ヤクザの息子と医者の娘、和菓子屋の娘同士がそれぞれ出会いまして 作:九店直下
ニセコイの推しなのに……。不覚
「おっ、小咲ちゃん! こっちこっちー!」
「あ、穂乃果ちゃん。遅くなってごめんね。待った?」
受験を間近に控えた12月の中頃。
「小咲ちゃんの合格と、恋愛成就を願ってお参りしよう」という穂乃果ちゃんの一声により、私は今、
家からはそこまで遠くないところに位置する、全国的にも有名な神社だ。だけど、家族が懇意にしてるところが別にあるから、訪れたことはそこまでない。
だから、ちょっと新鮮だな……なんて思うのは、ここだけの話だ。
「ぜーんぜん! 私も今着いたところだよっ。むしろ寝坊しちゃってさ……」
「全く……。穂乃果ももうすぐ2年生で後輩もできるのですからしっかりしてもらわなくては困ります。小咲にも示しがつきませんよ」
「あはは。まぁまぁ海未ちゃんそんなに怒らなくても……」
少し呆れたようにそう言う海未ちゃんと、それを宥めることりちゃん。見てるとみんな相変わらずだなぁなんて、そんな気持ちにさせられて微笑ましくなる。
くすり、と笑ったのを穂乃果ちゃんに気づかれて「なんで笑うのー!?」なんて言われてしまった。ごめんね、と返しつつもどうしたって微笑ましく思えちゃうんだから仕方ない、と思う。
「ねぇ小咲。この人たちがよく話に聞く……」
「あ、るりちゃん。そうだよ。穂乃果ちゃんと、海未ちゃんと、ことりちゃん。皆ひとつ年上の頼れる先輩で、友達なんだ」
そして今日はもうひとり、ここに着いてきてくれている友達がいる。
宮本るりちゃん。私の親友とも呼べる存在だ。
穂乃果ちゃん達からもるりちゃんからも、お互いに『会ってみたい』とは前から言われてたし、今日こうして一緒に集まってもらったわけだ。
「貴女がるりちゃんなんだね。私が穂乃果だよ。高坂穂乃果っていうんだ。よろしくね!」
「私が海未……園田海未です。よろしくお願いします」
「そして私がことり、南ことりっていいますっ。よろしくね」
ポニーテールかわいい! なんて穂乃果ちゃんとことりちゃんがるりちゃんを見て盛り上がる。それを聞いたるりちゃんは満更でもなさそうだ。
少し冷めた印象を持たれがちだけど、るりちゃんだって人並みの喜怒哀楽は持ち合わせているのだ。それを改めて認識できて少し嬉しい、かも。
「……ほぅ、どうも。宮本るりです。小咲から話は聞いてると思いますけど」
「いやぁ噂はかねがね……。小咲ちゃんにはお世話になりっぱなしで」
「いえいえこちらこそ。小咲がいつもお世話になっておりまして……」
穂乃果ちゃんそんな言葉にそう返するりちゃんに、私は「お母さんみたいだなぁ」なんて思いもする。
けど、いつも……特に勉強面ではお世話になりっぱなしだからまぁ、仕方ないのかも。
「なるほど、小咲から話には聞いてましたが……、聞き及んでいた通りしっかりした方のようですね。あの子があそこまで学力を伸ばすのにもどこか納得してしまうような……」
「いえいえ。小咲が頑張ったこそです。まぁ『結構』苦労はしましたけど。小咲の学力は分かってたから『ある程度』は覚悟してたことではありますけど、ね」
「……んぐっ」
るりちゃんが節々で強調するように放つ言葉が私の心にぐさ、と刺さる。
う、うん。迷惑かけてる自覚はあるし仕方ないよね。そう自分に言い聞かせてどうにか持ち直す。
「……小咲ちゃんも苦労してるんだね。大丈夫だよ、穂乃果は小咲ちゃんの味方だから——————」
「穂乃果ちゃん……」
穂乃果ちゃんはそんな私の気持ちに寄り添うように、ぎゅっと手を握る。穂乃果ちゃんも勉強はそこまで得意じゃないって言ってたから、私と重なるところがあるのかな。
穂乃果ちゃんの甘い声と優しい表情。気持ちも身体もそっちに引っ張られていくような気がして——————、
「ダメです小咲っ。穂乃果の甘言に惑わされては」
「おふっ」
たら、海未ちゃんからチョップが入った。引っ張られてた意識が急速に引き戻される。うぅ。いけないいけない。
「えー海未ちゃんひどーい! 小咲ちゃんはこんなに頑張ってるのにー……」
「穂乃果は小咲を味方につけようとしないでください! 全く、貴女はすぐ楽な方に流れようとして——————」
そしてついでにその後、穂乃果ちゃんも海未ちゃんのお説教を受けて、ことりちゃんはことりちゃんで、「まぁまぁ海未ちゃんその辺にして……」なんて言って宥めていて。
なんか相変わらずだな、なんて思って、思わず笑みがこぼれる。
「小咲。いい先輩……というか友達がいたんだね」
「あ、るりちゃん。……うん。そうだよ。先輩、以前に大事な大事な友達。るりちゃんと一緒で私の事を応援してくれる存在なんだ。これから先、どんな事でも頑張っていこうって思えるくらい」
「そっか。それなら良かった……。この人達ならどんな事があってもあんたの味方になってくれそうだし、安心だわ」
「ん? るりちゃん何か言った?」
「……いえ別に」
るりちゃんの声、最後の方は小声だったから何を言ってたのかは分からなかったけど。
きっと、あの3人の事を良く思ってくれたのだろう。るりちゃんの優しい笑顔からそれが伝わってきた。
それが分かれば、私はそれでいい。
「……まぁ、立ち話はこれくらいにして早くお参りに行きませんか? ここに来る道中で気になるクレープ屋見つけて、早くそっちに行きたいですし」
「る、るりちゃん。相変わらずだね……」
早くお参りを済ませて食べに行こう、と迷いなく言う辺りさすがるりちゃんだ。一緒に過ごしててよく思うけど本当に食べる人だし。正直少し呆れもするけど。
その言葉で私たちに意識を引き戻されたのか、穂乃果ちゃん達も私たちの方を向く。
「あ、そうだった! よーし小咲ちゃんと……るりちゃんのっ、の合格を願って早く行こっ! 私もるりちゃんの言ったクレープ屋に行ってみたいし……」
「あはは、穂乃果ちゃんも食べるの好きだもんね。じゃあそれが終わったら私の家に来ない? ほら、海未ちゃんもことりちゃんも私の家の和菓子屋には来たことなかったと思うし」
「クレープの後に和菓子……というのも太ってしまいそうで気になりますが……小咲の誘いなら断れませんね。それに、小咲の家でも勉強はできそうですから。ついでに誰かさんも一緒に……」
「ひぃ!? 鬼だ鬼がいるよぉ!? 助けてことりちゃーん!!」
「……んー。仲睦まじいようで何よりですなぁー」
うわぁ逃げないでぇ!? なんて言いながらまたわちゃわちゃしだす穂乃果ちゃんたち。そんな姿を見てると、どこかこちらも元気になるな。
これだけ応援して貰えるなら、しっかりと高校も受かって、そして。
一条君の彼氏さんになるんだ。そんな決意に似たものが宿った。
◇◆◇
因みにお参りを終えてクレープ屋に向かう時るりちゃんと穂乃果ちゃんたちで何やらヒソヒソ話した後、ちょっと微笑ましげにこっちを見てきて。
……何ですか。何を言いたいんですかあなた達。そう思ったけど、その言葉は心の中に閉まっておいた。
まぁ、海未ちゃんが顔を真っ赤にしてたからなんの話をしてるのかは、何となくわかったけど。
はようラブライブ本編のところが書きたいです(切実)