銀狼を開拓したい転生者の話 作:ザンディク・ワン・クワバラ
「貴方とは、何処かで会った事があるか?」
「お、いきなりナンパ? いやぁ困っちゃうなぁ綺麗なお姉さんに誘われるなんて」
「すまない、誤解させただろうか。私は、忘れる事が多くてな」
「誤解だよと面と向かって言われると、それはそれで傷付くんだぜ。どうも初めまして黄泉さん、貴方とは紛れも無く初対面だよ」
一方的に知ってるだけで、会った事は……多分無い。バージョン2.Xの時はずっと愛用してました。ちなみにたまたまツイッターで流れてきたリーク情報に、黄泉の必殺技は黄泉のフラワーを使用して発動するって書いてあって笑った思い出がある。二相楽園の頃には撲滅が進んでて良かったね、リーカー。
以前黄泉については語ったので、再び彼女を紹介する必要は無いだろう。強いて言うならば、彼女は自分の本来の名前以外を恐らく忘れていて、だからこそ「雷電芽衣」という人物になりたいと考えている。更には覚えておくべき事柄は刀に込めている様な描写から、俺と同じ様に自滅者の特性の抜け穴を獲得している風でもある……まぁ、俺と同じく力を使えばその抜け穴保存の記憶も失われるのだろうが。
そして、虚無の存在しない筈の使令として、最もⅨに近い位置にいる彼女は……恐らく最果てを知っている。虚無とは全ての存在の最終目的地であり、万物が逃れられない終わりでもある……で、あるのなら。終焉と虚無は似通った性質を持っていても不思議では無い。
だからこそ黄泉は、虚無の世界から垣間見えるモノを知っていて、脚本の主演とも呼べる人物達の辿る道を知っている風だった。そして、俺の推測としては終焉の道を歩んだ開拓者との敵対者でもある。
俺にはそういった恩恵は無いのかって? 無いです……。ゴメンネ、弱クッテ……。
ちなみに黄泉が方向音痴なのは、多分方向感覚を虚無に呑まれてるからだと思う。万能免罪符かよ。
彼女は俺の天敵である。俺と彼女が戦った場合、呪いが無くとも俺は絶対に勝てない。存在にしがみつく黄泉と、虚無へ足を引く俺……生きる者の視点で見れば、どちらが敗北者なのかは言うまでも無いだろう。
「一方的に知られていると言うのも、少し不思議な感じがするな……貴方の名前を教えて貰えないだろうか」
俺の名前ねー、実を言うと今世は当然として前世のも忘れてるんだよね。名は体を現し名前こそが存在を証明するのだが、まぁあまり無くても困らないんだよな。自分が誰でどの様な人間かよりも、自分が何をしたいかこそが重要だと思ってるし。つまり俺は銀狼とえっちしたいだけのちんぽこ人間や。
「俺の名前はもう無いよ、あんたとは違ってね。芽衣先輩」
「そうか……すまなかった。改めて、貴方の事は何と呼べばいい?」
「今回のコードネームは『ド級のドットーレ』だよ。親しみを込めて『ドットーレ』『ザンディク』『博士』の好きな名前で呼んでね」
原神ユーザーの半数くらいは多分、憎しみを込めて「ドットーレェ!」って叫ぶのだろうな。まぁやってた実験とか普通にヤバイので残念ながら当然なのだが。原始博士の方がやばい事はやってるって? まぁ、規模が違うからね……。
でも、ただのドットーレじゃねぇぞ? 何度でも心の強さで立ち上がり前に進む、ド級のドットーレ……ドドットーレだ!
そう言えばサンデーがエナ化する時、人々にエナの夢を見せて力を吸い上げて昇華しようとするワケなのだが、この時にバナナミームで汚染してしまえば解決するのでは無いか? 夢を見れるだけでダメなら意味無いかもしれないわ。
「……独特な感性なのだな。『ザンディク』、歩きながら話さないか?」
ふむ、良いだろうフェオファン。なんてロールプレイはやめておくか。
「と、言われてもねぇ……そんな話す事ある?」
「そうだな……では、貴方は何故夢の地を訪れた?」
「知り合いに頼まれて。何かあった時の為の保険だね」
「その知り合いは、時計屋の遺産を狙っているのか?」
「直球だなぁ……答えはノー、それを巡る騒動が上手いこと解決する事を望んでる立場かな」
時計屋の遺産とか言いながら、招待客の中でそれを求めてるやつ居ねぇんだよな。開拓組はナナシビトの救援信号を受けたからだし、アベンチュリンはカンパニーとして経営戦略の為に訪れてるし、ホタルは開拓者の支援の為だし、仮面の愚者は銀狼の依頼だし……。
「さては黄泉さん、何となく会話をしてはみたものの会話デッキに困ってるな? 取り敢えず良い天気ですねって言うレベルだろ……てか道案内頼みたかったんじゃ無いのかよ、一人で何処向かってんのさ」
ばったり会ってしまった初対面の相手と、距離を測りかねておずおずと会話してる感が満載だ。そして道に迷ってるのに取り敢えず歩いてみる精神はどうなのよ。いや、悪い事じゃ無いのよ? 現在地が分からないなら止まっていても変わらないんだから、歩いてみれば何か変わるかもしれないし……でも、道案内頼もうとしてたよね?
「しかし、貴方も場所が分からないのでは無いか?」
「うーん、まぁ……ざっくりとなら分かってきた。目的地は何処?」
「時計屋の遺産が目的だ、私はソレを探している」
おっと建前の方が来たか。ただまぁ、時計屋の遺産とはつまり次のナナシビト達への意志の継承であり、同時にピノコニーの過去を忘れさせない為のモノだ。じゃあそれは具体的に何かと問われたら、ミハイルの墓碑と真実の過去であり、それがあるのはドリームリーフである。本当のピノコニーであり秘匿された過去……なんだけど、これ原始の夢境と何が違うねんってなりそう。
まぁ原始の夢境に作り出した最初の街こそがドリームリーフなんだろうね。知らんけど。
「おっけー、ドリームリーフね……歩いては辿り着けない場所じゃないか?」
ちなみに今いるホテル・レバリー(夢境)は本当の夢境だとか呼ばれてたりした。これもう分かんねぇな。ちなみに花火によって開拓者とホタルがこの夢境に送られて、ブラックスワンに助け出された後で再び入れる様になったのは銀狼のお陰である……シルバーウルフさん、働きすぎじゃない?
「『ザンディク』、貴方はピノコニーについて詳しいようだ」
「程々にね」
俺はどうせ他の人の記憶から消えるからとあんまり気にしていないが、まぁ他者から見た時の原作知識持ちは普通に気味悪いよな。本来なら知り得ない事を知っていて、尚且つ相手の秘めた目的とかも知ってる風なんだから。黄泉は俺の事ちゃんと忘れるのだろうか?
「ならば、あまり隠す必要は無かったかもしれない」
「で、今ドリームリーフに行きたいなら簡単なんじゃない?」
ピノコニーの夢の世界には、夢なのだから当然死は存在しない。それがファミリーの言い分であり、事実夢の中では死ねない様になっている。ドリームリーフに行くには死ねない世界で死んでみせるか、或いはネムリちゃんに送られるか……なんだけど、黄泉の一太刀で殺されるレベルの死に方をするとドリームリーフすら飛び越えて原始の夢境に行ってしまう。
ただまぁ、ホタルがサムになってドリームリーフから戻ってこれる以上、壁とかぶち抜いて飛べば行けるんだろうな。
「それは何故だ? 歩いて行ける場所では無いと、そう言ったのは貴方だが」
「えっ……自滅者なんだから普通に死ねない?」
自滅者とは虚無に呑まれたモノ。虚無とは死と似ている。ならば単純に、虚無に身を投げ出してしまえばいい。そんな事を普通の自滅者がすれば夢の中だろうと余裕で消滅するのだろうが、使令級の黄泉なら出来るだろう……俺が出来るのだから。
「貴方は、大分おかしいな」
俺がおかしいって、ネットミームばっか喋りすぎって意味だよな?
「そうか、出来ないのか……まぁそうか。じゃあ運び屋として普通に連れて行こうか?」
よくよく考えてみれば、存在の側で踏ん張ってるのが黄泉なのだから、簡単に虚無に身投げなんか出来ないわな。存在と無を反復横跳びしてる俺がおかしいってそれ一番言われてるから……俺がおかしかったわ。
「……いや、すまないが用が出来た」
てか今の時系列どこら辺よ、と思っていたら分かりやすい時報が来てくれた。
現れたのはナイトメア劇団、そして背後から歩いて来た二人組──開拓者と、アタシのスワンちゃん♡……ではなくブラックスワンだ。
うおおおおお! オンパロス編陰のMVPのブラックスワンだ! お前がオンパロスに連れてってくれなかったら彼等は救われずヘルタがルパート三世になってたよ、ほんまありがとうな! 早く列車に乗れ!
「む、どうして貴方達が?」
「あんた……また道に迷ったの?」
「その言い方は正しくないな。私はただ、自分がどこにいるのか分からないだけだ」
それを迷子と言うんやで。お母さんが迷子になっちゃったって言うガキと言ってること同じなんだよね。
「二人とも、挨拶はそのくらいにして……今は力を合わせて、このおもてなし好きの子達に帰って貰いましょう?」
「力を合わせて、か。光栄だな……貴方達の協力に感謝しよう」
過剰戦力が過ぎるだろ! ナイトメア劇団が何をしたって言うんだ! あ、このクソテレビは存分にボコっちゃって下さい。存護の星神(ベロブルグ産)と同列のカスなんで!
「やっと静かになったな。ところで、二人はどうしてここに?」
「それはこちらが聞きたいのだけど……」
チラリとブラックスワンは此方へ視線を向け、露骨に顔を顰めた。おい、心は硝子だぞ。
「貴方達が思っているほど事は複雑では無いと思う。これは全部……ある仮面の愚者の仕業なんだ。恐らく、私の何気ない言葉が彼女の気に障ったんだろうな……眩しい光が目に入ったと思ったら、その直後にここにいた」
ここゲームだと赤文字だったよな。てか全部花火の仕業だとしたらヤバすぎるだろ。なんで夢を操る能力も無しに虚無の使令を本当の夢境に送れるんだよ……まあ、仮面の愚者だしいけるか!
「あなた……何か隠しているんじゃないでしょうね?」
「隠す? メモキーパーの前で、そんな事出来るわけが無いだろう」
嘘つけ絶対出来るゾ。
「確かに」
「とにかく、二人ともいい所に来てくれた。この夢境は危機に瀕している。目的が一致しているのなら、私と一緒に行かないか?」
危機に瀕している夢境って、一体どこ何ですかねぇ……?
「私なら貴方達を守る事が出来る。そして記憶域では私もメモキーパーの助けが必要だ。それに……もしファミリーに出会ったら、一人でも多い方が釈明しやすい」
「それは……あなたはどう思う?」
「人が多いに越したことはない」
「ありがとう……心から感謝する。また貴方に同行出来て光栄だ、ブラックスワン」
「ええ……それが本心だと良いのだけど」
よし、纏まったな! このまま彼等はホタルが貫かれるシーンを見に行く事になる訳だし俺はおさらばするか!
「で、あんたは誰?」
「ああ、彼は『ザンディク』だ」
「酷いな黄泉! 俺の名前はカイニスじゃなくてライコスだよ!」
と言いつつ自分の名前はサイフォスな事を思い出したアイコス。
「この感じ……仮面の愚者かしら?」
「仮面の愚者の事あたおか集団だと思ってる?」
アイツらは頭がおかしいんじゃなくて、この世は全て劇であると理解した上で踊ってみせてる道化だぞ。まぁいずれ歌劇の終わりは訪れるのだが。
「ああ……あなたが「忘却現象」ね。なるほど、彼女よりも末期の自滅者──あなた、なんでまだ生きてるの?」
「お、誹謗中傷か? てか「忘却現象」って何?」
知らん間に二つ名付けられてた系男子? やめてよね、実際二つ名とかあっても恥ずかしいだけなんだからさ……ごめん嘘、俺も妖刀「酌揺」契約者──みたいな呼ばれ方したいわ。
「自分で被害をばら蒔いておいて、肝心のあなたは認知していないのね……」
「まぁ、何を理解したのかは知らないけど。どうせ全部忘れるよ、可愛いスワンちゃん」
ブラックスワンはストーリーでは八面六臂の大活躍をするし、同じ組織に所属するメモキーパー達からも敵視される事になっても善行を貫くナナシビト(まだなってないけどそのうちなる、俺は詳しいんだ)だが、その実力は使令級には及ばない。例え記憶の運命の行人であろうとも、行き過ぎた自滅者である俺を覚えておくのは不可能だ。知り合いのメモキーパーが居たんだけど普通に俺の事忘れてたし。
ちなみにブラックスワンはヤバい奴に好かれるフェロモンを放っている。黄泉、ダリア、長夜月……お姉さん達がお姉さんを取り合うやべぇ領域が展開されてる。嘘だけど。長夜月はヤバくないって? まぁ、なのかが大好き過ぎるだけか。
「それで『ザンディク』、貴方はどうする?」
「道案内はもう良いだろ? またそのうち会おうぜ」
黄泉に問答無用で斬られないのなら、多分大丈夫だ。後は君達を陰からストーキングして見守るよ!
最新PVでカフカが星神すら『聞いて』出来る可能性が出てきてアツい。もしカフカが激ヤバ性能してたら俺くんの事忘れてる振りしてくれてる説出てきたな……やはりママか。