「ということで、無事にお二方に協力を取り付けられました。おそらく、蓮見さんの殺意も少し緩められたかと」
「殺意……1つの命を消そうという激情がそう簡単に収まるものなのかしら」
「あら、案外そんなものよ。何が引き金になるか分からないとはよく言われるけれど、なら何が留め具になるかも分からないでしょう? それに、人って自分に対していいことをしてくれた相手はいい人って思い込んじゃうの」
夜の自由時間、牢屋敷はずれの倉庫。
単純で可愛い、とくすくす笑うマーゴと、疑問符いっぱいでアイコンタクト越しに助けを求めるナノカ。
マイは肯定とも否定とも取れない曖昧な笑みで自身の立ち位置を誤魔化し、そしてマーゴは話がとっ散らからない内に話題を仲間集めへと戻した。
「二人を引き込めたなら後は勝手に広がりそうね。エマちゃんあたりは個別でスカウトしてもいいけれど」
「桜羽さん、ですか?」
「ええ。エマちゃん、とっても素直ないい子なんだもの。抱き締めて一緒に寝たいくらい♡」
「ああ、確かに紫藤さんなどは桜羽さんのような方に心を開いてくれるかもしれませんね。私たちでは少々、可愛げが足りないのかもしれません」
「……そうかしら」
「大丈夫よ、ナノカちゃんもとっても可愛いわ♡」
「……そう」
ナノカは口数少なく表情の変化も乏しかったが、さりとて感情を読み取ることはそう難しくなかった。
彼女は少しだけ目を明るくした後、提案があるとノートを二人へ見せる。
「仲間を集めても、その後の目的が無いと瓦解してしまうと思うの。だから共同作業をしましょう」
「そうですね、私は賛成です。黒部さんの言う事は最もですし」
「ええ、悪くない提案ね。それで……この絵は何かしら?」
「キッチンの設計図よ。倉庫の備品や館周辺の木を材料にすれば十分作れるわ。皆で一緒にキッチンを建てて、一緒にお菓子を作りましょう」
お菓子作りは得意なの、と少し胸を張るナノカ。
そこに差し出されるとても幼いタッチのイラスト。
マイはくるりとナノカの周りを一周すると、相変わらずの微笑みのまま問いかけた。
「聞かせてください。黒部さんは何を見たんですか?」
「どうして?」
「私は宝生さんほど多くの人を見てきたわけではないと思うのですが、その上で、ナノカさんはこのように群れる様な型の方ではないと見えるんです。ですから、【黒幕】以外に【幻視】で何が見えたのか、詳しく聞いてみたくて」
「……私が見たのは、この島の何処かに隠された【魔法を消す魔法】よ。かつて牢屋敷に住んでいた魔女達が秘密裏に、最期に残した大魔法。それを解き明かせれば私達も、なれはてだって元の姿に戻すことが出来る。そして【黒幕】はそれを知らない」
「あら、そうなの? そう言えば、ゴクチョーさんの話に【大魔女】なんて言葉が出てきたけど……もしかしたらそれが【黒幕】の目的だったりするのかしら?」
「ということは【大魔女】→【魔法を消す魔法】の順で解決していくべきですね。ええ、はい。これなら犠牲者を出さずとも済むと思います。もちろん、全員の連帯が前提とはなりますが」
「ウフフッ、なんだか楽しくなってきちゃった。次は誰を誘おうかしら」
マーゴがそう微笑んだ瞬間、その後ろで扉が開く音がした。
「……あ、わ、えっと……」
何拍か置いた後、佐伯ミリアの叫び声が高く響いた。
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