僕は気がついたら森の中にいた。
僕は確か学校から下校していたはずだ。いつもと同じ道を通り、いつもと同じように帰ったはず。はずである。これは今流行りの異世界転移とかなのだろうか。あれってフィクションじゃなかったのか。
「ここはどこだ……?」
そうつぶやいた。
何回瞬きしても森の中である。木々が生い茂り、人が通ったような痕跡は見えない。不自然なのはここまで人の痕跡がないのなら、動物の一匹や二匹はいるはずだ。なのに、全くいない。なんなら獣道もないように感じる。不気味だ。
そんなことを考えると後ろから気配がした。そして振り返ると金髪の年は10歳前後に見える、白いブラウスと黒色のジャンパースカートを着ている少女が見えた。こんなところでなにをしているのだろうか。
その少女と目線があった。沈黙が場を支配する。気まずい。こっちから声をかけてみるか。
「あ、あの。こんにちは」
反応がない。なぜだ。まだ目は合っているはずなのに。日本語が通じないのだろうか。とりあえずもう一度声をかけてみる。
「変なことを聞くと思うんですが、ここってどこですかね……?信じられないと思うんですが、気づいたらここにいて……」
僕がそういうと金髪の少女は目を輝かせて僕を見た。なんでだ。どこにその要素があったのか。
「そうなのか」
そう金髪の少女が言った。
「ここは幻想郷。そしてここは森の中」
そう続けた。
「幻想郷……?聞いたことがないですね」
僕はそういった。名前の響き的に日本っぽい。異世界じゃなくて同じ世界で転移しただけ……?そんなことが可能なのか。その疑問を解消するように金髪の少女は言った。
「知らなくてあたりまえ。ここは外の世界、あんたが居た世界と隔離された場所」
隔離された場所。だけど、聞いたことがないというのは不自然だ。日本にそんな場所があるなら学校や本、インターネットで聞いたり見たことあるはずだ。それか、そこまで有名じゃないかなにか特殊な力が働いているのか。
「そんなことはどうでもいいの。私は今からあなたを食べる。外の世界では居なかったかもしれないけど、私は人喰い妖怪のルーミア。幻想郷の人間は食べてはいけない決まりなんだけど、外の世界の人間は食べていいんだって。久しぶりに見つけたの。悪く思わないでね」
人喰い妖怪ルーミア。ルーミアの言っていることが本当なら今から食べられるということなのだろうか。全速力で逃げようとしたところでルーミアは言葉を発した。
「というのはうそ。確かに私は人喰い妖怪だけど、今日はそんな気分じゃないし、食べたのがばれると面倒だしね。とりあえず、今から霊夢のところに案内するからついてきて」
嘘か。本当か……?人が寄り付かないところまでおびき寄せて食べようとする気じゃないだろうな。
「信用していいのか。あと、霊夢っていうのは誰だ」
妥当な質問だ。そしてルーミアが人喰い妖怪だというので敬語をやめた。
「信用できないのなら、逃げればいい。別に追いかけないよ。あと、霊夢っていうのは博麗神社の巫女さん。大体の面倒事は解決してくれるの。外の人間のこともね。」
ルーミアは少し不機嫌そうに言った。
なるほど。ルーミアが言っていることが本当なら霊夢という巫女のところに行った方が良いのかもしれない。正直幻想郷のことについては全くわからないのでついていった方がよいか。
「わかった。聞いて悪かった。連れて行ってくれ」
敬語はまだ外したままだ。
「そう。じゃあついてきて。あと、敬語。敬語、少なくともある程度丁寧にしゃべってくれないと食べちゃうかも」
そう言われたら敬語を戻すしかない。
「わかりました」
そう僕が言うとルーミアの機嫌が少し良くなったような雰囲気を醸し出した。
そして、僕たちは歩き始めた。