銀狼を開拓したい転生者の話 作:ザンディク・ワン・クワバラ
格ゲーのコーチングを受け、そして手料理を振舞った後の事。互いに風呂に入り綺麗さっぱりになった後でクソ映画を見ながら寝落ちした。
最初の予定から多少はズレているものの、何処か充足感を覚える朝だった。でも太もも丸出しでしかも薄着な状態で隣で寝てるとか、こいつ危機感とか無いんか? 性癖の絶滅大君がよぉ、幼気な少年(自称)の純情弄んで楽しいか?
取り敢えず起きて顔を洗い、歯を磨いてストレッチをして、そうして完全に身体が目覚めた辺りで『9銀9狼9』さんも目を覚ましたようだ。寝起きも大変キュートですね。普段の星核ハンターとして決めてる衣装も可愛いがオフの時の気の抜けた服装も可愛いとか最強か?
珈琲とトースト、ついでにサラダという簡単な朝食を用意して二人で食べる。
「昨日も言ったけど、今日は今度やろうと思ってる協力ゲー教えるから」
「協力ゲーね、実はあんま経験無いんだよね」
モンスターをハンティングする系のゲームも、前世の友人達はやっていたが俺はそれをやる為のハードを持ってなくて眺めていた。そしてやってみる? と手渡されたらお供の猫達がハンティング対象のモンスター達を一方的に虐殺する始末。マトモにやった事がある協力ゲーで思い付くのはゴミ回収ゲームだろうか?
「最初は狩猟ゲーム勧めようかと思ったんだけど、多分一緒にやる時しかやらないでしょ?」
「まぁ、一緒に楽しむ系のゲームなら一人ではやらんね」
「だからローグライク系のやつをやろうかなって思ってる」
ローグライク? マネーウォーズ……うっ、頭が。
「何でだろう、ローグライクって聞くだけで身体が逃げたがってる」
「大丈夫、任せて。例えローグライクは嫌いでもこのゲームだけは好きって言わせてみせる」
ま、まぁ……あんた程の人がそう言うなら。
「ただ、午後には流石に戻らないといけないから、やるとしたら昼までね」
「おっけー、昼飯はどうする?」
「んー、布教の進捗次第かな」
ゲームを愛する少女『9銀9狼9』さんの座学講義は端的で分かりやすく、更には実演を交えて行われるお陰で頭にスっと入ってきた。実際に自分がやると全然勝手は違うのだろうが、俺でもやれそうだと思わされる手腕には脱帽せずにはいられない。
雑魚とボスの湧き位置、ボスごとに持つ弱点の種類、武器などに付いている能力の違い。漠然と眺めているだけでは理解すら出来ないそれらの情報が、まるで配信者の配信を見てきたエアプゲーマーの様に理解出来る。もしかして『9銀9狼9』さんは配信者に向いてるのでは? 恐らく暴言配信者になりそうな気はするが。火花とのコラボ配信待ってます。
「このボスは強いんだけどパターンが決まってるから、こうして誘導して大振り打たせて、出来た隙に三回、そして離れてまた誘導」
「おお」
とある漫画のクソゲーマーが言っていたが、こういった攻略をさせる為のゲームは明確な道筋が決まっている。製作者がこう攻略させようとしている意図を汲み取れば、後はミスをしないだけ。実際にそれを行っているプレイを見せられると、とても簡単そうに見えてくる。
「どう? やれそ?」
「凄い、なんか根拠の無い自信が湧いてくる。今なら俺は星神も殺せるかもしれない」
「それは根拠の無い自信が過ぎる」
そうかな? そうかも……。ただ星神と言うのは、スケールがデカくて常人には測れない存在ではあるけれど、同時に自由を縛られた存在でもある。
分かりやすい例え(当社比)をするならば、戒律。自己申告するのでは無く勝手に決められるという違いはあるけれど、破れば大体死ぬのは同じ。ましてや現状開示されていた情報からすればアッハ以外は大体脳足りん、破戒する様に仕向ける事も不可能では無いだろう。
まぁ、やらんが。大体殺せたとて後継機になるのは目に見えてる。そう考えると壊滅の運命って特別なのかもしれない。
「じゃあ試しにやってみて。私が見れてる時間は有効活用しなきゃね」
「おけまる水産」
コントローラーを受け取って開始する。いや待て、なんで協力ゲーをソロプレイさせてんだコイツ。いやソロでも攻略可能なのは見てたから分かるけど、それが出来るかは別問題だろうが。
「取り敢えず、近接武器で行くか」
遠距離からチマチマ殴るなんて性にあわねぇ、逝くぞ突撃だぁ!
「笑えよ」
「今回は安置が悪かったよ」
「誰か、今俺を笑ったか?」
「仮に笑った存在がいるならアッハじゃない?」
分かりきってた結果だが、当然敗北した。どんどん狭まっていく安置に対し、持っている武器や自身のレベルからどの敵を倒して何処へ行くかを選別していくゲームなのだが、それらは『9銀9狼9』さんのアドバイスのお陰で特に迷う事は無かった。敗北した原因も、毎回安置が離れていてろくにファーム出来なかった事だろう。
「後普通にダッシュ回避し過ぎてスタミナ管理が疎かだったね」
回避したらスタミナ消費するとどのタイミングで殴れば良いのか分からなくなるねん。遠距離だったら一方的に殴り殺せんのにな。
「まぁ初回でこれだけやれるなら、回数重ねてけば普通にやれるでしょ」
「それに一緒にやる時はキャリーして貰えるし?」
「するけど、あんまり離れて行動すると蘇生出来なくなるからね。かと言って一緒に行動するとファームの効率も落ちちゃうから、出来ればボスまでは一人で行けるのが理想かな」
まぁ味方の後ろをひたすら着いて行って何もかも全投げして勝利して、果たして楽しいかという話もあるしな。そんなんプレイ動画眺めてるのと変わらんやんってね。
「っし、もっかいやるか」
「次は違う武器種試してみなよ」
「じゃあ両手斧で行くか」
「スタミナ管理さっきより難しいけど?」
「男ってのはロマンを追い求める生き物なんだよ」
「うーん、主語がデカい」
うるせぇ、謙虚堅実なんてつまらねぇんだよ! 誰にも俺は止められねぇ! 逝くぞぉー!
「スタミナ管理下手だね」
「くっ、殺せ……!」
惨敗した。それはもう徹底的に、惨め過ぎる程に。序盤の雑魚敵に敗走し、ボスエネミーに敗北し、運にも見放された。そもそも両手斧とか全然ロマン感じねぇわ、っぱ大鎌ッスよロマン武器は。このゲームに大鎌ねぇけど。
て言うか、笑われすらもせずに只管呆れられるのはキツい。わり、やっぱつれぇわ。
「今回ばかりは認めるしか無い、俺が雑魚であると言う事を」
「ただの事実じゃん」
「やめてくれカカシ、その術は俺に効く」
事実陳列罪だぞ。もっと労れよこの哀れな存在をよぉ!
「まぁ実際、この手のゲームってトライアンドエラーでパターン覚えていくしか無いから、今度一緒にやる時は私が支援する」
「支援する隙が無い程に惨敗しないように努めます……」
まぁ俺は最強無敵の初心者様だから、存分に足を引っ張って行こう。俺達が勝てないのはお前が勝たせてくれないからだ! そんな感じの他責思考で行こう。最低か? ヒモしてる時点で今更なんだよなぁ。
「あ、そうだ。今度星核ハンターの全員で行く仕事があるんだけどさ」
「堂々と星核ハンターである事を明かすのやめない?」
「今更でしょ、何回か手伝って貰ってるし」
「いやまぁそうだけどさ」
一応カンパニーから指名手配されてるって事分かってるのかな。君を売り渡すだけで五十億信用ポイント稼げるんだぞこっちは。ワンチャン不可能かもしれないが。
「脚本には特に指定が無いから、行きの方はカフカが手配したんだけど帰りが無いんだよね」
「刃ちゃんに運転お願いすれば良いじゃん」
「道中の移動は頼むよ?」
「頼むんだ……」
大丈夫? 運転免許証期限切れてない? 虚照に渡した免許証は期限切れとかだったよな。
「星から出る方法の方ね」
「まぁどうせどんちゃん騒ぎ起こして追いかけ回されるのは目に見えてるし、普通の方法は使えないか」
カフカ、刃、銀狼辺りはスマートに仕事をこなせるんだろうけど、サムは派手過ぎるからな……案外サムも暗殺とか出来るタイプなのか?
「そ。それでカフカもちょっと困ってたみたいだから、私の方で用意するよって言っといたの」
「俺は断れる立場じゃないからやるけどさ」
多分俺が居なくても何とか出来るのだろうが、まぁ人間誰しも楽出来るならしたいよねって話だろう。
「……流石にエリオもメンバーに含まれてたりはしないよな?」
エリオって見た目だけならただの黒猫だけど、多分終焉の眷属だよな。すげぇコスト高そうじゃん。
「エリオはあなたの事嫌ってるから来ないよ、安心して」
「猫に嫌われるとかオーバーキルな事案だが? 欠片も安心出来る要素無いが?」
やめろよマジで、俺は人間の命より猫の命の方が価値が高いと考えてるタイプの人間なんだぞ。猫を愛でられない人生とかリセマラした方がマシだろマジで。
「後で時間とポイントは指定しておくね」
「え、マジでエリオに嫌われてんの?」
おい、答えろよ。目を逸らすな。気の毒そうな表情すんな真実味が増すだろ。
「だ、大丈夫。エリオはそもそもあなたの事覚えてないから」
「フォローがフォローになってねぇんだわ」
心が辛くなったので、その後は『9銀9狼9』さんが帰るまでひたすら猫動画を鑑賞した。心が洗われた。