What happened in the story ?   作:斬【Zan】

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はい、皆さんおはこんばんにちは。 斬【Zan】です。

前回から約10日経ちましたが、今回は本当にグダグダです。
本気で後から改訂して再編集とかしないといけないかもと危惧しています。

今回のダイジェストーー

訓練分隊そつぎょーしましたー、
A−01と合流だー、
速瀬達とリターンの実弾模擬戦だー、
”思考情報処理”っておいしいの?

で、途中でくじけちゃって、半分ヤケで投稿しています。

例によって、ご都合展開ー、キンクリー、よろー でお願いします。

では、第09話です。 どぞ。



Muv-Luv 編 第09話

2001年11月15日 15時25分

国連軍横浜基地内 第02小講堂 第207b訓練分隊卒業式

 

 

 

 

 

現在俺は、白銀君達の卒業式に基地司令部付き士官として立ち会っている。

もう少し正確に述べるとすると、基地司令は勿論のこと、幕僚の一人として付き合っていると、

述べるほうが正確かも知れない。 まぁ、A−01連隊隊長なので、その関係と言う事だ。

 

 

15時の定刻から式は始まった。

急遽の式ということも有り、必要最小限度の人間しかこの小講堂には存在していない。

 

基地司令官であるラダビノッド准将の祝辞。相変わらずの若槻さんボイス(生真面目ver)で朗々と祝辞を

読み上げ、10分と言う短くもなく長くもない、しかし実入りのある心のこもった祝辞は聞いていて心地の

良いものだった。

 

続いて、貴賓としては誰一人としていない寂しい式なのだが、殿下からの祝辞が寄せられていたらしく、

それもラダビノッド准将が朗々と読み上げてくれた。

女性ならではの表現も在ったのだが、そこも渋目の若槻さんボイス(生真面目ver)で読み上げられ、

さすがにそこは違和感バリバリだったと述べておこう。

 

 

祝辞の披露が終わったので、今度は任官に先立ち衛士徽章の授与となった。

 

委員長、冥夜タンハァハァ、あややん、タマ、鎧ッチ、そして白銀君の順に徽章を胸に付けてもらい、

いよいよクライマックス。

 

締めの言葉を准将が述べて、進行係の司令部の大尉が号令を掛け、滞ること無く式は終了した。

基地司令から順番に退出していき、俺も順番のとおりに退出した。

原作宜しく、小講堂の中に残ったのは、新たに任官となった新米少尉たちしか残っていない。

 

小講堂を出た所で、俺と神宮司軍曹は打ち合わせした通り二手に別れた。

軍曹は最後の御役目の為、小講堂の出口に残った。 予定では式の終わった少尉達は、軍曹への

挨拶の後、軍曹の案内により廊下を進んでくる筈なので、俺はその先で待ち構えていた。

 

待つこと10分ほど。 案の定、ほとんど纏まったまま、一塊の集団が廊下を進んでくる。

誰も迷子になっていないようだな。 俺はここで声を掛けることにした。

 

「少尉任官おめでとう。 貴官等の任官先である部隊への案内は、私が行うことになっている。

 私の後に着いて来たまえ。」

 

俺はA−01連隊第一大隊第九中隊が待っているミーティング室に向かい、先に進んでいく。

後ろから新人6人がそれに続いて歩いてくる。

 

その間、今朝方まで行っていた作業について、思い出していた。

 

 

 

昨日から始まった、撃震モドキでの解析については、最初から難航続きとなった。

 

俺のチート能力は、こちらの世界の常識を尽くオーバーしていたからだ。

 

最初、コックピット・ブロックに入り、思考情報処理についての概論図など、提唱したデータの開示を

表示してみたら、確かにコックピット内での思考を装置が読み取り、データ入力や対話型の表示などが

行えて便利ではあったが、その構築図は俺が思っている以上にお粗末だったらしく、そこの整合性を

合わせる所から始まった。

 

「・・・ああっ、もうっ、何なのよっ!! どうしてこんないい加減な思考で、こんな特殊なシステムが

 組み上がったの?!」

 

「うぅっ、す・済みません・・・・・・。」

 

「ったく。 発想というかネタ的には面白いけれど、具体的に構築されている分、基礎概論が手抜きって、

 ぶっ飛ばしたくなるわねっ!!」

 

「面目次第もない。 ・・・・・・怒鳴りたくなるのはわかったけれど、これに向かっての情報処理方式を

 具体的に述べてくれないと、俺としても構築の手がかりができないから、何か情報を提示して欲しい

 のだが・・・・・・、無理っぽ?」

 

「誰が無能とかよっ!! 良いわよ! やったろうじゃない!!」

 

「(いや、無理っぽいか?とは聞いたが、無能とは言っていないんだが・・・、言わないでおこう。

 これ以上罵られたら、俺挫けそう・・・・・・。)」

 

とか思っていたら、霞が俺の左手をキュッと握って、無言で励ましてくれた。 ホンマにええ娘や。

 

・・・・・・で、午前0時に差し掛かる頃に、霞がダウンした。 無理もない。 何時もは寝ている時間だからな。

 

「博士、霞がダウンした。 そろそろ切り上げよう。

 初日から飛ばし過ぎた。 明日のこともあるから、今日はこの辺で良いだろう。」

 

「・・・・・・仕方ないわね。 じゃ、ここまでまとめた方式で、新たにインターフェースの整合性を行って、

 処理スピードの向上を図りましょう。 と言うか、その処理については、どうやっていたのよ?」

 

「ああ。 基本的には回収した戦術機、撃震だが、の戦術コンピュータのCPUをそのまま流用しているんだ。

 機体情報の伝達とかの流れは弄っていなくて、入ってくる情報を脳内で絶対時間的思考力を以って

 自分で処理していた。 処理が終わった結果をそのまま撃震の戦術コンピュータのCPUに渡す等の

 ルーチンを繰り返していたんだ。

 

 俺の処理の方が早いから、戦術機からの情報処理待ち時間は別の処理をして・・・「ちょい待ち。

 今、何つった?」・・・いたし、 ぅん? だから、俺と撃震の戦術コンピュータとで、マンツーマンの情報

 処理をしていた、と言った。 それが何か?」

 

「えっと、さっきのアンタの言った内容を、私の認識で解釈した所で言うと、メイン情報は結局アンタが

 やっていた、と言う事で、合っている?」

 

「・・・・・・う? うーーん。 うん、合っている。」

 

「アンタねぇー!! いい加減チート仕様はやめなさいよーーっ!!」

 

「な・何だよ、いきなり。」

 

「〜〜〜〜ッ ・・・・・・アンタが、『思考情報処理』とか聞きなれない処理について言うものだから、

 私や社は、新システムの構築が必要だと思って、最初からシステムの構築について考えていたのよ。

 私が言いたいこと、分かる?

 そんな簡単にシステムの構築をやってくれちゃって、結局は思考するのはパイロットって事で良いのよね?」

 

「・・・・・・ゔ?! ゔん そう、かな? ・・・・・・そう、だな。 システム的に言うと、処理方式は既存の

 システムを参照にして、入力と出力のインターフェースを思考したことを読み取れる物に置き換えていた

 と言う事か? うん。結局考えるのは人間でなければ、対応できないからな。 第五世代機の主旨は

 そういうところだよ。」

 

「・・・・・・はぁ〜〜。 そうなら早くに言ってよ。 結局この数時間は無駄に終わったじゃない。」

 

「えっ?! いやでも、全くそうだとは思わないぞ?! いくら思考レベルを意識していない極短時間に

 設定して、個人が思う以上の部分で計算していても、その補助に使われるCPUは高性能のものを

 使わないといけないから。 それと、情報処理のロジックを技術供与してもらうことで、俺としても

 具体的なイメージが分かりやすかったので、撃震モドキのシステムよりも、こちらの方が遥かに出来は

 良くなっているぞ。」

 

「そう・・・? ま、良いわ。 って事は、パイロットがメインCPUの役割だとして、サブである戦術機には

 どう言う仕組み、サブシステムが必要になるの?」

 

「そうだなぁ・・・・・・。基本動作パターンとか動かすのに必要なプログラム群かな?

 モジュールの塊は揃えてあった方が良いんじゃないかな? で、動かすための具体命令をパイロットが

 請け負う。 つまり、パイロットが車のキーと運転手(行動の意思)で、戦術機が車の役割だよ。」

 

「なるほど。そっちの方が分かり易い例えね。 と言う事は、それ様にロジックを変える必要があるって事ね。

 これは宿題っと。 じゃ、そろそろ戻りましょう。 私も久しぶりにベッドで寝たいわ。」

 

そうして俺達は、解散した。

 

 

 

翌朝、点呼前に神宮司軍曹に会って任官した後の仕切りの打ち合わせをしたいと申し入れ、点呼後に

小ミーティングを行った。

 

A−01に合流後、顔見せの後に親睦会を兼ねたオリエンテーションを実施させその後、

本日から12月1日まで部隊全員を合同宿舎に放り込む様に設定した。

これは隊員同士のコミュニケーション不足を補うのと、男女間の認識差分を無くすため、

白銀君も彼女らと同じ部屋で寝泊まりさせることにするが、本当の目的は榊と彩峰の不仲を

解消させることが目的である。

 

「・・・趣旨は分かりますが、いきなり男女を同室に入れても宜しいのでしょうか? その・・・、間違いとか、

 偶発的接触に感化されたりはしないとお思いですか?」

 

軍曹の懸念も最もだが、来月初旬までの時間は余りにも少ないので、そうも言っていられなかった。

 

「軍曹の懸念も分かるが、あまり時間がない。悠長に構えていると問題が広がるばかりだろう。

 面談のおり、榊には今までに無い様な追い込み方をしたので、プレッシャーから暴発する可能性は

 高いが、訓練内容によって有無を言わさず宿舎では寝るだけにしてやれば、懸念で終わると考える。」

 

「そうですね。 では、その辺りの加減については、伊隅大尉にお任せする他ありませんね。」

 

「そう言う事だ。 そっちの指摘は俺がするから、軍曹は207bの方を頼む。 2週間ほどの合宿なので

 その準備を午前中取り組み、余った時間を部隊合流に向けての準備やレクチャーをしておいて欲しい。」

 

「了解しました。」

 

俺と軍曹は別れて、俺は伊隅大尉を内線で呼び出し、朝食前に軽い打ち合わせをする事ができた。

決めた内容を大尉に説明し、A−01の方でも受け入れ準備を進めるように指示した。

 

因みに、大部屋に連中を叩き込むわけだが、各部屋の責任者を伊隅大尉、速瀬中尉、宗像中尉とし、

3人による部隊員の管理を行わせるようにさせた。 恐らく午前中は隊員の選抜を行うことになり、

新人を連れて行くのが1530以降になる旨を伝えると、ミーティング室には1500には集合することを

指示しておいた。 後は俺が此処に連れてくるという運びとなった。

 

 

 

今朝方まであったアレコレを思い出していたら、A−01が待っているミーティング室に到着していた。

俺は後ろの新人に声をかけた。

 

「この部屋だ。 私が合図したら入って来なさい。」

 

そう言いつつ、ミーティング室の扉を開け中に入っていった。

中では既にヴァルキリーズが集合しており、俺の入室に合わせて一斉に敬礼をして来たので、

壇上に上がってから答礼を返した。

 

「・・・ご苦労。 全員、着席せよ。」

 

俺の合図で、全員が着席をした。 落ち着いた所で、隊員の顔を見てみると、午前中に打ち合わせて

いた通りの運びで作業が完了しているのが見て取れた。 俺は言葉を発した。

 

「昨日連絡した通り、本日訓練校の卒業を経て、新人共を連れてきた。

 既に面子については、207a訓練分隊にいた人間から聞いていると思うが、改めて新人の紹介を行う。

 入って来なさいっ!!」

 

俺は207b訓練分隊の連中に合図を送ると、順番に新人たちは入室してきた。

壇上横に新人たちが整列し、ヴァルキリーズと対面する形で整列した。

 

「・・・では、簡単に榊少尉から白銀少尉まで順番に自己紹介から始めなさい。」

 

今並んでいる順番に挨拶を始める榊達207b訓練分隊の連中。

特に滞ること無く白銀君までの紹介が終わったので、一旦部隊の紹介を混ぜることにした。

 

「・・・よしっ、では本日から貴官等が配属となった部隊名称を紹介しよう。

 

 まず、私はこの部隊を指揮する、エイデン・ピアース中佐である。

 そしてこの部隊の正式名称は、

 国連太平洋方面第十一軍 横浜基地所属、 香月副司令直属 特殊任務部隊 A−01連隊だ。

 

 また、この中の第一大隊第九中隊を纏める伊隅大尉の名を取り、通称『伊隅ヴァルキリーズ中隊』と

 呼ばれる部隊に、貴官等は配属となった。 もう察していると思うが、貴官等の対面に居るのが

 その中隊員全員だ。 では、中隊代表である伊隅大尉。 新米少尉達に中隊の皆を紹介してくれ。」

 

「ハッ、 ようこそ、新米少尉諸君。 私がこの部隊を預かる伊隅 みちる大尉だ。

 今日から諸君らの面倒は、私の中隊で行うこととなった。 任官したからと言って気を抜かぬよう

 注意し、日々の精進を怠るなっ! 良いな!!」

 

「「「「「「ハッ、宜しくお願い致しますっ!!」」」」」」

 

「うむ。 良い返事だ。 では、中隊を紹介しよう。 まずは・・・・・・。」

 

人の悪そうな笑みを浮かべ、伊隅大尉は部隊紹介を始めた。

 

この伊隅ヴァルキリー中隊は、明星作戦後に出来た中隊で、香月副司令の無茶な作戦のお陰で

A−01連隊からその数を減らしていく部隊の中で唯一生き残っている中隊だ。

だが、生き残っていると評じられても、単に全滅していないだけで、その絶対数は確実に減っている。

 

部隊長の伊隅 みちる大尉、副長の速瀬 水月中尉、速瀬を良くからかう 宗像 美冴中尉、

CPの涼宮 遥中尉、昨年入隊した生き残り 風間 祷子先任少尉、同じく自称剣道小町の神谷 薫

先任少尉、無口無愛想だが、大の子供好き雪代 巴先任少尉、ちょっと目上で医療の心得の有る

高荷 恵先任少尉 達が2001年春まで在籍していた。

 

そこへ2001年夏に207a訓練分隊の5名(涼宮 茜、柏木 晴子、築地 多恵、麻倉 美雪、高原 紗恵子)

を追加して、やっと中隊の戦術機定数である12名を確保していた。

ここへ白銀君達207b訓練分隊6名(榊 千鶴、御剣 冥夜、彩峰 慧、珠瀬 壬姫、鎧衣 美琴、白銀 武)を

足して、やっと現在19名となった。今の状態でやっと1個半中隊と言える。

この中へ後半個中隊揃えて2個中隊としたいところだが、その様な余分な人員は居ない。

 

 

「・・・・・・・・・だいたい紹介は終わったな?

 

 本日の午前中諸君らに準備させていたチーム分け等は、全てこの作業に対応するための下準備

 だったと言うことを改めて認識し、私の説明の後、グループごとに別れ作業に取り組んでもらう。

 では、新人少尉達は空いている席に着席せよ。

 

 それでは新人も合流したことなので、昨日から諸君らに伝えようとして、”ケチ”が付いていて

 伝えきれていない今後のA−01連隊全体の任務内容の概要について説明を行う。

 

 だがその前に、この特殊部隊の設立について説明しておこう。

 当然ながら、此処から先の話は全て部外秘だ。 

 

 そのため、此処に居る人間以外に漏らした場合は、情報漏洩の嫌疑で、良くてMPのお世話に、

 最悪の場合、現行犯で即射殺もあるものと注意せよ。 これは絶対命令であるっ!!」

 

ミーティング室に居る、全ての隊員たちが声を揃えて『了解しましたっ!!』と返事をしたので、

そのまま説明を続けるのだった。

 

内容的には、横浜基地内部に於いての伊隅ヴァルキリーズは基地司令部付き教導部隊と言う肩書きを

持っている所から始まり、死亡した場合の通知には一般的な教導部隊での事故死として報告がされる

事を話した。 また、これら特殊任務中の死亡の場合、情報秘匿期間を経過しないと本当の理由も

公開されない旨を伝えた。

 

次に、部隊の設立とオルタネイティブ計画について触れた。

基本的にA−01連隊は、このオルタネイティブ計画における実行部隊であり、計画に基づく作戦を実行する

為に、特殊な優先権限とその時の最新鋭装備を以って任務に当たる事を言い渡した。

当然、最重要任務に就く可能性が高い分、その生存率は極めて低く、第四計画におけるA−01連隊も

その過酷な任務により、多くの犠牲者が出ている経緯を伝えておいた。

 

「・・・・・・・・・特に部隊維持の危機として、オペレーション・ルシファー・・・、こちらの言葉では『明星作戦』

 だったか、この時の損耗率はほぼ壊滅状態だったと聞いている。 確か伊隅大尉。 貴官はその

 生き残りだったはずだな?」

 

「ハッ、 正確には私ともう一人しか生き残れませんでした。 また、一旦A−01連隊として機能できず、

 後日、生き残った私ともう一人が中隊長として、帝国軍から移籍した衛士を合わせて、何とか2個中隊

 を組織して保っていましたが、戦術機も足りませんでしたし部隊運営はほとんど無理でした。」

 

「・・・・・・そうか。 良くこの部隊だけでも維持してくれていたな。

 そう言う意味でもこの部隊の損耗率は異様に高い。 ここ最近は戦術機による出動が掛からなかった

 ようだが、それでもニ個中隊が一個中隊に減っている事を思えば、この先も気を抜かず日々精進を

 重ねて欲しい。

 

 では、部隊の話はこの位として、来月12月1日までに、諸君らにはA−01連隊としての仕事の説明に

 移る。 諸君らにやってもらう任務は、一言で言えば『教導』になる。

 

 ここで一つの機密、と言っても今月の23日までと言う期限付きになるが、A−01である諸君らには

 先行してこの情報を伝えておく。 この情報を元に、この先の任務に励んで欲しい。

 

 事が起こったのは13日の佐渡ヶ島、つまり甲21号ハイヴは・・・陥落した。

 実行したのは、オルタネイティブ第四計画直属 特殊任務部隊A−01連隊隊長である、

 この私が実行した。」

 

一瞬、声にならない、しかし確かにザワッと音がミーティング室に起こった。

その部屋に居た誰もが、信じられないと言う想いを持ち、しかし声に出せなかった音が出たのだ。

続けて俺は情報を公開する。

 

「・・・・・・静かに。 諸君らの驚く気持ちは分からんではない。 が、この情報は正式発表されない。

 正式発表は、今月23日 日本帝国政府より発表が成されることになっている。

 この発表を元に日本帝国政府は、その国土の回復を全世界に対して宣言する。

 

 そして、その宣言こそが、来たるべき人類全体が反抗するための最初の狼煙となるだろう。

 諸君らの任務は、その反抗の為の『教導』と言うことになる。 ここまでは理解できたか?」

 

俺の問いかけに、一瞬の間が空いたのだが、次々に隊員たちから質問のための挙手が上がった。

だが、俺はそれらを尽く無視して、説明を続けた。

 

「・・・今の時点での質問は、一切受け付けない。

 諸君らには軍隊に於ける”Need to Know”と言うものを理解してもらう。機密情報には知り得る者と

 知り得なくとも良い者が存在する。 情報漏洩と言う観点から、関係者は全ての情報を知っていなくとも

 事態に対応できるので、知る必要のない情報は最初から教えない、と言う事を指す時に使われる軍事

 用語の一つだ。

 

 今の時点で、諸君らは”どうやって”と疑問を持ったと思うが、その手段を知らなくても、諸君らの任務

 には支障は無い為、諸君らには最初からハイヴ・コア破壊手法などの情報は開示されない。

 

 その上で説明を続ける。

 

 私は佐渡ヶ島ハイヴのコアを破壊する前に、幾つかの情報をハイヴ・コアより収集することに成功した。

 その中に、今まで謎の物質であったグレイ物質についての情報が有り、取り分けグレイ6を流用する

 事で、戦術機の今以上の高効率での作業が可能であることが14日、香月博士によって解析された。

 

 その運用方法とは、一言で言うと『誰にでも扱うことが出来る戦術機』と言うコンセプトとなる。

 現状では、戦術機適性検査をパスしなければ、戦術機には乗ることが出来ないが、この検査に弾かれて

 涙をのんだ戦士たちは大勢居る。 諸君らの任務は此等の人々に教導を行い、全人類の戦術機による

 反抗作戦の為の足がかりを育てる事になるだろう。」

 

俺はここで一区切り置いた。

ここで、一人の人間が挙手をした。 白銀君だった。 俺は彼に発言を許した。

 

「・・・中佐。その戦術機とは、従来の戦術機と同じ機構なのでしょうか?」

 

「良い質問だ、白銀少尉。 私と博士は、その機能上の特徴から、現時点で勝手に”第五世代戦術機”と

 命名した。拠って、諸君らが行う教導は、全て第五世代戦術機への機種変換教導と言うことになる。

 現役の戦術機乗りも、戦術機に乗れない兵士も、合わせてこの機種変換教導を受けることになる。」

 

驚く声がそこかしこから聞こえ、続けて伊隅大尉が挙手をしつつ質問の声を上げた。

 

「ちゅ、中佐。 できればそのグレイ6の特徴や、第五世代戦術機についてもっと詳細情報の開示を

 お願いします。」

 

「・・・・・・そうだな。 全てでは無いが、公開できるところまでは情報を開示しよう。

 

 現状BETA達は、グレイ物質を戦略上重要と思っているらしく、これらの物質がフィールド上に存在する

 場合は、こぞって此等の回収を行う習性のようなものが有る。 拠って、第五世代戦術機がグレイ物質

 を用いるものであるので、通常よりもBETAユニットの集まりは良くなることが予想される。

 

 で、グレイ物質は皆も知っていると思うが、3種類が確認されている。 G弾に使われるグレイ11は有名

 だが、他にグレイ6と9が存在している。

 長年の研究の末、グレイ9には超電導性物質であることが判明してきたが、グレイ6はまだそれ程解析が

 進んでいないのが現状だ。

 

 それで、ハイヴ・コアから得られた情報には、グレイ6は情報伝達物質として使われており、ハイヴ内の

 通路などに使われていることが判明した。

 単に通路用の壁材と言う訳ではない。このグレイ6はハイヴ内の情報を逐一ハイヴ・コアに伝え、

 また、ハイヴ内にいるBETAユニットに、コアからの情報を伝えたり、ハイヴ内に居る各ユニットの

 エネルギー供給などにも使われている事が判明した。 まぁ、例えるならばグレイ6はハイヴの神経の

 様な役割を果たしていることになる。」

 

ここで言ったんの区切りを設けて、隊員達の様子を見ると、皆真剣な表情でこちらを見ていた。

皆の意識が俺に集中して、「もっと情報を知りたい」と言う顔をしているので、このまま説明を続けた。

 

内容的には、グレイ6を戦術機の情報伝達に用いた場合の効率向上を検討した所、パイロットへの情報が

ダイレクトに伝わる特性を見いだせたので、操縦システムに組み込んだ場合、戦術機特性のない者でも

機体の状況認識が向上し、適性者と対して変わらない操縦が行えることができると説明した。

 

そこで、適性できなかった者とできる者との差分を埋める教導を施すことで、誰にでも操縦が行える

戦術機が考案されたことを述べた。

また、既存の戦術機パイロットも、この操縦伝達のダイレクト特性に慣れるまでは、教導が必要となるので、

此等の教導を行う事を述べた。

 

「・・・・・・なるほど。 その為の『教導部隊』に我々を用いるのか・・・。」

 

伊隅大尉はその様に感想を述べた。 A−01部隊を『教導』に使う意味を納得したみたいだった。

だが、この言葉に叛意を示すものが居た。 速瀬中尉だった。

 

「・・・中佐、質問が有ります。

 先程の『教導』任務には、BETAへの攻撃任務は含まれるのでしょうか?」

 

「・・・・・・演習と言う意味の攻撃訓練は含まれるだろう。

 だが、諸君らが最前線に出撃して、第五世代戦術機以降の戦術機を用いて戦略・戦術を指揮したり

 する機会は、徐々に減る事となるだろう。」

 

「・・・・・・そうですか。 では、完全にヒヨッコ共の面倒を見るための部隊となる訳ですね?」

 

「・・・先のことは分からない。 戦況の変化に伴って、選抜された部隊を新設する可能性は残っているが、

 現時点で諸君らがそれらに選抜される予定は、今の所無い。」

 

苦虫を潰したような顔で「・・・分かりました」と答える速瀬中尉。 俺はこの態度に一抹の不安を

覚えたので、俺は速瀬中尉を詰問することとした。

 

「・・・・・・速瀬中尉、何か含みの有る言い方に聞こえるが、任務内容に具申事項でもあるのか?」

 

「・・・いえ。 ただ、折角の新兵器ですので、思いっきり使用して見たかったと、感じたものですので・・・。」

 

「速瀬中尉。 我々の存在意義は個人的な復讐を行うための団体ではない。 飽くまでも第四計画での

 作戦実行部隊が主任務であることを忘れるな。

 確かに、個人的にBETAを殲滅したいという願望を持つ事について、どうこうとは言わないが、

 その感情が元で任務に集中できなかったり、作戦上支障があると判断した場合、私は貴官をA−01

 部隊から放逐する。

 

 これは速瀬中尉に限らず他の隊員にも同じことを述べておく。 肝に銘じておいて欲しい。

 良いな、速瀬中尉?」

 

「ハッ、了解しました。」

 

「・・・では最後に、この後は予定している作業に取り掛かってもらうことになるが、取り敢えずの目標は

 今回合流した第207訓練小隊11名全員を、A−01部隊として使えるレベルに指導することを目標と

 してもらう。

 

 指導までの期間は12月1日までとし、できれば今月末日までには仕上げてもらう必要が有るだろう。

 だが、期間がいくら短いからと言って、スパルタ式宜しく新人を潰すかの様な訓練は絶対にするな。

 

 今は使えない新人でも、その内技術を覚えて教導官として、適正値の少ない戦士を戦術機乗りに

 錬成しなくてはいけない貴重な戦力だ。諸君らの教導の本当の意味は、単に鍛えれば良いと言う

 事では無いのだと、改めて心に刻め。 良いな?

 

 また、先に述べた第五世代戦術機構想に伴う、訓練機器やカリキュラムは現在急ピッチで準備中で

 ある為、今は此等の技術に触れることは出来ないので、この先を楽しみにするように。

 

 今後の任務については以上だ。 では、伊隅大尉。作業を開始しろ。」

 

 

先程までの緊張した面持ちではなく、雰囲気的にラフな感じで大きく3つのグループに別れることになった。

それぞれのグループリーダーは伊隅大尉、速瀬中尉、宗像中尉だが、それぞれを中心としてメンバーを

寄り集めている。

 

一方で俺は、グループの中に入らずミーティング室の端で様子を見ている涼宮中尉の方に向かった。

 

「涼宮中尉、ちょっと良いか? 昨日言っていた貴官に任せる予定の子を紹介したいので、一緒に来て

 欲しい。」

 

「ハッ、了解しました。」

 

俺は彼女を伴って、速瀬中尉のグループに向かった。

 

「・・・速瀬中尉、どんな具合だ?」

 

「あ、中佐。 全員敬礼ッ!」

 

速瀬中尉が集めているのは、主に自分の関係するポジションの面子だ。 速瀬中尉は前衛部隊の纏め役

である為に、突撃前衛と強襲前衛の要員を集めていた。この中に目的の子、白銀少尉が居た。

俺に敬礼している皆に対して、俺は答礼を返して話を進めた。

 

「・・・・・・皆、ご苦労。 それで、今少し時間を貰っても良いか?」

 

「ハッ、何か有りましたでしょうか、中佐?」

 

「いや何、そんな大したことでは無い。 今此処に居る、白銀少尉についてなのだが、別件で仕事を与えて

 おこうと思ってな。 少々お邪魔するぞ。

 

 白銀少尉。 貴官にはここでの訓練以外にも、別途仕事をやって貰う事にする。」

 

「えっ?! お・俺がですか? ハッ、了解しました!」

 

前半俺に口答えしてしまったので、速瀬中尉から睨まれて咄嗟に返事をしたのだが、まぁ後で彼女に

絞られると思いつつも話を進めた。

 

「・・・ああ、そうだ。 と言うのもこの白銀少尉は、先日の戦術機適性検査に於いて、歴代一位の適合率

 を叩きだした逸材だ。 その為、戦術機のシミュレーター訓練を省いて別の訓練を習得する方が良い

 ので、先生役を連れてきた。 涼宮中尉、この少尉を先日述べたレベルにまで錬成してくれ。」

 

「ハッ、了解しました、中佐。

 宜しくね、白銀少尉。 私が貴方を『書類は大親友』となるまで面倒を見ますね。」

 

「えっ?! あ・あの、宜しくお願いします? 涼宮中尉。」

 

「ちょっ、ちょっと何で、そうなるんですかっ?! 中佐っ!!」

 

横から獲物を横取りされて怒っている様な中尉に、俺は仕方なく説明をすることにした。

 

「何だ、納得いかないとか言い出すなよ、速瀬中尉。

 

 この白銀少尉はな、シミュレータ訓練の基本動作教習と応用動作教習をたった一日でクリアしたんだ。

 それとついでに卒業用教習シミュレーターのベリー・ハードモードもやらせてみたら、コンティニュー回数

 が16回だったが、それでクリアーした奴なんだ。

 

 実戦ではとても使えないが、シミュレーターで遊ばすのであれば、その時間を書類作成に宛てる方が

 効率的だと言えるだろう。

 反対に、戦術機機動に耐えうるように肉体強化に重点を置いて鍛える方が、効率が良いと判断した。

 その為、戦術機シミュレーター教習を行う時は、白銀少尉を涼宮中尉の方に行かせて仕事をさせてくれ。」

 

「そ・そうでしたか・・・。 分かりました、少尉には肉体強化の訓練を実施します。」

 

「ああ、宜しく頼むぞ、速瀬中尉。 白銀少尉。 ワザワザ貴官に仕事をさせるのは、先ほどの理由が主で

 あるが、本当の理由は、貴官の体力の無さがネックとなる事が懸念されるからだ。 シミュレーターは

 所詮シミュレーターでしかない。本当の実機による感触とは全くの別物なのだ。

 

 機動訓練をシミュレーターでクリアしたとしても、実機でも同じ動作が行えるとは限らない。

 体力を付けないといけないのは、付けていないで実機に乗るよりも安全性が比べられるまでもなく

 上昇するからだ。特に平行移動中の横Gなど、鍛えないと操縦できない部分はシミュレーターでは

 再現されないから、実戦でバテてしまっては意味がない。 そう言うところを速瀬中尉に鍛えて貰え。

 

 書類仕事をして、部隊運用に必要なスキルも身に付けろ。 その上で、貴官が空いた時間で自習として

 シミュレーターを乗る分については、私は何も言わん。 少尉の場合通常の人の2倍も3倍も努力

 しないと一人前にならない。 その事実を胸に刻みなさい。」

 

「・・・・・・あ・あの、何気にハードなんですが、そ・その、新米の俺に出来るでしょうか?」

 

「・・・フン、何を甘えたことを言っている。 訓練兵であれば、その様な泣き言も通じるかも知れん。

 しかし、下士官として任官した以上、軍務の一環として訓練を行っていると言う事は、これも立派な

 軍の任務なのだ。何より、この任務によって軍は少尉に給金を支給しているのだ。

 それに見合った仕事をしてもらわなくては無責任というものだろう? それに書類作成については、

 別途手当も付いてくるのだからな。

 

 しっかり軍の役に立って見給え。 それが少尉にとっても今後の任務への自信につながる。

 

 では、邪魔したな。 作業を続けてくれ。」

 

そう言い、俺は後の作業について、各グループに任せることにした。

壇上に戻り、退室の挨拶代わりに、今日の実機演習について述べておこうと思い、全員にその旨を伝えた。

 

「・・・よしっ、全員傾注せよっ!!

 ・・・・・・この後は各グループごとに作業を進めるが、昨日申していたように本日1800から、第三戦術機

 演習場に実機にて集合せよ。 本日合流した第207b訓練分隊は戦術機を与えられていないため、

 演習場アリーナにて見学となるが、1800から実弾を用いた実機演習を行う。

 その為、今の作業は遅くとも1730までに終了し、1800からの演習に備えること。 良いな?!」

 

俺がそう通達すると、伊隅大尉が顔色を変えて反論をした。

 

「・・・え?! じ・実弾って、中佐、それ聞いていませんけど・・・・・・?」

 

「ん? ああ、今言ったからな。 実弾演習を行う、と。 では、引き続き作業を続けよ。」

 

俺はそう言うと、さっさとミーティング室を後にした。 後方で伊隅大尉が何か言っていたが無視した。

 

 

 

2001年11月15日 16時15分

国連軍横浜基地内 地下22階 90番格納庫

「撃震モドキ」コックピット・ブロック内 香月博士 & 社 霞

 

 

 

昨日の続きから、と言う事で既に香月博士と霞がこの中で作業を継続していた。

 

昨日の宿題を見直して、今日も思考情報処理によるロジックを、卒業式の準備などで俺が抜けている間も、

この2人は黙々とこのコックピット・ブロック内で作業を続けていた。

 

だが、2人の構築したイメージと、俺の設計・・・、もとい、妄想してできたコックピット・ブロックの仕様とで

余りにも基礎ができていない出鱈目さから、余計な作業が増えた分、遅々として解析の方は進んで

いなかった。

 

1800での実弾演習を1時間後に控えているため、休憩がてら2人を回収にきた俺は、撃震モドキの中に

入ってみたら・・・・・・、

 

「・・・訓練部隊の卒業式どうだった? A−01との合流は出来たの?」

 

と一般的な事を聞かれ、それに答えようとしたが、香月博士のヤル気の無さ加減を見て、俺は言葉を

出せなかった。 俺は当初の予定通り、2人を実弾演習に誘うことにした。

 

「ああ、なんとかね・・・。 実は昨日連中とシミュレーターで勝負したんだけれど、何故か俺が圧勝したら

 イカサマだ、とか言われてね。 頭にきたんで今日は実機でリターンマッチを行うことにしたんだ。

 この後、1800から行うが、見に来るかい?」

 

「・・・アンタねぇ・・・・・・。 そんなの時間と労力の無駄使いの何者でもないんだから、止めときなさい!

 つくづくアンタの能力って、チートよね。 圧勝? 当然じゃない、アンタの能力が在って辛勝とかしたら、

 お笑い草だわよ。」

 

「まぁ、そうだよなぁ・・・。 確かに大人気ないのは分かっているんだが、今日の昼ぐらいに何故か

 神宮司軍曹から、今日のリターンマッチについては手加減して欲しい、とか直談判されちゃってね。

 多分・・・、連中軍曹にでも相談したんだろうなぁ・・・。 まぁ、手加減云々については仕方がないの

 だが、一応行う旨を伝えてきたから、傍で見る分には面白いショーにしようかと・・・。

 本当に来ないのか? 此処の作業も行き詰まっているそうだし、気分転換になるんじゃないか?」

 

「・・・・・・フーーン・・・、まりもが、ねぇ・・・・・・。 ね、アンタから見てまりもってどう? 口説いてみたい?」

 

「神宮司軍曹? ああ、一番最初に会った時に、軍曹には『貴女は俺の好みの女性だ』とは言ってあるが、

 それが何か?」

 

「ホゥホゥ・・・。 さすがアメリカ人。 日本のそれとはアプローチが違うわぁ・・・。

 で、その後の2人の関係は? 具体的な攻略とか始めているんでしょうね?」

 

「・・・何で自分のことだと取り乱すのに、親友の恋愛状況にそれだけ関心が高いんだ?

 特に彼女を口説いたりはしていないよ。 今彼女と関係を持つと、この先の展開に於いて支障が

 でるかもだから、一応控えている。 貴女についても、あれからアプローチしていないだろ?

 ・・・・・・あっ、そうでも無いか・・・。一度このコックピット・ブロックに運ぶ際に、『お姫様抱っこ』したかな?」

 

「はぁ?! 『お姫様抱っこ』って? ・・・・・・・・・ッ!! あ・あんなの、くくく・口説くウチに入んないわよっ!!」

 

「そぅ? じゃ、そろそろ行こうか? 霞、こっちにおいで。 では、はい、博士。 霞を抱っこしてあげて?

 じゃ、お姫様抱っこ。 はい。」

 

俺は両手を広げ、香月博士と霞をコックピット・ブロックの外に連れだそうとして、両手を広げた。

 

「ななな・なんで、そうなるのっ!!」「お約束ってやつだよ。」「博士、顔、真っ赤です・・・。」

 

何故かお姫様抱っこを意識している博士。 全く良い年なんだから、一々恥ずかしがらなくても・・・・・・。

とか思っていたら、抱っこしていた博士と霞から一緒につねられた。 ・・・女心は難しいなぁ・・・。

 

 

霞と博士を撃震モドキから引っ張りだして、揃って90番格納庫を後にする俺達。

今日まとめた成果については歩きながら、色々と話を聞いていた。

 

やはり、ネックとなるのは人間の頭脳・特に無意識下の思考力をグレイ6を使ったインターフェースで

視床に情報を渡しつつ、処理させると言う部分。

俺は自前で絶対的時間感覚を持っているので、渡される処理時間をフェムト秒(f)単位(千兆分の一秒)

で思考できるので、そこらのCPUにも引けを取らないでいる

だが、これを一般の訓練されていない人間で行うことに問題が生じるので、どうしても人間で処理する

スピードとグレイ6のインターフェースとの間に、もう一つ処理を具体的に進めるためのアシスタント用

デバイスが必要となるらしい。

 

人工知能の様な高度なものでなくても良いらしいが、その分高度なプログラムを必要とするらしい、

との結論が出た。

 

「・・・なるほど。 でもそれって、戦術機の状況デーモンと同じだと思うから、それらのプログラムを

 高速演算用にカスタマイズしてやれば、それほど難しいとは思わない。

 霞、後で戦術機のプログラム仕様を一式持ってきてくれないか?」

 

「・・・はい。 演習が終わったら、格納庫に持っていきます。」

 

「ああ、ありがとう、頼むよ。 では続いては、アシスタント用のデバイスなんだけれど、量子演算器を

 作成するために集めているとか試作したとかで、香月博士の方の手持ちで高度処理用のCPUの

 余りは無いものだろうか・・・?」

 

「・・・・・・そうね。 確かに試作品の中には、そう言う目的で処理スピードの早いCPUを作ったわね。

 それ程処理スピードの早い物を求めないのなら、市販の奴をカスタム化するだけで使えるようには

 できるけど、それでも良い?」

 

「うーーん、今言っている奴って、撃震とかの戦術機用のCPUの何倍くらいの物なの?」

 

「安心なさい。 幾ら市販されていても戦術機用のCPUで比べたら遥かに高級品になるから、お粗末じゃ

 ないわよ。」

 

「・・・まぁ、そう言う事なら、博士の太鼓判があれば、俺からは何も言わないよ。」

 

「・・・そう? 了解したわ。 準備しておくわ。」

 

「そうしたら、演習終えて夕食や諸々の準備して、今日中にプロトタイプの試作品作っちまおうぜ?

 俺も明日からはそちらに専念して付き合えるから。」

 

「ふーーん。 でも良いの? そんな安請け合いしちゃって? 伊隅達の面倒はどうするの?」

 

「・・・ま、確かに安請け合いだったのは認めるよ。 でも、具体的進捗は伊隅大尉達に任せるしか

 仕方がないと思っている。 訓練状況は日誌に書いて毎朝提出させるようにするから、そのチェックが

 終わったら、博士の所に合流することになる。

 あとは、余程のことがない限りは、抜けることはないだろう。」

 

そう言いつつ、俺達は一旦博士の執務室によって、荷物を於いてから第三戦術機演習場を目指した。

 

 

 

2001年11月15日 18時05分

国連軍横浜基地内 地上 第三戦術機演習場

A−01連隊第一大隊第九中隊 伊隅ヴァルキリーズ中隊 VS エイデン・ピアース中佐

 

 

 

俺は第三戦術機演習場にて、ヴァルキリー中隊を待っていた。

今回俺が用意したのは、相変わらず撃震だった。 しかも訓練などで使われる様なオンボロであり、

処々ガタがキテいる。

装備は65式近接戦闘短刀が4本だけ。 両手に2本を持ったままで装備。残りの2本は両碗本体に

格納している状態だった。

 

定刻10分前に、俺が立っている場所とは反対側の登場ゲートから12機の不知火が入ってきた。

伊隅ヴァルキリー中隊だ。

 

 

ヴァルキリー中隊各機は、俺を見つけると順々に整列を始めた。

俺の手前30m位にヴァルキリー中隊は整列を終えた。 続いて各機のキャノピーが開き、コックピット

から衛士が起立してこちらを見て敬礼した。 だが俺は戦術機の外部スピーカーを通じて、それを止め

させた。

 

『・・・・・・ヴァルキリーズ各機は、そのまま戦術機に搭乗したままで良い。

 一々敬礼をしなくても良い。 演習はこのまま実行する。』

 

俺の言葉は、そのまま第三戦術機演習場の場内スピーカーに鳴り響いていた。

尽かさず伊隅大尉から俺宛に通信が入った。

 

『中佐。 ヴァルキリー中隊揃いました。』

 

『・・・分かった、ご苦労。 早速、実弾演習を始める。

 例によって、先鋒は、速瀬、宗像、柏木の3機からとする。 ハンデキャップとして、私はこのままの装備

 とし、場合によっては全損させても良い。 こうまでして私を仕留められなかったら、貴官等の腕が

 悪い証明だろう。』

 

昨日同然、速瀬中尉がイチャモンをつけてきた。

 

『ちょ・ちょっと待って下さいっ! 中佐!!

 幾ら何でも無茶ですってばっ!! 考え直して下さいっ!!』

 

『・・・あぁん? 何を寝ぼけている?! 貴官等の装備を以ってしても、仕留められる私ではない。

 昨日のシミュレーターで見せた動きを持ってすれば、貴官等など実機でも15分も掛からんわ。

 その甘っちょろい認識をいい加減直さんと、戦場では本当に死ぬぞっ!!』

 

『・・・い・いや、そうはおっしゃいますけれど、私の突撃前衛装備は兔も角、宗像中尉の迎撃後衛装備や、

 ましてや柏木少尉の砲撃支援装備では、中佐の戦術機がいくらカスタマイズされていようと、

 太刀打ち出来ないのは目に見えています。 しかも実弾です。当たったら「痛い」じゃ済まないんですよ?

 ついでに言えば、十字砲火などに包囲されたら、あっという間に終わっちゃいますよ。』

 

『・・・・・・なるほど。 では、益々もって、その身と魂に己が未熟を刻め、速瀬中尉。

 誰が貴官等の言う通りに蜂の巣にされるかっ! 舐めるのも大概にしろっ!!

 昨日見せたアクロバット技術が実機でも再現できると証明してやるっ!!

 昨日は様子見も含めて10分の時間を掛けてやったが、包囲殲滅される以前の段階で各個撃破してやる。

 実弾演習開始せよ。 これは命令だっ!!』

 

そう言い放ち、俺はすかさず撃震を始動させた。 整列しているヴァルキリー中隊を飛び越して、演習場の

反対側壁際まで高速匍匐低飛行で移動して、壁際で折り返してヴァルキリーズに襲いかかった。

 

慌てた速瀬以下2名は、早速俺を迎撃すべく行動を起こした。

指名されていない他の隊員たちは、已む無く演習場の端の方に移動して、この対決の行方を見守った。

 

場外のアリーナにいる白銀君達と演習場貴賓席でお菓子を食べて観戦している香月博士を他所に、

俺達は再び相まみえようとしていた。

 

 

俺は相変わらず匍匐低空飛行を行い、指名した3名に向かっている。

 

また、反対に喧嘩を仕掛けられたと思っている速瀬以下他の二名は、少しでも被害を抑えようと、距離を

取って、遠距離からの砲撃による迎撃を試みた。

 

俺と彼女らとの彼我の差は、約3km。 演習場自体が直径10kmの円形の為、殆ど端の方で、ドンパチを

しようとしていた。 先に攻撃を行ったのは、砲撃支援担当の柏木少尉。

お得意の遠距離射撃による狙撃を俺に対して試みた。 狙い目は頭部のメインカメラ。此処を叩いて

俺の戦意を削ぐ狙いらしい。 2発の狙撃が俺を撃ち抜こうとしたが、俺には絶対的距離感覚が備わって

いるので、飛んできた弾丸は止まって見えた。 難なくそれらを持っていた65式近接短刀ではじき返した。

 

続いて、宗像中尉が支援砲撃を加えつつ俺を牽制してきたので、俺はそれを左にずれる形で避けることに

した。 だが、俺が避けた射線の影をくぐり抜けるかのように、速瀬中尉の不知火が近接戦闘のために

俺に迫ってきた。 俺は速瀬機を盾にしつつ、宗像中尉の攻撃をそらし、速瀬中尉と対峙した。

 

『覚悟っ!!』

 

勢い良く俺に迫る速瀬機。左手に77式長刀を持ち右手には87式突撃砲を持っていたのだが、

俺に迫る前に突撃砲を背中のバックパックに格納し、左手に持っていた長刀を両手持ちにして、上段から

切り下ろす示現流剣術宜しく、一気呵成に斬りかかったって来た。

 

『・・・フンッ!!』

 

俺は相手の状態を見極めつつ、撃震の機体を右足を軸足とし、左側に身体を開いてかわした。

俺から速瀬機を見ていたら、俺の横を通り過ぎていったように見えるが、単に俺の方が速瀬機の横を

通りぬけた形になった。 つまり俺から見て速瀬機の背中が丸見えなのだ。

俺は速瀬機の後方で両足を揃えて飛び上がり、後ろからドロップキックで蹴り飛ばした。

 

速瀬機を蹴り倒した勢いそのままで飛行を行い、先に遠距離で支援砲撃してきた柏木機に対して

短刀を投げつけ牽制した。 そして、途中まで速瀬機を援護していた宗像機に向かって進路を変更した。

宗像機は俺がやって来るかもと、追加支援装甲を前面に構え警戒をしていたが、俺は装甲板に垂直に

着地する為に、直前で機体の姿勢を反転させてから、装甲板に着地した。

 

そのままだと、地面に叩きつけられるのだが、その直前に装甲板の上部を引っ掴み、上手く宗像機の上を

ひょいと音がするかのように軽やかに飛び越え、宗像機のバックを取ることに成功した。

 

俺はそのまま、宗像機をバックドロップ宜しくエビ反りで地面に叩きつけ、宗像機をダウン、大破判定に

持ち込んだ。 続いて、倒れている宗像機を一度引き起こし、柏木機、速瀬機の順に警戒を強め、

次の獲物に向かい低空飛行を行った。

 

次は、俺に向かってきていた速瀬機を相手にするために、一旦地面に落ちていた、俺の65式近接戦闘用

短刀を拾い上げ対峙する。

先ほど上手くかわされて直後に蹴り飛ばされていたので、速瀬機は警戒しつつ87式突撃砲で俺を射撃

して来た。

 

『・・・柏木っ!! 左右から同時に攻めこんで仕留めるぞっ!!』

 

まんま、作戦も何もない状態だが、射線が読める俺にとっては、1つの射線が2つに増えようと、あまり

作業的に変わらないので避け続けた。 その内連携の限界が来て、攻撃の穴が生じるのは目に見えて

いたから、無理に近接戦闘せずに、機体に当たりそうな弾だけ短刀で弾いていた。

 

するとやはり、攻撃に焦れてきた速瀬機は、一気にケリをつけるべく近接戦闘に切り替えてきた。

手にしている短刀を牽制で投げると、それを避ける機動を行うが、それを読んで先回りして機体のバランスを

崩すように攻撃をすると、いとも簡単に俺に投げられる速瀬機。今度もシコタマ背中から打ち付けられ、

仰向けになったところを右腕に格納されていた65式近接戦闘短刀を取り出して、コックピット直撃で

パイロット直死判定をもぎ取った。

 

では、残りの柏木機はと言うと、速瀬機を地面に投げつけた辺りで、こちらに近づくかと思いきや

一気に距離を開けて砲撃による攻撃を行ってきた。 ・・・判断としては良いと思うが、それでは決め手に

欠けると思うぞ?

 

速瀬機を倒した後、ゆっくりと柏木機に向かう俺。 徒歩では無く一応ホバーリングのイメージだが、

ゆっくりと匍匐低飛行で向かうと、柏木機はそれに合わせて後退を行った。

その間ずっと柏木機からの砲撃は続くのだが、俺はそれらを躱しつつ、柏木機を演習場壁際に追い込んで

行った。 結果数分と経たずにその様に追い詰められた柏木機は、壁際に沿って逃げようとした時、

此処で俺は一気に撃震を進ませ、柏木機と肉薄した。

 

『う・うわぁっ!! く・来るなぁー!!』

 

柏木からの叫び越えはしたものの、俺はそれに構わずそのまま柏木機の懐に潜り込むかのように

上体を屈め、左腕に格納されている65式近接戦闘短刀を引き抜くと柏木機のコックピットに当てた。

直ぐ様、柏木機のコックピット直接攻撃判定が成され、実弾模擬戦は”しゅーりょー”した。

 

ここまで、約10分間の死合いだった。

 

 

「フゥ・・・、普通にやっても10分間か。 こりゃ、本当に博士の言うように実弾の無駄遣いだな・・・。」

 

撃震のコックピットで、一人溜息を吐いてこの後の訓練について思案し、思いついたことを実行させる

ために通信回線を開いた。

 

「・・・ヴァルキリーズ中隊、応答せよ。」

 

すると俺の網膜投写にヴァルキリー中隊全員の顔が網膜に投影されたので、指示を伝えることにした。

 

「・・・・・・速瀬、宗像、柏木、 各機の損害状況はどうか?」

 

俺の問いに、代わりに伊隅大尉が答えた。

 

「ハッ、実弾演習の損害はありません。 中佐に寸止めして頂いたおかげです。」

 

「そうか。 では、先の演習についての感想を述べておく。

 今の状態の練度ではヴァルキリー中隊には特殊任務は任せられない。 特に各機の連携が殆ど

 取れているとは言いがたい。

 突撃前衛はそればかりに特化していたり、迎撃後衛や支援砲撃などの後衛に専念した”受け持ち”

 での”作業”だけになってしまっている。 俺の言いたいことは分かるな、伊隅大尉?」

 

「ハッ、柏木機は兔も角、前衛と中衛を纏める速瀬・宗像の連携がお粗末だった、と言う事でしょうか?」

 

「・・・そうだ。 戦況に応じて柏木をもっと使え。 最後は宣言通り各個撃破となってしまっている。

 先の戦闘なら、速瀬をワントップとして、後衛2人のエレメントで支援を続けていれば、もう少し戦える

 はずだが、この連携が甘すぎる。

 

 それと、最後の柏木機の迎撃についてだが、後衛だからと言って近接戦闘が出来ないでは困る。

 私が迫ってきても、それを躱しつつ戦闘が行えるように、状況に応じた戦闘もできる様に対応でき

 なければ、不得手戦闘では戦えない兵士になってしまう。

 

 まぁ、柏木少尉自体は8月に合流して今の状況なので、この先はその点も考慮して訓練に励め。

 そこだけは、大目に見て及第点だろう。」

 

「ハッ、ありがとうございました。 今後の参考にします。」

 

「では、続いて実弾演習を・・・・・・と言いたいところなのだが、これ以上はさすがの私でも弾の無駄使い

 だと言わざるを得ない。 香月博士から無駄な演習は経費の無駄、と言い切られているので、これに

 言い訳できない身では、これ以上の実弾は使えない。

 

 その為、最後に”チキンレース”をして、”しゅーりょー”とする。」

 

「? あの、”チキンレース”とはどう言うモノの事でしょうか、中佐?」

 

「どう言うも何も、言葉通りだ。 やり方は各機77式長刀を装備し、匍匐低空飛行にて演習場壁に向かい

 前進せよ。 速度はその都度変えていくが、最初は訓練と言う事もあり30kmと言う墜落寸前で行こう。

 それで、壁に激突する手前で上空へ退避する訳だが、上昇した際に目印として長刀を地面に投下する。

 そこが限界の目印と成る訳だ。

 

 それで、徐々にこの移動スピードを上げ、高速における寸での”間合い”を計測していく。

 まぁ、自分の間合いで、どの位までなら回避できるのか、その目安を見極める、と言うことだな。

 これを計測して、本日の演習は終了とする。

 

 伊隅大尉、演習を監督し結果を明日朝に報告せよ。 また同時に、本日の訓練日誌と明日の訓練

 予定表も合わせて提出すること。 私はこの後、香月副司令と作業をしなければいけないので、

 連絡事項などについては、メールで知らせろ。 以上だ。」

 

こうして俺は実弾演習を終えた。

 

 

 

2001年11月15日 19時43分

国連軍横浜基地内 地下22階 90番格納庫

 

 

 

実弾演習を終え、身なりを整えた俺は、博士と霞を伴って夕食を取った。

京塚のおばちゃんからは”家族連れ”とカラカワれた。 博士がちょっとアセり気味に反応していたのは、

微笑ましかったが、霞はマイペースで食事を食べていた。

 

夕食が終わった俺達は20時に格納庫に集合をかけ、それまでに色々な準備に入ることにした。

 

戦術機用プログラム資料については、霞と博士とで格納庫に持ってきてくれるそうなので、俺は先に

此処にやって来て、撃震モドキを戦術機用ハンガーに固定することにした。

 

一応この格納庫にも戦術機を整備するための物があり、そこまで移動させるので一旦WD的な装備に

着替えておいた。

そして、いつもの通りに戦術機を丸ごと装備に格納し、改めてハンガーの方で取り出す作業をしていた。

 

「(・・・・・・毎度毎度、博士をお姫様抱っこするのも芸が無いからなぁ・・・。)

 何より、博士の魅力に参っちまって、そのうち襲っちまう可能性も出てきたし・・・・・・。」

 

「・・・・・・何を襲うって? 物騒なこと言ってんじゃないわよ。」

 

「どわっ!! い・何時から居たんだっ?! あーー、吃驚した。」

 

カラカラと笑い声を立てて、「あら、ごめんなさい」と香月博士が言葉に出したが、その様はちっとも

悪びれていない彼女だった。

俺は撃震モドキを戦術機ハンガーに固定させてから、香月博士に向き直った。

 

「・・・フゥ。

 これで毎回コックピット・ブロックに出入りするのに”お姫様抱っこ”をしなくても良くなっただろ。

 毎回、顔を赤くせずとも自由に出入りできるから、気軽に調査できる様にしたよ。」

 

「べ・別に顔を赤くしてないから。 と・特にアンタなんか意識していないし、範疇に無いから・・・。」

 

「・・・ま・そう言う事にしておこう。

 で、霞は? 一緒じゃなかったのか?」

 

霞の行方を聞いた所、資料を運ぶ途中で神宮司軍曹と遭遇したので、軍曹と一緒に此処に来るとのこと。

博士は先にこちらに来て、俺と準備作業を行う為に先に来たとのこと。

 

「そんなに多くの資料になっていたのか?」

 

「・・・ま、そうね。 私も社が抱えて持ってくる程は無いと思っていたのよ。

 あっ、そこのケーブルを取ってくれる? ・・・でも、まさか台車2台になるとは、想定外ね。 途中で

 まりもに出会わなかったら、私も甘かったわ。 よしっ、こちらのノートPCの配線終わったわよ。」

 

「ああ、ありがとう。 助かったよ。 そうか、此処に軍曹が来るのか。

 丁度良かったよ。 例の教導部隊の設立について、こちらから情報を渡さないといけなかったんだ。」

 

「・・・それは良いけれど、”タヌキの皮算用”にならないでよ。 確りとしたシステムに確立してからの方が

 良いんじゃないの?」

 

「ああ、それは分かっている。 でも、教導にしても内容的に特徴のあるモノだから、そのビジョンは持って

 おかないと芯が無いと困るだろ。 わざわざ作るにしても特徴の無いものだと、ドングリの背比べでは

 返って見っとも無いと思うぞ。」

 

「まぁ、そうか。 まりも、どう言う趣旨を盛り込んでいるのかな? 私もちょっと気になるわね。」

 

などと言っていると、その神宮司軍曹と霞が台車を引いてやってきた。

 

俺は台車の中の資料を撃震モドキのコックピット・ブロック内に運び入れて、霞と2人で早速戦術機制御

プログラムについての検討を行う事にした。

中でもデーモンと呼ばれる、システム状況監視プログラム郡を集中的に解析を進めた。

 

また、第一世代機と第二世代機とではそれ程プログラムの改修は無かったものの、第三世代機ともなると、

オプションの戦闘機器を扱うためか、様々なコードが増えており、プログラム全体が複雑化されていた。

 

基本構想はほとんど同じだったので、プログラム、いや、モジュール毎にその傾向を分類し、必要と思わ

れる部分を絞って、その中でも中枢と思われるプログラムを整理して、一旦撃震モドキにプログラムを

タイピングし、更にそこから改修を加えつつ不要な部分を取り除き、スタイリッシュな効率的なプログラムを

作成した。 ついでによく使われるプログラム群はモジュール化しておき、必要とされる部分をその都度

呼び出せる様に変更を加え、より効率の良い全く新しい戦術機用制御モジュールを構築した。

 

そして、それらOSをネットワーク回線を通じて、撃震モドキからローカルのノートPCに転送させ、

そのPC上で、再コンバートして、デバック作業を実施。

バク取りを行った所、既存の戦術機に対応した、効率の良い新OSが出来上がった。

 

「・・・フム・・・・・・。 一応これで、”ナンチャって”から”まとも”な新OSが出来たことになるので、コイツを

 第一世代から第三世代に乗っけて、チューニングして動かせれば、多少マシなOSになるだろう。

 

 で、このOSを叩き台にして、撃震モドキもこのOSでチューニングすれば、戦術機としての行動は行える

 様になるだろう。 後でチューニングしておこう。

 便宜上、この新しいOSの事を『アウター』と命名。各世代機毎にインストールして試す場合はその世代の

 数を後ろにつけよう。 撃震モドキに使う場合は、「アウター5」だな。

 

 さて・・・・・・。」

 

続いては、今出来上がったアウターから状況デーモンの部分を取り出し、思考情報処理に併用させる部分を

カスタマイズして行こう。 現状の作業ではプログラム自体の効率化を上げたので、更に処理スピードを

上げる手立てとして、高性能のCPUを用いての処理にも対応ができるだろう。

 

しかし、高性能CPUの本来の使い方は、パイロット個人の視床等に情報を橋渡しして処理を上げる為の

デバイスとしたいので、その様に順序良く状況情報データを処理するプログラム、つまり状況デーモンを

作成してやれば良い。

 

「・・・それは良いのですが、視床とデバイスとの間の調整はどの様にするのですか?」

 

デーモンプログラムの解析とプログラミング部分の割り出しの途中で霞から質問を受けた。

 

「・・・・・・ああ。 そこはパイロット個人の資質と成るところだから、個別にチューニングが必要となる

 だろうね。 視床などへの受け答えの良い人なら、感覚的に処理できるだろうが、それが悪い人となる

 と、視床への情報処理の為の馴れが必要だろう。 まぁ、歩行訓練と同じだと思うよ。」

 

「・・・そこの個人差は、プログラムでは埋めれないのでしょうか?」

 

「うーーん・・・・・・、いや、可能だろうな。 だが、そこは余りいじらないほうが良い様に思うよ。」

 

「・・・どうしてですか?」

 

「・・・・・・考え過ぎかも知れないが、プログラムが暴走したら、パイロットは要らなくなるよ。

 つまり、死体となったパイロットを回収する為のプログラムなら良いが、パイロットが死んでいるのに

 戦い続ける戦術機になってしまいそうで怖い。 むしろ、パイロットがいなくても戦う戦術機の形の

 ロボットになるだろうから、そう言うのは今の段階では考えないほうが良いと思う。」

 

「・・・・・・・・・そうですね。 この案は破棄しておきます。」

 

「・・・・・・いや、破棄はしなくても良いよ。 先ほども言ったように、怪我して操縦不能の場合や死体の

 回収の為の自動措置は必要とされるかもだから、案自体は残っていて良い。

 ただ、先にも言ったように人間を必用としない為のプログラムにさせないように、監視する必要が

 あるだろう。

 例えば、人道に反する行動を取った時は、第五世代以降のOSは使用不可にするとか、さ。」

 

「・・・・・・そうですね。 そして、使用不可の状態を解除するには、帰還後に専門のチームがその状態を

 解除する作業をしないと、それらの戦術機は使えないようにすれば、無茶な仕様にはできませんよね。」

 

「そ・ゆ事さ。 ・・・・・・・・・さてと、出来た。 この状況デーモンをデバイスの基礎としてやって、個人毎に

 チューニング情報を元にデータの交換を行わせれば、処理をスムーズ化出来るだろう。

 

 あとは、博士ご謹製のCPUなんだが・・・。

 

 そう言えば、博士と軍曹は?」

 

撃震モドキのコックピット・ブロック内で作業をしていた俺は、霞の顔を見てみると彼女の指はハッチの

外を指していた。 こちらの作業の邪魔にならないように、博士が軍曹から教導部隊の内容について

趣旨説明を受けていたらしい。

 

俺はコックピット・ブロックから出て、香月博士に声をかけようとした。

 

「・・・・・・話の途中で済まないが、香月博士。 先に話していたCPU回路なんだが、今手元にあるかな?」

 

「・・・ああ、ピアース。 ええ、あるわよ。 はいこれ。

 でね、ちょっと一緒にまりもの説明を聞いて欲しいのだけれど、今作業は一段落なのかしら?」

 

「・・・ぅうん? ああ、大丈夫だ。 それで?」

 

どうも話を聞いてみると、先ほど危惧していたように教導部隊のイメージが正しく伝わっていなくて、

それをどの様に神宮司軍曹に説明したら良いのかで迷っていたらしく、俺からの意見を求めてきた。

 

「・・・・・・なるほど。

 では、軍曹。 済まないが衛士強化装備を着てから、もう一度こちらの方に出直して来てくれない

 だろうか?」

 

俺は口で思考情報処理に基づく第五世代戦術機の概念を説明するために、手っ取り早く軍曹を実験台

として活用するために、対人インターフェースを持つ衛士強化装備を着用するように伝えた。

 

それから約30分程で軍曹が戻ってきたので、軍曹を撃震モドキのコックピット・シートに着座してもらい、

衛士強化装備の腰の後ろにあるメンテナンス・コネクトに専用メンテナンスコードを挿入した。

こうする事で、戦術機システムと軍曹の衛士強化装備との情報交換が行え、俺はこのコードを通じて、

軍曹と思考情報処理システムとの状況をモニターすることができる様になった。

 

「・・・あの、中佐? それで何が分かるというのでしょうか?」

 

事前説明していなかったので、当然の疑問を軍曹が口にした。

俺はこの後の作業内容を簡単に軍曹に伝えた。

 

「ああ。 今軍曹の衛士強化装備にメンテナンスコードを接続して、戦術機のシステムに軍曹への

 情報状況をモニターさせてもらっている。

 現状この戦術機には、プロトタイプだが、『思考情報処理』と言うシステムを導入している。

 このシステムは簡単に言うと、第五世代戦術機のメインでもあり、先日話した”誰にでも乗れる戦術機”の

 基幹システムに成る予定だ。」

 

「・・・ハァ・・・・・・。」

 

「おや? 先日述べた内容だったと思うが、軍曹はその話を聞いていなかったのかな?」

 

「い・いいえ。 お聞きしましたが、何をおっしゃっておられたのかよく理解が追い付いていなかった

 ものですので。 ・・・済みません、今になって申し上げて・・・・・・。」

 

「・・・うん、そうだね。 疑問点とかはその都度聞かずに聞き流していると、本当には理解できないからね。

 では、このまま予告なしに、軍曹には実験になってもらおう。 何心配しなくても、身体に異常などは

 発生しないので、このままモニター代わりを務めておいてくれ。」

 

ちょっと軍曹の心拍数が、ドキリと跳ね上がったが、一瞬のことで済んだので作業を続けた。

 

現状、思考情報システムにより、状況デーモンが起動している。

この状態で外部からの情報をオンラインにすることで、外部からの情報をグレイ6を通じて、軍曹の視床

部分に対して、情報を順次送り込んでいる。

勿論、情報通信については、博士ご謹製の高速CPUの処理速度・ノーマルで処理されており、システム

と操縦者との間に、処理落ちなどが発生しない程度のスピードに調整を行っていた。

 

上手く情報が軍曹に届き、その反射波がグレイ6を通じて高速CPU間とで情報の遣り取りが行えるかを

衛士強化装備のメンテナンスケーブルを通じて、コックピット・シートを経て、戦術機外にいる霞が見ている

ノートPCに情報が流れ、状況の確認を行ってもらっていた。

 

昨日から初めている、思考情報処理の構築について、アレコレと検証と再構築を行い、理論的に再現が

行える作業を行っており、この処理が上手く行けば、グレイ6と思考情報処理を用いた、”第五世代戦術機

構想”の要が構築できる手筈となっていた。

 

俺はコックピット・シート前の撃震モドキ内で思考情報システムの状況を、霞は撃震モドキの外側で、軍曹の

状況と衛士強化装備の情報取得の調整を同時に行うことで、テスト状況を確認しつつ、調整を行った。

その様を博士は霞の後ろで見つつ、軍曹は何が行われているのかは分からないまま、緊張したまま

パイロットシートでじっとしていた。

 

「・・・・・・・・・? ・・・・・・あれっ?!」

 

先ほどまでシート上で固まっていた軍曹が変な声を上げた。

俺はコンソールを調整しながら、グレイ6を通じてパイロットに照射している思考波を調整しながら、

視線を軍曹に移した。

 

「・・・どうした軍曹? 何か気分でも悪くなったのか?」

 

「・・・えっ?! あぁ、いいえ、そうでは無いのですが・・・・・・、何かこう・・・・・・言葉にならない何か・・・が、

 聞こえた様な・・・・・・・・・??」

 

「霞、そちらはどうだ?」

 

「はい。 確かにその様な情報が軍曹に届いています。」

 

「・・・・・・フム。 一応は実験的には成功しているらしいが、処理状況的には上手く行っているのかな?

 どう思う霞?」

 

「・・・・・・そうですね。 そこまでは上手く行っていないみたいです。

 軍曹も漠然としてしか、理解していません。 でも、現状健康上には、何ら問題は有りません。」

 

そこに博士から口が挟まれた。

 

「・・・なるほど。これが思考情報処理の初期段階か。

 無意識下でこの様になるのであれば、まりもが思考した通りの動きを加算したら、どの様に動くの

 かしら。 とても興味があるわ。 今の段階で、小指の一本でも動くものかしら?」

 

「・・・さてどうだろう? システムはメンテナンスモードだからな。 稼働テストモードにしてみるから、

 軍曹悪いが、戦術機の右手首を少し回すイメージをしてみてくれないか?」

 

「えっ? はぁ・・・、 分かりました。 イメージだけですか? 戦術機の右腕を操作しますか?」

 

「いや、操縦桿の類いは一切触らないでくれ。

 両手を膝の上で組んだ状態で、右手首を動かすイメージだけを思ってくれ。」

 

戦術機のキャットウォークに居た博士が、手すりの内側から戦術機の右腕部の方に視線を向けると、

最初の頃は何も動かなかったらしいが、徐々に右手首が動く傾向を見せた、とハッチの外側から

声を上げてきた。

 

「フム。 一応データとしての通信は行えていると見て良いだろう。

 後はこの信号を増幅するなり、機体の制御プログラムへの意思決定に向けてのモジュールを詰める

 などして、追加プログラムを増やす必要があるな。」

 

一応の方向性は合っているみたいなので、このままで工夫を凝らす方向で良さそうな直感を得た。

その為、OSとして起動させるについて、どのくらいの情報を処理させるのかを再検討を行う事にした。

 

香月博士や霞から、対話処理型のインターフェースを用いる事が定義されたが、その対話性には擬人的

な作業となってしまう恐れが有り、ある程度のオートメーションイメージと、中間結果や処理結果の容認・

非容認を判断させるだけとし、できるだけ意識化の思考ソースを割かない方向性を俺からは提示した。

 

要はパラレル処理を目指して無意識でも処理できるデーモンをバックグラウンド処理させるようにして、

OS自体にマルチ性を持たせることで、人間個人の思考ソースを重要課題に向けるようにしなければ、

思考が偏ることで思考情報が処理できなくなる可能性が高く、その部分は無意識下にて処理させなくては

行けないとの説明を加えたのだが・・・・・・

 

「・・・?・・・。 ごめんなさい。 アンタが何言ってんのか、良く分かんないわ・・・。」

 

との、香月博士から率直な意見が出た。

 

「・・・いや、だから。 バックグラウンド処理云々の部分で言いたいのは、例えば人間の呼吸についてだが、

 呼吸するって別に意識的にしなくても、生まれて呼吸を始めた瞬間から、赤ん坊でも無意識に呼吸

 運動ってやっているでしょ、ってことだよ。

 

 人間は一々自律神経の呼吸運動の・・・なんて、思考しなくても呼吸運動できているのは、思考の成せる

 部分じゃないじゃない? 本能、って言っちゃうと語弊が出来るんだが、つまり無意識下での運動って

 言う部分、バックグラウンド処理の本質はつまりはそう言うところだよ。

 専門用語だと自律神経運動っていうのか?」

 

「ああ。 つまり、そう言う無意識下での処理については、できるだけオートで処理できていて、意識的に

 決定する部分だけ解を入力させることで処理を進める、ってこと?

 

 ・・・でもそう言う流れで言うなら、結局バックグラウンド処理は、何系統必須と成るのかしら?」

 

「・・・・・・いや、専門じゃないから、何系統必要とか言われても必要な部分しか今は用意できないと思うぞ。

 それよりも、パイロットの意思が必須と成る事態を俺は想定したいんだ。

 

 戦闘行動において、咄嗟の判断が必要な処理って言えば、命がけの瞬間にどう動けるのかに掛かると

 思うから、その分に対しての優先思考とソースの割り当てが必要だろう、と言うふうにしないと、

 折角思考によって操作がし易くなっているのに、系統云々で一括りとしてしまうと肝心な時に動けない

 と困ると言いたい。 そうだよな、軍曹?」

 

「はっ?! あ、ああ。 はい、そうですよね?!」

 

「・・・まりも、呆けていないでしっかり答えなさい。」 と香月博士から突っ込まられ、

 

「・・・・・・そうだぞ軍曹。 現場を知っている軍曹だから何が必要に成るのかは分かるだろう?」 と

俺に畳み掛けられて、ちょい涙目になってしまう神宮司軍曹だった。

 

兎に角、思考情報処理の雛形はこうして一応完成の目処が立った事で、改善構築などの次作案に

ついては今後の課題となった。

 

また、思考情報処理を用いた第五世代戦術機の片鱗を体験できた神宮司軍曹は、実験でやっていた事を

振り返り、戦術機の行動として教える部分と体験して感じたことを、教導の趣旨に加える事を考え初めた

ので、その点についても近日中にまとめて、こちらとの整合性を図る、と言う事で落ち着いた。

 

検討課題が山積みとなったので、今日は一旦お開きとして、各自持ち帰り検討会を開くことにした。

また、12月までのスケジュールを組み上げ、計画性を持って対応する必要があるので、明日は1300から

会合を開くことで合意し、90番格納庫を後にした。

 

神宮司軍曹は自分の教導官室に向かう前に、衛士強化装備から着替える為に更衣室に向かうそうで、

地下19階のエレベーター・ホール前で別れた。

 

俺と博士と霞は、博士の執務室に戻って関連資料などを整理して、その日は一旦お開きとなった。

 

 

 

 

 

リザルト報告:

 

 繰越経験値ポイント & SPポイント

  経験値ポイント : 0ポイント(繰越分無し)

  SPポイント : 5,115,350sp

 

 

 経験値取得

 

  内訳

 

   自己能力レベル上げ

 

 

    拾得物

        第9世代戦術機(プロトタイプ・『撃震モドキ(仮)』)

          仮組立中 達成率50%前後

 

   総合計 5,115,350SP

 

 

 

 

 




はい。 第09話でした。

何かグダグダが止まらない。イカン、スランプかも。
第10話書き始めましたが、自分でも何やりたいのか分からんとです。
プロット書いては消して書いては消して・・・、結局ちょっとづつしか文章が増えない。

えーーい、こうなったら禁断のチート能力を増やすか、でも能力増やしすぎると、返ってご都合主義展開がひどくなって、中身のない状態になっちまう。
タダでさえ駄文なのに、自分でも見るに耐えないモノと成ってしまう。ジレンマだ。
鬱になりそう・・・。 文才がないのって質が悪い。はっちゃければ良いんだろうけど、やり方がなぁ・・・。

ま、頑張りますよ。 エタりませんとも。
と言う訳でちょい時間がかかりそうです。ごめんなさい。

何とか近日中にリリースできるように目標立てます。
それでは皆さん、ごきげんよう、です。
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