ウルトラマンエターナル 〜神聖時間軸の守護神〜 作:マーベルウルトラ
欺きを抱えながらも、SO(教育係)としての不器用な信頼の糸を紡ぎ始めたウォードとスカイ── 。
どうぞ最後までお楽しみください!
南米ペルーでの『0-8-4』回収任務を終えた特殊航空機『バス』が、次なる目的地である地中海の美しい島国マルタへと向けて雲海を滑らかに大爆走する中。
機内のトレーニングルームには、肉体と肉体が激しくぶつかり合う打撃音の残響が、規則正しく響き渡っていた。
「はぁ、はぁ……っ! ちょっとウォード、今のフォームはどうだった……っ!?」
額に大粒の汗を滲ませながら、お世辞にも綺麗とは言えない不器用なフォームでサンドバッグを叩いていたのはスカイであった。
ペルー任務の後、コールソン長官から正式にスカイの「教育係(監督官)」に任命されたグラント・ウォードは、腕を組んで冷徹に壁に寄りかかりながら、フッと面倒くさそうに溜息をついた。
「おい、スカイ。お前のその護身術のフォームは何だ。
腰が浮いている。重心がズレているぞ。最前線ではその一瞬の隙が命取りになる。お前、本当にやる気はあるのか」
「ちょっと、ウォード! 私だって真剣よ! でも、あなたみたいにブラック・ウィドウと正面からやり合えるような怪物と一緒にしないで!」
文句を言いながらも、これまでにないほどその瞳を爛々と輝かせ、必死になって自分の指導についてくるスカイの真っ直ぐな姿。
それを見つめるウォードの冷徹な仮面の奥底には、ほんの少しだけ大人の余裕を宿した、いつもの最高のスマイルが浮かんでいた。
(──フッ、手のかかる素人め。……だが、昔の俺もそうだったな)
ウォードの脳裏に、かつて自分が暗い場所で何度も、何度も正面から冷たい床へと叩き伏せられていた、あの少年時代の古い記憶が静かに蘇っていた。
非情な訓練、そしてその影で自分を無条件に救ってくれた。
がむしゃらに力を求め、闇の中で足掻いていたあの頃の自分と、目の前で汗を流すスカイの瞳が完璧に重なり合う。
ウォードの胸を満たす、教育係としての責任感と彼女への守護の意志が、静かに点火される瞬間であった。
「おい、サイエンス。こいつに持たせる極小通信デバイスの調整はどうなっている。現場で電波が途切れたら、その時点でこの素人は終わりだぞ」
「ウォード、私たちは遊んでいるわけじゃないわ! 完璧にセッティングを進めているわよ!」
ラボではフィッツとシモンズが、シールド製の大改造コンソールデバイスをパチパチと流麗に操作し、前回の険悪なムードを少しずつ乗り越えながらバックアップの手配を完璧にホールドしていた。
操縦席ではメリンダ・メイが、相変わらず「我関せず」と静かなる威圧感を放ちながらも、いつでも動けるようバスの高度をマルタ島へと滑らかに傾けていく。
こうして、不完全ながらも少しずつ一つの不滅の絆へと成長し始めたチームは、世界的な大富豪イアン・クインが主催する大規模なパーティーへの、スカイの単独潜入作戦という最高の仕込みへと移行した。
それから数時間後。マルタ島にあるクインの豪華な要塞のような豪邸。
民間人ハッカーという経歴を完璧に偽装し、煌びやかなドレスに身を包んだスカイは、パーティー会場へとスマートに潜入を果たした。
しかし、要塞の奥深くへと極秘に進み、拉致されていたはずのシールドの天才物理学者、フランプトン・ホール博士の元へとたどり着いたその刹那、あまりにも予想外の残酷な真実が発覚した。
「フィッツやシモンズから話は聞いています、ホール博士! 助けに来ました! さあ、私と一緒にバスへ帰りましょう!」
「あの子たちの差し金か……いや、私は帰らんよ、お嬢さん。私は、自らの意志でここに残っているのだ」
薄暗い研究室の奥底で、巨大な重力制御装置(グラビティ・ストーム)の前に立つホール博士の瞳には、一寸の曇りもない狂気の決意が宿っていた。
装置の中心で、不気味にモゾモゾと空間を歪ませながら這い出る液体金属――周囲の物質の重力ベクトルを全自動で狂わせる謎の超物質『グラビトニウム』の凄まじいエネルギーを前に、博士は冷酷に言い放つ。
「イアン・クインはこれを利用して世界を脅かそうとしている。
だから私は、この装置を暴走させ、クインもろともこの要塞を地底へと沈める。──そのためなら、私の命などどうなっても構わん!」
「な、何ですって……!? クインを殺すために、自分から実験を暴走させるっていうの……ッ!?」
博士が正義のために狂気に囚われ、自爆を厭わぬ暴走ノイズを引き起こそうとしている事実に、通信越しに機内でホログラムを見つめるフィッツとシモンズは、驚愕した。
「博士、やめてください! 装置を止めなきゃ、島全体が木っ端微塵に全滅しちゃいます!」
「僕たちのシールド製安定化コードなら、グラビトニウムの歪みを完璧にホールドできる! だからお願いだ、止まってくれ、博士!」
二人は顔を真っ赤にして必死に叫んだが、ホール博士の暴走は止まらない。
重力制御装置がパチチチと不穏な電磁残響を放ち、周囲の家具やガジェットが天井へと逆さまに浮かび上がるグラビティ・ストームの嵐が吹き荒れる。
「これしかないか」
大爆発を起こしかけたその瞬間、駆けつけたフィル・コールソン特工が、歪んだ空間の重力の割れ目へとホール博士を突き落として装置を強制停止させようと、これまでにないほど重く、真っ直ぐな瞳を向けた。
──まさに、誰もが最悪の犠牲者を覚悟した、その危機の刹那であった。
「──おいおい、コールソン。これ以上、シールドの貴重な頭脳を減らす必要はないだろ」
要塞の闇の中から、どこへ消えていたのか分からなかったグラント・ウォードが、凄まじい風切り音と共にスマートに現れた。
ウォードは、重力の歪みへ落ちようとしていたホール博士の懐へと一瞬にして滑らかに潜り込むと、誰かをも彷彿とさせる極上の無手の技術を突き出し、博士の顎を正面から豪快に殴り飛ばして一撃で完璧に気絶させた。
そのまま、崩れ落ちる博士の身体を右腕一本でガシッと強固に掴み上げ、安全な床へと叩き伏せて完璧に叩き伏せてみせたのだ。
「コールソン、これでいいだろ。下に落とすより、こっちの方が圧倒的に余裕を持って安全に確保できる」
ウォードがニヤリと余裕を宿した最高のスマイルを浮かべると同時に、装置の暴走も、フィッツたちの超高速ハッキングによって一瞬にして綺麗さっぱり完全消去され、室内の重力は元へと戻った。
「……もう、ウォード! いきなり乱暴なんだから! 心臓が止まるかと思ったわよ!」
「全く、肝を冷やしたぞ! ──だけどウォード、博士を……みんなを無傷で助けてくれて、本当にありがとう」
フィッツとシモンズはウォードに文句を言いながらも、これ以上ないほど最最深の感謝を込めて最高のスマイルを浮かべた。チームの絆がまた一歩、美しく成長を遂げた瞬間だった。
だが、その鮮やかな救出劇の少し前。なぜウォードが一時的にその場から姿を消していたのか――。
それは要塞の裏通路での出来事だった。ウォードは、混乱に乗じて自家用ヘリで逃亡しようとしていた黒幕イアン・クインを、弾丸をも置き去りにする圧倒的な身のこなしで先回りし、完全に路地裏へと追い詰めていたのだ。
「くっ、シールドの犬め……! なぜ私の逃走ルートが最初から完璧に看破されている……ッ!」
驚愕のあまり愕然として地面へヘタり込むクインの胸ぐらを、ウォードは冷徹な眼光の中に笑みを浮かべて見下ろしていた。
完璧にクインを仕留め、シールドへ連行する。──当然、シールドのエージェントならそうするはずだった。
しかし、ウォードはクインの顎に銃口を突きつけたまま、ふと、その動きをピタリと止めた。
(──いや、待て。こいつはまだ、ここで潰さずに泳がせておくのがいい。
クインの持つ莫大な資金力とムカデ計画との繋がりはまだ利用価値がある。ここで完全に潰せば、裏のラインが見えなくなる)
不敵に笑うと、突然、追うのをやめて銃をスマートにホルダーへと格納した。
「──フッ。命拾いしたな、クイン。今日のところは見逃してやる。せいぜい、次のまで怯えて暮らすんだな」
「な、何だと……!?」
愕然とするイアン・クインをその場に置き去りにし、ウォードは何事もなかったかのように踵を返して去っていった。
すべては、裏から見つめる彼自身の知略の通りに。
無傷で救われたホール博士と、回収されたグラビトニウムの重厚なコンテナ。
再び『バス』へと乗り込んだ一同の機内では、ウォードから「よくやった」と不器用に頭をポンポンと撫でられ、頬を真っ赤に染めて大喜びするスカイの最高のスマイルが弾けていた。
まだ完璧に連携の取れたチームではない。しかし、日夜激しくぶつかり合い、お互いの背中を信頼し合うことで、彼らは確実に、不滅のチームへの新しい歩みをこれ以上ないほど美しく進めていた。
第62話をお読みいただき、ありがとうございました!
──ぶつかり合いながらもスカイやチームとの不滅の絆を美しく成長させていく彼らのフライトは、苦戦も悲劇もない最高の未来へと滑らかに加速していきます。
どうぞこれからも色々とお楽しみにお待ちいただければ幸いです!