記憶座標のサリエリ   作:siorin024

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第二章 存在しない生活

 一年後、岡部倫太郎は二度目の葬式を迎えた。

 正確には葬式ではない。

 遺体はなく、死亡日も確定していない。戦時下の行政が一人の行方不明者へ与える時間には限りがあり、死亡認定から一年を過ぎたところで、漆原るかが私的な弔いの場を設けたのだ。

 柳林神社の境内には、焼けた木材の匂いがまだ残っていた。

 社殿の右半分は応急処置の板で覆われ、石段には爆風で欠けた跡がある。それでも注連縄は新しく、白い紙垂が春の風に揺れていた。るかは神職の装束を整え、祭壇へ榊と水を供えた。

 中央に置かれた写真の中で、岡部は笑っていた。

 二十歳にもならない頃の写真だった。黒いシャツの襟を立て、意味もなく片腕を掲げている。今の岡部より頬が丸く、目に宿る疲労も少ない。

 真帆の知っている男とは、少し違う。

 けれど、あれも確かに岡部倫太郎だった。

 真帆は祭壇の前で頭を下げた。

 死者へ祈ったわけではない。儀礼の手順に従っただけだ。

 今朝、地下区画を出る前に測った岡部の体温は三十六度四分。睡眠時間は四時間二十二分。昨夜の演算で生じた頭痛を申告せず、鎮痛剤が二錠減っていた。

 死者としては、ずいぶん手のかかる生体反応だった。

 隣で、まゆりが二度、深く頭を下げた。

 喪服の袖から覗く手は若い。写真の岡部と同じ時代から切り取られた身体が、その十六年後に立っている。

 るかは、年齢を重ねていた。

 頬の線は細くなり、所作には昔にはなかった静けさがある。真帆と同じだけの年月を、この世界で生きてきた顔だった。

 儀式が終わると、るかは祭壇の水を替えた。

「まゆりちゃんは、変わらないね」

 責める響きではなかった。

「うん。るかくんは、大人になったね」

「そうかな」

「とっても格好いいのです」

 まゆりが笑うと、るかも微笑んだ。

 その笑みの奥に、失われた十六年が沈んでいる。まゆりが帰ってきた事情を、るかは知っていた。けれど、岡部がともに帰還したことは知らない。

 情報は、信頼ではなく危険度によって分けなければならない。

 るかを信用していないのではない。信用しているからこそ、拷問されても答えられないようにした。

 理屈は正しい。

 正しい理屈で人を傷つけることにも、真帆はとうに慣れたはずだった。

「真帆さん」

 るかに呼ばれ、真帆は写真から目を離した。

「何かしら」

「岡部さんが亡くなったと聞いたときも、泣かなかったそうですね」

 誰から聞いたのかは訊かなかった。

 まゆりではない。おそらく橋田か、抵抗組織の誰かだろう。

「泣けば、事実が変わるの?」

「いいえ」

 るかは首を横に振った。

「ただ真帆さんは、今も岡部さんが帰ってくるのを待っているように見えます」

 返答を用意するには、長すぎる沈黙だった。

 真帆は、祭壇の写真を見た。

 帰ってくるのを待っているわけではない。岡部は今朝も地下区画にいた。彼が待っているのは真帆の方だ。午後には帰ると告げてある。

 それを説明することはできない。

「科学者は、結論が確定するまで判断を保留するものよ」

 結局、そんな言葉しか出なかった。

 るかは追及しなかった。

「そうですか」

 もう一度、写真へ向き直る。

「それなら僕も、もう少しだけ保留にしておきます」

 風が紙垂を鳴らした。

 否定すべきだった。

 岡部倫太郎は死んだ。待っても帰らない。そう告げるのが、この一年守ってきた計画にとって最善だった。

 真帆は何も言わなかった。

 沈黙は肯定ではない。

 少なくとも、科学的には。

 境内を出たところで、まゆりが布に包んだ保存容器を差し出した。

「これ、真帆さんに」

 受け取ると、見た目より重かった。

「ずいぶん多いわね」

「二人分だから」

 まゆりは、それ以上の説明をしなかった。

 容器の隙間から、揚げ物の匂いがした。岡部が昔から好んでいたものだと、真帆も知っている。

「オカリン、ちゃんと食べてる?」

「私が見ていなければ忘れるわ」

「そっか」

 まゆりは安心したように笑った。

「じゃあ、大丈夫だね」

 何が大丈夫なのか、真帆は訊かなかった。

 二人分の食事を鞄へ収める。まゆりの手が、包みの端を一度だけ整えた。

 それは祝福でも、許可でもなかった。

 ただ、生きて帰ってきた人間たちに夕食が必要だという、ごく当然の処置だった。

 地下区画へ戻ると、岡部は作業机へ伏したまま眠っていた。

 モニターにはC204の姿勢制御モデルが開かれ、数式の途中で入力カーソルが点滅している。右手の近くには、空になったコーヒーカップ。鎮痛剤の包装は見当たらない。

 真帆は鞄を置き、岡部の背後へ回った。

 遺影には触れなかった。

 代わりに、寝癖のついた黒髪へ手を伸ばす。指先で一房だけ整えたところで、岡部の肩が動いた。

「……帰ったのか」

「起こした?」

「いや」

 嘘だった。

 岡部は顔を上げた。頬にキーボードの跡がついている。

「葬儀は済んだのか」

「ええ。あなたは今年も立派に死んでいたわよ」

「それは結構」

 真帆が髪から手を離そうとすると、岡部がその手首へ触れた。

 引き止めたわけではない。ただ、そこにあることを確かめるような触れ方だった。

「誰が来た」

「まゆりと、漆原さん」

 岡部の指が、わずかに強くなった。

「ルカ子は」

「あなたが帰ってくるのを待っているように見える、と言っていたわ」

 しばらくして、岡部は手を離した。

「伝えるべきだろうか」

「駄目よ」

「分かっている」

「なら訊かないで」

「分かっていても、訊かなければならないことはある」

 真帆は反論しなかった。

 鞄から保存容器を出し、机へ並べる。二人分の食器を用意すると、岡部が片方を受け取った。

「まゆりか」

「ええ」

「君は泣いたか」

「必要がなかったもの」

 岡部は真帆を見た。

 真帆は視線を合わせず、冷めたコーヒーを流しへ運んだ。

 泣く必要はなかった。

 振り返れば、死者が勝手に蓋を開け、つまみ食いをしている。

「それ、私の分なんだけど」

「二人分ある」

「配分が同じとは限らないでしょう」

「墓参りに行かなかった者にも、供物を受け取る権利はある」

「生きている人間は供物を食べないのよ」

「では、君は何を持ち帰ってきた」

 真帆は答えず、岡部の手から一つ取り返した。

 二人分の食事は、少し多かった。

 その夜、余った一人分を明日の朝食として保存した。

 死者の帰る場所では、そうして時間が先へ進んだ。

 

*

 

 それから四年のあいだに、二人は五度住居を変えた。

 六度目の移転が必要だと告げたのは、フェイリスだった。

「この調達経路は、あと三日で見つかるニャ」

 2031年、かつて秋葉原と呼ばれていた区域の地下。

 防火扉の向こうに残された小さな倉庫で、フェイリスは紙の帳簿を机へ広げた。電子記録を信用できない時代になっても、その指先の動きには往年のカードゲームのような華やかさがある。

 声も仕草も変わらない。

 けれど猫耳のカチューシャはなく、長い髪は後ろでまとめられていた。地上へ出るときは、目立たない灰色の外套を着る。秋葉幸高の娘としてではなく、いくつもの補給線を維持する責任者の顔だった。

「根拠は?」

 真帆が訊くと、フェイリスは帳簿の三か所を爪で叩いた。

「北側の検問で医薬品の追跡が始まったニャ。昨日は同じ業者から二人、戻らなかった。ここを切らないと、真帆ニャンまで辿られる」

「分かったわ。研究資材は今夜移す」

「研究資材だけじゃないニャ」

 フェイリスがページをめくった。

「男性用のシャツ。大きめの靴。定期的に減る鎮痛剤。砂糖の入らないコーヒーと、入れすぎるコーヒー」

 真帆は帳簿を閉じた。

「研究助手がいるのよ」

「その助手の靴が凶真と同じ大きさなのは偶然かニャ?」

 倉庫の時計が、小さく秒を刻んでいた。

 真帆は反射的に文字盤を見た。

 十九時十二分。

 岡部は十九時までに外周の点検を終える予定だった。

「今、何を気にしたのかニャ」

「搬出に必要な時間よ」

「違うニャ」

 フェイリスは帳簿を抱え、少しだけ首を傾げた。

「一人で暮らしている人は、そんなふうに誰かの帰る時刻を見ないニャ」

 否定の言葉は、すぐに出せた。

 真帆はそれを口にしなかった。

「いつから知っていたの?」

「知ってはいなかったニャ」

 フェイリスの赤い瞳が細くなる。

「でも、ずっと世界のどこかにいる気がしてた」

 一瞬だけ、猫の語尾が消えた。

 真帆はフェイリスの記憶について、いくつかの仮説を持っている。世界線を越えて残る感情。説明のつかない既視感。岡部の能力ほど明確ではなくても、過去の改変に触れた者たちには、ときおり観測不能な残響が現れる。

 今は検証している時間がなかった。

 地上で短い警報音が鳴った。

 フェイリスは懐から通信機を取り出す。受信した報告へ二つ指示を返し、真帆を見た。

「三日という予測は訂正するニャ。三十分」

「ずいぶん誤差が大きいわね」

「研究者じゃないからニャ」

 二人は同時に立ち上がった。

 旧地下鉄の保守通路を抜け、潜伏区画へ戻る。隔壁を開くと、岡部はすでに研究データを三つの耐火ケースへ分けていた。

「遅いぞ、ロリッ子」

「凶真ごっこをしてる場合じゃないわ。十五分で出る」

「この鳳凰院凶真に撤退を命じるとは、相変わらず身の程を知らぬな。だが案ずるな、機関の包囲など――」

「倫太郎」

 真帆が名前を呼ぶと、岡部は演技をやめた。

「状況は」

「北側の調達線から追跡された。西の排水路を使うわ」

「駄目だ。昨夜、崩落があった」

「なら東側」

「俺が囮になる」

「却下よ」

 予想していた提案だった。

 真帆は耐火ケースを一つ持ち上げる。岡部は同じ取っ手へ手を伸ばした。

「これは私が持つ」

「君の体格では速度が落ちる」

「あなたは左肩を庇っているでしょう」

「支障はない」

「被験者の自己申告は信用しないと、五年前に決めたわ」

 互いに取っ手を離さない。

「痴話喧嘩は移動しながらお願いするニャ」

 背後から聞こえた声に、岡部が動きを止めた。

 真帆の方が先に振り向いた。

 通路の入口で、フェイリスが笑っている。

 岡部の顔から、すべての表情が消えた。

「フェイリス」

 五年間、彼の生存を知らされなかった女の名前だった。

 謝罪より先に警戒が浮かぶのが、岡部らしい。自分が知られた危険ではなく、秘密を知ったフェイリスへ及ぶ危険を計算している。

 フェイリスは岡部の前まで歩いた。

「やっぱりそこにいたのニャ、凶真」

 それだけだった。

 責める言葉も、泣き声もない。

 岡部は唇を開き、閉じた。

 やがて、片腕を胸元へ引き寄せる。

「フゥーハハハ! この狂気のマッドサイエンティストが、世界ごときに殺されたと思ったか、フェイリス・ニャンニャン!」

 声量は昔ほどではなかった。

 それでもフェイリスは、目を細めて笑った。

「再会イベントは三十秒で終了ニャ。西側崩落区画の手前に搬送車を用意してある。崩落地点は今朝、アキハ一族が開通させたニャ」

「昨夜の情報を知っていたのか」

「秘密は値打ちがあるうちに守るものニャ」

 フェイリスは踵を返した。

 岡部と真帆は、まだ同じ取っ手を握っていた。

「二人とも、それを持って走るつもりかニャ?」

 真帆が手を離した。

 岡部がケースを持つ。代わりに真帆は、机の端に残された小型保管箱を抱えた。

 中身は紅莉栖の研究記録だった。

 爆発音が近づいた。

 照明が落ち、非常灯へ切り替わる。岡部は先に通路へ出ると、暗闇の中で後ろへ手を伸ばした。

 真帆は躊躇せず、その手を取った。

 三十七センチ上にある顔は見えない。それでも、どちらが先に角を曲がり、どちらが背後を確認するか、打ち合わせる必要はなかった。

 排水路の入口で銃声が響いた。

 岡部が真帆を壁際へ引き、真帆はその胸元を掴んで物陰へ押し込む。互いに相手を庇おうとして、狭い隙間へ同時に滑り込んだ。

「君が先に行け」

「あなたが先よ」

「真帆」

「倫太郎」

「仲がいいのは分かったから、二人とも来るニャ!」

 前方からフェイリスに叱られた。

 狭い隙間では、真帆の額が岡部の胸元に触れていた。岡部が銃声の切れ間をうかがうため身を屈め、その額が真帆の髪へ触れる。

 接触そのものは偶然だった。

 だが、銃声が途切れても、二人はすぐには離れなかった。

 先に進んだ岡部の手は、搬送車へ辿り着くまで真帆の手を離さなかった。

 フェイリスは一度も振り返らなかった。

 ただ、暗証扉を開ける横顔だけが、少し笑っていた。

 

*

 

 新しい潜伏先は、秋葉原から離れた研究施設の地下にあった。

 発電設備。遮蔽された通信回線。C204の部品を搬入できる貨物昇降機。以前の区画より条件はいい。

 問題は、居住空間だった。

「寝室が一つしかないんだけど」

 真帆が平面図を示すと、フェイリスは悪びれずに頷いた。

「二部屋分の生活痕跡は隠せないニャ」

「そういう意味で言ってるんじゃないわ」

「研究室にも長椅子がある。どちらかが使えばいい」

 岡部が言った。

 真帆は彼を見上げた。

「あなたが研究室で寝ると言って、そのまま三日間起きていたのはいつだったかしら」

「四年前だ」

「去年もよ」

「去年は二日だ」

「問題は日数じゃないでしょう」

 フェイリスは鍵を真帆へ渡した。

「では、運用は二人に任せるニャ」

 その言い方に反論する余地を探したが、見つからなかった。

 真帆は寝室の扉を開けた。

 狭い部屋に、ベッドが一つ。壁際には古い机と、衣服を収める棚がある。避難先としては十分だった。

 岡部が後ろから室内を覗く。

「俺は長椅子を使う」

「いまさらでしょう」

 口から出てから、その言葉が何を省略したのかに気づいた。

 岡部も気づいたはずだった。

 何年、同じ区画で朝を迎えたと思っているの。

 何度、机へ伏した彼へ毛布を掛けたと思っているの。

 何度、目を覚ましたとき、自分の肩に彼の外套が掛けられていたと思っているの。

 それらはすべて、共同研究に必要な健康管理だった。

 そう分類しておけば、説明はつく。

「そうだな」

 岡部は、それ以上何も言わなかった。

 フェイリスが廊下の向こうで、聞こえないふりをしている。

 荷解きを始めた。

 岡部の外套を入口近くの鉤へ掛ける。真帆の白衣をその隣へ。机の中央には、避難の最後まで手放さなかった小型保管箱を置いた。

 蓋を開く。

 紅莉栖の論文。アマデウスの基礎設計。タイムマシン理論へ繋がる断片的な記録。

 救うべき後輩が、そこにいた。

 その横へ、岡部が二つのマグカップを置いた。

 一つは縁が欠けている。

「それまで持ってきたの?」

「君が捨てないからだ」

「データより優先した覚えはないわ」

「俺が優先した」

 岡部は欠けていない方を真帆へ寄せ、自分の外套を取りに戻った。

 机の上には、紅莉栖の記録と、二人分のカップが残った。

 そのどちらかを選ばなければならないと、誰かに言われたことはない。

 ただ真帆が、自分でそう思い込んでいただけだ。

 紅莉栖を救うための机と、倫太郎が帰るための部屋は、同じ場所にあっていい。

 真帆は欠けていないカップを棚へ入れた。

 もう一つを、その隣へ置く。

 存在しないはずの生活は、その夜からも、二人分の音を立てて続いた。

 

*

 

 移転から三か月後、十四歳の鈴羽は訓練用端末の前で指を止めていた。

 画面の中央には、赤い文字が表示されている。

 発進承認。

 まだ存在しないC204を模したシミュレーターだった。姿勢制御、座標入力、緊急停止。ダルが組んだ訓練課程を、真帆が実用に耐える形へ修正した。

「制限時間はあと十秒」

「分かってる」

「分かっている人間は、そこで指を止めないわ」

 鈴羽は承認欄を見たまま言った。

「真帆さんは、岡部倫太郎のこと、どう思ってるの?」

「その質問が発進手順のどこに含まれるのか、説明してもらえる?」

「含まれてない」

「なら、訓練を続けなさい」

 残り六秒。

 鈴羽は押さなかった。

「父さんと母さんを見てるから、分かるんだ」

「観察対象が二人では、統計として不十分ね」

「そうやって難しい言葉で逃げるときの真帆さん、母さんに似てる」

「由季に謝りなさい」

「どうして?」

 時間切れを告げる音が鳴った。

 画面上で仮想機体が制御を失い、失敗を示す表示へ切り替わる。

 鈴羽は悔しがらなかった。

「岡部倫太郎が地上に出る日は、ずっと時計を見てる。帰ってきたら見ない」

 真帆は答えなかった。

「食事を残すと怒るのに、無事に帰ってきた日は怒らない。あと、岡部倫太郎が寝てるときだけ、声が小さい」

「ずいぶん研究熱心ね」

「好きなの?」

「質問の定義が曖昧よ」

「否定しないんだ」

 鈴羽が横を向いた。

 まだ十四歳だった。

 けれど、この時代で十四年生きた目をしていた。

「作戦が成功したら、この世界はなくなるんでしょう」

「正確には、異なる世界線へ再構築される」

「岡部倫太郎と真帆さんが、一緒にここへ帰ることも?」

 問いは幼かった。

 だからこそ、言葉を飾る余地がなかった。

「なくなるわ」

「怖くないの?」

「怖いわよ」

 鈴羽の目が少しだけ大きくなった。

 真帆は端末を再起動した。

「でも、消えることと、存在しなかったことは同じじゃない」

 再び、発進承認の文字が現れる。

「私が観測した。彼も観測した。それで十分よ」

「それでも、押せる?」

「押すわ。それが、私たちの望んだ結果なら」

 鈴羽はしばらく真帆を見ていた。

 やがて画面へ向き直り、赤い承認欄へ指を置く。

 今度は、時間切れになる前に押した。

 仮想機体の数値が安定し、発進成功の表示へ切り替わる。

「そっか」

「何が?」

「真帆さんが、岡部倫太郎をどう思ってるか」

「論理が飛躍しているわ」

「でも、間違ってない」

 鈴羽は笑った。

 真帆は訂正しなかった。

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