化するのは世の常ならば、変動した分を取り返す為に

 相手側の要求が変わるのも止むを得ない事でしょう。 それに対応・回避するのであれば、

 双方がそれなりに努力しなくてはいけない事でしょう。

 どちらかがそれを怠ったのであれば、状況変化について不満を述べるのは、子供の理論と断じられても

 文句は出来ませんよね?

 

 しかし、このままでは平行線ですね。 分かりました、では、こうしましょう。

 

 所詮私達外野があれこれ申した所で、実際に任官する/しないは本人が決める所と成りましょう。

 個人の想いである「お家のため」や「お国のため」と、理由は様々ですが、それを成し纏まったのが

 集団である以上、その判断はやはり個々人の意思によって行なわれるのが筋です。

 

 そこで、当方としては、本日にでも任官前の最終的な判断を問う面談を実施しようと思います。

 本来は部外者は立ち会いませんが、今回に限り3者面談の形式を取り、当人に国連軍への任官の

 意思有りとした場合のみ、私達の方で任官させます。

 

 尚、この面談にて、当人の意志が振れたり、国連軍ではなく帝国軍或いはその他の軍でと希望した

 際は、責任を持ってそちらで引き受けて頂く、と言う事でどうでしょう?

 

 この提案が私達にできる最大限の譲歩だとお考え頂きたい。」

 

「・・・・・・むぅ・・・・・・。 しかし、3者面談方式とは・・・・・・。

 当然立会に来る3人目は、訓練兵の身内と言う事か?」

 

「まぁ、その方が望ましいのですが、彩峰訓練兵のお父君であられる彩峰閣下は、既に鬼籍に入られて

 おられます。 その為彼女の場合は、”身内に近い方”でも宜しいかと。 確か帝都守備隊でしたか?

 兄のように慕う大尉がおられるとか。 都合がつくのであれば、その大尉殿でも身内として参加を

 認めます。

 ああ、因みに、鎧衣 美琴訓練兵の場合は、当然貴方でないと困りますよ?」

 

「・・・・・・は? ああ、愚息のことか? あれは、この際どうでも・・・・・・ぅんっっ! いや、何でも無い。」

 

「・・・・・・ハハハ。 相変わらずご冗談がお上手ですな。

 それと、鎧衣訓練兵は『息子のような娘』さんでしょう? いやはや、ウィットに効いた冗談を

 このタイミングで聞けるとは。 鎧衣課長はジョークのセンスがお有りだ。」

 

お互い乾いた笑い声で笑いあった。 ここで俺は、話を切り替えて早々にこの件を終わらせようと試みた。

 

「ハハハ・・・、ハァ・・・・・・。

 できればオフレコでお願いしたいのですが、御剣訓練兵の次に厄介なのが、実は珠瀬 壬姫訓練兵の

 お父君でして。 あの御方の場合、再突入型駆逐艦で、この横浜基地に乗り込んで来られるのでは

 ないかと、戦々恐々としておりまして・・・・・・。

 国連事務次官、珠瀬 玄丞齋殿は、普段は真面目なのですが、殊更愛娘に関連する事と成ると

 暴走して困ると、ニューヨーク・国連本部でも専らの噂が・・・・・・。」

 

「・・・・・・ああ・・・・・・。 そうですなぁ・・・・・・、遣り兼ねませんなぁ、彼の場合は・・・・・・。」

 

冗談のつもりだったのだが、たまパパ 恐るべしっ!!

 

「ハァ・・・。 では、そう言う事でお願いします。 面談は本日の1300から始めようと思います。

 それまでに参加者を揃えておいて下さい。 来られない場合は申し訳ありませんが、2者面談となります。

 では、これにて失礼します。」

 

鎧衣課長も入手した情報を主筋に伝えるために、帝都城に戻るための時間は惜しいのか、それ以上の

追求はして来なかった。

 

・・・・・・にしても、ホント疲れた。

アレ? 何か違和感を覚える。 『こんなの俺のスタイルじゃないッ! 冗談じゃないぞッ!!』と誰かが

言ったような気がする・・・・・・? 誰だ? 俺の中でこんなことを言って荒れている奴は・・・・・・??

 

・・・イカンな。 疲れが溜っているのだろうか? 幻聴が聞こえるような年でもないだろうに・・・?

俺は早々に、博士の執務室に引込み、博士の仕事に付き合うことにした。

 

 

 

「・・・・・・あの男は追い返せたの?」

 

執務室に戻ると、自身の執務机に向かったまま、顔を上げずに香月博士が聞いてきた。

先ほどの癇癪は幾分かは収まった様子だ。

 

「ああ。 任官前に訓練兵に意思確認の為の3者面談を行うことを約して、引き上げさせた。

 ま、当人が国連軍に入るのが嫌だというなら、お引取り願うさ。」

 

「・・・そう。 アレだけ御剣に固執していた割には、嫌にあっさりね。」

 

「ま、こればかりは、な。

 入った後なら、組織人と成るのだから幾らでも理由づけ出来るだろうが、入る前は微妙だからな。

 ここは徴兵制等で集まる軍隊じゃないし、そう言う意味の権利も義務もない。」

 

「それで、今日の予定はどうなっているの?」

 

「ああ・・・。 この後仮眠を取って、朝一に訓練分隊の連中に任官前のスケジュールについて連絡を

 入れる。 3者面談についても本日の1300にとり行う旨を通達して、明日にでも卒業式を行う。

 A−01に合流させるのは、その後だ。

 

 その後、准将の所に挨拶回りと卒業式の件の許可、軍曹の教導部隊設立の許可をもらう。

 

 で、1000にて、A−01とのミーティング、ここで第5世代機についての仕様を公開して、教導任務に

 ついて案内する。

 

 1300にて3者面談を実施。明日の卒業メンバーを確定し、式の準備に移る。

 そんな所か。

 

 それと博士。 俺用の部屋の手配はどうなっている?」

 

「あ! すっかり忘れていたわ。 後で準備させるから、今日はこの辺りのソファで寝ていて。」

 

「それは良いが、今日の准将との面会では、C型軍装だっけ? 制服じゃないとマズイんじゃないのか?

 それとIDカードの発行もできていないから、このフロアに移動するのに霞連れじゃないと移動も

 出来ないんだが・・・・・・。」

 

「ああ、もうっ! そう言うのはもっと早くに言ってよっ! 明日、と言っても、もう今日か。

 朝に準備させるわ。その後で准将のところをお願い。」

 

「・・・・・・了解。 そっちこそ、俺に質問とか無いのか?」

 

「・・・・・・そうね。 さっきアンタが書き残した裏紙見ていたんだけれど、これってどう言う意味?

 この”クソゲー”って言葉の意味が分からないの。 でも、何となく悪口だ言うことは分かるんだけれど。」

 

そう言いつつ、俺が書いた裏紙を見せてきた博士。 そこには『クソゲーは・・・・・・・・・』が書かれていた。

 

「ああ、これか。 ”クソゲー”と言う言葉の意味は、”糞の様なつまらないゲーム”と言う事だ。

 基本が単純過ぎる条件で、通常のルールを複雑に変更しても、結局はつまらないままである、の

 意味だな。

 

 例えば・・・。そうだな、『ババ抜き』ってあるだろ? あれって隣席の奴とは1対1で、ババを相手に

 掴ませると言うゲームだよな? 参加人数が最初から5〜7人くらいなら、最後に1対1になっても

 面白いけれど、最初から2人で行っていたら物凄くつまらないよな?

 

 つまり、基本ルールが単純過ぎて、参加人数が多数でないと成立しないと言う制約があって、

 そこ以外の要素を加わえても面白く出来ない、と言う意味だな。」

 

「ふーーん。 じゃ、私の理論の中で言う”クソゲー”な部分って、結局何処が該当するの?」

 

「そうだなぁ・・・・・・。 飽くまで俺の意見だけれど、『参加者が足りないゲーム』になると思う。

  ”ババ抜きも参加者が多ければ楽しい、でも二人きりでのババ抜きは糞ほどつまらない。”

 博士の理論で足りない要素があるとすると、多分そこじゃないのかな?」

 

「・・・・・・でもそれって、参考サンプルが足りないってことじゃないの? アンタが散々”無駄なデータ”と

 呼んでいる部分がそれなんだけれど・・・。 矛盾していない?」

 

「・・・いや、サンプルは多くても良いけれど、他との関連性のないデータは役に立たないって事だよ。

 周りにギャラリーが居ても参加していないのと同じで、結局は2人きりでババ抜いていて、面白いか?

 って事だな。」

 

「・・・・・・そう。 でもそれも、余り参考にならない意見よね。

 未来情報にそれに関する物って無かったの?」

 

「・・・・・・こことは違う世界に於いて、解に辿り着いた世界は存在した。結局その解を考えたのは、

 BETAの居ない世界の『香月 夕呼』がTVゲームを参考にして考えて得た解だったと答えておこう。

 おっと、その取得情報を教えろとは言うなよ? 今居るこの世界とは前提条件が異なるから

 真似をしようとしても無駄だぜ。」

 

「そんなのやってみなきゃ分からないじゃない! 何よっ、教えなさいっ!!」

 

「・・・・・・前提条件その一、この世界も、解を得た世界に於いても、主人公は『白銀 武』君だと言う事。

 前提条件その二、その主人公に於いても、必須条件があって、そこが異なっているならば、どの様な

 細工をしても、解に辿り着くことは無理だと言う事。 訓練分隊に居る白銀君は、その条件を満たして

 いないのは、確認済だ。

 

 それでもその前提を無視して事にあたって作業をしても、途中で絶対挫折する事が判明しているので、

 やるだけ無駄だ。 それでも実行したのなら、予め予言しておいてやる。

 『00ユニットは勿論、『因果律量子理論』を用いた基礎理論の完成は行えない結果となる』と。

 

 ここの世界は、00ユニットが未完成のまま第五計画が始まって地獄と化す世界だからな。

 この基本設定は変えようがない。」

 

「・・・・・・『基礎理論だけ完成できるなら、00ユニットは放棄しても良い』と言っても?」

 

「・・・・・・そんな上辺だけの言葉に俺が乗るとでも?

 手に入れた貴重な情報を、試すなりしたくなるのが人情というものだ。

 00ユニットの完成は貴女にとっての悲願だろ? だから、どんな手段を用いてもその高みに

 辿り着ければ、後からどんな批判を受けようと関係ない。 そう思っている筈だ。 だろ?

 

 俺が裏紙にあれこれ書いたのは、BETAの居ない世界の『香月 夕呼』が言った言葉をアレンジして

 書いたんだ。 それでも、この世界の香月 夕呼は参考にならないと評じた。

 それだけでこの世界では、因果律量子理論を応用したとしても00ユニットは完成しないことが確定した。

 

 アノ脳髄をそれに使おうとしている時点で、解を出した方の『香月 夕呼』が言いたかった内容に

 貴女は気づいても良いと思うんだがなぁ・・・。」

 

「どう言う意味よ? アンタ、何が言いたいのよ?!」

 

「・・・考える人間が一緒でも、解に辿り着ける『香月 夕呼』と辿り着けない『香月 夕呼』に分かれている。

 この状況にあって、例え「因果律量子理論」を用いたとして、両者の差をどの様に埋めるのか? と

 問われているのだが、俺にもその方法はさっぱりだ。

 

 たとえ平行世界という隔たりに別れていたとしても、同じ因果を背負っているのに、思考の仕組みが

 全く異なっていると言う点をどの様に補正するのか? その差分が表すものを上げるとすると、

 恐らくそれは、”環境と経験値”の違いだろう。

 

 BETAが居ない世界の人間の社会体制をもう一度検証しなおしてみろ。

 

 手元に居る白銀 武君は、その言葉使いがこの社会の風習と微妙に異なる言い方をしているぞ。

 恐らく死んで今は此処に居ない方の白銀 武とは、外見とか癖のようなものは同じでも、基本的な

 考え方が全く異なっているのと同じだろう。

 

 そう言う意味だ。」

 

「・・・・・・・・・ッ! じゃ、その言い方だと、解を知っている『香月 夕呼』に聞きに行けと行っている様に

 聞こえるけれど、合っている?」

 

「・・・半分だけ正解。 どこの『香月 夕呼』に聞きに行くつもりだ?」

 

「だから、解を知って「それはどの世界の事を言っている?」いるーー、 そ・そうか。

 任意の世界に世界線を変更する設定には、任意の世界を示すサンプルが必須。

 それに指針を合わせる必要があった・・・。 クッ、あと少しなのに、どうしてっ・・・・・・!」

 

「仮に、本当に仮にだが、此処に居る白銀 武君を元いた世界に送り届け、そこに目的とする”解”が

 あったとして、その”解”を貴女が入手できて、基礎理論から00ユニットが完成したとしても、

 00ユニットの調律は誰が行うんだ?

 

 俺の推測通りなら、アノ脳髄は、彼女の名前は『鑑 純夏』では無かったか?」

 

「・・・・・・そうよ。 社のリーディングを通じて、彼女の氏名は確認していたわ。」

 

「なら、彼女と白銀君との関係も知っているな? 幼なじみであり異性として親しかったこと。

 それは恋人同士と言って過言じゃない関係だったことも知っていて、彼を手元に置いた。

 そうだな?」

 

「そうよ。 白銀に00ユニットの調律をさせようと考えたわよ。」

 

「・・・それ、失敗するぞ。 今の白銀君には、覚悟も何も揃っていない。 右から左に流される事を

 良しとしているアノ子ではな。 利用できる駒の一つにしか考えていない貴女では、そう言う配慮が

 欠けている。 俺が無理だと言い、やっても無駄と評じたのは、それが原因だからだ。」

 

「・・・・・・アンタ何処まで知っているのよ。 私の何が足りないっていうのよっ!!」

 

「失敗する道筋を語ってやろう・・・・・・。

 

 ある日、適当な理由を付けて、白銀君を此処に呼び出し、外見が『鑑 純夏』の00ユニットが登場する。

 しかし00ユニットは、白銀君が知っている彼女ではなく、全くの別人であり、且つ、心が壊れている状態だ。

 そこから回復させるために白銀君が調律を始める事になった。

 

 調律を始めて、多少の状況の変化はあるかも知れないが、最終的には鑑 純夏は心が壊れたままの

 状態となる。 それは、白銀君には最初から荷が重すぎたからだ。

 たとえ幼なじみの恋人でも、心の壊れた人間じゃない別の何かだと、彼の認識が変わる。

 とてもじゃないが、00ユニット=鑑 純夏と思わなくなり、結果、心の離れた白銀君は、基地に居る

 別の娘、多分同期の誰かだろうが、その娘と付き合い出す。

 そこで、白銀・鑑両人の関係は終わるだろう。

 

 そして、00ユニットはその機能の関係上、白銀君の心離れを感じ取ってしまい、自身の心を閉ざす。

 勿論ユニット自体のアクセスも行えない。計画は頓挫する。

 

 暫くして、鑑の脳髄はそのままだが、インターフェースをロボットのように仕組みに変更して、再調整を

 行い、00ユニットとして再起動するが、当初設定した様な能力は出せない結果に終わる。

 

 反対にODLをメンテナンスに使用している関係上、含有されているグレイ6を用いられて、甲22号

 ハイヴ・コアにログ情報を引き出される。 その情報はそのまま甲1号のあ号目標に伝わり、人類側の

 情報が00ユニットを通じて漏れていることになる。

 その事に気づいた時には、BETAからの侵略が本格化して、全人類は全滅する。

 

 貴女のプランがBETAに利用される、と言うシナリオだ。」

 

「そ・そんなの嘘よっ!! アンタ、私を貶めて楽しいの?!

 大体そんなシナリオ通りに進むわけが無いじゃないっ!!」

 

「まぁ、百歩譲ったとして、先程述べた中のシリンダー内にあるODL対策はどうするんだ?

 

 アレを利用して00ユニットのメンテナンスを行うつもりだったのは分かっている。

 

 しかし、前にも言ったようにグレイ6を通じてハイヴ・コアにその情報は蓄積される。

 あ号目標と各ハイヴ・コアは親子関係にある。故に甲22号ハイヴの情報はそのまま あ号目標に

 筒抜けになるのは目に見えている。 結局、あ号目標をどうにかしないと、何も変わりはしない。

 

 この世界を本当に救いたいなら、因果律量子理論や00ユニットに頼らない方法で打開するしか無い。」

 

「クッ・・・! 気分が悪いっ! もう寝るっ!!」

 

そう言いつつ、香月博士は執務室奥の控室の方に入っていった。

この部屋は、博士の私室と言っても良い部屋だ。 仮眠用のベッドの他生活に必要な居住用設備が

整っていると、霞に聞いたことがあった。

 

俺は散らばっている論文を適当に片し、ソファの近くに腰を下ろして、仮眠に入った。

 

「(・・・やれやれ。 こりゃ、”交渉決裂”となるかもな。

 ま、最悪のパターンとして、俺だけでもハイヴ・コアを迎撃できるように単独行動を視野に入れていた

 方が良いか・・・・・・。

 

 ま、そもそも、本来のエイデン・ピアースは一匹狼。 群れて何かするタイプじゃないな。

 協力者は必要としているが、家族や協力者以外の人間には容赦無かったしなぁ・・・。)」

 

 

 

今日の所は俺も疲れたので、このままソファ近くで仮眠を取ることにした。

徐ろに目を閉じ、ウトウトとしだした頃、最近その鳴りを潜めていた守護天使が声をかけてきた。

 

<随分とお疲れじゃない。 大丈夫?>

 

「(・・・ああ、アテナか。 久しぶりのような気がするな。 どうかしたか?)」

 

<特にこれと言う訳では無いんだけれど、さっき幻聴が聞こえていたわよね?>

 

「(幻聴・・・? ああ、アレはそう言う類のものか。 確かに聞こえたな。

 何だったんだ、アレは?)」

 

<ま、言ってみれば、『エイデン・ピアースの魂』ってところかな?

 余りにも原作のキャラと異なったり、馴れない仕事をしていると、偶に出てくる現象よ。

 

「(現象って・・・(汗)。 何か幽霊の一種に聞こえるぞ。 俺はオカルトは苦手なビビリ君なんだぜ?)」

 

<うん、知っている。

 ま、危害を加えたり能力が下がるということもないけれど、メンタル部分に少々の負荷が掛かるから

 慣れるまではちょっと鬱とおしいと思うから・・・・・・。

 

 あとね・・・・・・。

 

「(何だ? 何かあるのか?)」

 

<予言・・・、じゃ無くて警告をしておきましょう。>

 

「(警告? おい、何を言っているんだ?)」

 

<気付いていないなら自分で考えなさい。 兎に角、警告よ。 守護天使だから警告したわよ。>

 

 

 

「おいっ!! 何だよ、警告ってっ!!」

 

ガバッと勢い良く起きたが、そこには誰も居なかった。

改めて周りを見渡してみると、相変わらず香月博士の執務室のソファ近くに寝転がっている状態だった。

 

疲れているので、もう少し寝たいのだが、先ほどのアテナの言葉が気になって、眠気が吹っ飛んだ。

それに、途中で何か口調も微妙に変わっていた気がする。 ・・・気のせいか。

 

それよりも、”警告”とは何だろう? 俺が気づいていない事? それを気づかせようとしての”警告”か?

 

「(何が言いたかったんだ? 気づいていない事・・・。 何だ? 何か見落としている?

 これからの予定の事か? それとも今までの行動の中で、何か失敗しているとか?)

 

 へっ・・・、香月博士のことを色々言ったが、結局オレも”同じ穴の狢”だったと言う事か・・・。」

 

博士のことは博士に任せるしか無いが、同じく、俺の事は俺でしか解決できない。

今までの行動の中で、どう言う行動を行っていたのか、改めて思い直す事にした。

 

「(・・・心当たりがあるとすると、やっぱりチート攻撃位しか思いつかないな。

 横浜基地襲撃とか、移動中の自己クエストにしても、元からあるWD的な行動の範疇だし、

 そうなると、BETAさん達を迎撃していた時の何か、か・・・・・・。)」

 

どのくらい時間が経過したかは余り意識していなかったが、俺が背もたれに使っているソファの上で、

モゾモゾと動くモノがいた。

 

その少女は眠たそうな目を擦りつつ、その顔をこちらに向けてきた。

たまたまだったが、俺の顔と近いことも有り、暫く見つめ合っていたのだが、徐ろに頭をコテンと下げたので、

こちらも挨拶代わりに頭を下げ挨拶を交わした。

 

「「・・・・・・おはよう(ごじゃいまふ)・・・。」」

 

美少女と間抜けた挨拶をしたので、現時刻を確認すると、大凡5時30分を回ったところだった。

 

「・・・・・・霞・・・。 何時もこんなに早くに起床するのか? もう少し寝ていても良いと思うぞ。」

 

そう言い、暫く寝ているように促したのだが、彼女は首を左右に振って答えてくれた。

 

「・・・・・・いいえ。 そろそろ白銀さんを起こしに行かないと・・・・・・。」

 

「えっ?! 白銀君は、何時も点呼前に、霞に起こしてもらっていたのか?」

 

そう言えば、ゲームの中でもその様なシーンがあった事を思い出した。

美少女に起こしてもらうなんて、何とも羨ましい。 ちょっと、殺意が湧いたゾ!

 

「・・・・・・そうか。

 では俺も付きあおう。 いや、207b訓練分隊に連絡しないといけない事項があるから、そのついでだ。」

 

そう言い、俺達は身支度を整え、白銀君達の部屋のある、地下4階に向かうのだった。

 

 

地下19階から地下4階に上がってきた俺達は、エレベーターを下りて白銀君の部屋を目指して歩いている。

 

霞はもう確りと目覚めたようで、その足運びもしっかりと、歩いている。

 

ここまで無言で歩いているのだが、何か話題はないかと考えていると、先ほどのアテナの警告にあった

事柄を、真相を伝えないで聞いてみることにした。

 

「・・・・・・なぁ、霞。 ちょっと相談に乗って欲しいんだが良いかな?

 今朝方、ちょっと変な夢を見て目覚めたんだが、その中で見たことについて、理由とか無いけれど

 「それは変だ」と分かる内容だったんだ。

 でも、今何が不自然だったのかよく分からなくて、今も悶々としていて俺自身も気持ち悪い。

 

 そこで、霞が分かる範囲で良いから、原因となる事象について心当たりがあったら、教えては

 くれないだろうか?」

 

勿論霞は俺の申し出に協力してくれたので、光速弾を使った攻撃をして、BETAさん達を迎撃した件を

相談してみた。 すると彼女からの解答は・・・・・・。

 

「・・・その様な攻撃は確かに変です。

 

 光速弾を使えたとして、その様に攻撃すると周りの環境に影響が出ます。

 そもそも、光は1秒間に地球を7周半できると言われています。その様な攻撃を行えたとしたら、

 衝撃波や攻撃した時の音が発生しますが、先のお話の中では、その現象が多数発生したという

 風に聞いていません。

 

 また、物質を光速に近い速度でぶつけると、単純に核分裂効果や、分子崩壊現象等が観測されます。

 しかし、それに伴う現象もお話の描写の中にありませんでした。

 

 その為、起こりえないものを見て、それは夢であると判断したピアースさんは正しいと思います。」

 

「(・・・やはり、アノ攻撃自体が俺の思い込みによる産物の具現化と言う事だな。)

 ・・・・・・そうか。 ありがとう、霞。 だいぶ気分的に楽になったよ。」

 

そう言いつつ、霞の目的地、白銀君の自室に到着し、彼を起こしにかかる霞。

点呼の15分前だが、白銀君は中々起きないらしい。 少し確かめたいことも有り、俺は霞と交代した。

 

「・・・霞。 交代しよう。

 本来、兄弟姉妹でも、ましてや恋人でも、この様な起こし方はしないので、君は決して真似しては

 いけないよ。」

 

そう言ってから、俺は目の前に寝たままの白銀君の掛け毛布を引っぺがし、寝巻き宜しくシャツを

捲り腹部、特に腹の「6パック」と呼称される部分に手のひらを当てて、瓦割りの要領で掌底を落とした。

ここで、鍛えられている6パックの腹ならば、確かな手応えを感じることも出来ただろうが、現在の白銀君の

お腹は、想像以上にヤワかった。

 

「・・・グッぇーー、 ゲホゲホッ!!

 ったぁーーー?! な・・・何が・・・・・・??」

 

「・・・・・・おはよう、白銀訓練兵。 起床10分前だ。 そろそろ起きなさい。」

 

「なぁっ・・・?! ア・アンタはッ」

 

「・・・・・・それと、恋人でもないのに、毎朝霞に起こしてもらうとは、キサマは一体何様のつもりだ?!

 この事を軍曹は知っているのか?」

 

白銀訓練兵はベッドから転げ落ち、アタフタしている。

俺は彼に構っている暇はないので、霞を連れ立って廊下に出た。 すると、廊下の反対方向に神宮司

軍曹がコチラに向かってくるのが見えたので、手招きして軍曹を呼んだ。

 

「ーー・・・軍曹、 少し良いかな?」

 

「・・・・・・? ハッ!! 少々お待ちを。 ・・・・・・何でしょうか? ピアース中佐。」

 

「ああ。 朝早くから済まない。 昨日の件について、本日少々予定が変更された。

 朝の点呼の後、第207b訓練分隊の皆にその趣旨の連絡を行おうと思う。

 で、君の仕事が終わったら、皆を此処に連れてきて欲しいのだ。 頼めるか?」

 

「ハッ、 畏まりました。 サーッ!!」

 

そう言いつつ、軍曹は白銀君の部屋から点呼を始めた。

霞はその様子を見ていたが、博士の執務室に戻ろうとしたので、俺はそれを引き止めた。

 

「霞、済まない。 特に博士からの急ぎの仕事などが無ければ、もう少し俺に付き合って欲しい。

 今の俺には、基地内の正規パスがまだ発行されていないし、何より内部構造に不慣れだから

 簡単に迷子になりやすい。 その為、俺の付き添いを頼まれてくれないか?」

 

そうお願いしたら、黙って付き合ってくれた。 ホンマにええ娘や。 俺は霞に感謝した。

 

暫くすると、神宮司軍曹は点呼を終え、207b訓練分隊の皆を引き連れて来てくれた。

相変わらず白銀君は俺のことを睨んでいる。 他の美少女たちは、昨日シミュレータ総評を行った

俺を覚えていたためか、少々怪訝そうに大人しかった。

 

神宮司軍曹が207b訓練分隊を並ばせて、俺に集合報告を行った。

 

「中佐、お待たせ致しましたっ!! 第207b訓練分隊、揃いましたっ!!」

 

一同は、軍曹が俺のことを中佐と呼んだので、一瞬表情を強ばらせた。

 

「・・・・・・軍曹ご苦労。 皆、楽にして良い。

 昨日は遅くまでシミュレーション訓練、ご苦労だった。 あの時自己紹介し忘れていたので、

 改めて諸君に名乗っておこうと思う。

 

 私の氏名は、エイデン・ピアースと言う。 国籍はアメリカ合衆国で、出身地はイリノイ州のシカゴだ。

 昨日夕方にいきなり現れた不審人物だったが、この度正式に国連軍横浜基地所属となった。

 先に軍曹が言ったように、階級は中佐だ。 役職は香月副司令直属の特殊部隊隊長を務める。」

 

俺の自己紹介で、皆がすっかり緊張してしまう。 あーー、フランクに話したいので、ちょっと小話でも

入れようか・・・・・・。

 

「特殊部隊隊長・・・とは言え、今の所、特にする事もないので、現状博士の使い走りに使われることが

 多いんだ。 ご覧の通り、C型軍装も支給されていないし、基地内の身分IDカードもまだ貰っていない。

 その為、この娘がいないと基地内を自由に闊歩することも出来ないという、体たらく。

 その様な扱いを受けているので、諸君らはそう固くならんで宜しい、と思うよ。」

 

俺は横に居る霞の頭を撫でつつ、その様に話を続けた。

訓練分隊の皆は、少々腑に落ちない顔をしていたが、幾分空気が和らいだ気がした。

 

「・・・なので、諸君らには伝達事項を伝えておこうと思う。

 そんなに大したことじゃないので、気を楽に聞いていて欲しい。

 

 諸君らの訓練カリキュラムは、従来のそれとは異なり、訓練繰り上げを行い時間短縮を図ることに

 成った。

 その為、昨日夜に、急遽、戦術機適性検査を実施することとなった訳だが、諸君らは見事この適性

 検査に合格したため、次なるステップに進むことが決定した。

 

 しかしここで、そのカリキュラムに入る前に、諸君らの任官についての意識調査を実施する事が

 必要と成り、急遽本日1300に於いて、将来の任官先を国連軍にするか否かについて、面談を

 とり行うこととなった。」

 

此処で一旦言葉を区切り、目の前に並んでいる少年少女を見てみると、ここまでは理解している様に見えた。

俺はそのまま説明を続けた。

 

「参加者は諸君らと現在仕事が比較的に暇な私。

 それと、諸君らのご家族の方との3者面談方式で執り行う。

 

 尚、急な呼びかけであるため、お家の方が来られないことも考えられ、その場合は2者面談となる事を

 予め断っておこうと思う。

 

 まぁ、将来国連軍士官となる事を目指している訓練兵もいれば、何らかの事情で日本帝国軍や

 ひょっとしたら、日本帝国城内省直属斯衛軍に進みたいという野望を持っている訓練兵も居るかも

 知れない。

 いや、本人の希望であれば、私達国連軍はその希望を尊重する事は言うまでもないので、その様に

 精進してくれて一向に構わない。 それは諸君らの自由であると述べておく。」

 

此処の説明で、日本帝国軍とか斯衛軍とかの単語を聞いて、一瞬身を竦ませるのが数名いた。

ま、此処も想定した通りなので、スルーする。

 

「ただ、諸君らのこの先進むカリキュラムというのが特殊な仕様のものであり、多分国連軍でも、

 この横浜基地以外では実施していない特殊性を帯びた内容となるので、早期に任官を果たさせ

 軍の中で進める必要があるという判断が成されたので、今回のような仕儀となった。

 

 ああ、そんなに身構えることは無いぞ。 諸君らだけではなく、先に任官した元207a訓練分隊や

 その他大勢の先任士官も含まれる大所帯となるからな。

 また訓練量が全く足りない諸君らは専らそれら先任士官から、直接指導を受けることになるだろう。

 

 なので、任官できたとしても、当面は訓練兵よろしく下っ端の扱いだ。

 

 だが、諸君らには此処で考えてもらわねばならない。 いくら下っ端とはいえ、曲がりなりにも

 下士官である『少尉』に成るという言葉の意味を。

 

 昨日も別の部隊に挨拶に行った時に、同じようなことを述べたのだが、訓練兵にとって任官する事が

 ゴールではない、と言う事だ。 その先にも仕事が有るという事を忘れてはいけない。

 ましてや我々軍人の仕事とは、自身の命をかけて事を成さねばならない事が多い。

 そしてその場は様々だが、恐らくは戦場が多いはずだ。

 

 当然、諸君らは戦場に出た経験は未だ無い。だが、戦う者が戦場で気を抜けば、その兵士は死ぬ。

 間違いなくな。 そして、周りにいる兵士にも、そのとばっちりが回ってくる。これも間違いがない事実だ。

 訓練兵はそうならないように、最低限度の鍛錬を積むことが当面の仕事だ。

 だから、任官できたからと言って気を抜いてはいけない、と言うことを肝に銘じておいて欲しい。

 

 本日の3者面談は主にそう言う覚悟を確認する事も含まれる。 1300からスタートするが、それまでに

 各自で答えを見出しておいて欲しい。

 

 では、些か時間が押してしまったが、面談までは自習とする。 各自で思い思いの訓練に励め。

 また、面談における心構えについても、同時に考えるんだぞ?

 訓練だけしていれば良いということでは無いからな。 それと怪我とかもしない程度にしておけよ。

 怪我で面談受けれませんでした、とか言い訳は聞かないからな。 そう言う不届き者は、私が責任を

 持って国連軍から追い出してやる(黒笑)。

 

 では軍曹、号令を頼む。」

 

「ハッ、 第207b訓練分隊、姿勢直せ。 休ぅ〜目、 ・・・・・・気を、付けっ!!

 全員、ピアース中佐殿に対して敬礼っ!」

 

いくら訓練兵とは言え、任官間近の彼らでも敬礼くらいは正しくできていた。

あの白銀君でさえ、ちゃんと出来ていたと言っておく。

 

俺は答礼を返すと、霞を連れて博士の執務室に向けて移動した。

 

 

 

「・・・エイデン・ピアース中佐?!」

 

「・・・はい? 貴女は?」

 

「ハッ、私は香月博士の秘書を努めております、イリーナ・ピアティフ中尉と申します。

 香月博士より、ピアース中佐のIDカードと制服一式をお届けに上がりました。

 あと、中佐の士官向け個室についても案内を仰せつかっております。」

 

「ああ、ありがとう。 これで着たきり雀から脱却できる。」

 

俺はピアティフ中尉から制服一式とIDカードを受け取った。

個室についても、同じ地下4階にあったので、部屋まで案内してもらった。

 

「個室内の物品はお好きにお使い下さい、との事です。 何か足りないものとか有りましたら、

 お渡ししましたIDカードでPXにて買い物を行うことが出来ますので、そちらでお求め下さい。

 

 他、何かご質問は有りますでしょうか?」

 

「・・・いや、部屋については無いが、それよりも基地司令に着任の挨拶に伺わなければいけないのだが、

 ラダビノッド基地司令は、執務室だろうか? それとも、基地中央司令室におられるのか?」

 

「ラダビノッド准将は、0600には基地中央司令室にて状況確認後、准将の執務室にてお仕事をされて

 いらっしゃいます。 今のこの時間ですと、まだ中央司令室にいらっしゃるかと思います。」

 

「そうか、ありがとう。 それと香月博士からご挨拶については、何か言伝等預かっているか?」

 

「はい。 中佐の身支度が整われましたら、一旦博士の執務室にいらっしゃって欲しいとの事です。」

 

「分かった。 色々と済まなかったな、ピアティフ中尉。」

 

「ハッ、ありがとうございます。 それでは私はこれにて失礼します。」

 

俺は部屋のあちこちを見まわってから、当面必要なもので足りないものを探しつつ、目星がついたので

霞を連れて朝食に出かけようとPXに誘ったら、霞はやる事があるらしく一足先に執務室に戻ると言った。

 

霞の自由を奪うのも申し訳なかったので、俺達は部屋の前で別れ、俺はPXで買い物を済ませ、

自室にてシャワーを浴び、身支度を整えて博士の執務室に向かった。

 

博士は開口一番「遅い」と文句を言い、続いて「馬子(まご)にも衣装」と評価してくれた。

 

俺は博士に連れられて、基地司令部にラダビノッド准将を尋ねた。

挨拶の後、司令部付き教導部隊の設立申請を行ったら、その場でスンナリ、基地司令のサインを貰った。

そして、明日予定している訓練校の卒業式出席を依頼すると、本日でも良いと言われた。

俺は準備に時間が欲しいと返答すると、明日1500から卒業式を実施する事が、准将の一言で決定した。

 

基地司令部を去る際に、准将から「第四計画を宜しく頼む」と言われ、握手をした際に言われたので、

「微力を尽くします」と握り返しておいた。

 

基地司令部を出た後、香月博士から”微力じゃなくて全力で返せ”と文句を言われたが、ああ言う

場面では”微力”と答える返事が礼儀だと答えると、ちょっと不思議そうな顔をしていた。

 

執務室に戻ってきた俺達は、早速昨日深夜の確執について、両者のすり合わせを始めることにした。

 

「・・・香月博士。

 取り敢えず12月2日までで良いので、因果律量子理論の研究はストップして貰えないだろうか?」

 

「・・・・・・休戦協定と言うわけ?

 私が嫌だと言ったら、アンタはどうするつもりなの?」

 

「その時は・・・・・・、何もかもおっぽり出して、俺単独で行動する。

 宇宙については対応できないだろうが、先に地球のハイヴ・コアを全部潰して、月からの援軍が

 来ない内に宇宙軍事施設をもつ基地からシャトルを強奪してでも、月を目指しハイヴを潰して回る。

 ま、ハイヴ・ユニットの排除は行えないだろうが、コアさえ潰せばBETAさん達はエネルギー供給が

 出来ないので、その分、人類に勝ち目があるだろう。」

 

「他の国やアメリカ合衆国政府に取り込まれたりするの?」

 

「いいや。 俺の願いは単純だ。 本当にBETA共をどうにかしたいだけだから、それ以外は何も

 考えていない。 まぁ、 風呂とか、食事とか、ベッドとか、それらの補給が受けれないのは残念

 だけれどな。」

 

「・・・・・・・・・分かったわ。 じゃ、12月2日を過ぎたら、その後はどうするの?」

 

「そうだな、決行を早めるとかでも良いし、24日まで雲隠れするとかでも良い。

 そこは深く考えていないから、後は博士の好きにすれば良い。 どうせ、前日の1日で国連総会で

 第四計画は店じまい報告するから、実質2日は後片付けとなるだけだろうし。」

 

「・・・・・・お気楽ね。 もし仮に第六計画とか発動したら、成果など全てそちらに集約されるけど、

 24日の作戦決行に支障が出ないかしら?」

 

「そうだな。 まぁそこは、12月1日の作戦に関する報告の際に何とでも述べて、その優先を宣言しておけば

 他の派閥から待ったは掛からんだろう。 まぁ、掛かったとしても無視して決行するけどな。」

 

「強引ね。 分かったわ。 来月2日までは、アンタのスケジュールに合わせてあげるわ。

 私もゆっくり研究したいし、変にリミットが掛かる分負担が大きいから、そういうの嫌だしね。」

 

「助かるよ、香月博士。

 それで、話は一旦変わるのだが、ちょっと相談したいことがあるんだ。1300の面談が終わった後、

 遅めの昼食を一緒にしてもらえないだろうか?」

 

「あら、改まって何かしら? ひょっとして、別の問題でも?」

 

「ああ、多分・・・。 俺も気づいていなかったんだが、俺の能力について、修正が必要かも知れない。」

 

「・・・・・・そう。 それは本当に深刻そうね。 分かったわ。1500には予定を明けておいてあげる。

 社も必要なの?」

 

「ああ。できれば霞にも居て欲しい。」

 

その後、最終的な打ち合わせを終えて、俺は一旦自室に戻ることにした。

 

 

 

俺は自室に戻ると、部屋に備え付けのPCを使って、簡単にレジュメを作成し、続いてA−01の伊隅大尉を

内線で呼び出し、1000のミーティングの場所を聞き出した。

 

PCから必要書類をプリントアウトし、リーフレットに挟んでミーティング室を目指した。

ミーティング10分前に到着し、会場に入ると既に伊隅ヴァルキリー中隊は揃っており、着席していたが

俺が入室するなり一斉に起立し、敬礼を行った。 俺はそれに答礼を返した。

 

「では、これよりA−01連隊のミーティングを始める。全員着席。」

 

各員が着席するのを待ち、俺は壇上に上がる。

全員が座ったところを見て、俺は開口一番連絡事項を伝えることにした。

 

「・・・・・・先に、通達事項を申し渡しておく。 近日中にこの第9中隊に補充が合流する。

 人数については調整中なので現状では通達できないが、その補充兵と共に、とある任務に向けて

 諸君らは訓練を開始する。

 

 尚、補充されるのは新人の半人前だ。 戦術機適性はそこそこにあるが、正規の訓練が終了していない

 事も有り、実力が不足している。 その点を貴様等先任が面倒を見てやれ。 これは命令である。」

 

途端にざわざわと声が出て、質問などが出そうになっている、構わずに進めることにした。

 

「続いて、涼宮 遙中尉! 居るか?」

 

「ハッ!」

 

「確か中尉は第9中隊のCP(コマンドポストオフィサー)だったな?

 中尉は隊の運用に必要な書類の作成には長けているか?」

 

「ハッ、

 中隊全体の運用の為の書類作成は勿論、大隊・連隊規模まで一通り作成できますッ! サーッ!」

 

「結構だ。 では、中尉には専任の新人を任せる。

 その新人を連隊運用に必要な書類作成の為の手順を、一から徹底的に叩き込んで鍛えぬけ。

 指導方法は任せる。 『書類はお友達』状態にしてやるんだ。」

 

「ハッ! サーッ、イエッサーッ!!」

 

「通達事項は以上とする。

 では、昨日に引き続き、今後のA−01連隊としての運用について、貴様達に申し渡す件について、

 話を始める。

 

 昨日私から言われた事について、一晩経ったわけだが、何か思う所のあった者、或いは反論したい

 と言うアホは居るか?」

 

全体的に見回してみて、涼宮中尉以外は苦虫を潰したような、面白くないと言う雰囲気を出している。

その中から一人挙手をする者が居た。 伊隅大尉だった。

 

「伊隅大尉、発言を許可する。」

 

「ハッ、ありがとうございます。 サーッ!

 昨日の中佐からのご指摘につきまして、私なりに反省と部隊の今後を愚考致しました。

 

 まず、反省点と致しましては、やはり新人教育に於いての認識を、最初から厳しくあたらなかった事に

 おける点を猛省致しました。

 

 中佐からのご指摘はご尤もであり、軍隊における上官からの命令は絶対順守するという鉄則こそ

 最初に叩きこむべきことで・・・「ああ、もう良い。 私が言いたかった事はそう言う事じゃ無い。」・・・

 

 は?! ちゅ・中佐、 今何と?!」

 

「伊隅大尉。 貴様は相変わらず完璧主義というか、頭が硬い。

 あの時、お前達と対面した時に私が感じたのは、私を値踏みするかのような視線を感じたことに対して、

 お前達から舐めた態度を感じ取ったからだ。」

 

俺の言葉に対して、伊隅大尉は信じられないような顔をした。 だが、それ以外の中隊の中に居る

最低でも3名の人間は、ピクリと反応したのを感じた。

 

「伊隅大尉。 貴様ならわかると思うが、貴様が担当する隊に於いて、部下が最初から貴様を舐めていた

 としたら、その隊のコントロールを行う手段として、何を成すか答えてみろ。」

 

「・・・ハッ、 私の場合は、自らの力を誇示して、実力的に上位であることを示します。 サーッ!」

 

「・・・・・・まぁ、ある意味正解だ。

 ああ、それと、返事に一々『サー』は付けなくても良い。 昨日そう言ったのは、あの時点で私を値踏み

 していたのが分かったからだ。 お固いアメリカ人士官を演じて見せていただけだから、本来の

 私への返事は普通で良い。

 

 で、だ。 私を値踏みした愚か者についてだが、私は3名いると思っている。

 私が昨日指摘して返事させた2人と、もう1人 宗像中尉、貴様だ。」

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

図星だったらしく、押し黙る3名。 俺はそのまま続けた。

 

「・・・何故その様な事をしたのか、問いただす事はできるが、それは余り意味がないと思っている。

 

 多分、皆が90番格納庫に到着する前に、私についての噂が基地内にて流れており、それを聞いた

 人間が警戒をしたとしても、私は不思議に思わないからだ。

 

 個人的には情報を早急に仕入れ、事態に対応することは優れた兵士ならやって当然だと思っている。

 だが、A−01に於いての香月博士は、絶対の存在。

 その博士からの指令には”No”は無い。絶対”Yes”で返さねばいけない存在なのに、先の3名と

 諸君らはそれをしなかった。

 

 私が述べている”それ”とは、博士が直々に私を皆に紹介した時点で、流布されている噂などに疑問を

 挟む余地は無いと断じる事ができなければ、その者はA−01に在籍する意味がない。

 その意味において、先の3名と諸君らは、私に疑念を抱き間接的に博士を否定し、侮辱していたのだ。

 

 私が言いたかったのはそう言う事だ。 理解したか、大尉?」

 

「ハッ、 中佐のおっしゃった内容について、理解致しました。

 そして、部下が大変失礼なことをしました。 私が中隊の管理を怠ったばかりに、中佐に不愉快な

 想いをさせてしまい、合わせて謝罪申し上げます。」

 

「・・・・・・いや、それは違うと思うぞ。

 伊隅大尉の中隊管理が疎かだったとか言う問題ではない。 どちらかと言うと中隊個々人の

 意識の持ち方が緩んでいるというレベルの問題だ。 昔風に言うならば、『士道不覚悟』と言う事だ。

 この中隊が、日の有名な”新選組”だったなら、先の3名は隊規違反で切腹モノだろうな。」

 

俺がそう言うと、ヴァルキリー中隊の面々はゾッとしない表情をした。 今どき切腹って・・・。

俺もちょっと想像すると、嫌になってきた。 女性が自分で腹を切る・・・・・・シュールだ。 鬱だ。

 

「・・・・・・ま、それでも気が済まないと言うのなら、30分だけだが模擬戦でもして憂さを晴らすか?

 但し、単に戦うのもつまらんので賭けをしよう、例によってな。 真逆逃げたりはしないだろうな、

 伊隅大尉?」

 

「えっ?! 賭け・・・ですか? 中佐と・・・? 何やら嫌な予感がするのですが・・・・・・。」

 

「まぁ、概ね正解だ。 その賭けに負けたら、12月1日まで涼宮中尉を除くヴァルキリー中隊全員を

 『少尉』に降格させる。 流石に衛士徽章は取り上げられないが、入ってくる新人同様同じ

 階級と成って任務に励んでもらおう。 ついでに、期間中の衛士強化装備のスキンの色は

 肌色を指定する。 まぁ、訓練兵と同じ扱いと成る訳だ。」

 

「そ・そんな、横暴ですっ 中佐っ!!」

 

「では、私に勝つしか無いな。 それと、勝負の種目はそちらに譲ろう。

 ついでだから、落とし前をつけるという意味も兼ねて、例の3名に勝負させればよいだろう。」

 

このタイミングで話を聞いていた速瀬中尉が会話に入ってきた。

 

「中佐・・・・・・。 種目は何でも宜しいので?」

 

「ああ、良いぞ。」

 

「では、戦術機部隊なので、戦術機格闘戦にて決着を着けさせて下さい!」

 

「・・・・・・ほぅ。 それで私に勝つつもりか? 笑止だな。 だが、良いだろう。 受けて立つ。」

 

「では、早速シミュレーション室に予約を取ります。」

 

やれやれ、結局はシミュレーションか・・・。 結局誰も傷つかない安易な方法での決着か。

少々物足りなさを感じてしまうのは、俺が変なのか、それとも速瀬達が”戦闘”を”格闘スポーツ”に

置き換えているのだろうか? 俺は疑問を感じつつも、この場を一旦解散させ、1100から

シミュレーション室にて決着をつけることにした。

 

 

 

俺の守護天使特典能力に「何でも思い通りに乗りこなす」能力があるので、初めて乗ったものでも

思い通りの動かし方が行える。 それが乗り物を模した物でなくても、例外なく同じ効果が行えるので、

シミュレーションとて同じだった。

 

それで、何を言っているかというと、1100にてシミュレーションを開始して、1110に決着が付いた。

 

描写が面倒だったので省略したが、要はそう言う事だ。 俺の圧勝。 しかも、思う通りに動かした

ので、実機での動作実証はデタラメという概要だった。

 

敢えてピンポイントで解説するならば、動作硬直時間が殆ど無いアクションで、プロレスの空中殺法を

繰り広げてのKO勝ち。 うん。こんな内容、実機で実現は俺以外は不可能だ。

 

これを見ていた者も、対戦していた者も口を揃えていったのは「中佐がイカサマをした」だった。

チートだと言われるのならある程度納得できるが、イカサマ呼ばわりは納得がいかなかった

(作者の声:『いやいやいや、それを人は「チート」と呼ぶんだってばよ』)。

 

しかも、俺が一番最後に筐体に入ってから起動したのに、イカサマできる時間なんか無いツーの!

 

「・・・・・・いい加減にしろッ、貴様等!!

 確たる証拠もないのに、人をイカサマ呼ばわりとは良い度胸だ!

 

 良いだろう。 この後A−01の今後の運用について話すつもりだったが、決着が着くまで棚上げだ!

 そこまで言うのなら、明日、補充要員を連れてきた後で、実機にて実戦訓練を着けてやる。

 明日1800にて戦術機第三演習場で、ヴァルキリー中隊全機で実機訓練をする。

 

 逃げるなよ! ギッタギタにしてやるっ!!」

 

この後もスケジュールが詰まっていることも有り、俺はシミュレーター室を後にした。

 

 

 

Side : 涼宮 遥

 

何か突然やって来た、A−01連隊の連隊長である、ピアース中佐と名乗る人物が怒って

シミュレーター室を出て行った。

 

私も制御室でシミュレーター内容を見ていたが、戦術機にあの様な動きができるのかと不思議に思い、

それを確かめようと思って、今操作ログをプリントアウト中だった。

 

「涼宮、操作ログをプリントアウトしてくれないか?」

 

そう声をかけてきたのは、第09中隊長の伊隅大尉。 私達の中隊の隊長だ。

 

「はい。 今出力しています。

 あの、伊隅大尉。 中佐、怒られておいででしたが、明日、大丈夫でしょうか?」

 

「・・・・・・分からん。 ハッキリ言って、あの人との”賭け”は要注意なんだ。」

 

「・・・? と、言いますと?」

 

そこで改めて聞いたのは、伊隅大尉と神宮司軍曹、香月博士が立ち会ったという拳銃の弾を補充した

と言う妙ちくりんなお話だった。

 

「・・・・・・本当にそんなことがあったのですか? 大尉。」

 

「ああ。 事実だ。 何とも不可思議な現象だった。 結局そのタネを明かすことが出来なかった

 私と神宮司軍曹は、中佐に博士の執務室から追い出されてしまい、廊下で待つことになった。

 

 その間中ずっと、軍曹とどの様な仕掛けだったのか話していたのだが全く見当もつかず、悶々として

 しまった。 だから中佐との賭けは嫌なんだ。」

 

と言っている内に、操作ログが出力されたので、その内容を確認してみると・・・・・・。

 

「・・・・・・大尉、こんな操作ログ、今までに見たことが無いのですが・・・・・・。」

 

「・・・奇遇だな。私もだ。 一体どうやったらこんな機動動作ができるんだ?

 ・・・・・・・・・此処を見てみろ。 左足を軸線にしつつ伸縮動作で全体の勢いを殺しつつ、右足を揃えて

 ジャンプしている。 しかも、ジャンプユニットを使用しないで、戦術機の運動能力をフルに使って、

 約15m上にあるビルの側壁を蹴り飛ばして方向転換。 無茶苦茶だな。」

 

「・・・・・・いいえ、大尉。 その機動動作の左脚の軸線、溜めをしつつ着地から次のジャンプまで

 微妙に機体の方向を左に90°曲げています。 こちらの制御コマンド入力ログを見て下さい。

 

 こんな昔に使われていて、今ではコマンド入力にて制御させる方法なんてやっていませんよ。

 私も以前、神宮司軍曹に制御コマンドの質問をしたことがあって、その時に教えてもらいましたから、

 相当古い制御方法ですね。 でも、こう言う風に使えば、硬直時間内でも次動作を有効に設定できる

 なんて、知りませんでした。」

 

「・・・涼宮。 何故教本からこのコマンドのことが消えたか、その理由も知っているか?」

 

「え? いいえ、知りません。」

 

「・・・私も神宮司軍曹から聞いて知ってはいたが、これを多用すると、システムフリーズが頻発するんだ。

 しかも、整備の時は正常でも、実戦に入って数分経つと、制御装置が止まるものだから、敵からの

 被弾率が異様に高くなる。 機動途中で止まるのだから、BETAからすればマトが目の前に出来る

 様なものだからな。 その為、大陸派遣軍で流行りつつあった制御コマンドの直接入力は絶対に

 行わないように派遣軍団命令によって抹殺された経緯を持っている。

 教本から消えたのも、この性だ。」

 

それを聞いた私は、血の気が引いていく気がした。 そんな出鱈目・コマンドとは思っていなかったからだ。

 

「・・・・・・伊隅大尉。 ピアース中佐、怒っていましたね・・・。」

 

「言うな、涼宮。 今からとても怖いんだ。 明後日の朝日は拝めるのだろうか・・・・・・?」

 

「・・・・・・神宮司軍曹に相談しますか? もう、そこくらいにしか望みが掛けられませんが・・・。」

 

「・・・軍曹に怒られるのと、中佐に半殺しにされるのと、どちらが楽だと思う?」

 

「・・・・・・キビシイ選択ですね。 どちらとも分かりませんし、分かりたくもありません。」

 

私と伊隅大尉は、深い溜息を吐いた。 私達の明日はどっちだろう?

 

Side Out : 涼宮 遥

 

 




はい。と言う訳で07話でした。

はぁ〜〜、疲れた。
面談部分を書いていたら、700行オーバーしていて、「何じゃこりゃ!」って言ってしまったとです。

2000行に届くなら、手前で分けなきゃって、今朝気づきまして、編集、修正、校了とやっていたら、お昼過ぎていました。ドン亀だからなぁ。

と言う事で08話は3者面談です。御剣姉妹をどう料理するのか?再突入駆逐艦で奴が来るのか? まとめるのが大変です。まー、500行程出来ていますから、残りを追加するのはなんとか2日ほどで出来ると思います。

予定していた話数と展開パターンにズレが生じてきて、スケジュールが狂う狂う。
あと誤字指摘とか感想もドンドン受け付けております。

じゃ、このへんで。
では。
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