「共同作業というのは、とても素敵なものですから」
囚人プロフィール
礼儀正しく気品を感じさせる少女。
常に穏和な態度、悠然とした振る舞いを崩すことなく他人と接している。人に拒絶されることを恐れていて、それを避けるために他人の心の機微を読み取ることに長けている。
数年間身寄りのない生活を送っており学校にも通っていなかったが、保育士、教師の真似事をしていたこともあって様々な分野についての見識が広い。
自分を必要としてくれている何かを探している。
魔法
印刷
トラウマ
■■■■■
誕生日
10月12日
原罪
無用を知る乙女
身長
167cm
体重
63kg
一旦の監房と昼食を挟み、昼の自由時間。
ここなら誰にも聞かれないと、ナノカは2人を牢屋敷の外れにある倉庫へと案内した。
「あら、あんなゲテモノ料理とは思えないほどちゃんとした材料も揃ってるのね」
「あれはわざとよ。魔女化はストレスによって進行していく、きっと味覚への刺激でそれを促そうとしているんだわ」
「遠回り、ですね。そんなこと、殺し合い云々と比べたら些事でしかないというのに」
マイはスマホの魔女図鑑を見ながら、紙として牢屋敷のマップと囚人一覧を三枚ずつ印刷する。
彼女がそれを二人に渡すとナノカは自らの分を木箱の上に並べ、シャッとシャーペンで丸をつけた。
「【水精の間】……ここに、何か?」
「ここには牢屋敷の地下に繋がる隠し通路があるの。けれど【幻視】で見えたのはそこまで。中に何があるかは分からないわ」
「でも隠しているということは重要な何かがある……ナノカちゃんはそう言いたいのね」
「そういうことよ。調べる価値は充分にある」
「けれど、私達がそこを調べていることが【黒幕】に勘付かれたら? もしかしたら無理矢理誰かを殺して【魔女裁判】を起こしてくるかもしれませんよ」
「それはあり得ないと断言できるわ。この牢屋敷では過去に数十回、私達のような魔女因子を持つ少女達が魔女として殺されてきたけれど、幸いと言うべきか不幸にもと言うべきか、彼女達は皆お互いの殺意によって殺されていた。私達が魔女化の進行、それによる殺意の増幅を抑え込めれば事件は起きないはずよ」
「なら……まずはどうにかして全員を巻き込まないとかしら。本の解読もそう、大抵の計画の最終関門はマンパワーを揃えることだもの」
マーゴの言葉によって、議題は次に仲間に加えるべき囚人へと移る。
一瞬で全員を連帯させては企みを勘付かれる、自然な形、自然に見える形で雪だるま式に巻き込んでいかなければ。
その思惑が一致したところで、マイは2つの顔を指差した。
「彼女達はどうでしょうか。二階堂さんに、蓮見さん。どちらもリーダーシップのある方と見えますし、特に蓮見さんは目立ちたがりな気質がありそうですから、自然な形で皆さんを巻き込んでいけると思います」
「あら、いいの? それともマイちゃんは気付いてないのかしら?」
「いえ、そこは理解していますよ。蓮見さんは、
「!!」
「ああ、いえ。計画などの話ではなく、殺意を覚えている、という意味です。初対面の際、私が進行を務めてしまいましたから、それが気に食わなかったんだとは思いますが」
「……そうね。全員で生きて帰るには、誰かが誰かを殺す、というのも全て防がないと。私はあまり、そういうのは得意はないのだけど……」
「ウフフッ。大丈夫よ、ナノカちゃん。私、そういうのはちょっぴり得意なの。口先一つで殺したくなるんだから、口先一つで殺すのも止めてあげるわ♡」
「では、これで。彼女達でしたら……娯楽室などにいそうですね。思い立ったが吉日、参りましょうか」
◇◇◇
「二階堂さん、少しお話よろしいですか?」
「……ああ、マイか。そうだ、ノアに紙を渡してくれてありがとう。彼女に代わって礼を言うよ」
「いえ、それほどでは」
「おや、誰かと思えばマイくんじゃないか!」
娯楽室のソファで考え事をしていたヒロにマイが声を掛けたところで、さらにその背後から水を汲んできたレイアが声を掛けた。
さすがは一流の舞台俳優、振る舞いも少し芝居がかった口調もごくごく自然だが、その目の奥だけは形容し難い暗くて重い何かが詰まったようだった。
しかしマイは彼女の方へ振り向くと、いつもより少し柔らかい穏やかな微笑みで出迎えた。
「ああ、ちょうど良かった。実は蓮見さんにもお話があったんです」
「いいだろう、頼みなら是非とも任せてくれ!」
「実は宝生さんや黒部さんと、もっと囚人間で親睦を深めたいなという話をしていたんです。そうすれば殺人事件も防げるかもしれませんし、ちょっとでも互いを知っておけば、殺してしまうきっかけ、いわゆる『地雷』を踏み抜くリスクも下がるかもしれませんから。そこで、集まりのまとめ役を探していまして。それを蓮見さんと二階堂さんに頼めたらな、と」
「なるほど……一方的なものよりも相互関係の下に定めた規律の方が皆納得の上で実行できる。確かに正しい提案だ」
「なるほど、そうだったんだね! 頼ってくれてありがとう、ぜひ協力させてもらうよ!」
「はい、ありがとうございます」
一瞬で目の奥の暗さを投げ捨てたレイアに、マイはゆったりと頭を下げた。
そして彼女はお近付きの印にと【魔女の本】の写しを二人に差し出し、これを解けば何か分かるかもしれないと補足する。
それから、二人の手を握った。
「皆で生きて、牢屋敷を出ましょう」