ウルトラマンエターナル 〜神聖時間軸の守護神〜 作:マーベルウルトラ
地下の暗黒空間から、意識のないジェーンを抱えて王宮医療室へと帰還したソー。
しかし、彼女を救おうとする医療師たちを襲ったのは、ストーンが放つ、未知なる赤黒い大暴走の嵐だった。
誰も触れることすら許されない最凶の絶望を前に、一体何が起きるのか――。どうぞお楽しみください!
アスガルドの遙か地下の暗黒空間にて、ジェーンの体内から解き放たれたエーテルの赤い衝撃波と、ソーのムジョルニアの青白い雷光がバリバリと空間を軋ませて激突していた、まさにその同じ瞬間 。
王宮の黄金の玉座の前に佇んでいた主神オーディンの隻眼が、驚愕に大きく見開かれた 。
その瞬間、かつて真中優斗が放った『グリッターゼペリオンレイ』のあの温かい白金色の創生粒子が、鎧の表面のルーン文字からバリバリと迸り、オーディンの全身を包み込むようにしてパッ……と激しく共鳴して波打ち、主神へ最大級の大警告を告げたのだ 。
「……目覚めたか。あの宇宙最凶の暗黒物質が、数千年の時を経てついに宿主を得て目覚めたというのか……っ!」
現主神としての絶対的な格をその双眸に宿し、オーディンは血相を変えて玉座の間を後にした 。
場面は切り替わり、王宮の最高医療室(ソウル・フォージの部屋) 。
地下空間での過酷な嵐を雷光で力ずくでねじ伏せ、意識を失ったジェーンをしっかりと抱きしめたソーが、ムジョルニアを掲げて時空をブチ抜き、バリバリと激しい青白い稲妻とともに部屋の中央へと降臨した 。
「ジェーンを救ってくれ! 早くっ!!」
ソーは焦燥の叫びを上げながら、寝台のうえに彼女の細い身体を横にする。
突如として雷光とともに現れた王子と、意識の無いミッドガルド人の姿に驚愕しながらも、アスガルドの優秀な医療師たちが治療の魔術(ソウル・フォージの光)を施そうと彼女の身体にそっと手を触れようとした、その刹那であった 。
──バリバリバリッ!!
ジェーンの体内から、再びあの赤黒い衝撃波が凶悪な気配とともに大暴走し、触れた医療師たちを容赦なく部屋の壁際まで吹き飛ばしたのだ !
「な、何ですかこの不気味な物質は……っ!?」
医療師たちがガタガタと恐怖に全身を戦慄させるなか、部屋の巨大な扉が重々しく開き、焦りと戦律を宿したオーディンが姿を現した 。
さらにそのすぐ後ろからは、優斗から貰った胸元のお守りを優しく持ちながら、王妃フリッガもまた寄り添うように駆けつける 。
フリッガは、昏睡して死にそうに苦しむジェーンの姿と、彼女を必死に見守るソーの一途な瞳を見つめ、すべてを優しく察して慈愛に満ちた声をかけた 。
「この女性がソー、貴方の大切な人なのですね」
「母上……っ! ああ、そうだ、だが彼女の手を握ろうとすると、この赤黒い光が……っ!」
「大丈夫ですよ、ソー。──オーディンよ、お力添えを」
フリッガは優しく微笑んで寝台の傍らへと歩み寄り、ジェーンを落ち着かせるために両手をかざした 。
編み上げられたのは、新緑の如き鮮やかな緑や、暖炉の炎のように温かいオレンジなど、多数の優しい光の色が美しく混ざり合った、圧倒的なぬくもりの魔法回路であった 。
「ふん、お前と並んでこれほどの魔術を編み上げるのは──あの真中優斗の服に防衛式を織り込んで仕立て直してやって以来、本当に久しぶりのことだな、フリッガ」
オーディンはそう口にすると、手にした『主神の槍グングニル』を医療室の床へと重々しく一突きした 。
──ドォォォンッ!!!
鈍い重低音とともに、グングニルの黄金の穂先から放たれた衝撃の波紋が、医療室の空気を震わせながら部屋全体の壁や床の防衛回路をルーンの幾何学模様としてバリバリと連動させていく 。
新緑の鮮やかな緑と暖炉の温かいオレンジの光の粒子が、グングニルから伝わる荒々しい愛の波紋と美しく混ざり合い、まるで夜空を彩るオーロラのように美しく波打ちながら、ジェーンの体内へと優しく包み込んでいく 。
ジェーンの細い身体を蝕んでいた冷徹な赤黒い物質が、多数の優しい光のぬくもりに包まれることで、まるで冬の氷が春の陽だまりに優しく融かされるようにメリメリと音を立ててそのトゲを失い、不気味な物質がスッ……と吸い込まれて完璧に抑え込まれていった 。
それは戦神としての圧倒的な荒々しさを宿しながらも、その本質は大切な者を闇から力ずくで護り込むような、不器用な深い親の愛の波動であった 。
あの何事にも動じない父オーディンが血相を変えて本気で焦り、普段は優しい母フリッガが九つの世界そのものを護るような絶対的な王妃の力を全開にしているその姿に、ソーも、そして医療師たちも「これほど本気の力を初めて見た……っ!」と、驚愕に目を見開くしかなかった 。
この王宮全体を揺るがす凄まじい防衛魔術の共鳴は、地下の清潔な(檻)で静かに本を読んでいたロキの元へも、鋭い魔術の直感を介してダイレクトに響き渡った 。
「これは……父上と母上の力か……っ!」
ロキは僅かに目を見開いて驚き、手元の本を静かに閉じた 。
王宮の壁を伝って響いてくるその波動──戦神としての圧倒的な荒々しさの中に、大切な家族を護り込もうとする父親の不器用な愛と、すべてを優しく包み込んでくれる母親の温かい愛の本質を、素直になったロキの魂は奥底で完璧に探知していた 。
その強大で優しいぬくもりに触れた瞬間、ロキの脳裏に、まだ何もかもが眩しかった幼きあの日、夜の闇や悪夢に怯える自分とソーの枕元で、父上がグングニルを優しく掲げ、母上がその手を握って見せてくれた、あの金色のまばゆいアスガルドの懐かしい記憶が、鮮烈な原風景として優しく甦ってきたのだ 。
まだ幼く小さかった自分の手を、フリッガが隣で優しく包み込んでくれた手のひらの温かさ、そして部屋全体を昼間の如きまばゆさで満たした、父上の放つ不器用で荒々しくも絶対に自分たちを護るという金色の守護の光の圧倒的な安心感 。
(──あぁ、そうだ。私は忘れていたわけではなかったのだ。自分は孤独でも、見捨てられた存在でもなかった。最初から、この大きなぬくもりの中に、確かに大切に育まれていたのだな……) 。
自分を包んでいた絶対の愛の真実を完全に思い出したロキは、胸の奥から込み上げる熱いぬくもりを感じながら、ツンとしながらも、これまでで最も温かく優しい等身大の最高の笑顔を浮かべてぽつりと呟いた 。
「フン……普段は威張っているくせに、相変わらず不器用な人たちだ。だが、あの頃のぬくもりがあれば、奴が母上に渡したお守りのあの過保護な光の波長に、少しだけ近づく」
王宮の上下で通じ合った家族の絆のぬくもり── 。
フリッガたちの緑とオレンジの魔法のおかげで、ジェーンの全身を蝕んでいたエーテルの侵食の力は一時的に弱まり、彼女の表情の苦痛はスッ……と穏やかな安らぎへと変わっていった 。
「ひと先ず大丈夫ですよソー」
魔術が完成されたことで、ソーが再び「ジェーン!」と心配そうに彼女の細い身体へそっと手を触れても、あの不穏な赤い衝撃波が暴走することはもうなかった 。
かつて傲慢だった自分を地球へ追放してでも“本当に大切な事”を気付かせてくれた父上が、今度は自分の大切な人を護るためにこれほどまでになりふり構わず本気になってくれた――。
アスガルドの王としての宿命などより、一人の男として愛を護り抜くことの本当の気高さ 。
ソーは瞳に熱い涙が込み上げるのを堪えながら、両親へ深く敬礼を捧げ、最愛のジェーンの手を優しく握り締めて寄り添い、親の愛の力技によって守られた最愛の人のぬくもりを、噛み締めるのだった 。
だがその傍らで、床からグングニルを静かに引き戻したオーディンは、一時的に抑え込まれたジェーンの胸元を隻眼で見つめながら、重々しく、深く敬服するように胸の奥で静かに独白を漏らした 。
(……やはり、二人がかりで一時的に暴走を堰き止めるのが限界か。この全宇宙の絶望たる暗黒物質を、根底から完全に無効化し、調和できるのは──マルチバースでただ一人、我が不滅の友、真中優斗だけだ……ただエーテルが暴走する恐れもあるが)
宿命の歯車が静かに噛み合うなか、光の巨神の降臨を予感させる不穏にして温かい余韻を残し、アスガルドの夜は更けていく―― 。
第16話をお読みいただき、本当にありがとうございました!
エーテルの不気味な暴走に対し、フリッガの温かい魔法とオーディンのグングニルの一突きという『親の愛の力技』を描かせていただきました 。
王宮の共鳴のなかでロキが思い出した幼き日の記憶、そして最後にオーディンが胸の奥で静かに呟いた言葉の真意を、ぜひ色々と想像しながら楽しんでいただければ幸いです !