銀狼を開拓したい転生者の話 作:ザンディク・ワン・クワバラ
俺のネッ友にしてゲーム友達、さらに言えば飼い主とも言える星核ハンターの銀狼。顔良し体格良し服装良し見た目良し性格もまぁまぁ良しな彼女は、普段から一緒にゲームをしているが中々に多忙な身である。
まずは星核ハンターとしての活動。エリオの脚本に従って行動し、群星に散らばる星核と言う危険物質を集めている。これこそがメインの活動であり、未だ目的は不明だが群星の視点で見ても恐らく必要な行動なのだろう。銀狼本人が直接回収に向かう事もあれば、他のメンバーの支援に回る事もある。
次にホタルの延命行為。ロストエントロピー症候群である星核ハンターのサム、その鎧の中身であるホタルは病気……と言うよりは定められた終焉にまっしぐらな状態である。そんな彼女は鎧に入っているか治療カプセルに入っている状態が常であり、治療カプセルの調整等を担当しているのが銀狼である。
普通に多忙だし、ブラック企業も真っ青レベルには過労である。合間合間にゲームもしているから尚更だ。とは言え、ここまでならまだ余裕はあった。しかし、星核ハンター大社畜時代はある出来事より始まるのだ。
そう、我らが主人公である開拓者の目覚めである。
プロローグの舞台となるヘルタステーションに保管されていた星核を盗み、開拓者の身体へと埋め込み言霊で催眠を施すのが物語の始まりであり、同時に神々の戦いの幕開けでもある。そうなれば当然、終焉を回避すべく動く星核ハンター達もまたこなすべきタスクが増える増える。
結果、割りとヤバめな状態で銀狼が俺の部屋に眠りに来たことが何度かあった。拠点に誰も居ない事もザラにあり、手作り料理を求めての事だった。
取り敢えず餌付けして風呂上がりに髪を乾かしてあげて寝かしつけてをやったのだが、それはまぁ良いのだ。いや良くはないが。加減しろ馬鹿。
問題はゲームにおいて銀狼初ピックアップとなったバージョン、その同行任務である。
先に言っておくが、銀狼と言う人物は一言で表すならクソガキである。
例えばゲームに勝つ為なら何でも使う。チートは勿論暴言は吐くし煽りは行うし、何なら舐めプだってする。自分の腕前に自信を持ってる様な学生みたいな行いをするのだから、まさにクソガキである。
彼女の生まれはパンクロードであり、同時に中々に酷い境遇でもあった。生まれながらにレベルが決められそれに縛られる世界の中で、抗い勝ち奪ってきた全て。そして勝ち続けることで芽生えた自信と、幼さ故の全能感。レベル999となった未来の自分にすら打ち勝ち、同時に彼女が未来を託せる程の可能性に溢れた自分。
やはり、彼女を表すのならクソガキである。
「……ごめん」
まぁ何が起きたのかと言えば、銀狼の持つ全てのアカウントが凍結されたのだ。当然俺に与えられていたアカウントも凍結された。
その結果、銀狼が結構深刻な雰囲気で謝罪をして来たのだ。
多分仮面の愚者の皆さんはもう覚えていないだろうから、何があってこの結果になったかをざっくりと説明すると、ヘルタの運営する模擬宇宙の中にある奇物「パンクロードの精神」のコピーされまくってるデータを求めて銀狼が侵入、自分と釣り合う相手と認めている天才二人とやり合えるとワクワクして挑んだら相手にされずアカウントを全部凍結されると言う盤外戦術にて撃退、純粋な子供を鼻で笑う様な大人の酷いやり方に彼女は泣いた……という顛末だ。
本来であれば、アカウントを凍結されようともカンパニーのピアポイントにハッキングを仕掛ければ余裕で取り返せるのでショックは無い筈だった。しかし、俺と言う異物が居る事で少しだけ状況が変わってしまった。
謝られたけど、申し訳ない気持ちなのは俺なんだよね。ヘルタは詫び石とスクリューガムかライコスの実装をしてくれ。それとマダムヘルタ超強化と最適サポーターもお願いします。
「いや、まぁ、謝らないでくれよ。俺は君の厚意でゲームをさせてもらってた立場だから」
「でも、私の不手際と見通しの甘さであなたまでアカウントを失った」
「悔やむなら課金に注ぎ込んだ金額とやり込んだ時間を悔やもうぜ」
自分で育てたアカウントがBANされたらガチギレする自信しか無い。いや嘘、今世では自分のアカウント全部消えてるからもう慣れたわ。一体何個のアカウントが犠牲になったのかは覚えてないけどね。
一応慰めてはみたけれど、想像以上に申し訳ない気持ちになっているらしい。こうなると結局のところ「自分が自分を許せない」と言う気持ちが強い為、他者からの言葉はあまり意味を為さなくなってしまう。
「調子狂うなぁ」
で、あればどうすべきか。模範的ヤリチンであるならば「うんうん、それは天才二人が悪いね。じゃ、挿れるね」となるか、或いはひたすらに慰めまくって心の扉を開き、そのまま鍵を開けてゴールインだろう。
でもちょっと、傷心中の相手に付け込むとか酷くて出来ないよな……まぁこれが陰キャ童貞たる所以なのだが。陰キャは関係ないって? それはそう。
「じゃあさ、ゲームしようぜ」
「ゲーム? でもアカウントは全部凍結されてるし、今から新しいのを作ってやるの?」
「はは、現代っ子め」
ゲームとは日本語で遊戯、つまりは遊びである。いやまぁ試合とかの意味も含むけど。遊びと言う意味に絞ってみても、その方法は無数にある。ネトゲ、オンラインゲームだけがゲームでは無い。ちなみに俺が買い切りゲームを買って遊ぶとソフトが消失するし、何ならハードも消失する。
それはともかく。
「ゲーセンとか行こうぜ。アカウントなんて必要ない筐体がいっぱいあるじゃん」
ゲーセンってスタレ世界にあるのか知らないが。少なくとも前世ではガキの頃にマジで少ない小遣い握りしめてよく行っていた。そして金が無いから友達のプレイを眺めてた。毎月の小遣い300円とかだったからね、仕方ないね。その上何かを買って貰えるという事も無かった。まぁ裕福じゃなきゃそんなもんよ。
俺のそんな提案に、意外だったのか間の抜けた様な表情をしていた銀狼は、少ししてから吹き出す様に笑った。
「良いね、どうせなら全部の記録塗り替えて来ようか」
ニヤリと、笑ってそう言った。
やはり銀狼は得意気にか、或いは人を馬鹿にした様に笑うのが一番似合うと思う。恥ずかしくて赤面してる姿とかも見たいけどね?
「ところで俺ゲーセンとか行った記憶無いんだけど、年齢による入店時間の制限とかだいじょぶそ?」
「……どういう意味?」
「だって見た目クソガキじゃん」
「はぁ? あなただって見た目はガキでしょ。あとクソは余計」
ガキか? まぁガキか。
「でも俺は実年齢不明って言う最強の手札があるからな。こんな見た目で案外ジジイの可能性もある」
何せ今世の記憶と記録はほぼほぼ消え去っているのだから。この世界には長命種結構いるし、長命種大体若々しい見た目してるし。俺は短命種であるのか長命種であるのかすら分からないし、実年齢を知る手段も証明する手段も無い。
「それ、証明出来なきゃ同じ様に帰されるだけじゃない?」
「……さては天才か?」
なんだこいつ頭良いな。流石はパンクロードのウルフロード様だぜ。
「ま、取り敢えず行って気分転換しようぜ」
そして明日のスターピースラジオは『星核ハンターの銀狼、風営法違反により警察組織に補導される』で話題を掻っ攫うぜ。多分保護者としてカフカか刃が来て指導される情けない図になる。
「あなたの考えてる事は何となく分かるけど、カフカなら言霊で忘却させられるし、私はハッキングでデータの改竄出来るからね」
キッショ、なんで(考えてる事)分かんだよ。
進んでるな、この星のゲームセンターは。
まさかフルダイブ式の対戦ゲームがあるとは思わなかった。私の夢に見た世界が、今目の前に……!
それにちゃんと普通の筐体もある。太鼓を叩く音ゲーやパネルをタップする音ゲー、ドラム式の音ゲーにプリクラ、二人でプレイ出来るゾンビとかをひたすら銃で撃ち殺す系のゲームにレースゲーム、競馬シミュレーターにメダルでやるパチスロまで……プリクラはゲームじゃねぇや。
「良き」
これだよこれ、パチンコ店程では無いがうるせぇ店内に、ちょっと効きすぎてるくらいの冷房と割高設定されてる自動販売機。ああ、懐かしのゲーセンだ。近くにマックがあれば最高だった。スタレの世界にマックねぇけど。スパチキ消したの一生許さねぇからな。
「お、パンチングマシーンあるじゃん。流石にこれは私じゃ記録塗り替えられないからやってよ」
「任せろ」
筋肉モリモリマッチョマンでは無いし、分類するならギリ細マッチョ程度の肉体を持つ俺だが、事誰かを殴り殺す事にはそれなりの自負を持っている……なんでそんなもんに自負を持ってんだよ怖いわ! 前世じゃせいぜい不良の喧嘩くらいしかしてねぇぞ?
まぁ、とは言え。パンチングマシーンには必勝法がある。そのコツを上手く使えばこの通りカンストだ。地味に俺の記録に残る初白星か?
「あ、ランキングバグった」
ちょっと虚無の星神さん、修正早過ぎない?
「じゃ、次は対戦ゲームやろ」
「辞世の句は考えてきた?」
「凄い、斬新なブーメランだね」
「ははは、このクソガキが」
舐めてると潰すぞ。
「嫌だ……俺は、負けたくないいいいいいいい!」
「急に叫ぶじゃん」
決闘者は皆心の中にヘルカイザーを飼ってるからね、仕方ないね。
貴様の懐にある勝利を奪い取ってでも、俺は勝ああああ──負けた。
「ほら、辞世の句。早く」
「ざけんなや、勝ち筋あらへん、ドブカスが」
懺悔の用意が必要だったのは俺のようだ。
「字余りじゃん」
何が面白かったのか暫く笑っていた銀狼は、思いっきり伸びをしてから溜め息を吐いた。
「明日からも頑張ろ」
「おう、頑張れ」
これからどんどん忙しくなっていくのだろう小さな身体の戦士の、背中を俺は遠慮なく押してやる。
「あなたも頑張ってくれても良いんだよ?」
「今はまだ私が動くべき時では無い」
じゃあいつ動く時が来るんですか? うーん、明後日とか!