ヤクザの息子と医者の娘、和菓子屋の娘同士がそれぞれ出会いまして 作:九店直下
なるべく両作品のキャラ双方を立てられるように作ってるつもりですが……クロスオーバー2次ってやっぱり難しいっすね()
「……そうね。英語は文法よりもまず語彙よ。語彙が分かればある程度文脈を予想できるし……。もし良ければ今度私がまとめた単語帳、貸してあげるけど? 凡矢理の試験にも応用できるハズよ」
「すまねぇ恩に着る。ってか真姫も自分の勉強があんだろうに。なんか悪ぃな」
「別に。誰かに教えるって意外と自分の理解度を把握するのにも役立つし……、私にもメリットのあることだから」
受験の日まであとわずかとなった初冬のある日。私は図書館で楽くんと来る受験に備えて勉強に勤しんでいる所だ。
と、言っても。勉強自体は私の方が彼よりできるから自ずと私が彼に教える、って流れが多くなっている。
勿論自分の勉強に集中したい気持ちも無くはないけど、教えることって意外と、自分自身も理解が足りないところや補強しとかないといけないところも見つかるから。
これはこれで、結構ためになっているのだ。
「でも流石医者の娘……。頭もめちゃくちゃいいのなお前。教え方も
「……ふん。これくらい当然よ。というか、楽くんが効率悪すぎなんじゃない? ちゃんとやれば吸収はいいんだから、もっと勉強方法とか見直したら?」
「かもな。ただやたらめったら問題を解けばいいってわけでもねーだろーし」
少し照れ隠しのように放った私の言葉に思い当たるところがあったのか、うんうんと唸る楽くん。
「うーん、数学はもっと公式覚えるのに時間割くべきか……? いやでも、覚えた所でちゃんと使えねーと話になんねーし。そこをどうすっか……」
何よ。結構しっかり悩むじゃない。まぁそれはそれだけ彼が真面目であることの証左、なのかもしれないけど。
まぁ、私としては不器用だ……なんて思っちゃう。勿論そこが、彼のいい所でもありはするけど。
彼、地頭が悪いわけじゃないしちゃんとやればすぐに成長できるくらい飲み込みも早い……のに、何においてもどこか不器用というか、そんなところがある。
まぁ、それも彼の恋路に遺憾無く発揮されているところはあるんだけど。そう考えれば彼らしい、とも言えるかもしれない。
あぁもうっ。放っておけないったらありゃしないわね。
「んもう仕方ないわね。そしたら今度私がやってる勉強法、それぞれの教科事に軽くまとめてメッセするから。それ見て自分がやりやすいように色々いじってやればいいんじゃない?」
「ま、マジで!? 何から何まで申し訳ねぇな……。この恩はどこかで必ず……」
「返さなくていいけど。そうね。それなら貴方の恋愛事情を少しでも進展させてくれれば、それなりの恩返しにはなるかもね」
「……相変わらず、痛ぇところをついてくるよなぁ」
彼はガックリと項垂れて苦笑いする。この調子だと病院で話しをしたあの日以降何も進展してないわね。全くもう。
「当たり前でしょ? もう、私言ったわよね? 隣にいるだけで満足するんじゃなくてアプローチしてけって。その様子だとあれから……」
「真姫さんの期待するようなことは何もございませんです。ハイ」
「でしょうね……。まぁ小野寺さんも凡矢理高校を受験するみたいだし、同じ高校に行く、と考えればまだチャンスはあるのかもしれないけど——————」
それでも、その間にほかの男子と結ばれる、なんて展開も考えられない訳じゃない。この前ちょっと写真を楽くんから見せてもらったことがあるけど、清楚って風でとても可愛い女の子だったし。
本当に楽くん、彼女に対する気持ちは本気なのだろうか……なんて、疑ってはないわよ? ちょっと前、小野寺さんがいかに可愛いか、憧れの存在かを熱っぽく語ってたのを覚えてる。
文字通り、彼にとっては『高嶺の花』的な存在なのでしょうね。
でも、それ故になんか引っかかるわね。
私の女の勘が囁くものがある。それは、
「もしかして楽くん。本当に彼女の傍にいるだけで幸せ……なんて思ってない?」
「え? そりゃ……そうだぜ。小野寺のそばにいられるだけで幸せだ。そりゃもうこの時間が一生続いて欲しいって思うくらい……」
やっぱりか。
本当に、それだけで満足してるんだ。いやまぁピュアで可愛いな、って思うけど……!
でも、それだけじゃ進展がないのは当然じゃない、なんて、真姫ちゃんは思うのだ。
「……もうっ。それだけじゃダメじゃ……ないけどっ。それでも今はダメよ。それ故にこれ以上進みようが無くなってるじゃない」
「え、これ以上進みようが……って、言ってることが飲み込めんぞ? もっと分かりやすくだなぁ」
「傍にいるだけで幸せ……ってだけじゃダメなのよ。楽くんの場合はね。小野寺さんと恋人になって何がしたいかとか、どうなりたいとか、想像していかないといけないんじゃない?」
「な、なるほど、でも……そうかぁ? いきなりそんなこと言われても……うーん……」
まぁ、いきなりそんな事言われてもすぐに思いつきはしないでしょうね。流石にここは、じっくり考えてもらうしかないか。
「じゃあ、今度渡す私の単語帳に書いてある語彙を覚えるついでの『宿題』にしといて。次一緒に勉強する時には、言えるようにしとくこと。いい?」
「……わかった。急なことだし思いつきやしねーかもしれねぇが、努力するわ」
「ま、頑張んなさい……。じゃあ今日はこれくらいにしときましょっか。いい時間だし」
「おう。そうだな。お互いに頑張ろ——————って真姫。ちょっと待て」
何か、重大なことに気づいたように。
楽くんは私の手をぱしっ、と取る。
「ん、うぇ? な、何よいきなり」
「顔色が良くない。昨日……ってか、最近ちゃんと寝てんのか? 目にもクマがで来てる気が……」
「べ、別に、大したことないわよ。何言ってんの? もう、気にしすぎなんだから」
確かに、ちょっと最近勉強のために夜更かししちゃったりとか、今日の朝少し体が重かったりとかそんな事はあったけど。
でも、そんな倒れちゃうほど体調悪くなんてないし……って、
あれ、おかしいな。
自覚したからか急に、身体が、重く——————。
少しふらついたのを見逃さなかったのか、楽くんは私をぐっ、と支える。
「ったく言わんこっちゃねぇ……! だいぶ無理してたんじゃねぇか。気づかなくて悪かった。とにかく家まで送ってやっから——————!」
「う、あり、がと。もうっ、普段もそれくらい男らしければ……」
「こんな時にまで言うなっての。歩けるか? 無理ならおぶるぞ」
恥ずかしいから遠慮するわ。そう言って楽くんの手を借りながら家に向かって歩く。
全く、普段もそれくらい奥手にならずに、意中の人に行動的に接せてればそんなに悩まなくても済むんじゃない?
ふと、そんな風に考えて、私は。
彼に聞こえないようにひとつ、ため息をついた。
このあとがきで楽と小咲ちゃんについてと真姫ちゃんについて語ろうとしたんですね。
そしたらものっっっそい長くなりました。
やめました。
次回もよろしくお願いします(強引)