銀狼を開拓したい転生者の話   作:ザンディク・ワン・クワバラ

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君はもう終わりだよ(お財布焦土作戦)


オペレーション:夜のターン制バトル

「……女の臭いがする」

 

「急にどした」

 

 恐らく羅浮での動乱も終わりを迎え、開拓者達の次なる目的地はピノコニーになるであろう頃。特にやる事も無くなったので一人で人生ゲームを遊んでいた俺の前に現れた銀狼は、開口一番にそう言った。

 

 俺の傍まで近寄って鼻を鳴らして匂いを嗅ぐその姿は、シルバーウルフの名に相応しい動物の様なモノ。

 

「こういう事言われるの好きかなって思って」

 

「メンがヘラったのかと心配になった。独占欲を抱かれる程に好意を持たれる分には嬉しいけど、それを向けられると胃もたれするから一概に好きとは言えないな」

 

「そう。でも忘れないで、あなたは私の切り札なんだから」

 

「他の女に靡くな……ってコト!?」

 

 うーん、感涙。いやぁ大事にされるってのは良いもんだね。

 

「私の手札であればそれで良いよ」

 

 全然放任主義だった。独占欲の欠片もねぇじゃねぇか。

 

「まぁ俺の事を覚えていられる女がそもそも居ないからな、ガハハ」

 

 言ってて悲しくなってきた……俺だって緋英と一緒に青天航路もふもふ号の推し活をしつつ良い感じの関係性になりたかった。

 

「それもそうか……でも、何で女の臭いがするの?」

 

「話が戻って来ちゃった。まぁ最近会った乱破って巡海レンジャーは、ミーム汚染の影響か俺の自滅の影響受けてなかったからなんだけど」

 

「ふーん。一緒に何かしてたんだ」

 

「仕事な、仕事。このプレゼント買う為に協力して貰ったんだよ」

 

 はい、とIKEAのでけぇサメみたいなぬいぐるみを渡す。と言うか何故俺は浮気の言い訳みたいな事をしているんだ……?

 

「……ありがとう」

 

 照れ顔は頂けなかったが、少しだけ嬉しさを表に出した銀狼の顔を見れたのでプレゼント大作戦は成功だったと言える。

 

 

 

「報告が遅れたけど、アカウントの凍結は解除した」

 

「あんなクソ忙しい中で!? 流石っす銀狼の姐御」

 

「ふふん。ピアポイントへのハッキングなんて、私からすれば片手間にもならない……これであなたもゲーム出来る」

 

「ありがとう……それしか言う言葉が見付からない」

 

 やったー! また社会不適合者垂涎の引きこもりニート生活が出来るー! うっひょー!

 

「しかも、こんなゲームを持ってきた。こうしてオフで一緒にゲーム出来る機会も少なくなってきたし、やれる時にやろうと思って」

 

 そして銀狼が上着のポケットから取り出したのは、何かしらのカードの束……まさか!

 

「デュ↑エルだァ!」

 

 デュエル開始の宣言をしろ磯野! デュエル開始ィ!

 

「これはコズミックフォースってゲーム。自分が使うキャラクターのカードとダイスの出目での戦闘を行って、相手のライフをゼロにした方が勝ち……分かりやすいでしょ?」

 

 多分この時期ならまだエーテル戦線の方が流行ってるんだろうが……まぁ俺ではそっちはやれないしな。やってる最中に忘れられるから。二相楽園じゃこの時期から既にコズミックフォースが流行ってたのか? その答えはデュエルの中で見つけるしか無い。

 

「ふっ……俺好みの答えだ」

 

「じゃ、早速やろうか。この中から好きなカード選んで」

 

 まだ初期の方だから実装されているカードも少ないようだ。普通に考えて王のゴミ箱とか、開拓者以外が見たら意味分からなくないか? あとこの世界では実在の人物が扱われてるけど権利関係とか大丈夫なのだろうか……。

 

「じゃあ俺は無難に火花で」

 

 ヒバナーなら当然だよな! まぁ火花の配信見た事無いけど!

 

「へぇ、私はホタルで」

 

 俺の選んだ火花のカードは、攻撃と防御の時に同じ出目を選ぶとハッキング──相手の一つの出目を強制的に2に変更出来る力を持つ。攻撃4の防御3……つまりその時にそれだけのダイスを振れる。無難に強いぞ!

 

 一方で銀狼の選んだホタルのカードは、言ってしまえば先行ワンキル型である。大体先行取ったら勝ちのヤバいカードで、対処するなら星の盾マダム・ヘルタとか星の盾三月なのか、或いはファイノンくらいだろう……時系列の問題か、銀狼の持ってきたデッキにはオンパロス組は入っていないけれど。あと黄泉も。

 

 まあ銀狼には悪いが、先行取れなきゃホタルは弱いし余裕で勝たせて貰いますか。

 

「行くぞ、デュエル!」

 

 

 

 いや先行ワンキルはズルいって。こんなんチートやチーターや!

 

 ちなみに敗因はダイスの出目が揃わなかった事。TRPGやってると分かるけどダイスの女神って愉悦のアッハ並に性格悪いからね。なにわろてんねん。俺だけリロールの回数無限にしねぇか?

 

「しょうがない、なら次はカフカ使うよ」

 

「へっ、甘ちゃんが。なら俺はこいつ(星盾ヘルタ)で木っ端微塵に爆破してやるぜ!」

 

 カフカは選択したダイスに異なる出目が一つある毎に相手に中毒を一つ付与する。ターン終了時に層数に応じたダメージを与える、持続ダメージの再現みたいなモノ。

 

 対する俺の使うマダム・ヘルタはプリズムサイコロ……今回使う星の盾の様に、強い出目か強い効果、或いはそのどちらをも使える凄いやつなのだが、それの使用回数を増やせるイカレポンチ。しかもプリズムサイコロを四回使えばダイスを昇級……面の多いサイコロにアップグレード出来るのだ。強いぞ!

 

 

 

 どうして……。クソ、コズミックフォースがあまり人気にならず研究が進んでないのが敗因か。俺は自分でデッキを構築する時は好きなテーマ、カードで構築するし、勝たなきゃいけない時は環境デッキ丸パクリするタイプだ。

 

 つまり、俺は……弱いッ!(ドンッ!)

 

 ゴメンネ、弱クッテ……。

 

 まぁ、俺がプレゼントしたサメちゃんのぬいぐるみを銀狼が抱きかかえてくれてるので実質勝ちか。おしゃめで可愛い(可愛い)。でもどうせなら、ホムのぬいぐるみとかあげたかった。

 

「またオフで遊べるのは、暫く先になるかな」

 

「星核ハンターの活動は忙しいもんな」

 

「それもそうだけど、次はホタルの重要な脚本が関わってくるから」

 

 という事は、もう間もなくピノコニー編か……ネムリくんがプレイヤー達のヘイトを一身に背負う事に……。

 

「じゃあこのソロシナリオは温めておくわ」

 

 オンラインゲームが出来なくなった事で、ボードゲームやアナログゲームなどを結構やっていた。そして紙とペンとダイスさえあれば出来るゲームとしてTRPGがある。でもやるとしたら一対一のソロシナリオしか出来ない悲しみ……他の奴招いて遊んでる途中で「誰やお前!」ってなったら卓崩壊よ。

 

「そしてこれは相談なんだけど、今度の脚本……保険として手伝って貰って良い?」

 

「断る理由は無いけど……大丈夫なんか?」

 

 手伝いの度合いによるが、俺が関わる事は基本的に良い方向に転がる事は無い。

 

 不勝の呪いとでも言うべき、俺に刻まれた因果。あらゆる勝負事において勝利する事が出来ないといったソレ。俺がオンラインゲームなどにおいて勝率脅威の0%を叩き出している原因だ。必敗の呪いでは無いので、努力次第では引き分けまでは持ち込めるのだが、勝ちは無い。

 

 これがゲームなら、最終的な敗北という結果に至る。この前の麻雀が分かりやすいだろうか、国士無双十三面待ちを決めていれば俺は一位で終わっていたが、結果は参加者の途中放棄によって勝負自体が無かった事になった。今回のコズミックフォースは普通に負けた。バトロワゲームなら、どれだけ頑張っても二位で終わる。

 

 これが現実になると、更に複雑になる。例えば前回の薬王秘伝の暴動だが、あれは勝負と言うよりも鎮圧……しかもお遊びみたいなモノ。故に俺の戦闘可能時間にも引っ掛からず、勝負判定ですらない。

 

 では例として、仮に俺がオンパロスへと向かって彼等を救おうとしたとする。直面しているニカドリーの脅威があるのならこれを払い、何ならニカドリーに勝利も出来るだろう。しかしその傍らで、元老院や暗黒の潮によってアグライアとトリスビアスとヒアシンシア、そしてアナクサゴラスが死ぬ事になる。局所的に見た場合は戦闘に勝利していても、大局的に見た場合敗北と言わざるを得ない……そんな状態になるのだ。

 

 だから、俺が運び屋としてピノコニーに訪れるのならば問題は無い。そこに勝ち負けなど無いのだから。だが俺が、ホタルを救うべく繁殖のスウォーム達と戦ったとする……そのしわ寄せは、何処へ行くのかは分からないのだ。俺が虫に負けるだけならそこで終わりだろう。ああ、尊い犠牲だった……でもホタルは自らの脚本を遂行出来たよおめでとう、で終わりだ。でもそうじゃなかった場合、ホタルが免れない死を迎えるか、ダリアが虚無を抑え込めずに爆発四散するかは、誰にも分からないのだ。まぁそもそもホタルはスウォームと戦闘は最初の夢でしかしないのだが。

 

「大丈夫、とは言えない。出番が無いならそれに越したことはない。でも、彼女が最悪の結末を迎えない様に……打てる手は打っておきたい」

 

 銀狼はホタルが自らの脚本を遂行出来る様に、花火という協力者を用意していた。そして現実として、俺という変数も居る。ならばその協力要請自体は、至極真っ当だろう。

 

 星核ハンターは終焉に抗う集団で、脚本は決められたシナリオだ。二相楽園での銀狼の脚本の様に「アッハに負けるな」というアバウトなモノなら不安になるけれど、ピノコニーでのホタルの「三度死を迎える」は避けられない過程である。

 

 だから、銀狼は脚本を遂げられない事は心配していないだろう。むしろホタルの状態が、より悪化する事を危惧しているのか。

 

「善処はする。最良の結果は羅浮の時みたいにただの保険で終わる事だな」

 

 ピノコニーにはアベンチュリンも来る。やりようによっては、上手いこと呪いの行き先を制御出来るかもしれない。

 

「じゃ、時と場所は後で教える。よろしくね」

 

 でも銀狼ちゃんさ、俺がピノコニーに不法入国出来ると思ってるのかな? 多分上手いことやれば出来ると思うけどさ。

 

 恐らくピノコニー編が一番転生者の原作知識アドバンテージを活かしにくいだろう。プレイヤー視点のピノコニー編と、史実のピノコニー編、そして脚本のピノコニー編がごちゃまぜになって、結局何がどうなったのかを少なくとも俺は理解していない。

 

 ただ、俺は基本的に直接関わる事はしないし、今回に至っては星核ハンターホタルの保険。まだ流れなどは分かりやすい。

 

 ホタルって可哀想だよな。なんかプレイヤーによっては「このお金で好きな物買ってね」と渡された彼女のお小遣いを、全部綺麗に消費した人達が居たらしい。人の心とか無いんか?

 

「仮に素寒貧にされた場合は、何かしら奢ってあげるか……」

 

 まぁ俺は無職だから宵越しの金は持って無いんですけどねーっ!




ピノコニー「来ないで」
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