「それで用事は」
門番の美鈴が言った。確かに、僕も聞いていない。何をしに来たのだろうか。
「流石にこいつの住む場所を決めなきゃいけないのよ。博麗神社にずっと住まわせる余裕はないし」
「なるほど。しかし、いいのですか?一応ここは吸血鬼が主をしています。妖怪ですよ」
「まぁ別に。こいつが死んだら気分は悪いけど、そこまで問題じゃないし。とりあえず、早くどこかに住むか自立してほしいのよ」
そう言われると少し悲しい。確かに関係はそこまで深くないにもかかわらず、一応一週間ぐらいは博麗神社に住んで色々仕事をしてきたのに。
「とりあえず、私には決定権はありません。多分もうそろそろすると咲夜さんが来ると思うので、少し門の前で待ってください。門は開けますが」
咲夜。初めて出てくる名前だ。美鈴が言ったことから察するに決定権がある人かそれとも案内をしてくれる人だろう。
そんなことを考えていると、一瞬で門が開いた。開いた先には銀髪のメイド服を着ている女性が立っていた。
「お久しぶりです博麗の巫女。そして初めまして、優希さん。私は十六夜咲夜です」
「なんで僕の名前を知っているんですか?」
美鈴との会話では僕の名前は出てきた。しかし、咲夜は近くに居なかったはずだ。居なかったはずだ。
「それは簡単です。あなたのリュックの中の持ち物の一つに名前が書いてあったからです」
そういえばリュックを持ってきていた。正直忘れていた。霊夢の上に乗っているときも、美鈴と話しているときも。
というか、どうやってリュックの中の持ち物を確認したんだ?開けられた感じはしなかった。
「どうやらどうやってリュックを開けたか疑問に思っているようですね。教えはしませんが」
開けたと言った。おそらく能力だろうが、おそらく透視とかではない。透視ならばリュックを開ける必要がないからだ。というか、勝手に開けないでほしいけれども。
「案内します。ついてきてください」
そういうと咲夜は僕たちに背を向け紅魔館に向かって歩いて行った。僕と霊夢はそれについていった。
正門から紅魔館の入口までは少し遠く、少し歩いて後ろを振り向くといつの間にか門はしまっていた。
紅魔館の入口まで来たら、一瞬でドアが開いた。そして、咲夜が歩を進める。
広い。外観からなんとなく予想していたが、入ったところにロビーみたいなところがあって、そこから複数廊下がある。一種のホテルのようだ。
そして、紫色の髪で、コウモリのような羽が生えている十歳程度の身長の女性が居た。おそらくあの人は吸血鬼だろう。
イメージしていた吸血鬼はドラキュラのような少し怖い感じだったが、そういうのではない。
「いらっしゃい、鈴原」
なんでこの人も名前を知っているのだろうか。咲夜から聞いたわけではなさそうだし。
「初めまして。なんで僕の名前を知っているのでしょうか」
「咲夜と美鈴との会話を盗み聞きさせてもらったわ。……というのは冗談で、外から来る人は珍しいから情報が回ってきただけ。もっとも、紅魔館では私とパチェしか知らないけど」
情報……?誰から聞いたのだろうか。僕が幻想郷に来て話したことがあるのは霊夢、魔理沙、そして早苗だ。
「誰から聞いたの……?」
霊夢は目を細めて紫髪の吸血鬼に聞いた。
「文よ」
「あぁ、あの新聞屋。誰から聞いたんだか。それか、あの場にいたのかしら」
「そういえば私の名前を言ってなかったわね。私はレミリア・スカーレット。紅魔館の主をしているわ」
この人がレミリアだったのか。確かに、それっぽかったけれど。
「初めまして。一応名前を言うと、鈴原優希です」
そういうとレミリアはロビーにあるドアを指差し「ここで立って話すのもなんだし、入りなさい。歓迎するわ」と言った。
歓迎されるらしい。