『個体』ではなく『群体』として認識されている波にとって、群体の内の欠片のひとつがどのような人生を歩んでいたかなんてどうでもいい事だ。 優先されるべきは『個体』の意識ではなく『群体』としての役割。たとえ、『群体』中のちんけな『個体』が否を答えても結果は変わらない。
どれだけ足掻こうと、どれだけ歯向かおうと、『群体』と言う強き波に人は逆らえない。少数派は多数派に返り討ちにあい、多数派は少数派を呑み込んで更なる『群体』と数を増やす。多くは正義で少ないは悪。社会における常識かつ世界の理。『群体』は役割を果たすために『個体』を押し潰す。
黒く、黒く塗り潰す。弱き意志は強き『群体』へ。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
21日、午前12時59分。特殊な立場にあるジョルノと共に
「⋯⋯博洋さん。いくら僕が信用出来ないからって、重要な任務に連れてきちゃあ意味ないんじゃあないですか? その、僕が関わっているというのは十分に理解はしてますが」
付き添いであるはずのジョルノを置いていきそうな急ぎ足で進む博洋の背中を見ながら、聞こえぬほどに小さな声でジョルノは呟く。
「関わっている、と言うのはお主の状況だけじゃあないんじゃよ童。お主⋯⋯名をジョルノ・ジョバァーナと言ったか。お主は不思議ながらも"3つの血"が混じっとる。1つは母親の、2つ目は当然ながら父親である
足を止め、後ろを振り返りながら『通常ならここまでが普通なんじゃが』と人差し指を突き立て、言葉を紡ぐ。
「
人によって作り出された黒い波は交差点を抜ける事で多少はマシとなる。細かく言うとすれば、博洋たちが交差点を抜けたのではなく、博洋たちが道の真ん中で止まる事によって交差点を通る人たちが通行し終え、いなくなったからと言うのが正しいか。とにかく、周囲から人が少なくなった場所で博洋は発した。ジョルノ・ジョバァーナと言う少年の肉体には奇妙な血を元に生み出された奇妙な生があるということを。
「今はそこまで重要じゃないからの。さてはて、問題なのは"ジョースターの血筋"と言う部分じゃ。今回の報告書の内容に書いておったのは"ジョースター家"を名乗る謎の人物じゃ。ニット帽? ビーニー? とやらをかぶり、星柄の特徴的なシャツを着た細身の男。血筋通りならジョースター家⋯⋯スタンド使いじゃろうな」
信号が赤となってクラクションが鳴り響く。ジョルノは耳を塞ぎながら、会話すら聞いていない風の素振り。反対に博洋はクラクションすら聞こえておらず、まったく気にしていない顔。ジョルノの位置から見えるだけで車の運転手は窓を開けることすら忘れて声を張り上げているようだ。
相手が他国の、それも差別対象として色強く上げられている有色人種であれば尚更だろう。ただし、重要なのは他国に喧嘩を売るような行為をして事件を起こすのではなく、人目が集まり、それこそ目だけではなく人が集まるような集中を浴びること。
報告書が届いたのは謎のジョースター家が現れてから約14時間。余程の金がなければ遠くには行けはしない上、遠くに行っていたとしても財団が常に張っている包囲網になんの情報も引っかからないはずがない。故に博洋は謎のジョースター家はまだいると踏む。
「ちなみにお主が信用出来ないってのは
『あとで話す』、そう言いかけた時だった。
「"情報"は黒く塗り潰す」
「⋯ッ! 『無駄ァ!』」
生暖かい風が靡く。風は黒い霧を乗せ、再開した交差点の集団のそれぞれにパラパラと粉のように舞い落ちる。触れた箇所から侵食するように染み出た"黒"を見て、咄嗟的に出た金色の人型スタンド『ゴールド・エクスペリエンス』の拳が目前まで迫る黒い霧を切り裂く。
パンチによって巻き起こされた風圧で霧の大半が散り、接触を間一髪の所で回避。元はと言えば、交差点の集団にいる誰かから発せられた声を感じ取り、危機だと思って防衛反応が発動したのだ。これは自然な現象でもなければ遠隔操作型の類ですらない。
近くに敵がいる。そう確信しながら博洋の方にちらりと視線をやり、身の安全を確認して周囲を見渡す。博洋の方も何かを感じ取って警戒しているらしい。背中合わせでいるジョルノと博洋の視界には怪しげな影はいない。
「ただの挑発か⋯⋯? それか攻撃に必要な何かしらの"トリガー"があるのか。トリガーがあるにせよ、今のでマークされた可能性がある。今の内に逃げるべきじゃあないですか、博洋さん」
「逆に探し出さにゃならんかもの。マークしても攻撃してこないっちゅーことはしないんじゃあのうて
意見の対立。もっとも、先達の知恵と言うばかりに年齢が上の博洋の知識に従うのがジョルノにとっての最善。ただ、もしも何かをトリガーに発動する能力なら、マークされた時点で逃げなくては敗北が確定したような物だ。
交差点を抜け、路地裏へと走り去っていく人影を追う。背丈格好から声の通りに女で、走り方から見れば若さとは無縁の推定30代以上の女性であろうか。ガールと言うよりはレディーに近い背中を追い、光の入らぬ路地へと入る。
ゴールド・エクスペリエンスによって既に植物のフェンスが路地における唯一の出口を塞ぎきった。無論、ジョルノたちが追ってきた際に通過した入口である通路も同様にだ。
タイムズスクエアには路地と言える路地が少ない。故に現地の人間ならば把握しているし、ジョルノとて事前に確認した地図で細道などを全て暗記している。抜け道に植物を生やして退路を塞ぐ行為は容易く行える。故に逃げ道はない。
「やましい気持ちがある時は常に逃げるってもんだ。その"やましい"が行動を指すか、精神的なものかは人によるが⋯⋯あなたの
「レディーに無理矢理とは卑猥な言い方をするものね、ボーイ。でも、その願いは無理よ。無理矢理だとしても、ね」
ゴールド・エクスペリエンスと共に女を睨むジョルノに反し、背を向けていた褐色の女。白ドレスで身を包む姿はさながら美と優雅のコラボレーション。色気と品性溢れる格好とは裏腹に振り向いた女の声は冷たく、喋り終わりに残した言葉はえらく不穏な物だった。
女の周囲にある構造物の隅々から現れた黒い霧が飛び、宙を舞う。対抗するが如く、霧が集結して完成した人型の姿は中世騎士のような甲冑で身を固めたロングソードを持つ男。マントを羽織っていながら、その格好は黒い霧を元に構成されたが故にモノクロが如き漆黒。その暗黒の体に希望の象徴とされる光は入らない。
瞬間、隙も与えずとロングソードを肩に担いだ状態で騎士が走り出す。交差点での黒い霧から見て、ただ剣を振り回すだけではないのは確定している。問題はその能力がなんなのかという点。本体は動かず、スタンドだけが向かって来ているという事はある程度は射程距離がある。つまるところ、パワーはないはず。
「中世の甲冑は速度を犠牲に斬撃を物ともしない圧倒的な防御と言う利点がある。が、打撃だけは衝撃を逃せない」
『無駄ァ!』
ドン⋯
右拳による打撃。甲冑越しとは言え、飽くまで見かけはスタンドだ。甲冑としての役割ではなく、見た目だけの装飾と考えるのが無難。一部、チャリオッツのような例外の存在があるが、この時点でのジョルノはその存在を知らない。知っているのは鍛錬で磨かれた剣術と戦闘技術によって戦う車椅子乗りがただ一人。
無防備にも走ってきた騎士の左胸へと叩き込まれた攻撃は表面を軽く刺激するだけで内部にまで響いた様子はない。それも騎士が衝撃でよろめく素振りさえ見せない。後隙を晒す暇もなく、引いた拳に伸ばす足。左足によって騎士の右足内側の太ももを強くキック。バランスを崩すように大きな刺激。
「戦闘中に転倒して馬乗りに⋯⋯甲冑を着た戦いは斬撃を混ざり合わせるもんじゃあない。揉みくちゃあいに殴り合うインファイトだ。だからこそ転べば終わり。無駄なんだ」
バギィ
踏みつけによるロングソードを持った右腕の破壊。ダメージはフィードバックによって本体へと──、
「王女は頂点に立つから王女。誰も寄せ付けず、常に頂点。だからこそ負けないのよ。誰にもね」
────戻らない。一瞬の困惑を元にジョルノの脳内に様々な可能性が込み上げる。マークされた疑いがあったように、何かをトリガーに発動する『自動追尾型』にはスタンドへ与えたダメージが本体へと適用される『ダメージフィードバッグ』が存在しない。その射程距離とシンプルな物理攻撃と言う能力から可能性は存在していた。
しかし、自動追尾には強力な能力か、追尾を強制する程の強烈なフィジカルが存在する。スピードもなければ、反撃するまでのタフネスさもなかった。残った可能性は──、
「這い蹲るのはいつだって民。王女を崇め称えるように
「が⋯ぶ、ふ、っ」
────己のルールを世界に強制する強力な能力。片腕を破壊し、体重をかけた踏みつけによる拘束をしていたはずの騎士が壊れた腕でジョルノの左足首を握り潰す。痛みと驚愕で滑り落ち、仰け反るように騎士が立つ。王女はいつだって頂点に立つ。己の身にどんな事があっても王女を守るべく動くのが騎士の役目。
いつだって王女は頂点に立っている。汚れ仕事を行う騎士の手で。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
戦闘における"勝つ為の行動"とは、ただ相手を殺す為に動くだけではない。その"殺す"までの過程こそ重要だと博洋は認識している。相手が何をできるかを見極め、その上でなんの攻撃が有効かを手探り、あるいは見て考える。
(フィードバックがない事からパワー型の路線はなし。無理に接触しようとしていない所を見るに即死系の技もなし。先手を取られて困る事はない。自由に動けるワシがどう動くかが重要じゃが⋯⋯)
ポリポリと頬を掻きながら目の前の光景を直視する。敵のスタンドである物を仮称『騎士』と呼ぶが、騎士によって足首を掴まれ、バランスを崩された事によって逆にジョルノが地に伏せる事となった。ロングソードは地面に転がっていて、すぐさまの斬撃は今のところ行えそうにはない。
本体ががら空きというのなら、その間に本体を仕留めるのがベスト。懸念点は無防備なはずの本体がわざわざ姿をさらけ出し、逃げるまでもなく戦いを傍観している点にある。が、
「ッ⋯! 厄介な御老公ですこと」
「それはこっちも同じじゃよ、娘っ子」
仮にスタンドを出してもジョルノに力を使っていては限界がある。キラリと光を放つ銀色の刃を投擲するも、若干のとこで首を傾げさせて頬を傷つける程度の損傷。褐色の肌から微かに赤い血が流れ、舐め取るように動く艶やかな指がゆっくりと拭き取る。
財団にいるスタンド所有者は基本的に非戦闘員だ。戦闘部隊と言う特殊な例外を除き、基本的に非殺傷を掲げた利便性の高い能力である事が大半。財団員のスタンド所有者のほとんどが元々、自らの手で戦えると言うのが大まかな理由であるのだが、それを踏まえた上でも博洋と言う男は特例だった。
倒れたジョルノを通過して足を伸ばす博洋。歩数と共に増える歩幅、と同時に投擲される刃。──中国における暗器の一つに
「チッ、面倒臭いですわね。切りたくはなかったですが⋯⋯戻りなさい! 『
「手数は1つ⋯⋯射程距離だけが取り柄だと思えるが、油断は禁物かの」
輪っかのついていないむき出しの峨嵋刺。それも先端が鋭く尖り、刺突に特化している改造品。矢のように飛ばされ続けているそれに、耐えかねた女が完全なる防御に力を注ぐ。ジョルノを拘束していた騎士────
周囲からかき集められ、集結した黒い霧によって無から生まれ、長き刃を持つロングソードで峨嵋刺の投擲を防ぎ切る。弾く、と言う表現は適切ではない。高い速度を持たない騎士ではロングソードを野球の送りバントのように横に倒しての受け切る防御しか行えない。
スタンドを戻したと言う事は積極的に博洋が狙われるが、同時にジョルノが解放されたということ。客観的に見ていた博洋に対してジョルノは戦闘で敵の動き及び思考に集中していたが故、その細かな動きや異変に目をやられていない。スタンドを戻させたのも博洋の考えか否か、今度はワシの動きを見ろと言わんばかりのスタンス。しかし──、
「づ゙ぅ゙あ゙ぁ゙あ゙! なにを!」
「娘っ子は知らんじゃろうなぁ。異国のようわからんもんなんて」
────
重ねて言うように財団員はスタンド
事実、火薬すら使用していない無音の中距離射撃をスタンド使いは想定もせず、対処もできず、その胸部に喰らうがままにしている。右胸に深く突き刺さった矢は鉄製かつ特注で釣り針のようにかえしがついていて抜けづらい。毒はなくとも傷から溢れる命の源である血液が肉体の死を宣告している。
「娘っ子。お主はワシがスタンドを使うまでもなく倒される。色々と聞く事があるからの⋯⋯死なないで貰えると助かるんじゃが、難しいか」
「即死でない限りはなんとかなりますよ。僕のゴールド・エクスペリエンスで」
「そりゃあ助かる。力を惜しみなく出せるの」
老人と少年と言う異様なコンビ。それも少年が出るまでもなく、老人一人が圧倒。スタンド能力を出すまでもなく、持ち前の力だけで。追い詰められている。スタンド使いでもない老人に、スタンド使いであるはずの女が。だからこそ、だ。
「レディー相手に二人かがりとは紳士ではないですのね。ボーイと御老公から迫られるほど魅力的な女と言うのは十分に承知しておりますが⋯⋯1人でお相手されるのも退屈というものでしてよ」
警戒しなくてはならない。女の持つスタンドがただロングソードを振り回すだけの頑丈な騎士ではない可能性が常に存在すると、彼らは警戒しなくてはならない。
「『黒き騎士』よ。命に賭けても王女を守りなさい」
かざされる手を元に集結する黒い霧。今度は無から騎士を生み出すのではなく、既に生み出されている黒き騎士へと増加する形。骨格が変形し、甲冑に暴力的な棘が生え、ロングソードが大剣が如きサイズへと変化する。防衛的な見た目の印象から攻撃的かつ積極的な死のフォルム。
力を隠しては勝てないと女は悟ったのだろう。それは逆に勝利へと歩が進んでいる証拠でもあるが、同時にこちらが攻められる可能性でもある。強化されたと思わしき黒き騎士のパワーや速度を知らぬが故、警戒をより一層に強めなくばならない。
パワーそこそこで速度特化のゴールド・エクスペリエンスが前に出る。相手はロングソード、否。大剣を両手にて構え、動きを見計らう待ちの状態。下手に動けばカウンターで致命傷を負う可能性が高く、速度だけが命のゴールド・エクスペリエンスにはリスクが高い。が、そうせざるおえない。
『無駄無駄!』
「じっくりと観察させてもらうかのッ!」
博洋がスタンドを出さぬのだから騎士へと攻撃を与えれるのはゴールド・エクスペリエンスのみだ。ともあれ、騎士へと放たれた高速の2連ジャブ。同時に女本体へと投擲された3本の峨嵋刺が首筋めがけて飛んでゆく。騎士による本体防衛はゴールド・エクスペリエンスの攻撃で行う事はできない。
かと言い、騎士をジョルノの方へと集中させてしまっては無防備な本体が攻撃され、ジワジワと追い詰められてしまう。この場面で必要なのは"手数"であり、強化版騎士のような個の"パワー"ではない。だからこそ博洋は常に警戒する。が、
牽制の2連ジャブ。防御するまでもなく巨体を包み込む甲冑がビクともせずに衝撃を満遍なく吸収。空を切り裂きながら轟音を鳴らし、砲丸投げのように肩から前方めがけ、ジョルノを両断せんとばかりに振るわれる大剣の一振。その攻撃を地から生やした小さな植物の根で僅かにずらして回避。
「原人の真似事は見飽きましたわよ。回避してもっやってしまいなさい!」
空ぶった剣先で畑のように地を耕す騎士。が、全身ごと体を一回転させ、遠心力を利用した高威力かつ高速の2撃目が振るわれる。博洋は既に2回目の投擲の準備を完了したが、本体は騎士を遮蔽に射線を切っていて投げる事ができず。ジョルノも植物ありきの回避だった上、立て続けの攻撃。
すぐさまに体制を整える事はできない。近くに生物へと変えられる無機物も限度がある。避け切るか、反撃し返すしか状況がない。大剣による斬撃まで約3秒。少しでも本体が後ろに下がり、射程距離の都合でスタンドを後ろへと運び出す。
斬撃まで1.5秒。両腕と足の幅を広く広げ、防御の姿勢へと移行する。もはや回避の方向性に転換する事はできない。反撃か防御のどちらか2択。細身のスタンドで大剣を防ぐ事は不可能。打撃でも止まらぬ巨体。為す術はないように見える。
斬撃まで0秒。目前まで刃が迫り、斬られ──、
「
「──ッ! 童!
────ない。真剣白刃取りを真横にするようにして伸ばされた両の掌が横方向へとスイングされる大剣の刃、切断する事のできない刃部分の真ん中である重りを掴む。パワーのままに振るわれる大剣と共に、ゴールド・エクスペリエンスが振り回され、騎士の背の場所で手が離される。が、博洋の言葉によってある
ゴールド・エクスペリエンスの射程距離は2mとちょっと。大剣が振るわれる前にスタンドから若干の距離を離れていたジョルノの時点で1.7m。振り回される大剣を掴み、そして手を離した時点でゴールド・エクスペリエンスは物理法則に従うがままに騎士の背後へと投げ飛ばされている。
スタンドは射程距離──ゴールド・エクスペリエンスにおける約2mは本体から離れる事ができない。ただし、動かされたスタンドが物理法則に無視するのも無理な話。もっとも簡単な方法は動いているスタンドに対し、本体が引っ張られるようにして動く事なのだ。だから、いい。博洋の言っていた
「飛ばされるのがいい。こうされるのがいいんじゃあないですか。こうすれば近づけるんですからね。
スタンドが先に吹き飛ばされ、本体がそれに引っ張られる形。つまるところ、スタンド使い本体である女へと先に接近するのはスタンド。本体が殴るよりも先に、スタンドで攻撃する事ができる。その上で騎士を自分自身の付近にすぐに戻せず、本体である女自体は完全なる無防備。
壁との衝突だとか、地面への着地失敗だとか、色々と心配すべき問題はある。必ずしも綺麗に着地できる訳ではないかもしれないし、本当は騎士を素早く動かして逆に空中にいる無防備なジョルノを攻撃する事ができるのかもしれない。
しかし、それらを踏まえた上でこれが
「
「なん──が、は、ぁ⋯⋯」
────『なんだと』と声に発する事も虚しく、黒き王女は嘲笑う。今まで必要な場面で出していなかった
「どう頑張っても民は身下ろせない。王女は見上げられる星の名のもとに生まれているんですのよ。誇り高き貴族の血筋を持つ王女は」
バジュッ!
「が、っあぁぁあああ!!!」
切断と圧迫の中間のような鈍い音。肉が潰される粘着性のある音と同時に発生する斬撃音の爽快感。右腕の損出による激痛と出血で正気を失い、人の苦鳴で奏でられるミュージック。そのどれもが王女の勝利を称え、確信させてくれるメインディッシュの隠し味。
1体目の大剣騎士がジョルノの確実なる死を求めて第二のギロチン断頭を仰け反り、首の後ろにまで振り上げる。2体目の長剣騎士は女を守りつつ、ジョルノを助けようと動いた瞬間に動けるよう、肩にロングソードを担いでの博洋の監視。
ジョースター家の血筋と言う観点からもジョルノは救わなければならず、目の前の敵を倒すには本体を叩かなくてはならない。本体を叩けば確かにスタンドは消え、戦闘は終わるかもしれない。しかし、完全に命が途絶えるまでにどれほどの時間がかかるだろうか? それまでの間、大剣が下ろされないと誰が断定できるだろうか? だからこそ、だ。
「チッ、童ァ!」
「無論、走るでしょう。御老公の命も貰いますわ」
迷う素振りもなく背を向け、すぐさまに走り出す。同時に重なる女の声を元に長剣騎士もまた、博洋を阻止しまいとロングソードの剣先を地スレスレに下に倒しながら追いかける。ここまで追い詰められては長生きをしている老骨でも真っ当な判断をくだせなくなったか、と女は呆れて思う。
背を斬るか、少年を救う直前に首を跳ね、同時に始末するか。足を削ぎ落とし、確実に機動力を落とすのもまた一興。老人のが一足早く、大剣騎士へと追いつき、その手を伸ばす。黒き大剣、甲冑を猛威として振るう
『ブレイクダウン』
ガタッ
黄金を輝かせるべく、老人の魔の手が大剣の剣先を砕かせる。長剣騎士の攻撃が背に迫っていても。が──、
ガシャン⋯
────黒い渦は背に忍び寄る。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スタンド名:ブレイクダウン
破壊力 : 無し (本体依存)
スピード : B (スタンドの出現速度)
射程距離 : E (本体の肉体から僅か1m)
持続力 : ∞
精密動作性 : A
成長性 : 無し
スタンドヴィジョン「黒い砂」
スタンド能力「?」
詳細無し
振るわれし悪しき手は対象に関わらずとも死せずに破壊をもたらす。それが原因で根本が崩壊しようとも。
元ネタ:ミュージシャンのTom pettyより『breakdown』