翌朝、マイはマーゴと共に食堂へと向かった。
その足取り、その表情は昨日のものとなんら変わりない。
他のメンバーも昨日と大差なかったが、無理やり巻き込まれたようにエマ達の席にアリサが、ヒロに懐いたらしいノアがレイアグループに入っている。
そしていつものように1人で食事していたナノカは2人を見つけ、手招きした。
「こっちよ」
「あら、珍しいお誘い♡」
「はい。では、お言葉に甘えて」
2人はビュッフェに並んだゲテモノ料理の残りから辛うじて食べられそうなものを選り分け、まだ無事なリンゴを取ってからナノカの座る端の方の席へ座った。
「ウフフ、ご指名光栄ね♡」
「それで、なぜ私達を?」
「あなた達が一番情報集めが捗っていると思ったからよ。私はこの牢屋敷の【黒幕】を探してる。あなた達は怪しいけれど、でもそれは牢屋敷に関わる怪しさじゃないわ」
そう言ってナノカは敵対の意志はないことを示し、2人に情報を共有する。
【黒幕】には大きな目的があり、そのために牢屋敷は運営されていること。
あの看守や牢屋敷に存在する【なれはて】は過去の魔女裁判参加者であり、その中にナノカの姉が混ざっているということ。
何一つ、包み隠すことなく話したナノカはそれらが自らの経験と彼女の魔法【幻視】によるものだと明かした。
「……そう。はっきりと分かる嘘は吐いてない。少なくとも、今の情報については信用していいんじゃないかしら」
「そうですね。私にもそう見えます。ですが、なぜ昨日までは単独行動を貫いていた黒部さんが私達と協力するつもりになったのでしょうか」
「それは……橘シェリーからこれを受け取ったからよ」
そう言ってナノカが取り出したのは、マイが昨日図書室でシェリーに渡した【魔女の本】の写し。
既にそこには幾つかのメモが書き込まれており、ナノカによる考察、解析の跡が残っている。
「分かっていると思うけど、これは私達のものとは違う、全くの異言語で書かれているわ。私の知る情報でも1%も解読できなかった。これを解くにはどうしても私一人では不可能なの。意地を張るのは止めた。ここまで来たからには、私はどうしても姉を連れて帰りたい。そのためにはなるべく多くの魔法が必要。第一歩としてあなた達と協力したい」
「あら、殊勝……それにしても、あなたってこんなに喋るのね」
「聞かせて。あなた達は協力してくれるの?」
「私は賛成です。共同作業というのは、とても素敵なものですから」
「なら、私もそれでいいわ。でも……せっかくなのだから、1つだけ条件を決めない?」
「内容次第よ」
「あら、とってもシンプルよ。1人も死なせない、というのはどうかしら♡」
親しくなったとはいえ1日の付き合いのマイからしても、マーゴの口から出るにはそう信じられない言葉。
そんな2人の表情を見て、彼女は笑った。
「あら、心外ね。私だって可愛い子に、死んでほしくはないわ。……死んでほしく、なくなったの」
「……言うことを変えるのは好きではないのですが……分かりました。死なないこと、殺さないことを約束します」
指切りげんまんでしたっけ、とマイは小指を差し出した。
「あら、懐かしい」
「待ってちょうだい。仲間外れは良くないわ」