ウルトラマンエターナル 〜神聖時間軸の守護神〜 作:マーベルウルトラ
過去の傷に寄り添い合いながら、大人の確かな信頼を結び直したコールソンとメイ──。
どうぞ最後までお楽しみください!
移動司令空母『バス』のリビングは、いつも通りの、いや、これまでで最も温かく賑やかな熱気に包まれていた。
前回のハンナとトバイアスの悲しい事件を経て、互いの胸にある深い傷や過酷な過去に寄り添い始めたメンバーたちの心の距離は、目に見えてに縮まっている。
そんな若き星たちの様子を見て、リーダーであるフィル・コールソンが「チームを一歩進めるための特別ホームルーム」を提案したのが数日前のこと。今や、リビングの広いスペースはそのまま即席の合同訓練場へと姿を変えていた。
「よし、スカイ。右のガードが数ミリ下がっている。前線の敵はその一瞬を狙ってくるぞ。……もう一回だ」
教育係であるグラント・ウォードの、不器用ながらも深いぬくもりに満ちた声が響く。
スカイは額に薄らと美しい汗を浮かべながらも楽しそうに笑ってみせた。
「もう、ウォードってば手加減なしなんだから! 鬼教官って呼んじゃおうかな!」
「前線で敵は手加減してくれない。ほら、ステップの重心移動を意識しろ」
「分かってるって。……これならどう!?」
スカイが地道な稽古の成果を乗せて鋭く繰り出した格闘のフォームは、ウォードの構えるミットへと綺麗に吸い込まれた。
ウォードは一瞬だけ驚いたように目を見張ったが、すぐにこれ以上ないほど格好良い、頼もしいスマイルをその不敵な面に浮かべた。
「──フッ、良いぞ。上出来だ。確実に軸のブレが消去されている」
「やった! 見てた、フィッツ、シモンズ!?」
スカイがガッツポーズをしながら振り返ると、ホログラムコンソールの前で最新ガジェットの調整をしていたレオ・フィッツとジェマ・シモンズの二人が、大はしゃぎで拍手を送った。
「見てたよ、スカイ! フォームの噛み合わせが完璧だった!」
「ええ、最高にかっこいいわ! これなら私たちが開発した最新のバックアップ連携ガジェットも、最高の精度で機能するはずよ。前線のサポートは私たちサイエンス・コンビに任せて!」
二人が笑顔でハイトーンな声を弾ませれば、リビングの空気はさらに温かい日常の笑い声で満たされていく。
ハッチの隙間からその様子を静かに見守っていたメリンダ・メイの横に、フィル・コールソンが静かに並んだ。
手にしたマグカップから立ち上る湯気の向こうで、コールソンはこれ以上ないほど穏地で、ぬくもりに満ちた最高のスマイルを浮かべる。
「──メイ。彼らはもう、ただの寄せ集めの新人たちじゃない。どんな過酷な試練が訪れようとも、決して壊れることのない絆を持った……最高のチームだ。そう思わないか?」
いつも通り冷徹な伝説の戦士の仮面をホールドしたままのメイだったが、その瞳の奥には確かな温かみが宿っていた。
「……そうね、コールソン。少しは形になってきたみたい。あなたが見込んだだけのことはあるわ」
「はは、君にそう言ってもらえると百人力だよ」
二人が大人の余裕に満ちた確かな信頼を交わし合っていると、バスのハッチが滑らかに開き、一人の大柄な男がリビングへと足を踏み入れてきた。
マイク・ピーターソン──かつて爆発の危機に瀕していたところを、コールソン達や、トニー・スターク、ブルース・バナーの血清によって救われた男である。今のマイクの肉体は、天才科学者たちの手による血清のおかげで、血清の過負荷暴走という悲劇が1ミリも存在しない、完全に安定化した超人パワーへと美しく調和されていた。
「コールソンさん、皆さん。……志願通り、今日からチームに合流させてください。俺を、そして息子を救ってくれたシールドの皆さんに、今度は俺のこの力で恩を返したいんです」
等身大の優しい父親としての最高の笑顔を浮かべるマイクを、スカイたちが「大歓迎だよ!」と拍手で迎え入れる。
マイクは最愛の息子エースを、最も安全である『シールドの極秘シェルター』に預け、何の憂いもない最高の状態でこの不滅のチームへと全力を尽くすことを誓ったのだ。
◇
──しかし、その完璧な日常の調和を冷酷に破るように、バスのメインモニターに不気味な警告アラートが鳴り響いた。
「……何、これ……?」
スカイが瞬時に表情を引き締め、コンソールを叩く。画面に映し出されたのは、ムカデ組織からの極秘の通信映像。
そしてそこには──無残に破壊されたシェルターの残骸と、怯えた表情で拘束されている、マイクの息子・エースの姿があった。
「エース……!! なぜだ、どうして居場所が……!?」
マイクの顔から一瞬にして血の気が引く。エースの身に迫る危機。
だが、それ以上にバスチームの全員の脳裏に、冷酷なまでの戦慄と疑問のノイズが走った。
「待って……おかしいわ。あのシェルターは、シールドの一部の人間しかアクセスできない最上級の機密コードで暗号化されていたはずよ!?」
シモンズが悲痛な声を上げ、ウォードとメイの瞳に鋭く冷徹な緊迫が走る。
(なぜ、敵に情報が最初から筒抜けなんだ……? どこから漏れた……?)
この時はまだ、シールドの内部にヒドラという巨悪が深く潜伏している事実を、一部の最高幹部を除きコールソンたちは知る由もない。
だからこそ、味方であるはずの組織の「底知れない不気味さ」と、足元から崩れていくような暗雲に対して、強烈な組織への不信感がチーム全体に一気に跳ね上がった。
だが、恐怖やパニックのノイズに呑まれるメンバーは一人もいなかった。対話と訓練で培った「お互いへの信頼」が、この逆境において彼らの一枚岩の結束をより強固にロックしたのだ。
「……ブリッジ(橋)を指定してきたわ。エースを返してほしければ、コールソンを連れてこいって」
スカイの声が震える。
指定された取引現場。夕暮れの赤い残響が不気味に差し込む長いブリッジの上で、ムカデ組織の超人兵士たちを従えたレイナが、笑みを浮かべて待っていた。ヘリコプターのローター音が爆音を立てて周囲の空気を震わせている。
動揺し、自ら前に出ようとするマイクの肩を、フィル・コールソンがその優しい手でそっと、しかし力強く叩いた。
「コールソンさん……! でも、奴らの狙いは……!」
「マイク」
コールソンは振り返り、これ以上ないほど穏やかで、一寸の曇りもない真っ直ぐな、最高のスマイルを浮かべてみせた。
「父親なら、迷わず息子の元へ行け。……今度は、私が取引に行く番だ」
「コールソンさん……」
その言葉には頼もしいリーダーとしての絶対的なぬくもりがあった。マイクが言葉を詰まらせる中、コールソンは一人、タラップを降りて敵のヘリへと静かに歩みを進めていく。
拉致され、拘束されるという、一見すれば絶望的な状況。
だが、コールソンは、かつて優斗の至高の光やキャプテン・アメリカをその胸の憧れに持つ男だった。
彼の胸中には、どんな暗闇をも退ける圧倒的な王者の余裕が完全にホールドされていた。
コールソンがヘリのハッチへと手をかけ、乗り込もうとしたその瞬間──
──モトモトと、彼の周りから、白銀ときらめく金の混ざり合った神聖な創生光の粒子が、静かに、そして美しく周囲の空間へと漏れ出していった。
それは、優斗に命を助けられた時や、とある場所でコールソンを見つけた光が彼の血肉に優しく息づき続けている『不滅の光』の残響。
ブリッジの上にサラサラと零れ落ち、美しく輝きながら消えていく光の粒子を見たバスチームの面々は、シールドへの不信感や一瞬の不安を綺麗さっぱり完全に吹き飛ばすほどの、圧倒的な安心感と絶対の希望をその胸に深く刻み込んだ。
(ああ……あの人は、絶対に屈しない。私たちは絶対に繋がっている)
バタバタバタと激しい爆音を立てて、コールソンを乗せた敵のヘリが夕闇の空の彼方へと飛び去っていく。
同時に解放され、こちらへ駆け寄ってきたエースを、マイクは涙を流しながらこれ以上ないほど力強く抱きしめた。
「──エース……! よかった、無事で本当によかった……! だが、コールソンさんが……!
エース、パパはあの人を絶対に救い出す。俺たちの命の恩人を、今度は俺たちが命をかけて護るんだ!」
父親としての魂の咆哮がブリッジに響き渡る。スカイは涙を堪えながらコンソールを睨み、メイは無言で次の奪還戦への陣形を整えるべく動き出す。全員の瞳に、不滅の反撃の炎が灯っていた。
その中で──グラント・ウォードだけが、コールソンを乗せて飛び去った夕闇の空を、冷徹極まりない眼光でじっと睨みつけたままでいた。
その拳は、肉が白くなり、血がにじむほどの力で固く、固く握り締められている。彼の胸中で、静かに、しかし地鳴りのような熱さを孕んだ誓いが爆発していた。
(……チッ、護れなかったか。いや、違う。俺はもう、実家で兄にいたぶられ、あの暗い井戸の底で何もできなかった、あの頃の弱い子供じゃない。
……必ず奴らの首を正面から木っ端微塵にへし折って、コールソンを全員揃って連れ戻してやる。
お前の段取りだとしても、俺のこの牙までは制御できないぞ)
移動司令空母『バス』の、ムカデ組織に対する圧倒的な反撃の火蓋が、今、完璧な決意と共に切って落とされた。
第69話をお読みいただき、ありがとうございました!
息子のエースを人質に取られた危機の最前線で、コールソン頼もしいリーダーとしてのぬくもりと共に一人で身代わりとなり、その体に宿る至高の「不滅の光」の残響をメンバーの胸に刻み込む。
どうぞこれからも色々とお楽しみにお待ちいただければ幸いです!