ウルトラマンエターナル 〜神聖時間軸の守護神〜   作:マーベルウルトラ

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イギリス・ロンドンで発生した奇妙な重力異常を調査するジェーン・フォスター。
天体の配列がもたらす世界の歪みは、やがて彼女を数千年の封印の深淵へと誘い、おぞましき因果の残響を目覚めさせていく――。
新章をどうぞお楽しみください!


第15話暗黒空間に眠る怨念の残響

アスガルドの家族が温かい絆を確かめ合っていたその頃、地球(ミッドガルド)のイギリス・ロンドンでは、数千年に一度の天体現象「惑星直列(コンバージェンス)」の影響により、世界の境界が歪み始める異変が静かに発生していた 。

 

ロンドンの一角にあるうらぶれた廃ビルへと調査に赴いていた天文学者ジェーン・フォスターは、謎の数値を吐き出すメーターを片手に、世界の裂け目による重力異常のデータを必死に追いかけていた 。

 

「ねえジェーン。そんなことよりさ、あのニューヨーク決戦の後、例のハンマーを持った格好いい雷神様──ソーとは最近連絡とってるの? 仲良くしてる?」

 

横を歩く助手のダーシー・ルイスが、謎の重力異常で空中へ向かってふわふわと浮き上がるペットボトルを面白そうに見つめながら、からかうようにそんな言葉を投げかけてくる 。

 

ジェーンはメーターから一瞬だけ視線を外し、遠い空を見つめて寂しげに、けれど一途なぬくもりを宿した瞳で小さく微笑んだ 。

 

「ううん、あの日から全然会えてないわ……。きっとアスガルドの任務で、九つの世界を平定するために忙しく飛び回っているのね。向こうの世界で必死に戦っているんだわ」

 

胸の奥を締め付ける切ない恋煩いと躊躇い。

 

それは、遥か彼方のアスガルドの王宮で「ジェーンをこれ以上危険に近づけて良いものか」と全く同じ瞬間に胸を痛めていたソーの葛藤と、完璧なシンクロを遂げていた 。

 

離れた世界にいても、二人の純愛のぬくもりは、確かに一つに美しく繋がっていたのだった。

 

しかし、そんな時間は、世界の歪みによって唐突に壊されることになる 。

 

メーターの異常な数値を追いかけて廃ビルの奥へと足を踏み入れたジェーンの眼前で、突如として大気が万華鏡のようにメリメリと歪み、光の屈折がぐにゃりと反転する異様な時空の裂け目が出現した 。

 

鼓膜を鋭く劈くキィィィンという金属音のような空間の悲鳴とともに、周囲の埃や瓦礫が一瞬だけ上下左右を失って万華鏡の破片のように静止する、物理法則の完全な崩壊 。

 

息を呑む間もなく、ジェーンの視界全体が引き摺り込まれるように反転していき、目に見えない巨大な渦に捕らえられた彼女の身体は、その時空の裂け目へと一人巻き込まれ、呑み込まれてしまった 。

 

「──ジェーン!? どこにいったの!?」

 

ダーシーの焦燥の叫びすら届かない、世界の裂け目の向こう側。

 

たどり着いたのは、光すら届かないアスガルドの先代王ボーが遥か数千年前にエーテルを封印した、静まり返った地下の暗黒空間であった 。

 

怯えながら暗闇のなかを歩くジェーンの前に、不気味な巨大な石柱の隙間から、数千年の封印から解き放たれた赤黒い液体状のインフィニティ・ストーン――暗黒物質『エーテル』がその姿を現した 。

 

それはただの物質ではなく、生き物のようにドロドロと不気味に蠢きながら、まるで捕食者が獲物の温もりを嗅ぎつけたかのように、赤黒い触手を伸ばしてジェーンの細い腕へとなだれ込み、体内へとぬるりと侵食(寄生)を始める !

 

「あ、あぁ……っ!! あぁぁああっっ!!!」

 

冷徹な暗黒物質が体内の血管を焼き尽くすような過負荷と激痛にジェーンが絶叫するその刹那、封印の底で数千年間眠り続けていたダーク・エルフの長

 

──マレキスの、おぞましい復讐の怨念の残響が、彼女の脳裏へと呪詛のように直接響き渡った 。

 

『王ボー……っ!! そして、あの白銀の刺繍を輝かせ、我が軍勢を完膚なきまでに蹂躙した、あの憎き光の巨神、ウルトラマン……っ!!! 我が数千年の怨念を以て、必ずや貴様らの愛した世界を、九つのすべてを暗黒世界へと還してくれよう……っ!!!』

 

それは、まだ優斗がこの世界へ来て時が経ち新しいジャケットの刺繍がボロボロになるよりも遥か昔、5000年前の超古代の戦場で、先代王ボーの背中を預かる不滅の友としてマレキスの野望を完膚なきまでに圧倒した、あの光の巨神・真中優斗への最深の憎悪の叫びであった 。

 

激しい怨念の声に頭を掻きむしり、暗黒の侵食の過負荷に耐えかねたジェーンは、そのまま冷たい大地のうえへと意識を失って倒れ伏すのだった 。

 

――そのジェーンにエーテルが寄生したまさにその刹那、すべてを見通すヘイムダルの燃えるような金色の双眸が、驚愕に大きく見開かれた 。

 

ヘイムダルは即座に、王宮にいるソーの元へと激震の報告を送った 。

 

「ソー、緊急事態です。地球にいたはずのジェーン・フォスターの姿が、私の目から完全に消失いたしました。……彼女がいた場所には不気味な『次元の裂け目(空間の歪み)』が発生しており、あまりのエネルギーによって、その裂け目の向こう側だけは私の目ですら一切見通すことができません……っ!?」

 

「何だと……っ!?」

 

その言葉を聞いた瞬間、ソーの胸を「愛する者を失いたくない」という恐怖と激震が奔り、先ほどまで抱えていた王としての理屈や躊躇いが一瞬にして吹き飛んだ 。

 

ソーは顔を青ざめさせながらも、ムジョルニアを握る手のひらにバリバリと青白い稲妻を迸らせ、凄まじい戦闘オーラを纏いながら、なりふり構わずビフレストの虹色の光の柱とともに大空へと跳躍し、爆速で地球のロンドンへと舞い降りた 。

 

失踪現場である廃ビルの奥へと駆け込んだソーの金色の双眸が、ヘイムダルの言っていた通り、空間が不気味に歪む世界の裂け目を捉える 。

 

この歪みの向こうでジェーンが怯えている――その一途な直感だけで、ソーは迷うことなく、戦鎚ムジョルニアを掲げてその暗黒の歪みへとまっすぐに突き進み、愛する人の名を叫んだ。

 

「ジェーン、俺が助けるぞ……っ!!」

 

大爆発の如き凄まじい雷光とともに世界の裂け目へと大突入したソーが、時空を力ずくでブチ抜いてたどり着いたのは、光すら届かない、彼自身その存在すら知らないアスガルドの地下の古代封印空間であった 。

 

そこには、冷たい大地のうえにぽつんと倒れ伏している最愛のジェーンの姿があった 。ソーは息を呑んで駆け寄り、その細い身体を優しく抱き起こす 。

 

「ジェーン! しっかりしろ、ジェーン……!」

 

しかし、ソーの手がジェーンの身体に触れたその瞬間、彼女の体内へと深く侵食した未知の暗黒物質が、侵入者を拒絶するように全自動の『不穏な赤い衝撃波』をバリバリと解き放って大暴走を始めた!

 

その赤い光の波紋は、触れた空気や空間を一瞬にして不気味な黒い物質へと強制変換するおぞましい波動 。

 

かつて真中優斗が放った『グリッターゼペリオンレイ』の、世界を温かく包み込んで調和するぬくもりとは完全に対比となる、触れた者の体温と生命力を根こそぎ奪い取るような、圧倒的に冷徹で不気味な暗黒物質のエネルギーであった 。

 

「お前が何であろうと、俺の手からジェーンを奪うことなど絶対に許さん……っ!!」

 

ソーは怒髪天を突く凄まじい執念を燃やし、ソーを力ずくで弾き飛ばそうとするその嵐のような赤黒い絶対結界の暴風に対し、ムジョルニアを地面へと叩きつけて放った青白い稲妻の壁が、エーテルの赤黒い嵐と、空間をメリメリと火花を散らし軋ませながら激突し、力ずくでその嵐を結界ごと引き裂いて耐え抜いた!

 

激しい暗黒物質の嵐を力づくでねじ伏せ、ソーは意識を失ったまま震えるジェーンをその胸へとしっかりと抱きしめ、二人は激動のタイムラインのなかで、ついに劇的な再会を果たすのだった 。




第15話をお読みいただき、本当にありがとうございました!
ロンドンでの異変、そして5000年前の因果から、すべての躊躇いを投げ捨てて駆けつけるソーの執念を描かせていただきました。
マレキスの呪詛に遺された過去の死闘、そして立ち塞がる赤い衝撃波に立ち向かうソーの愛の深さを、ぜひ色々と想像しながら楽しんでいただければ幸いです!
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