「……はい、14人。皆さんちゃんと集まってくれましたね。とても助かります」
ゴクチョーはそう言って少女達を見回した。
彼女らは部屋割りに関係なく思い思いの場所に座り、思い思いの行動を行っている。
当然ゴクチョーの話に耳を傾ける者もいれば、聞く耳を持たない者も。
手足のほとんどを隠すような大袈裟なフリルのドレスを纏った、陰気で無気力な少女は誰とも目を合わせないように部屋の隅でうずくまっている。
無邪気さとカラフルな色使いが目を惹く少女は鼻歌を歌いながら不気味なインテリアの数々を気ままに並べ替えている。
黒いマスクにボロボロの黒いドレス、足枷を嵌めた自罰的な装いの少女は誰に対してのものでもないながら怒り、声を荒げている。
猫耳付きのヘッドホンを装着した今時風の少女は、臭い、汚い、とより具体的な文句を口にしている。
長い金髪を頭の上で結び、胸元の開いたミニスカートのドレスに身を包んだ少女は不安げな表情で部屋を見回している。
黒、白、紫、その3色を基調とし市松模様をあしらった和洋折衷のドレスに身を包んだショートボブの少女は怪しげに笑っている。
腰ほどまでの長く暗い茶髪とブレザー越しでも目立つスタイルをした少女は手を腿の上に重ねて大人しく座りながら、貼り付けたような微笑みでその場にいる登場人物を見回している。
大きな銃を背負った、ほんの少し年上にも見えるツインテールの少女は同じように壁際から少女達を観察している。
不相応なほどにパステルな水色髪の少女、探偵のような衣装を纏った彼女はこれまた不相応に明るく楽しげな笑顔で状況を整理する。
すぐ近くにいたせいでそれに巻き込まれた白髪にピンク色のメッシュが入った少女は見るからに純真で、されるがままにブンブンと握手されている。
派手なドレスに派手な装飾、派手な口調と三拍子揃った小柄な少女がそれを止めるが、不自然で誇張されたお嬢様口調に他から失笑が漏れる。
黒と赤を基調とした如何にも大和撫子といった様子の鋭い雰囲気を纏った少女は壁際に立ち、不信感を隠すことなく部屋の隅々に目線を行き渡らせている。
その逆方向ではシスター服を纏った少女がこれまた不安げに、あわあわ、なんて音が聞こえそうなほど視線を右往左往させている。
そして最後、芝居がかった中性的な少女が招集したゴクチョーを差し置いて中心へと躍り出た。
「空気が張り詰めたままというのは望ましくないと思うんだ。まずは自己紹介でもしてみないかい?」
その提案に乗り気になる者は少ないが、さりとて拒絶する明確な理由もない。
全体の流れが彼女の方へ引っ張られた。
「では提案者の私から。私は
「えー、有名人じゃん! あてぃしともコラボしてよ! ちなあてぃしは
「ああ、ぜひコラボさせてもらうよ、ココくん。じゃあ次は──」
「はいはーい!!」
「ちょっ、いてぇですわ!?」
レイアの呼びかけに応じて手を上げたのは水色の探偵少女。
もう片手には隣にいた不自然なお嬢様の手が握られ、一緒に挙げられている。
「私、
「んじゃ意味不明じゃありませんの! ……で、わたくしは
相変わらず不自然な口調にまた失笑が漏れ、ハンナは顔を赤くして犯人を探そうとするがレイアがそれを止める。
そして彼女の進行のもと、次に選ばれたのは白い髪の少女。
彼女は自分の番だと気づくなりはっと背をただし、息を呑んだ。
「ぼっ、ボクは
「あ、あのっ、エマさん……っ」
少し裏返った声で自己紹介を終えたエマの下に駆け寄ってくるシスター服の少女。
彼女はしゃがみ込み、少し擦りむいたエマの膝へと手のひらを近づける。
手当でもするのかと視線が集まっていたその次の瞬間、まるで逆再生でもしたかのように彼女の傷がみるみると塞がれていった。
「な、治っちゃった……!」
「ふぅ、これで……ひ、ひゃっ……!? そ、そ、そうでした……。わわ、私の名前、名前は……
自己紹介以上に、傷を癒したその力に少女達の注目が集まる中、レイアは咳払いと共に仕切り直し、自己紹介の流れが再開する。
「あ、ええと……おじさんは
「私は
「私の番ですね。ええ、はい。私は
「……紫藤。
金髪少女、市松模様、茶髪、黒マスクがそれぞれ答えた。
その流れの中で部屋の隅の少女に自然と視線が集まると、彼女はどこからかスケッチブックと黒いペンを取り出した。
「『わがはいは
「……
「私は
「……、……あれ、のあも? のあは、んーと……
そして全員の自己紹介が終わると、自然とその視線は目の前の人語を解するフクロウに集まった。
「あっ……えっと……そろそろいいですかね? 私はこの屋敷の管理を任されているかわいいフクロウのゴクチョーと申します……」
「それで、私達は何故、ここに?」
「はい、そうですね……結論から申し上げると……間もなく皆さんの間で【殺人事件】が起こると思います。その時は……面倒ですが、【魔女裁判】で犯人を処刑してもらいますので」
「つまりは、こういうことですか? 「ここに集められた以上、被害者か加害者にしかなれない」、と」
「話が早くて助かります」
マイの質問にゴクチョーはそう頷いた。
尋ねた彼女自身を含め、張り詰めた空気が、各々を突き刺した。
少女達、あるいは【魔女】候補は、もう一度互いを見た。