ウルトラマンエターナル 〜神聖時間軸の守護神〜 作:マーベルウルトラ
イタリアでの列車潜入からクイン邸での戦いを経て
どうぞ最後までお楽しみください!
移動司令空母『バス』の重厚なドアが開き、リビングに新たな二人の足音が不穏に響き渡った。
一人はシールドのベテランエージェントであり、かつてグラント・ウォードを鍛え上げたとされる男、ジョン・ギャレット。そしてもう一人は、その優秀な相棒であるアントワン・トリプレットだ。
険しい山脈の内部に極秘裏に作られた謎の地下要塞、通称『ゲストハウス』を共同で摘発・調査するため、彼らはこの不滅の移動司令部に合流したのである。
「紹介する。ジョン・ギャレット。シールドの伝説の先輩であり……俺が子供の頃、荒野のような地獄から救い出して鍛えてくれた恩人だ」
リビングの中心で、ウォードは一寸の曇りもない完璧なポーカーフェイスを維持しながら、スカイやフィル・コールソンたちに向けてギャレットを紹介した。
その言葉を聞いたギャレットは、これ以上ないほど満足げに、しかし腹の底で醜い優越感の含み笑いをその面に浮かべてみせる。
「いやあ、あの荒れていたグラントがこうして立派にコールソンのチームで主力を張っているのを見ると、実の親のように鼻が高いよ。コールソン、うちの生意気な小僧をよろしく頼むぜ」
「ああ、ギャレット。心配はいらないよ。彼は我がチームにとって欠かせない、最高の、本当に優秀な教育係だ」
コールソンがこれ以上ないほど穏やかで頼もしい最高のスマイルを返す。
共同任務の段取りはスマートに進行し、チームはゲストハウスの隠しラボの摘発に成功する。
そこで押収されたのは、厳重なプロテクトケースに収められた、不気味に青い光跡を放つ謎の生体物質サンプル──『GH-325』であった。
バスのラボへと持ち帰られたその不気味な青い液体を、最新の立体ホログラムで細部まで解析していたジェマ・シモンズは、
その異質すぎるゲノム波形を前にして、恐怖ノイズではなく、天才科学者としての正しい危機感をその大きな瞳に宿して息を呑んだ。
隣に立つレオ・フィッツも表情を強固に引き締める。
「……コールソン、これは駄目よ。このゲノムの組み合わせ配列は地球上の生物のものじゃない。
これは、地球にあっちゃいけない、異星の細胞物質だわ……!」
大人の男としての絶対的な余裕を常にホールドし続けているリーダー、フィル・コールソンは、その怪しい青い物質を見つめながら、一寸の曇りもない正しい決断を下した。
「分かった。シモンズ、フィッツ。そのサンプルのデータはシールドの全データベースからも今すぐ完全消去(デリート)してくれ。──これは、僕が責任を持ってこの世から完全に処分する」
「了解、コールソン。すぐに消去コードを実行するわ」
──しかしその夜。コールソンによって処分される直前の一瞬の隙を突き、隠密潜入技術を極限まで操るウォードが、誰にも、メイの鋭い目にすら気づかれぬうちに『GH-325』の実物サンプルをスマートに盗み出していた。
すべては、彼自身が敷いた裏の段取りの通りに。
「ここは何だ」
一方、薬の手配を完了させていたコールソンは、ゲストハウスの部屋の最深部にある「警告:立ち入り禁止(T.A.H.I.T.I.)」と書かれた重いハッチに目を留めていた。
何かに強く引き寄せられるように、コールソンがその部屋のセキュアロックを大改造デバイスで開き、内部に侵入した、まさにその刹那であった。
薄暗い部屋の巨大なガラスカプセルの中に、上半身だけが生かされ、下半身が千切れた状態の「青い肌をした宇宙人(クリー人)」の巨大な死体が浮遊しているのを、彼は目撃してしまったのだ。
その凄惨な死体には無数の管が刺さっており、宇宙人の体内から青い体液(血液)を24時間体制で抽出し、精製していたのである。
「これが、さっきの物質の正体か……。長官たちは一体、何を考えてこんな恐ろしい事を……ッ」
コールソンが組織の底知れない暗部に強い戦慄を覚え、ハッチを閉じて激しい息を漏らす。その脳裏にシールドの不気味さを感じていた。
格納庫へと繋がるバスの薄暗い通路。
ジョン・ギャレットは、背後から音もなく近づいてきた愛弟子の気配に気づき、不敵で醜い笑みを浮かべながらゆっくりと振り返った。彼はウォードの肩に、重々しく圧力をかけるように手を置く。
「──グラント。コールソンやあの素人の小娘どもと仲良く楽しい日常をやるのは結構だが
……自分が本当にすべきこと、俺たちの真の目的を忘れているわけじゃないよな?」
組織の暗部からの冷酷な揺さぶり。だが、ウォードは一寸の曇りもない忠誠の仮面をホールドし、スマートに深く頭を下げて言い放った。
「はい。1ミリも忘れていません」
そう言って、ウォードは上着のインナーポケットから、誰にも気づかれずに盗み出してきたばかりの青いサンプル『GH-325』を、暗闇の中で静かに差し出した。
自身の肉体の崩壊を救う奇跡の薬を誰よりも渇望していたギャレットの瞳が、貪欲で狂気じみた歓喜の輝きを爛々と放つ。
「これは……『GH-325』か……! コールソンが処分したはずの最高の手土産を完璧に手に入れたというのか!
流石だ、グラント……! 君を拾い上げ、一流に育てた甲斐があったというものだよ!」
「それと、こちらはハブのダミーデータ、並びにバスの行動ログです」
ウォードがさらに偽装された情報を手渡すと、最高の手土産を手にしたギャレットは、これ以上ないほど満足げに下卑た笑い声を響かせた。
彼はウォードを1ミリも疑うことなく、サンプルを懐にしまい込んで暗闇の彼方へと足早に消えていった。
カツン、カツンと響く冷酷な足音が遠ざかり、ギャレットの背中が完全に闇の奥へと消えた、まさにその瞬間──。
ウォードの顔から、ギャレットへ向けていた従順な奴隷の仮面が一瞬にして消え去り、冷徹極まりない鋭い王者の眼光が、周囲の空間の支配権を奪い取った。
去りゆく暗闇の方向を、静かに、そして激しく睨みつけながら、ウォードは胸の中で熱く、そして不滅の反撃の炎を爆発させるように燃え上がらせて誓うのだった。
(……せいぜい、そうやって踊っているがいいさ、ギャレット。俺はお前の操り人形じゃない。そして──俺を本物のお兄ちゃんだと信じてくれた、あの子供たちのぬくもりがある。この命にかえても、あの温かい仲間を完璧に絶対防衛し、お前たちを根こそぎ正面から全滅させてやる)
それから数分後。冷徹な戦士の気配を完璧に消去し、いつもの不器用で頼もしい教育係の佇まいでリビングへと戻ったウォードを、スカイがこれ以上ないほど最高のスマイルで出迎えた。
イタリア列車潜入での、あの新婚旅行変装の淡いドギマギ感を少しだけ瞳の奥に宿しながら、彼女は温かい日常の湯気の立つマグカップをウォードへと優しく差し出した。
「おかえり、ウォード。はい、コーヒー淹れたよ。冷めないうちにどうぞ」
「……ああ、ありがとう、スカイ」
ウォードはその温もりを愛おしそうに大きな手で受け取り、これ以上ないほど格好良い、いつもの不器用な日常のスマイルを浮かべた。
ラボの奥から聞こえるフィッツとシモンズの楽しげな笑い声。
そして、奥の席でコールソンとメイが静かに交わす、大人としての強固な信頼の微笑み。
この、誰も傷つくことのない光景を、何があっても誰にも壊させない。暗雲がすぐそこまで迫っていようとも、ウォードの胸中には、この家族を完璧にホールドして護り抜くという、絶対の決意に満ちあふれていた。
第73話をお読みいただき、ありがとうございました!
ゲストハウスの最深部で「青い肌の宇宙人」から精製される異星物質『GH-325』をコールソンが処分する話でした。
この辺りから原作との違いがだいぶ出てきます。
どうぞこれからも色々とお楽しみにお待ちいただければ幸いです!