What happened in the story ? 作:斬【Zan】
前回から、2日経っていない状態での更新となりました。
嫌に早いな。抜けでもあるのか?
今回も前回と同じくらいのボリュームですね。1100行くらい。
って事は、07話と合わせていたら、2200行オーバーになっていた?
うわぁ、記録更新じゃね? ってな訳で。・・・駄文が長いツーの。
もっと尺を考えろってことですね、分かります。
例によって、ダイジェストー
面談しましたー。大将軍とお話しましたー。てめぇの問題点にとりかかりましたー。
以上です(おい、コラ)。
キンクリ的に言う所のご都合主義展開で良ければ読んで下さい。
では、08話です。 どぞ。
2001年11月14日 午前11:58
国連軍横浜基地 事務棟1F 正面玄関
第09中隊との模擬戦を終え、急いでこの場所に仮の受付を設置した俺は、自室の備品である
ノートPCを用いて、1300から始める予定の3者面談の資料を作成していた。
長机を持ってきて、パソコンを置いて文章データを入力している。
かなりの時間を使って打ち込みしているが、中々にデータがまとまらない。
と言うのも、訓練分隊の父兄が何時やって来るのか想像がつかず、正面ゲートの門番に一般客(帝国
軍の士官も)の来訪があった場合は、此処の事務棟1階に通すように伝えておいた。
それから、俺一人で作業をしていたからだ。
「(幾ら何でも、開始1時間前にやって来るなんてことは無いか・・・。)
張り切りすぎたかな、俺・・・・・・。」
そう言いつつ、何とか質問する内容とか確認項目などを一定のフォーマットにし、集計データが
取りやすい方式を作り、人数分プリントアウトしてリーフレットに収めて、パソコン作業を終わった。
時刻は12時30分ころ。 面談開始30分前に差し掛かった。
事務棟1階のガラス扉を開ける音がしたので、受付椅子からそちらを伺うと、帝国軍士官が一人こちらの
方に歩いてくる。 受付と書かれた札の前で止まり、その士官である軍人は俺に声をかけてきた。
「・・・失礼。 私は、日本帝国本土防衛軍帝都防衛軍第一師団 第一戦術機甲連隊所属
沙霧 尚哉大尉と申します。
本日こちらで、父兄参加の3者面談があると伺い、参上しました。 受付をお願いいたします。」
「遠路はるばる、お越しいただき恐縮です。
申し遅れました。 今回の3者面談を担当いたします、基地司令部付き士官 エイデン・ピアース中佐
と申します。 本日は宜しくお願いいたします。
では、早速ですが沙霧大尉は、どちらの訓練兵のお身内でいらっしゃいますでしょうか?」
通過儀礼的ではあるものの、所属軍が異なるので一般的な挨拶の後、彩峰訓練兵の関係者である事を
確認し、受付横にある貴賓室にて待機していただく旨を案内した。
早速、事務室職員にお願いし、粗茶を用意してもらった。 その間に、本日の面談の趣旨を伝え、
開始まで貴賓室内で待っていただくように案内して、受付に戻った。
俺の予想では、あと来るとしたら、鎧衣課長と榊首相関係者くらいだろう。
珠瀬事務次官は、どうか来ませんように・・・・・・。
面談開始まであと15分を切った頃、鎧衣課長がやって来た。
何時もは何処からか紛れ込むように来ているので、今回のように正面からやってくるのは大変珍しいと
言えた。 だが、それ以上に想定していなかった事態と成った。
鎧衣課長が女性を連れてやって来たのだ。
一瞬秘書でも見せつけに来たのかと思ったが、その表情はいつもの人を喰った顔じゃなくて、
緊張一辺倒だった。 どれほどの女性なのかと伺っていると、受付の前で止まった。
「・・・今朝方振りだな、ピアース中佐。 招集により参上した。」
「態々お越しいただき恐縮です。 鎧衣訓練兵のお身内として、受付させていただきます。
そして、そちら様は、どちらの訓練兵のお身内でいらっしゃいますでしょうか?」
「・・・御剣・・・・・・ 冥夜訓練兵の身内の者です。 受付をお願いします。」
「はい。畏まりました。
ただ、無礼を承知でお伺いいたしますが、お名前を頂戴しても宜しいでしょうか?」
「・・・・・・煌武院 悠陽 と申します。」
はい、ダウトーー! 鎧衣課長ェェェェェ 何でこんな人を連れてきたーーッ!!
俺の身体は一瞬フリーズしたが、思考は止まっていなかった。
貴賓室のあの軍人さんをどうやって誤魔化そうか、思案していたからだ。 でも、そうも言っていられない。
一応、殿下の服装は、一般的な女性のフォーマルドレスに近く、控えめなキャリアウーマン的ファッション
と言えた。 頭には婦人用帽子を被っており、正面からの視線を隠していた。
これだったら、誰何されても多少は誤魔化せるし、彩峰訓練兵をトップバッターにすれば、何とかできるか?
「・・・・・・色々と言いたいことはあるのですが、来られてしまった以上はどうしようもありません。
今頃は月詠大尉が大わらわでしょうが、後でタップリとお叱りを受けて下さい。
では、こちらの貴賓室でお待ちください。 ご案内します。」
2人を貴賓室に案内する。 本当は殿下を窓際にするのは絶対に避けたいところだが、
誰もこんな所に殿下がいるとは思わないだろうことを期待して、敢えて窓側に座ってもらった。
そして殿下と沙霧大尉との間に鎧衣課長に座ってもらった。
沙霧大尉は鎧衣課長の顔を見ると、一瞬動揺したが後は知らん振りをしていた。
先ほどと同様に面談の趣旨説明をして去る時に、俺は沙霧大尉に耳打ちをした。
「沙霧大尉、少々お願いしたいことが・・・。」
「何でしょうか? ピアース中佐。」
「窓際に案内しましたご婦人なのですが、最近親しい方、軍関係者とお伺いしましたが、その方が
鬼籍に入られたそうで、軍服を着用している方を相手されると故人を思い出してしまうので、あまり
近寄られたくないそうです。
その為、お隣に一般男性の方を挟ませて頂きました。 沙霧大尉には無礼に思われるかも知れ
ませんが、ご容赦をお願いいたします。」
「・・・・・・承りました。 そう言う事でしたら、私は一向に構いませんので。 お気遣い感謝いたします。」
俺は貴賓席を後にした。 事務室にお茶を頼もうかと思ったが、此処で粗茶を出すと後で文句を言う奴の
顔が目に浮かんだので、事務室職員の一人を受付に行ってもらい、俺は事務局から月詠中尉に連絡を
取った。 人の目がこちらに向いていないことを確認して、できるだけ声を抑えて内線で呼び出した。
「・・・一体、国連軍が私達に何用だ。 お互い不干渉である約定を取り交わしたはずだぞ!」
電話口で開口一番の彼女のセリフはこうだった。
「・・・それはそれでも良いのだが、一般的に階級が上の人間が下の人間に言うなら兔も角、その反対を
言うとは、斯衛軍には礼儀作法がないと見える。 貴様の師はどの様な教育を貴様にしたのだ?
余程教養のないヤツなのだな。」
「何?! 紅蓮師匠を愚弄するかっ!!」
「フン、貴様の師匠が紅蓮でも雷電でもどちらでも良いわっ!!
そんな事より一大事が発生している。貴様の所の将軍殿下がお忍びでこちらに来ているんだ。
貴様らは即刻、御剣訓練兵の護衛を中断し、殿下の護衛に切り替えてくれ。
それと、帝都城の月詠大尉にこの件の連絡を頼む!」
「な・なんとっ!! い・いや、その様なコトがあろうはずは無いッ!!
き・貴様、我々を愚弄するかっ!! 事と次第によっては許さんぞッ!!」
「こ・この、ど阿呆ぉぉーー!! 誰がこんなこと冗談でも言えるかぁぁぁーー!!
そんなに言うなら、月詠っ!! 貴様がこちらに来て確認したらよかろうッ!!
何が起こっても国連は一切関知しないッ! それで良いのならなッ!!」
それで月詠中尉を呼び出した俺は、中尉に貴賓室の外から窓側に座っているご婦人の首検分を
行って貰った。 そうしたら案の定、中尉は血の気が引いた顔をしだした。
「・・・・・・ピアース中佐。数々の暴言、謝罪する。
それと、よくぞこちらにお知らせ下された。 合わせて感謝します。」
「分かったら、さっさと隠密での護衛を開始してくれ。
それと、さすがに国連軍事務局の粗茶は出せないので、そちらでお茶を用意してお持ちしてくれ。
あっ、出す時の服装は此処の事務局員の制服で頼むぞ。 斯衛の服装はNGだからな。」
「えっ、どうして・・・・・・。」
「同室にいる帝国軍人に殿下の身元がバレるとマズイのだっ! その点を考慮せよっ!!」
月詠中尉は了解と答えて、去っていった。
そんなこんな事態だったので、あっという間に定刻の1300と成った。
多少疲れたものの、予定通り3者面談を開始した。 殿下来訪の煽りを受けて、トップバッターは
勿論”あややん”こと彩峰訓練兵。
沙霧大尉と一緒に3者面談となったのだが、彩峰の希望は帝国軍・・・・・・ではなくて国連軍だった。
「どうしてだ、慧? お前のことを悪く言う奴も居るだろうが、俺の元に来ればそんな事は言わせない。
それに俺達は同じ日本人だ。 帝国を守ることに何のためらいが要る?」
「・・・ためらいとかそんな事じゃないよ、尚哉。 帝国軍も良いだろうけど、今の帝国軍は私が守りたいと
思っていたものとちょっと違う気がする。 それと、ここの雰囲気というか、居心地が良いんだ。」
「お二方、少々宜しいか? 帝国軍と国連軍の違いで言いますと、帝国軍は日本の国防と派遣軍を
担うための軍です。 対して国連軍は、加盟している国を守るための軍であるので、勤務先は国際的な
ものと成ります。 つまり、転勤が多く、世界各国に派遣されると考えて下さい。
ですから、いくらこの横浜基地が居心地がよくとも、転勤先が悪そうだからと言って辞職する、と言う
選択は行えませんので、その点は注意して下さい。」
「慧、ピアース中佐のおっしゃる通りだぞ。 居心地の良し悪しで所属軍を選択とは、理由になっていない。
そんな理由を言われた方も対応に困るとおっしゃっておられるのだ。
もっとしっかりと考えなさい。」
「むぅ・・・・・・。 では、ピアース中佐に質問。 軍機に違反しない程度に教えて下さい。
この後私が受けることになる訓練って、何処の軍隊でも実施していない内容なのでしょう?
任官をしてからでないと受けさせてもらえないって、何か特殊な技術に触れる、と考えていても
宜しいですか?」
「・・・・・・そうだなぁ・・・。 まぁ、此処でバラしても誰も信じないと思うけれど、一応機密になっているし、
帝国の大尉さんが居る眼の前で話す内容でも無いので、詳細は伏せる事になるなぁ・・・。
君と私だけなら、教えてあげても良かったんだがね。 ああ、冗談ですよ、沙霧大尉。
もとい。 ま、真面目に話すなら、人体実験などの類ではなくて、新技術を用いてのテストパイロットと
教導官を育成するための人員確保と言うのが本計画の主旨ですね。
だから、任官の意思を聞いている、と解釈してくれるかな?」
「分かりました。ありがとうございます。
それを考慮して考えますと・・・・・・・・・・・・・・・・・・、やっぱり面白そうだから、国連軍で任官します。」
俺と沙霧大尉は、ガタタと揃ってズッ転けそうに成った。
”面白そう”って理由が・・・・・・。 何と言うか『今どきの子』と言うか・・・・・・。
「あ・あのな、彩峰訓練兵・・・。」「そうだぞ、慧。幾ら何でも面白そうって、理由になるか!」
それに対してこの乙女は・・・。
「理由として、帝国の主力戦術機は、未だに撃震。 陽炎への移行はまだ当面掛かりそうだし、
カスタマイズされるのだって、所属部隊の特殊性が無いと成されない。
それに対して、国連も主力は同じ撃震でも、こちらは技術的な革新が進んでいる。帝国のそれと
比較しても明らかに違うのが分かる。
だから同じBETAを倒すにしても、少しでも生存率を上げるのなら、国連の方が良いと判断した。
各国を転勤するのも苦にならない。 だから、国連で任官します。」
「・・・決意が硬いようだが、私が今朝方問うた事、『少尉』として任官する意味をちゃんと考えたか?」
「はい。 『無能な上官に仕える』事が無いように、自分を磨きつつ部下を最後まで見捨てません。
私はその様な下士官として任官したいです。」
「・・・・・・フゥ・・・。 如何でしょう、沙霧大尉? 本人の意志も硬いように思えます。
彩峰訓練兵を国連軍で任官させても宜しいでしょうか?」
「・・・・・・・・・ったく。 コイツは言い出したら昔から頑として聞かないんです。
しかし、自ら言ったことは必ず成し遂げます。それだけは私が保証します。
・・・本当は帝国軍に任官して欲しかったのですが、余程こちらの教導官殿の腕が良かったのでしょう。
ああ、もちろんピアース中佐も真摯に対応して頂いたこと、感謝に絶えません。
これからも彩峰 慧を宜しくお願いします。」
そう言い沙霧大尉は頭を下げた。二拍ほど置いて、彩峰訓練兵も頭を下げたので、俺もそれに答えた。
「承りました。 彩峰訓練兵は私ども国連軍が責任を持って少尉任官させます。
また、訓練や任務などで使い潰すこと無く確りと育成し、その暁には何処に出しても恥ずかしくない
下士官に錬成してみせます。」
最後に俺と沙霧大尉は握手して、3者面談は終了した。
沙霧大尉が面談室から退室しようとしている間際、俺は彩峰訓練兵に大尉を正面ゲート手までお見送り
する様に伝えた。 先に彩峰を面談室から廊下に出してから、沙霧大尉に声を掛けた。
「・・・・・・沙霧大尉、少々内密にお話が有ります。
彩峰訓練兵については、本日のお話の通りですので心配には及びません。 それはお約束できます。
しかし、現状大尉が抱えておいでの問題について、情勢が変わりつつ有ることをご存知でしょうか?」
「は? 何でしょうか?
・・・・・・・・・ッ!! い・一体何のことをおっしゃっておられるのか、小官には心当たりが有りませんが。」
「左様ですか。 いえ、それであれば結構です。 私の勘違いでした。
只どうでしょう、何かの変化をお求めならば、一つ情報が有りまして、それは3つの言葉で体を成して
おります。それは、『佐渡ヶ島』、『12と13と14と』、『11月23日』の3つです。
此等を踏まえた上で、『勉強会』の方々をどうにかしては如何かと思ったものですので。
何でこんなことを述べているのか、理由を申しても到底信じてもらえないと思うのですが、
本日貴官との面談は縁のなせる技だと思うのですよ。
それは、貴官の守護霊に彩峰閣下が貴官をお守りになっておられる様に思えるからです。
多分ですが、閣下は貴官に”王道を行き、王道を進む方を守れ”とおっしゃっておられるように思います。
ですので、決して”外道”に外れてはいけませんよ。 今はまだ偲ぶ時です。 明けぬ夜はないのです。
それを信じて待つのも武士(もののふ)が役目でありましょう。」
「ッ!! ーー・・・・・・ちゅ・中佐、その情報は一体・・・・・・。
あ・彩峰中将が? それは、誠(まこと)なのですか? 中佐?」
「断っておきますが、私には霊視などのスキルは備わっていませんよ。
飽くまでそう思うだけなのです。
ですが、彩峰閣下云々の部分は、案外的外れではない事と思います。 この先の参考になさるが
宜しいでしょう。
本日はお忙しい中、単に知人の為に面談に来て頂きご苦労さまでした。
先ほどの情報はそのお礼の様なものです。 ですので余りお気になさらずに。
では、これにて失礼します。」
俺は敬礼をして、この話を終えた。 沙霧大尉も答礼を返してきたので、上位者である俺から敬礼を
解き、沙霧大尉を開放してやった。
沙霧大尉と彩峰訓練兵が事務棟を出たのを見て、貴賓室の方に次の父兄を呼びに行った。
次は、鎧衣課長を選択しよう。
貴賓室の扉をあけて、「鎧衣様、お待たせしました。」と言いつつ入室しようとしたら、直ぐ様俺は
貴賓室から押し出された。
俺を押し出した”帝国の微妙に怪しい人”は、いつもの余裕はなく、かなり焦って俺に迫ってきた。
「・・・ピアース中佐、申し訳ない。 本社の方から至急の呼び出しがかかった。
その為急いで本社に戻らないと、とんでも無い被害が出てしまう。 今日の面談には参加できない。
私の『息子のような娘』が国連に任官したいというなら、そのまま任官させて戴いて宜しい。
あと、他の帝国軍や、無いと思うが斯衛軍をと望むのであれば、こちらに連絡をして欲しい。
手配する。 なので、私はこのまま失礼するっ!!」
そこまで一気にしゃべると、俺に反論を挟ませないようにして脱兎のごとく建屋から出て行った。
・・・一体何をそんなに慌てていたのやら・・・?? 不思議そうにしていると、見送りが終わって戻ってきた
彩峰訓練兵がこちらにやって来た。
「・・・あの、中佐? 先ほどの方の面談はもう終わったのですか?」
「・・・・・・い・いや、何やら急用が出来たので、面談をエスケープしたみたいだ。
ご息女の任官先は、何処でも良いだって・・・。 一体何しに来たんだか・・・・・・。」
「・・・・・・ご息女? と言う事は、私達の中の誰かの父兄ですか? 私はてっきり白銀の関係者かと・・・。」
「彩峰訓練兵・・・・・・。 それは思っていても言葉にすると、人間関係が悪くなるから注意しなさい。
それに、白銀に対して失礼だから。 私も親戚にあの方が居ると噂されると、激怒するくらい嫌なので、
後で白銀に謝るか、それとなく優しくして上げなさい。」
「・・・・・・分かりました。 では、引き続き自習の続きを行います。」
「ああ。 あっ、と。 明日は1500から訓練校卒業式となるので、皆への通達をお願いする。
明日の朝、軍曹からも連絡させるので、点呼には出るように伝えておいてくれ。」
「・・・了解しました。 失礼します。」
その後、事務室の職員の方から連絡を貰った。 どうやら相手は珠瀬事務次官らしかった。
電話口は何やら遠い場所からの連絡らしく、エコーの送信返信に時間がかかった。
内容的には、3者面談の話を今知ったらしいが、どうしても物理的に参加できないので、日程の変更を
相談されたが、珠瀬訓練兵の場合、任官先が最初から国連軍を希望していたことも有り、本人に確認が
とれれば、面談する必要がないことを述べた。すると、
「むぅ・・・・・・。折角娘に会えると思って連絡したのに、そう言われると立つ瀬がないではないか・・・。」
との事だった。 仕事しろよ、たまパパ。 私事と仕事が一緒に成ってるぞ。
元からアンタは国連関係者だろ? 後から娘が他の軍に転向したくなったら、ホイホイできるんだから、
それくらい我慢してくれ。 と思ったが、勿論口には上げていない。
「・・・まぁ、その内、基地視察とかでも会えるかもですし、少尉と成っていた方が何かと融通も効くと
思いますよ。 その、休暇申請とか・・・。」
「おおっ、それはナイス・アイディアじゃないか。 君、名を何と言ったかな?」
「横浜基地司令部付き士官、エイデン・ピアース中佐です。事務次官。 では、珠瀬訓練兵に付きましては、
ご父兄からの意向をお伝えしておきますので、ご安心頂ますよう、宜しくお願いします。」
「分かりました。 よしなに。」
と言う流れで、しゅーりょー と成った。 これで3/6=1/2なので、残り3人か。
そう言えば、榊首相は、やっぱり駄目っぽいな。無理もない。 あそこって父子家庭でよかったよな?
奥様は鬼籍に入って久しいから、それで行くと後は、白銀君と冥夜タンハァハァ だけだな。
でも白銀くんは、言ってしまえば安牌中の安牌。 冥夜タンハァハァ を除けば、処理しやすい4人を
まとめてやっつけちゃう方が都合が良いな・・・。
そう思って俺は4人を面談室に呼び出し、開口一番こう言った。
「えー、他でもない。 面談についてなのだが、もう分かっていると思うが、君たち4人の父兄は
来られていないので、本来ならば2者面談と成るのだが、恐らく簡単な確認を行うことで終わって
しまいそうなので集まってもらった。 ま、ハッキリ言うと時間短縮なのだがね。」
4人共不思議そうな顔をしているので、ちゃっちゃと進めることにした。
鎧衣訓練兵の場合。 鎧衣課長の言葉を伝えると、案の定ファンタジーのようなことを言った。
「えっ?! お父さん来ていたんですか。 何で此処に来ていたんだろ?
ま、いっか。 それでボクの任官先なんですが、斯衛軍にも興味有るんですが、行けると思いますか?」
と聞いてきたので、武家でければ、余程腕が立たないと入隊審査で落とされる事を伝えた。すると、
「えっ、そんなに厳しいんなら辞めときます。 国連で良いです。」と言う事だった。なんか安直だな。
続いて珠瀬訓練兵の場合。 同じく事務次官の言葉を伝えると、予想通りの答だった。
「あ、あああのあのあの、みみみミキは、ここ国連軍に任官したいですっ!」との事だった。
他の軍に興味はないのか? を聞くと、何処に行っても同じだと思う、と答えた。
続いて、白銀訓練兵の場合。 この子には父兄がいないので、任官先について聞くと、
「俺の場合は、夕呼先生、えっと、香月副司令の元で働きたいので、国連軍を志願します。」
との事。 ま、コイツの場合はな。 これも予定通り。
最後に、委員長こと榊訓練兵の場合。 父兄との関係がこじれているので、聞くまでもなかったのだが、
一応。
「私は国連軍に任官を希望します。 斯衛軍なんて入れっこないのは分かっていますから。
それに帝国軍に入っても、父の影響が大きいから、どうせ何も出来ませんし、仕事をするのでしたら、
こちらの方が・・・。」
との事だった。・・・・・・何か委員長の発言は・・・・・・・・・、ま、良いのか?
そこで、4人共共通して、『少尉』になることの意義を問うと、4者4様ではあるものの、今朝方言った
内容については一定の理解を示したので、4人共国連軍で任官させることにした。
ぅん、でもなぁ、やっぱり・・・・・・再チェックしておくか。
各自に連絡事項を伝え、解散させて談話室を後にさせる時、俺は委員長に頼み事をした。
「ああ、榊訓練兵。 済まないが、控室に残っている御剣訓練兵をここまで連れてきてくれないか?
ご父兄が待っておられるので、面談を始めようと思うんだ。」
「分かりました。 御剣に声を掛けて、こちらに来るように伝えれば宜しいですね?」
「いや、貴様も一緒にここまで戻って来て欲しい。 先ほどの件について、少し聞きたいことが出来た。」
「? はい。分かりました。」
その間に、俺は殿下をこちらの面談室に入って頂く事にした。
先に面談机の俺の席の対面にお座り頂いており、入り口から殿下の顔が見えないように衝立で
見えない工夫をした。これで入り口から入ったとしても、衝立を越えなければ殿下の存在に気が
付かないだろう。
5分ほどして、両名が戻ってきて、面談室に入ってきた。面談室のドアを閉めてこちらに顔を向けた時、
俺は入り口に居る2人に命じた。
「・・・両名、そこで所属と氏名を名乗りなさい。 これは命令である。」
二人共いきなり詰問されたので吃驚したが、落ち着きを払って俺の誰何に答えた。
「ハッ、第207b訓練分隊所属、分隊長 榊 千鶴 入りますっ!」
「同じく、同分隊所属、分隊副長 御剣 冥夜 入りますっ!」
俺は2人の返答に静かに頷きつつ、着席されておられる殿下に顔を向け許可を申し出た。
「殿下。 両名の入室をお許し頂けますでしょうか?」
「よしなに。 ピアース中佐、ご配慮に感謝します。」
これを聞いていた2人は、固まった。 石化したと言って良いだろう。
突っ立ったままだと話も出来ないので、俺は両名に視線で着席するように促した。
訓練兵両名が着席したので、俺は話を進めた。 因みに席順は、俺から見て左側に榊、その左奥に
御剣、そして御剣から見て左側に煌武院殿下の順で、殿下と俺は対面している状態だ。
面談を始めるに辺り、先に『少尉』へと任官する事の意義を問いただした。
榊は同じことを聞くのか?と言う顔をしていたが、俺はそれを無視した。
先の榊の答えでは、俺は納得できなかったからだ。
「・・・先程の面談でもお答えしましたが、もう一度答えるのでしょうか、中佐?」
「・・・・・・そうだ。 先の貴様の解答はマイナス点を付けたくなるほどの悪い出来だった。
だから、もう一度きちんと考えて答えなさい。」
「ハッ、 下士官と成り任務を忠実にこなす自信が私には有ります。 以上です。」
「マイナス100点。 榊訓練兵、貴様、軍隊を舐めているな?」
「いいえっ!! その様な事は決して・・・・・・。」
「続いては、御剣訓練兵。 貴様の解答を聞こうか。」
「ハッ、 与えられた仕事を全うするのは当然ですが、自分の周りにも配慮し皆で任務を全うできる様に
全力を尽くしたいと考えます。 以上です。」
「良し、合格。」
何故に?! と言いたげな榊訓練兵。
俺はひとつ溜息をついて言葉を紡ぐ。
「・・・あのな、榊? 軍隊とは命をかけて作業処理を行う団体ではない。 貴様の言葉だと『自信が有る
から仕事を寄越せ』に聞こえる。 貴様は何のために軍隊に入りたいと思ったのだ?」
「そ・それは・・・。 困っている人々をBETAから守るた・・・「それは嘘だな。 建前では人は動かん」
・・・めに な・何故ですか?! 何故、嘘だとおっしゃるのです?」
「・・・・・・それとな、軍隊に入っても、貴様の父君である 榊 是親殿の影響でまともな仕事が出来ない、
とか抜かしていたが、軍事に置いて、特にこの横浜基地の私が指揮する部隊に於いては、その様な
影響は一切受け付けない。本当に貴様の身一つで任務に就いた時、貴様の言う自信が無くなったら、
任務を放棄します、とか寝ぼけている下士官に貴様は任務を与えるのか?
いつまで日本帝国内閣総理大臣の娘でいるつもりだ? それで独り立ちした下士官だと言えるのか?」
「うっ・・・・・・。」
「私は今朝方、貴様を含めた訓練分隊にこの面談の意義を教え、考える時間を与えたな?
その答えがそれならば、私は貴様の国連軍への任官を認めるわけにはいかない。
理由は『士道不覚悟』だからだ。 お遊びで軍職に就く人間は、どこの軍隊でも不要だ。
帝国軍でも、斯衛軍でもな。いっその事、軍職に就くのは諦めるか? 貴様は何がしたいんだ?
世間的に徴兵制により帝国軍に招集される中、貴様だけが特権制度で免除されるのが嫌だから
軍隊を目指したのか? 案外、父君は貴様の適性が軍隊に合わないことを知っておられたから、
外に出て恥をかくより家中で恥をかかせない方が良いので、制限されていただけではないのか?」
「そ・その様な事は・・・・・・。」
「この面談が終わるまでの間、ちょっとそこで考えておきなさい。 後から最終の覚悟を聞こう。
では、大変お待たせ致しました。 殿下。
これよりは、御剣訓練兵に関する任官先について、面談を開始します。
先程下士官に関する心得については、御剣訓練兵の心構えを聞き、合格点を出せますので、
あとは、本人の希望を聞こうかと思います。
その際、私ども国連軍は、御剣訓練兵の意思を尊重したいと考えておりますので、どうか最後まで
聞いて、相談に乗ってあげて下さい。
では、御剣訓練兵。 貴様の希望任官先を聞かせてくれ。」
「わ・私は・・・・・・。 此処、国連軍を希望します。」
「ほぅ。 帝国軍でなくて良いのか? 国連軍は転勤なども多いので、日本帝国内に留まり続けるとは
限らんのだぞ? 国外に出てもやっていけるのか?」
「ハッ、それは大丈夫です。」
「反対に聞こう。 どうして貴様は此処、国連軍の訓練校に入ったと思う?」
「・・・・・・恐らく、高度な政治的判断に伴う理由から・・・・・・、だと思います。」
「うん。正解。 その件については、貴様は事情を知っていると考えても良いのか?」
コクリと頷く冥夜。 度胸座っているね。 さすが原作メイン・ヒロインの片方だ。
「では、それらを踏まえている筈なのに、どうして国連軍に任官する?
政治的配慮が続いていると考えているのか?」
「・・・・・・恐らくは。 いつまでこちらに居られるのかは把握できておりませんが、約定が続く限り私は
こちらの基地に居るべきだと思いました。」
「・・・・・・その理屈はおかしい。 先にも述べたが、任官ともなると転勤移動が憑き纏う。
横浜基地に居ることに理由が有るのであれば、他の任地に移動するのは横浜基地に留まらないので、
約定を破ることになる。 その点はどう説明する?」
「そ・それは・・・・・・、分かりません。」
「・・・・・・そこは理由を見つけるなりしないとな。
なるほど、月詠中尉などを使って、情報の収集を行ってもらっていたのか。 中尉は中々に優秀な
人物らしいな。 護衛官の領分を逸脱しているが。
ま、良い。 では、それらを踏まえた上で、お隣の殿下に対して、貴様から何か申し上げる事は?」
冥夜は殿下に向き直り、椅子から下りて臣下の礼を取った。 殿下は少し顔を歪ませた。
「・・・・・・お初にお目もじいたします。
私は、煌武院家分家筆頭であります御剣家、その長女で冥夜と申します。 以降、お見知りおきを。
本日は私のために、遠路はるばるお越しいただき恐悦至極にございます。
煌武院家分家筆頭でありながら、諸般の事情で斯衛軍にて士官が叶わず、また、お聞きされておられた
と存じますが、諸般の政治的取引のために、已む無く国連軍に身を置くことと成りました。
本来ならば、身命を賭してでも殿下の護衛に馳せ参じるのが家令なれど、今回この様な仕儀となり
ましたこと、大変遺憾に存じます。
私個人は、斯衛として殿下のお側に馳せ参じる事ができなくなりましたが、御剣は永遠に煌武院家を
守る藩屏が一つである事は変わりません。 そのことだけは殿下にお解りいただきたく存じます。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・御剣。 本当にその答弁で、殿下がご納得されると思うのか?
そうだとしたら、私は面接官として0点と言わねばならなくなるぞ。
何故に貴様のために、この場に殿下がおわすのだ? 鬼より怖い側近中の側近である月詠大尉を
煙に巻いてまで、何故この横浜までやって来られたのだ?
そこをお伝えせねば、折角の殿下の心意気、無に帰してしまうことになるだろうな・・・。」
「クッ・・・・・・、そ・そうは申されましても・・・・・・。」
「やれやれ、そんなんじゃこの先が思いやられるなぁ・・・。
私ですら2つは即席で思いつくのに、そこにすら達せないとは・・・。
ま、良い。少々遊ぶか。 ネタの内一つを座興として披露してやるから、それ見て考え直せ。良いな?」
俺は顔を一旦伏せ、”今より座興を始める。 この一時は礼儀を忘れ、無礼講とする”と宣言した。
「・・・・・・ーー あーーあぁ、 うん、よし。
やれやれ敬語とか普段から使わんから、肩が凝って仕方がなかったぜ。
いや、「私」とか一人称を変えないといけないとか、無理だっツーの。」
「「「・・・はぁ?!」」」
「じゃ、時間も押しているんで、さっさと始めっか。 良いか、冥夜?
ネタその一は、言ってしまえば裏道だ。 その心はズバリ”色恋沙汰”だ。 まぁ、女の子の言い訳に
よく使われると言う観点を外しちゃいけねぇな。 王道じゃないから正論扱いされんけど。
で、だ。 言い訳として使うなら”好きな殿方が此処に居るんです。 その方と添い遂げたいので、
国連軍に仕官します。”とか言うのはどうよ?」
「(これって、アイツの事を言っている、ので良いのよね?)・・・・・・・・・。」
「あらあら、まぁまぁまぁ・・・。」
「なっ?! ナナナ・な何を言ってぅるんでひゅか?! ちゅーさっ!!」
はい、冥夜タンハァハァ のドモリ頂きましたー。 そして、ダウトーー。 白銀に片思い発覚・入りましたー。
女子会でもないのに、恋愛談義の晒しにされて、ごしゅーしょーさまです。 冥夜タンハァハァ (黒笑)。
因みに↑のセリフは、順に委員長、殿下、冥夜タンハァハァ の順です。
俺のターンはまだ続く。
「・・・ま、さっきの恋愛関連言い訳について、その発言で通る見込み、つまり成功率は20%有るか無いか
なんだな、これが。 それと使う時の注意点として、乱発して使うと”役に立たねー・使えねぇー奴”とか
評価が大暴落するので、滅多に使うのは避けるべきだと思うけどな。
それを踏まえて、使う時を図ってくれ。
で、もう一つの方は、冥夜が考えるわけだが、こちらはどちらかと言うと、王道を行っている方なので、
頑張って考えること。」
「あ、あの、中佐?!」
「ん? 何だ、委員長。」
「(私もアダ名呼びなの?)えっと、ネタその一が通じたら、殿下が御剣を国連に任官を許されるのですか?」
「は? そんな事あるわけねーだろ。 殿下がそんなに甘ぇーわけ無いじゃん。」
「ええっ?! そ・それなら、御剣に教えても意味無いでしょう?」
「バッカ お前、何言ってんの? 裏道を参考にして表の道を探せって、今言ったじゃん。
それと、殿下なら好いた男も連れてで良いから斯衛軍に連れ戻す、とか言うぞ絶対! でしょ、殿下?」
「・・・・・・あらあら、うふふ。 それにしても中佐は、部下想いの良い方なんですね。
懇切丁寧にここまで指導なさるなんて、普通は通り一辺倒で済ますことが多いと思いますよ。」
「いやぁーー、そいつはどうも。 でも俺、殿下が言うほど優しくもないんで。
ぶっちゃけ、戦場に足手まといは要りませんし、独りで戦う方が性に合っていますんで。
いや、俺としても独りでできる奴なら、無理に軍隊に入ることなんか奨めないけど、それでも委員長
みたいにどーしょーも無い、足手まといにしかならない奴を見ていると、軍隊に押し込めておいて
やりたくなるつーか・・・。 ま、そんなとこですかねぇー。」
「あらあら、まぁまぁ・・・・・・。」
「・・・・・・あのーー。 そこまで私ってひどい扱いなんですか?
と言うか、そこまで使えないとか、ムノーとか言われた事、今まで無いんですが・・・?」
「ホント、使えねぇなぁ・・・・・・。 良いか? この面接で最初に受かった”あややん”こと彩峰はな、
”軍機に触れない程度で良いから情報をくれ”とまで言って、俺から情報を引き出して、国連軍に
任官することを答えたんで見事合格としたぞ。
立ち会っていた父兄も、任官しようとか考えている心構えを認め納得したんだ。
だが、お前にはそれがない。 与えられるままで雛鳥の様に口を開けて待っているんじゃなくて、
餌を集中的にもらえるように、他の雛を蹴落とすカッコウの雛のような覚悟を見せろ、って事だな。」
「はぁ・・・・・・。 (・・・にしても、彩峰のあだ名が”あややん”・・・・・・。 プッ、クククッ、”あややん”)
フフフ・・・・・・、 あややん・・・・・・、 あややん・・・・・・。」
「どわぁ?! な・何だ?! どったの、委員長? ・・・・・・・・・笑ってんのか?
ってか、”笑いのツボ”にでもハマっちまったか?」
俺が委員長に構っていたら、不意に冥夜が決意を改めたかのような、清々しい顔をして俺を見た。
「中佐っ!! 分かりました!! 私が任官するに辺り、殿下にお伝えしなければいけなかった事がっ!!」
「おわっ?! こ・今度は冥夜か。 吃驚したぞ。
・・・で? その答えを聞いても良いか?」
「はいっ! 恐れながら殿下、私は今気が付きました。 我が身一つに於いて自分ができる事を。
やはりそれは此処、国連軍に任官し、世界中に居るであろう力弱き者の手助けをする事だと。
私は無限鬼道流剣術を我が師・紅蓮醍三郎に習い、その師より免許皆伝を頂戴致しました。
その教えの中に、弱者に代わり弱者達を助ける一助となるように、との教えを胸に剣術の修行に
明け暮れてまいりました。
されど、その剣術を以ってしても、私一人では救済出来る数は知れております。
より多くの者を救うには、国連軍のような大きな組織に入り、その中で活動を行えば良いのだとの
結論に至りました。 剣術の免許皆伝を頂いて皆流神威と共に在っても、私の力はどの程度通じる
のかも分かりません。 ですが、今は何処まで行けるのか試してみたいと思います。
どうか、私が国連軍に任官することをお許しください。」
冥夜の言葉を真摯に聞いていた殿下が、始めての問いかけを行った。
「・・・・・・なるほど。 御剣 冥夜よ。 よくぞ、その答えに至りましたね。
確かに、今そなたの申したように、無限鬼道流剣術を以ってしても救える命には限度が有りましょう。
しかし、より多くの命を救うのであれば、斯衛軍は無理でも日本帝国軍と言う選択肢は無かった
のですか? 世界中はもとより、我が日本帝国においても救済を必要とする民は多く下りますよ?」
「はい。 確かにそのお言葉は、私の心に届いております。 出身国である日本帝国を蔑ろにし、先に
世界の民を対象とするのは如何なものか? 先ずは生まれ故郷の国の手助けをするのが先では
無いのか? その様に悩みましたし、今でも悩んでおります。
されど、よしんば救うべき民が国内から居なくなったとして、その後のことを考えた時、日本帝国は
他国救済のために速やかに動くのか、と言う疑問が出てまいりました。
国内救済が終了したら、続いてそのまま国外救済に移るとは思えませんでした。
それは、国家間の駆け引きが存在するからです。 我が国さえ良ければ他国はどうなっても良い、と
言う風潮が今も国内に残っているのは私でも知っておりますし、この基地に来てからもその事は
ずっと感じておりました。
その事までを考えた時、日本帝国軍よりも国連軍を目指し、初志貫徹を貫く事こそが、私が進むべき
道であると考え、先の結論に至りました。」
「・・・・・・フゥ・・・。 どうやらそなたの決心は、私が思う以上に硬いのですね?
例え、もう二度と故国の土が踏めなくなっても後悔はしないと、そう言うのですね?」
「・・・はい。 折角殿下が心配してお越しいただいたのに、それを無下にするかのような行い、
慙愧の念に耐えませんが、これも我が天命として受け入れたく存じます。」
「・・・・・・分かりました。 そうまで言うのであれば、反対できません。
日本帝国は斯衛の赤を賜る御剣の者として、胸を張って国連軍に任官なさい。 宜しいですね?
御剣 冥夜。」
「はいっ! 殿下のご温情、一生忘れませんっ!!」
「・・・ピアース中佐。 この娘の事、宜しくお願いいたします。」
「承りました。 私が責任を持って、御剣 冥夜訓練兵を国連軍少尉へと任官させて戴きます。
さて、と言う事で大詰めとなった訳だが、榊訓練兵、貴様の心意気は整えることは出来たか?」
「うぅっ、・・・・・・正直私自身でもよく分からなくなって来ているんです。
先ほど中佐は、私が使えない人間だと評じられました。 しかし、私は自分自身がそこまで出来ない
人間だとは思えないのです。 ですが、反論としてそれを披露しようにも、何をお伝えして良いのかが
分からなくなり、どう言う風に答えたら良いのやら・・・・・・。」
「そうか・・・・・・。 私の言葉が貴様を惑わせすぎている、と言うことだな。
うーーん、そうすると、反対にできる事を述べてやろう。 貴様は簡単に言うと『器用貧乏』であり
『八方美人』なのだ。 頭は良い方だし、与えられて仕事は卒なくこなせると言う特徴を持つ。
そして、何よりも褒められることで自信が付き、次の行動に対応できるタイプの人間だ。
しかし、その特徴は諸刃の刃でもあるのだ。 つまり自主性が目覚めるのがひどく遅い。
仕事をやっつけることに夢中になりすぎて、自らが成すべきことを疎かにしてしまう傾向に有る。
その為、あらゆる事柄を知り体験しなければ、自らの指針を示す事ができないでいる。
そのことを自覚せよ。 そして、指針を見つけよ。 その為に時間を稼がなくてはいけない。」
「・・・・・・今の私は指針を出せない状態。 と言う事は、そこに至るまでの時間を稼ぎ、何事につけても
吸収しなくてはいけない。
・・・・・・・・・・・・。 分かりました。 中佐、やはり私は国連軍に任官を希望します。」
「・・・フム。 先ほどよりはマシな顔になったようだな。 では、その真意を述べてもらおうか。」
「はい。 先程の中佐の助言により、現状私個人の人生の指針が示せていない為、情報収集を行う
時期であると判断しました。 では、何故に軍職を選ぶのかと言えば、昨日の戦術機適性検査を
パスしたことに思い出しました。 折角戦術機に乗れるのであれば、まずはこの経験を積むことが
目先の目標として考えられると思い至りました。
先の事についての結論はまだ出ておりませんが、指針を探すという課題を持った今、今後の生活
においてもその情報を反映できると思い、国連軍に任官を希望します。」
「・・・・・・そうか。 まぁ、良いか。 ギリギリ合格としよう。
ある程度の覚悟は出来たと思うし、こちらの思惑に沿っている部分もあるので、任務に支障は
出てこないだろう。 少尉任官し、戦術機操縦の経験を貴様の人生で役立ててみせろ!」
「はいっ! ありがとうございますっ!!」
「と言う訳で、今回の3者面談はすべてしゅーりょーとする。 両名はこの後は自習とする。
明日1500において訓練校卒業式を執り行うので、そのつもりで。
私はこの後、少々殿下とお話があるので、此処に残る。 お見送りもこちらでするから、貴様達は
このまま解散せよ。」
「「ハッ、 ありがとうございました!!」」
こうして当初の予定通り、第207b訓練分隊の国連軍任官が決まった。
「・・・・・・それでピアース中佐? 私にどの様なお話があるのでしょう?」
委員長と冥夜タンハァハァ が面談室を去ってから、煌武院 悠陽殿下は俺に質問を繰り出した。
「・・・特にこれといったお話は、私どもの方ではご用意しておりません。
しかれども、突然の殿下の基地訪問を受け、殿下より此度の件、もしくは他の件に於いて、
ご相談がお有りかと思い、この様な場を設けた次第です。」
「・・・左様でしたか。 では、二つ三つほど問い正したい事が有りますが、宜しいか?」
「私にお答えできる範囲のことであれば、何なりと・・・。」
「ではまずは、甲21号ハイヴ陥落について。
ハイヴ・コアの陥落が事実であるか、中佐より渡された資料に基づき、本日中に部隊を派遣する
運びとなっております。 あの計画書の中に斯衛軍第一連隊との記述が有りましたが、何故に
斯衛軍を指名したのですか?」
「・・・はい。 ハイヴ内の敵状視察に於いて、特に斯衛軍で無いといけない理由は有りません。
敢えて申せば”箔付け”の為と申せますので、東北方面軍の偵察部隊を派遣されても問題は無いと
考えております。
されど、敢えて斯衛軍が出向き確認を行えば、それは全て殿下の差配によるものと国内外に伝える
事と成りましょう。 その効果を狙ったものであると、お答えします。」
「解せません。 何故、国連軍の手柄をこちらに渡すのかがです。
取りもしていない首を、帝国が取ったかのようにするのは、横紙破りも甚だしく、恥知らずな行為と
思います。それを敢えて斯衛にやらせようとする魂胆がわからないのです。」
「ああ、なるほど。 それは、確かに。
ですが、此処で一つ状況を確認して頂きたい。 現状日本帝国民の心情というものをです。
帝都を京都から東京に移し、以降の対BETA戦は、一進一退と目覚ましい効果が出ていない状況です。
帝国のみならず、世界中に蔓延る絶望感と言うものを打ち払うための一石として、殿下のお名前を
前に出すことで東アジア各国は勿論、中央アジア、果ては欧州に至るまでの各国の励みの一助と
なれば、全人類にとっての励みとなると、画策致しました。
只確かに、殿下のおっしゃるように、他人の手柄をあたかも我が手柄のように振る舞う仕儀は、とても
人道にも劣る行為と言えましょう。 しかれども、それを反対に返せば、その様に心いみじくも恥を
知りつつ人々の希望の一助とならん事を願う方にこそ、その役目がふさわしいと思い、その様に
差配致した次第です。
しかし、申し訳ありませんでした。 殿下の心情を汲み取れなかった私の浅慮を恥じ入るばかりで
ございます。」
「私の心情について云々申すは、些か無礼でありましょう。
私の心は私だけのものです。 他者の思惑に利用されるのは本意では有りません。
ただ、中佐の申す仕儀については、なるほどと納得できました。」
「はい。 殿下の寛大なるお言葉、肝に銘じ、以降この様な無礼無き様に精進いたします。」
「では続いて、本日の任官のための面接について。
そなたに於いては、御剣訓練兵の国連軍衛士訓練校への入校については、その真意まで理解して
いるとした上で、何故に本日のような運びとなったのか、理由を聞きたいのです。
鎧衣から聞いた限りでは、横浜基地に預けた状況と現状とに差分があり、その影響で任官させると
聞きました。 あの娘の件については、斯衛軍第19独立警備小隊を通じて、昨今の状況の把握は
行えておりましたが、何時その状況が変化し、我らの交渉が滞ったのか問い正したい。
本日、あの娘は国連軍に任官する旨を決意しましたが、私は決してあの娘を素体候補として
第四計画に利用させることを認めるわけには参りませんっ!! この件については、誰が何と申しても
私は退くことは致しませんっ!!」
「・・・・・・確かに、第四計画が欲する”00ユニット”なる素体候補の選抜に於いて、目下計画はその準備を
進めております。 また、A−01連隊第9中隊が、そのユニットの素体候補生を纏めた部隊であることも
承知しておりますが、残念ながら今回の面談はその素体候補を選抜するためのものでは有りません。」
「その様な回答で納得せよと? 素体候補でなくて、何のために任官させる必要が有るというのです?」
「・・・オルタネイティブ計画に於ける機密性保持の観点から、詳細はお伝え出来かねるのですが、
それでは納得されないのですね? 困りました。 どの様に申せば宜しいのやら・・・・・・。
そうですなぁ・・・。 香月博士が提唱している”因果律量子理論”を用いて、00ユニットの研究を進めて
いるわけですが、そのユニット作成の基礎理論の構築が難航しておりまして、一旦情報の収集を
計画している00ユニットでは無い方向で試すことに成りました。
これが先日の甲21号ハイヴでのテストとなるわけですが、ある程度の情報を甲21号ハイヴ・コアから
収集することに成功し、それらの情報を元に対BETA戦略の変更を検討中なのです。」
「な・何とっ! 誠なのですか?」
「ええ。 ただ、詳細情報や最新技術などについては、開示できませんので、悪しからず。
それで、一旦00ユニットを使わない戦略という方向性に変更しようとしましたが、生憎第四計画と
しての時間も余り残されていない中で、先のBETAから入手した情報などを再検討した結果、
人類側の戦略方針に重大な間違いがある事がわかりつつあり、来月12月1日に、緊急の国連総会を
呼びかける事となりました。
また、同時に甲21号ハイヴにて収集した情報を元に、新しい戦略の提案を同総会にて発表・検討し、
攻撃方針の変更を提唱しようとしているのです。」
「・・・と言う事は、その新戦術に基づくための部隊再編成を実行するために、候補生を募っている、
と言う事ですね?」
「ええ。まぁ言ってしまえば、その通りです。 ですので、集めた候補生を00ユニットの素体候補にも
できますが、それ用ではないと申しておきます。」
「・・・・・・信じて宜しいのですね?」
「・・・・・・『信じて頂きたい』と申し上げたいのですが、依然00ユニットへの候補生と言う枠組みは
外せないのも事実ですので、そうは申しません。」
「・・・・・・良いでしょう。 今はそのことについては問いません。
しかし、困りました。 あの娘がこちらで任官するとなると・・・・・・。」
「・・・・・・! ああ、そうですね。 当然、第19独立警備小隊も引き上げて頂かなくてはいけませんね。
あっ、それとご注進申し上げておきますが、先附換りに間違っても”予備の戦術機”とか贈って
来られませんように、お願い申し上げておきます。 宜しいですね? 煌武院殿下。」
「ええっ?! い・いけませんか? 戦術機の整備する場所は取るでしょうが、一機分の建造費は
浮くのですよ?」
「いけませんっ!! 贈ってこられるおつもりの機体って、武御雷でしょう?
ご存知ですか? 斯衛軍の戦術機は専門の整備兵ユニットが整備する関係で大所帯なのです。
今も第19独立警備小隊に配属されている武御雷4機の整備兵はそれだけでも120名、その他補給や
警備の兵を合わせると、一個半中隊も居るんです。
それらが此度の件で引き上げることと成りましても、代わりに将軍機、つまり旗手機扱いの戦術機が
入ってくるとなると、整備兵や周辺警備の兵が入れ替わって来ることと成り、結局現状と変わらない
一個中隊規模の兵士が集まってしまいます。
現状のまま、他軍扱いの人間が残るのは、約定が在ったとしても駄目ですっ!!」
「ーーー 〜〜〜〜 ・・・・・・・・・・・・。」
「ダ・駄目ですっ! そ・その様に、”無言の圧力”には屈せません!!」
「ーーー 〜〜〜〜 ピアース中佐・・・・・・・・・・・・。」
「い・いぇ・・・・・・、だ・駄目ぇなんですってば・・・・・・、殿下、成りません。」
「ーーー 〜〜〜〜 〜〜〜〜 ピアース中佐・・・・・・・・・・・・。」
「な・何と申されようとも・・・・・・・・・、駄目なものは〜〜〜〜、・・・・・・・・・・・・
あっ?! た・助かった・・・。 フゥ、どうやら時間切れの様ですね、殿下?!」
「?? 何のことを申されているのですか? ピアース中佐?」
「意外に早かったな。 いえ。 どうやら殿下をお迎えに、月詠大尉が来られたようですよ。
現在、坂の下あたりをリムジンで移動している感じが取れました。 ・・・・・・ああ、大変だ。
折角綺麗なお顔なのに、ああも怒髪天を突破されるような雰囲気を出されては、眠っている幼子でも
ビックリ起きだして、泣き喚くこと間違いなしですね。」
「えぇ?! あ・あの? ほ・本当に?!??」
「ええ。 そろそろ正面ゲートに着きますね。
そうだ正門ゲートの門番に、リムジンの案内をしておこう。 ちょっと失礼します。」
そう席を辞した俺は、チラリと殿下を見てみると、殿下は座ったままで器用に小刻みに震えていた。
ざまぁwwww とは思ったが、声を出さずに内線で門番を呼び出し、間もなく迎えのリムジンが来るので、
それらしい車を見かけたらゲートを潜らせるように伝えておいた。
「では、殿下。 他にご質問などございませんでしょうか?
もし宜しければ、私が玄関までお見送りさせて頂きますが・・・・・・。」
「・・・・・・ぴ・ピアース中佐・・・・・・。 後生ですから、見放すようなことは申さないで下さい。」
「ハハハ、この件に限っては、無理です。
そうですねぇ・・・、鎧衣課長も大尉毎殿下をお連れすれば、この様な事にはならなかったと思いますよ?
文句を申されるなら、鎧衣課長も道連れの方が宜しいのでは?」
「うぅっ。 か・かの者には、無理を申して連れ出してもらったので、あの者も道連れは・・・・・・。」
「では自業自得ということで、殿下お一人でお叱りを受けて下さい。
まぁ、怒鳴られる方がまだマシでしょうね。 怒りから泣かられると手の施しようが有りませんから。
ま、収集された情報を開示して、意識を他所に逸らす様に工夫しなければいけないでしょうが、
それとて、十分に叱責されてからのお話なので、まずは存分に・・・・・・。」
「ひ、人ごとだと思って・・・・・・っ!」
「ええ。人ごとですよ。 殿下、頑張って下さいね。」
「・・・・・・ぴあーす ちゅぅーさぁ〜〜・・・。」
「・・・・・・フゥ・・・、仕方ないですねぇ。 私が取りなしても月読大尉のお怒りは溶けないと思いますが、
それでも良ければ、口添えくらいはやってみましょう。でも、効果がなくても恨まないで下さいね?」
「あ・ありがとうございますっ! このご恩はいつか必ず返しますから!」
「そんな、大げさな・・・・・・。 あっ、そう言う事なら少々お手伝いをお願いしても宜しいでしょうか?」
「? 何を手伝えば・・・。」
「いえ、そんなに難しいことじゃありません。
後日で結構ですから、日本帝国航空・宇宙軍を使っての天体観測を依頼しますので、それをお手伝い
頂きたいのです。 宜しいでしょうか?」
「天体観測・・・だけですか?」
「ええ。 我々の宇宙軍の方でも実施しますが、ダブルチェックの意味も兼ねて、情報に齟齬が生じない
確認のために、お願いしたいのです。
観測対象は、主に月と火星とバーナード星系の例の星です。それぞれの天体をこちらで用意する
電波望遠鏡で観測して頂いて、その結果をお知らせ下さい。
そうですね、周回軌道を3周ほど回っていただければ観測できると思いますので。
宜しくお願いします。」
「わかりました。 そのデータ、先におっしゃられた、12月1日の国連総会で報告されるデータですか?」
「ええ、まぁ、そんなところです。」
「では確かに、お引き受けしました。
ですので、今回の口添えの件、何卒宜しくお願いします。」
「ハイハイ。 では後で呼びに来ますので、こちらでお待ちください。」
そうして俺は単独で鬼人化しかけた月詠大尉と邂逅し、事の経緯の説明から始まって、面談が終わった
事を述べた。 また、大尉に口添えする際の条件として、天体観測のことも正直に話し、『帰りたくても
帰れない』状態に居る殿下の事に触れ、今回の叱責については甘んじて受けるらしいので、最大限の
手加減をしてもらうように進言した。
「・・・・・・分かりました。 私どもの殿下が、そちらにご迷惑をお掛けしたみたいで、遺憾に存じます。」
「ああ、はい。承りました。
只どうでしょう、もう最初から殿下は此処にいらっしゃらなかった、と言う事にされては?
たまたまご気分が優れず、ご不浄に立ち寄られただけの婦人が居たと言う事で、大尉も殿下も
この場には居なかったことにすれば、万事うまく行くような気がするのですが・・・。」
「左様ですね。 一理有る意見として承っておきます。
では、殿下をこちらの車の方に案内をお願いしても宜しいですか?」
「承りました。 少々お待ちを。」
こんな遣り取りをして、大問題児はリムジンに揺られて、ドナドナ・・・、もとい、帰還の途に着いたのだった。
後日殿下から、お叱りがあまり大きくなくて助かった、との言葉を貰ったのは、また別のお話。
2001年11月14日 15:38
国連軍横浜基地 地下19階 香月副司令執務室
やっと面談が終わり、ボロボロになって博士の執務室に戻ってきて、ドアをくぐって聞いた博士の言葉は、
「やっと戻ってきた〜〜。 もうお腹ペコペコよッ!!」
だった。
そりゃ、俺が食事に誘ったんで、待っていてくれたのは凄く嬉しいんだけれど、ボロボロの憔悴しきっている
男に対して、もうちょっと何か言い様が有ると思うんだが・・・・・・。
「そんなコトより、地上に戻りましょう。 私も久々にフルで食事したくなっているから。
今なら200gのサーロインステーキのコース料理でも食べれるわ!」
うぅっ、そ・そんな美味しそうなことを此処で言うなよ。 此処から地上に戻る気力が尽きかけている
状態で、そんな事言われたらぶっ倒れそうだよ。
「ホラホラ、急ぎましょう。 早くしないと、夕食が始まってしまうわ。
いや、いっそ早めの夕食をゆっくり食べる方が一食浮いて良いかも知れないわ。 そうしましょう。」
俺は両手を香月博士と霞に引っ張られて、再び地上に食事に出かけた。
これなら最初から、食堂で待ち合わせていたほうが良かったかも・・・・・・・・・。
それからPXにて食事を取った。
博士は本当にステーキのコース料理を頼んだので、俺もそれに合わせた。 夕食の仕込みもある為、
名物母ちゃんたる、京塚曹長は出てこないと思っていたら、香月博士が居るためか態々仕込中なのに
厨房の奥から出てきて挨拶してくれた。
「アンタ見ない顔だけど、新入りかい?」
「はい。昨日着任しました、エイデン・ピアース中佐と申します。 今後とも宜しくお願いします。」
「京塚さん、私んとこの新入りなんだけれど、社の次にじゅーよーな奴だから。」
「そうかい。
そんで、今日は何にする? 仕込中だから凝み入ったものは直ぐには出来ないけれど、それで良ければ
大抵のものは出せるよ。」
「そうねぇ、時間がかかっても良いので、コース料理でステーキをお願い。私は200gで。ピアースと社は?」
「本当にこの時間からステーキをオーダーする気か? 仕込み中だって言われただろ?」
「いいのよ。 オーダーが通れば大抵のものは作ってくれるのが、京塚さんだから。
私が唯一頭が上がらない存在は伊達じゃないのよ。」
「・・・そこまで言われちゃー作らないわけにはいかないねぇ。 良し来た、まかせな。
ただ、本当に時間が少々掛かるのは承知置きしてもらうからね。」
「うーーん。 じゃ、200を焼くのも500を焼くのも変わらないだろうから、俺は300gで。
霞も同じステーキにしなよ。 100g位なら大丈夫だろ? 焼きはミディアムレアでお願いします。」
「あいよ。 3人共焼きはミディアムレアで良いね? ソースは私オリジナルにしておくよ。
料理ができたら呼ぶから、ちょっと待ってな。」
その後出てきたステーキは、俺が今まで食べた事の無いくらいに美味だった。
勿論一般兵が毎日こんな食事を取れるわけではないのは承知していたが、今日くらいはこの食事を
堪能した。
遅めの昼食(?)を取り、売店で甘いものを購入してから執務室に戻ってきた俺達は、食後のお茶をしつつ、
俺から問題点について切り出した。
「・・・実は最近になって、自分の”いい加減さ”に辟易してきた、と言うのが集まってもらった相談事だ。」
唐突な俺の言葉にも香月博士は取り乱さずに、じっと聞き入ってくれた。
「・・・事の発端は、昨日俺が見た夢なんだ。 その夢は俺が見ていてもおかしいと感じるような物理的に
在り得ない現象が頻繁に出てきて、俺ですらその違和感から『これは夢だ』と断じてしまった。
そう叫んだ時に目が覚めて、嫌に違和感を感じすぎたことで、丁度横に居た霞に相談をした。
一連の俺の内容を聞いてくれた霞も、物理的に在り得ない現象を目の当たりにして、人間的に違和感を
感じるのは正常だと述べてくれた。
やっとその時違和感が薄らいで、気分が落ち着くことができたんだ。」
俺がそこで話を区切ったので、香月博士は相槌を打ってきた。
「・・・なるほど。 アンタが普段使っている物理法則無視な能力。
もういっそチート能力って呼ぶけれど、それの使用のし過ぎで、本能的に嫌悪感を感じ、それが夢に
反映した、と言う事ね。 それで?」
「ああ。 それで今日集まってもらったのは、この違和感について、不安を覚えたからと言う事だ。
ひょっとしなくてもだが、俺が理解している事が必ずしも正常ではない、と想定した場合、俺の攻撃
方法も、作成した『撃震モドキ』も、第五世代戦術機構想も、夢幻で終わってしまう危険性が出てきた
のかも知れない、と考えた。
頼みたいというのは、『現象』が起こっている内に、それを科学的に解明してほしい。
もっと言えば、第五世代戦術機構想の青写真、基礎設計図の完成図を作成して欲しい、と言う事だ。」
「なるほどね。 いつかアンタのあのチート能力については、私の方でも解明してみたいとは、実は
思っていたのよ。 だから、私にすれば研究テーマが転がり込んできた、と言えるでしょう。
でも、アンタの能力について何処から調べて欲しいの? 私としては『なんでも無限』だったっけ?
アンタが今やっているそれから調べたいんだけれど・・・・・・。」
俺は何気に霞や博士が買ってきたスイーツを「なんでも無限」を使って増やしていた。
テーブルの上には、お気に入りのお菓子が増えているので、3人共気軽に好き好きのスイーツを食べている。
俺は自分が買ってきたショートケーキを増やして、博士に手渡しつつそれを聞いていた。
「・・・・・・協力には感謝するが、分解とか解剖とかはマジ勘弁してくれ。 いくら俺でもそこまでは付き
合いきれんからな。
で、真面目な話で言うと、第四計画的に言えば、この後の展開で必須となるのが第五世代戦術機構想
だと思う。 ぶっちゃけハイヴ・コアの破壊はチート攻撃でも壊しさえすれば、問題はないと思う。
問題が有るとすると、億単位で彷徨っているBETAさん達ユニットの方だ。
俺の最大の処理数で言っても、現状1マイクロ秒単位での迎撃で、認識範囲距離が半径50km以内、
その中に居る目標を1時間あたり36億体が限度だ。
それで、この1時間を経過すると、能力の関係上4時間以上の休憩・具体的には睡眠が必須となる。
懸念事項として、現状の迎撃処理時間の短縮を使いすぎると、4時間以上の休憩に於いて目覚めなく
なる可能性が残されているので、これ以上のカスタマイズはできればしたくない。」
「・・・・・・改めて聞いてみると、本当にアンタってチート・バグね。 何よ、その仕様。 本当に私達と
同じ人間なの?」
「素直な感想、ありがとう。 俺も同じ意見だよ。 自分で言っていて情けなくなってきたからな。
でも、そうでもしないとこの世界ではキツイってのも現実なんだよ。
いくら最新鋭の戦術機を以ってしても生き残れないのがBETA大戦の辛いところなのさ。
アメリカがG弾を使いたがるのもその性さ。」
「フーーン。 まぁ、大体の相談事はわかったわ。 要は、アンタから提供されている情報を整合性のある
情報に精査しなおして、私達の方でも利用できるデータに置き換えろ、って事よね?」
「ああ。 非常に難しい作業だろうが頼みたい。」
「・・・・・・・・・ま、確かにかなり面倒な作業よね。
私の論文よりかは、幾分マシな程度だと思うけれど。」
「この作業にあたっては、そちらの言うとおりにして情報を提供する。 取り敢えず何だが、90番格納庫の
『撃震モドキ』をベースにして作業を行うと言うのはどうだろう?」
「はぁ? いきなり何を言い出すのやら・・・。」
「システムとして怪しいのは分かっているんだが、アレの中に有るコックピット周り、取り分け思考情報処理
の機能が取り出せて、この作業に役立てれば、情報処理能力が格段に上がると思うんだ。
それらを使って、戦術機の設計図を行いたい。 また、CADソフトを取り込んでデータ化できれば、
作業の大幅な改善が行えると思うんだが、どうだろう?」
「・・・・・・・・・そうね。 使えるかどうか、一考の価値くらいはあるわね。
良いわ。作業については90番格納庫で行いましょう。 どうせこの執務室では、ODLの関係も在って
作業しづらいしね。 じゃ、早速初めましょうか?」
「そうだな。できればそちらを先行して作業してもらって、合間に他の作業を挟まないといけないだろう。
合間の作業は、訓練部隊の卒業式、神宮司少佐の部隊設立、国連総会用のデータを揃える、等が
有ると思う。 それらの調整を行ってから、システムの調査とかを進めないと、ヴァルキリーズ中隊を
上手く教導部隊に仕上げれない。」
「ったく、ややこしいわね。 ま、『因果律量子理論』を使った00ユニットの作成、と言われるよりは、
幾分プレッシャー的には楽なんだけれど。 取り敢えず、ノートを持って90番格納庫に行きましょう。」
テーブルに広げたお菓子類を皿に一つにまとめ、コーヒーカップなどを仕舞ってあるケースに入れた。
俺達は簡単に身支度をしてから、執務室を後にしたのだった。
リザルト報告:
繰越経験値ポイント & SPポイント
経験値ポイント : 0ポイント(繰越分無し)
SPポイント : 5,115,350sp
経験値取得
内訳
自己能力レベル上げ
拾得物
第9世代戦術機(プロトタイプ・『撃震モドキ(仮)』)
仮組立中 達成率50%前後
総合計 5,115,350SP
と言う事で、08話でした。
何とかナトリウム水素電池 様 との約束は守れたと思う(汗)。
うん、此処に来てシナリオの修正が来るとは本当は思っていませんでした。
感想ってそう言う意味で、見直しするのに重要なヒントだと実感しましたし、今回の修正を経て、撃震モドキが動き出す事が出来そうです。
現状各世代ごとの戦術機で和名を考えてみたんですが、第五・六・八は未定。
第七は「御剣」、第九は「心神」の予定です。英名だとType-01-5G〜9Gと成るのかな?
ま、そこは追々で。第七のモニタリングには冥夜タンハァハァを使う予定。だから和名が「御剣」なんですよ。ついでに斯衛に教導する時は冥夜タンハァハァに丸投げ予定です。ネタバレでした。
で、今の所何も考えていない09話ですが、次何やるんだっけ?
イベント多発なので、話が進まねー。 うん、プロット書いて見直しが必要だ。
次は本気で更新が遅れそう。それこそ半月とか掛かりそうな気がしています。
ドン亀更新です。お許しください。
天候が安定しませんのと、花粉飛びまくりで体調悪しなのですが、皆さんもお元気で。
では、このへんで。