嵐のような勢いで、パルス・ライフルから放たれるエネルギーの奔流。
それら全てがアイアンハートの直前で受け止められ、霧のように立ち消えてゆく。
『リパルサー・シールド』。
電磁パルスのエネルギーで防護膜を生成すると同時に、強力な斥力場を生成する事で物理的にもエネルギー的にもアイアンハートを防護するシステムだ。
これも、リリが開発したアイアンハートの『色』だった。
だがしかし、
「あー、クソ! 手札を晒しちまった!!」
リリは悪態をつくしか出来なかった。
アイアンブラッドにアイアンハートの情報を開示してしまった事に、悔しさすら覚えている。
リリはアイアンブラッドと数回しか会話していないが、その言動から見るに、決してバカの類ではない事は看破していた。
(業腹だが、こいつの応用力はアタシと同等……いや、それ以上かもしれない……!)
心の中で毒づきながら、リリは腹立たしさと焦りがあった。
対するニコラスは、
「ほぅ? 普通の電磁シールドじゃないな。アイツ、俺が開発したパルス・ライフルを防いでいるぞ? 解析できるか、マーキュリー?」
自動的にカートリッジヒューズを排莢しながら、マーキュリーに尋ねた。
「イエス・マイロード。あのスーツはリパルサーエネルギーを斥力場として展開し、一種のバリアーのような機能を持たせています。どれだけの威力のある攻撃が相殺されるのかは、現在計測中です」
「ふむ。それなら、少し情報が欲しいな。もっと撃ち続けてみるか?」
ニコラスはそう言って、もう片方のライフルもアイアンハートに向けて乱射した。
二丁同時なら、単位時間あたりの攻撃量は単純に二倍になる。
「あぁんのぉ、トンチンカンがぁ~!!」
リリは歯を食いしばって、アイアンハートをその場に踏ん張らせる。
少しでも体勢を崩したら最後、地平の果てまで吹き飛ばされる程の勢いがあった。
だが、懸念点はもう一つあった。
リリはヘルメットの内側のモニターにあるバッテリー残量を示すメーターをチラリと見る。
「バッテリー残量、残り30%を下回ったよ、リリ……!」
「見りゃ解る!」
レイ・シフト・リアクターはリパルサー・シールドの発光をエネルギーに変換しているが、それ以上に、パルス・ライフルを相殺するための消費量の方が遥かに多い。
「リリ!」
「あっちが根負けするか、こっちが根負けするかの勝負だよ、ナタリー!」
「けど、リリ!」
「ナタリー! ここで逃げたら、Building3の建物の中にいる皆はどうなるのよ!!」
「あーもう、オーケイ、リリ! 最後まで付き合うよ!!」
シールドの生成エネルギー残量が0になるのが先か、パルス・ライフルの弾切れが来るのが先か。
リリは歯を食いしばりながら、バッテリー残量が10%を切るのを見つめていた。
そんなやり取りも爆音に打ち消されて聞こえない中、
「あのスーツの防護力はこちらの想定を上回っています。2丁同時に発射しても同じでしょう。如何しますか、マイロード?」
と、マーキュリーがニコラスに問いかけた。
「なーに、奴が動かないでいるなら、俺達にはポータルがある。やれ、マーキュリー。奴のシールドの内側にポータルを展開させろ!」
「イエス・マイロード。素晴らしい判断です」
そこから、きっかり3秒後の出来事だった。
「はぁ!?」
「嘘!?」
リリとナタリーが素っ頓狂な声を上げる。
アイアンハートの両腕の間に小さなポータルが開き、その中央からパルス・ライフルの銃口がにょっきりと突き出された。
「あばよ、コスプレ・ガール!」
ニコラスは残酷な笑みを浮かべて、引き金を引いた。
連続で雷鳴のような轟音を立てて、アイアンハートの装甲に豪雨の如く、エネルギーの奔流が叩きつけられる。
「きゃあああああぁぁぁッッッ!?」
今までの堅牢さが嘘であったかのように、アイアンハートのスーツが濁流にのみ込まれる流木の如く、Building3の建物に叩き付けられる。
それでも、アイアンブラッドの執拗な攻撃は止まらない。
リパルサー・シールドを失ったアイアンハートに、
「あはははははは!! ははははははは!!」
ニコラスは容赦なくパルス・ライフルの銃弾を浴びせ続ける。
「うっぐおおおおおぉぉぉ~~~ッッッ!?」
アーマーを貫通してやって来る衝撃に、リリは両目を明滅させ、悲鳴を上げる。
それでもアイアンブラッドは容赦なくパルス・ライフルの銃弾を浴びせ続けた。
Building3の壁面に亀裂が入り、穴が開く。
アイアンハートは、軽石を投げるかのように何度も地面をバウンドし、MITのグラウンドの1つ、ブリッグスフィールドまで吹き飛ばされてしまうのだった。