銀狼を開拓したい転生者の話 作:ザンディク・ワン・クワバラ
俺は、銀狼を、開拓したぁーーーーい!!
どうも、物語が始まったせいで銀狼が忙しくなり、更にはアカウント全凍結とか言う鬼畜の所業のせいでネトゲすら出来なくなった悪の敵になりたかった系転生者、俺です。今回のコードネームは雲璃ちゃんペロペロ、可愛いよね雲璃ちゃん。声も良いし顔も良い──あ待って違うんです浮気じゃないんです!
知らないかもしれないが、男は自分の事を好きな女を好きになるし、付き合っている彼女や結婚しているパートナーがいても巨乳には目を惹かれるし、多分えっちさせてくれるだけで惚れるんだよ。雲璃ちゃんはそのどれにも当て嵌ってないって? それはそう。
俺は面の良い女が好きである。つまり基本スタレの女キャラは好きである。やめましょうよ優劣とか順番つけるの、皆可愛いで平和平和。え、カイニス? それはちょっと話が違う。学生時代の満願とかなら良いと思うよ。
話は逸れたが、要は銀狼を開拓する為の時間が無いって話。ならどうするか、たまにオフラインで遊ぶ以外にやれる事と言えば……そうだね、点数稼ぎだね。働いて有用性のアピール、でも無職なので経済的な甲斐性はゼロだ。恐ろしい迄のアピールポイントの少なさ、面接どころか書類選考で落とされそう。
「ツモ、立直メンタンピンドラドラ」
「運だけのカスがよォ……!」
という事で俺は仙舟同盟が一つ、羅浮に不法入国している。まぁ正規の手続きとか出来ないし、身分証明とか出来ないし、何ならシルバーウルフ様から住まわせて頂いてる拠点ですら不法入国の不法滞在である。遵法精神いず何処。
「次だ次、勝負は九回裏スリーアウトまで」
「何の話?」
「野球。ちなみにスリーアウトの時点でゲームセットな」
「負けてるじゃん」
我が愛しの銀狼に「たまには役立つよ、何かやって欲しいことある?」と聞いたところ、困った時の保険としてこの羅浮での待機を言い渡された。でもただ待機しても暇なので麻雀を打ってる。
「うーんクソヅモ」
「それポン」
「うっわ大三元……全部俺が供給してるから上がられたら死ぬじゃん」
それいけ! 戦犯マン!
「うおおおおお、お助け下さい! 立直!」
「凄い喧しく麻雀打つね、あんまり見ない珍しいタイプだよ」
ちなみに卓を囲むのは全力で仕事から逃げる爪を隠す事に全振りの能ある鷹こと青雀と、薬王秘伝のそれなりにお偉いさん二人。君達そろそろ騒ぎ起こすんじゃ無かったっけ? こんなとこでサボっててええんか?
「そうかぁ? そうかな、そうかもなぁ!」
俺の待ちは三面待ち……確率は高いハズ!
さて、与えられた保険としての待機という役目が意味する所は、即ちカフカと刃ちゃんが脱出に失敗した時の運び屋だろう。つまり薬王秘伝が暴れ出す前の状況ではマジでやる事が無い。薬王秘伝とか関係なく騒ぎになるんだっけ?
「それロンで」
けっ、薬王秘伝がよぉ。俺の捨牌で上がんじゃねぇよクソが。あ、でもコイツら別に騒ぎとか起こすんじゃ無かったか。ほな普通に仕事のサボりか。
まま、許したる。
もう仙舟編のストーリー覚えてないんだよな……ルカの兄貴が全部殴り飛ばして解決したんだっけ? この頃はまだルカとか持続で普通に強かったよな。インフレが進んだのはピノコニー入ってからで、活躍出来る星四はギャラガーくらいになってたよな。
「お、来た来た。立直で」
ついにツキが巡って来たか。青雀には悪いけどこの勝負は勝たせてもらおうか。
「へぇ、面白いね。なら私も立直!」
「なにっ」
後追い立直だと!? 本当にやめて欲しい。俺が麻雀で一体どれだけの数後追い立直に殺されたか。アイツらカンチャン待ちとか強欲なドラ単騎待ちのクソ立直でこっちの三面待ちとか殺してくるからな?
ツキが巡って来たと、そう思っていたお前の顔は笑えたぜ……ってコト!? お願いだから和了らせて〜(懇願)
だが、運は俺を見放さなかった。どうやら切り札は俺の手に来るらしいってね!
「しゃあっ! ツモだ、喰らえ俺の国士無双おおおおおおおおおお!?」
和了牌を見せ付ける様に雀卓へと牌を叩きつけた瞬間に、薬王秘伝の二人が台をひっくり返した。
お、俺の国士無双十三面待ちが……なんでこんな酷い事を、人の心とか無いんか?
「太卜司の卜者、青雀だな?」
「お前も薬王秘伝にならないか?」
今まで仲良く牌をうっていた二人が急に仕事を始めやがった。そして近くを歩いていた人が急に苦しみ出して魔陰の身と変貌した。もしかして仕込んでたのか?
「えぇ……何で急に。て言うか今サボってるんだから仕事させないでよ」
青雀はゲームだとかなり強かったけど、現実だとどうなのだろうか。まさか牌をガチで投げつけたりはしないだろうが……。
「薬王秘伝にならないのなら、死ね青雀!」
二人の薬王秘伝は変身し、そして魔陰の身を突撃させる。ので、青雀の目の前に割り込んで突き出される腕が変質した刃を受け流し、膝蹴りで顎を叩き割る。
「助けいる?」
「いるいる、超いる! はやく何とかして!」
続いて突っ込んでくる魔陰の身は、近付いてから両手の刃ブンブン攻撃をして来ようとしたので足払いからの蹴り。
「これ、勝負はノーカンで良いよな?」
「あなた今負けてたでしょ? 都合の良い事言わないでよ」
「俺の国士無双十三面待ち和了ってたから勝ちだが? てか二人が卓放棄してんだから不戦勝だろ」
今の上がれてたら俺の勝ちだったんだからな! いやマジで!
魔陰の身をダブルノックアウトし、周辺には薬王秘伝の二人のみと逃げ惑う市民達となる。しかし、この魔陰の身と言うエネミーにはある特別な能力がある。
それは復活能力。バージョン2.Xくらいまでなら羅刹とかペラでバフ解除で消されてたアレ。バージョン3.Xくらいからは復活しようが構わずゴリ押しで殺されてたアレ。多分これがあったから貪欲のアレが来ても特に不満とか無かったんだよね。一部ユーザーは貪欲に滅茶苦茶不満言ってたけど。
まぁ何故この様な復活能力があるのかと問われれば、魔陰の身とは豊穣の祝福により長命種になったモノの避けられない病気だからである。言ってしまえば癒しの能力の暴走、通常の人間の癌みたいなモノである。癌細胞って細胞分裂の限界を迎えると生まれる異常な細胞で、細胞分裂の能力だけ見ればえげつないヤツだからね。
魔陰の身となったら完全に手遅れ、という訳では無いのだが……まぁ基本的に外見が変異してしまえば戻しようが無いので、完全に沈黙──もとい殺害をする事になる。
豊穣の使令とかと違って、しょぼい再生能力でしかないから殺せはする。
「ほいほいっと」
まぁ再生能力があるとして、だから何だと言う話だ。
魔陰の身となって凶暴性が増し、理性を失い見境なく暴れるのだとして、その身が周囲を傷つける凶器になるとして、それが俺にとっての危険にはなり得ない。手加減した蹴りの一撃で復活能力を使う程度ならば、撫でるだけで何度でも殺せてしまう。俺の戦闘能力なんか高くねぇか? ちょっと怖くなってきた。
そのまま卓を一緒に囲んでいた二人の薬王秘伝も地面とキスさせる。
「(俺が)死ぬ! (俺が)死んでしまうぞ青雀! 薬王秘伝になると言え!」
「お前のその勧誘の熱量は何処からくんだよ……」
自らが死にかけになりながら尚も勧誘を続ける薬王秘伝、さてはお前青雀のガチ恋勢とかか? あまりにも哀れ過ぎてトドメを刺すのを躊躇われる。いや殺さない方が良いんだろうから殺りはしないけどさ。
「凄い、随分強いんだね」
「そうかな? そうかも」
「麻雀はあんなに弱いのに」
「は? 俺の国士無双十三面待ち決まってたら勝ちだったが?」
っと、騒ぎが随分大きくなってるな。この頃の羅浮やべぇよな、そこら中で魔陰の身が発生しては討伐されてんだから。
薬王秘伝の二人の意識を落としてそこら辺に転がしておく。
「じゃ、機会があればまた麻雀しような」
偉い人に見つかったとしても大した騒ぎにもならないだろうし、暫くもしない内に「お前だれ?」ってなるだろうけど、一応星核ハンター達の保険としてこの地に居る以上咄嗟に動けないのも困るので、逃げさせて頂こう。スタコラサッサだぜ!
「あ、ちょっと!」
やっぱ青雀って可愛いよな……俺の麻雀の腕が凄かったら開拓出来たりしねぇかな?
◆
「騒ぎの元凶は薬王秘伝のこの二人で間違いないですか?」
「うん、多分騒ぎを起こすのが目的だったんだと思う。あんなタイミングで二人同時に魔陰の身になってたし、何かしらの仕込みがあったんだろうね」
騒ぎの鎮圧に来た雲騎軍へと、その場に残った青雀は事情説明をしていた。意識を失った状態で転がされ放置されている薬王秘伝の二人からも目を離せないので仕方なく、である。
「それで、当時の具体的な状況を教えて欲しいのですが」
「えっとね、私達みんなで牌をうってたの。でも突然二人が「死ね! 青雀!」って襲ってきて……」
「牌を? 三人で?」
「いや、四人……四人? あれ、あともう一人居たっけ?」
たった数分前の事だ。確かに楽しく牌を嗜んでいて、突然二人が殺意を見せて、そして──場の鎮圧を行ったのは、果たして誰だったのか。
自分では無い。では通りすがりの誰か? ならば忘れている理由が無い。
三麻では無く四麻をしていた筈だ。つまり一緒に牌をしていたもう一人が、居た筈なのだ。
「誰だろう?」
もう青雀の記憶には、欠片の情報も残っていなかった。
あなたはそこにいますか?