アイアンハート/ザ・フェイク   作:中村 冬也

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第十二話 ポータル

 嵐のような勢いで、パルス・ライフルから放たれるエネルギーの奔流。

 

 それら全てがアイアンハートの直前で受け止められ、霧のように立ち消えてゆく。

 

 『リパルサー・シールド』。

 

 電磁パルスのエネルギーで防護膜を生成すると同時に、強力な斥力場を生成する事で物理的にもエネルギー的にもアイアンハートを防護するシステムだ。

 

 これも、リリが開発したアイアンハートの『色』だった。

 

 だがしかし、

 

「あー、クソ! 手札を晒しちまった!!」

 

 リリは悪態をつくしか出来なかった。

 

 アイアンブラッドにアイアンハートの情報を開示してしまった事に、悔しさすら覚えている。

 

 リリはアイアンブラッドと数回しか会話していないが、その言動から見るに、決してバカの類ではない事は看破していた。

 

(業腹だが、こいつの応用力はアタシと同等……いや、それ以上かもしれない……!)

 

 心の中で毒づきながら、リリは腹立たしさと焦りがあった。

 

 対するニコラスは、

 

「ほぅ? 普通の電磁シールドじゃないな。アイツ、俺が開発したパルス・ライフルを防いでいるぞ? 解析できるか、マーキュリー?」

 

 自動的にカートリッジヒューズを排莢しながら、マーキュリーに尋ねた。

 

「イエス・マイロード。あのスーツはリパルサーエネルギーを斥力場として展開し、一種のバリアーのような機能を持たせています。どれだけの威力のある攻撃が相殺されるのかは、現在計測中です」

 

「ふむ。それなら、少し情報が欲しいな。もっと撃ち続けてみるか?」

 

 ニコラスはそう言って、もう片方のライフルもアイアンハートに向けて乱射した。

 

 二丁同時なら、単位時間あたりの攻撃量は単純に二倍になる。

 

「あぁんのぉ、トンチンカンがぁ~!!」

 

 リリは歯を食いしばって、アイアンハートをその場に踏ん張らせる。

 

 少しでも体勢を崩したら最後、地平の果てまで吹き飛ばされる程の勢いがあった。

 

 だが、懸念点はもう一つあった。

 

 リリはヘルメットの内側のモニターにあるバッテリー残量を示すメーターをチラリと見る。

 

「バッテリー残量、残り30%を下回ったよ、リリ……!」

 

「見りゃ解る!」

 

 レイ・シフト・リアクターはリパルサー・シールドの発光をエネルギーに変換しているが、それ以上に、パルス・ライフルを相殺するための消費量の方が遥かに多い。

 

「リリ!」

 

「あっちが根負けするか、こっちが根負けするかの勝負だよ、ナタリー!」

 

「けど、リリ!」

 

「ナタリー! ここで逃げたら、Building3の建物の中にいる皆はどうなるのよ!!」

 

「あーもう、オーケイ、リリ! 最後まで付き合うよ!!」

 

 シールドの生成エネルギー残量が0になるのが先か、パルス・ライフルの弾切れが来るのが先か。

 

 リリは歯を食いしばりながら、バッテリー残量が10%を切るのを見つめていた。

 

 そんなやり取りも爆音に打ち消されて聞こえない中、

 

「あのスーツの防護力はこちらの想定を上回っています。2丁同時に発射しても同じでしょう。如何しますか、マイロード?」

 

 と、マーキュリーがニコラスに問いかけた。

 

「なーに、奴が動かないでいるなら、俺達にはポータルがある。やれ、マーキュリー。奴のシールドの内側にポータルを展開させろ!」

 

「イエス・マイロード。素晴らしい判断です」

 

 そこから、きっかり3秒後の出来事だった。

 

「はぁ!?」

 

「嘘!?」

 

 リリとナタリーが素っ頓狂な声を上げる。

 

 アイアンハートの両腕の間に小さなポータルが開き、その中央からパルス・ライフルの銃口がにょっきりと突き出された。

 

「あばよ、コスプレ・ガール!」

 

 ニコラスは残酷な笑みを浮かべて、引き金を引いた。

 

 連続で雷鳴のような轟音を立てて、アイアンハートの装甲に豪雨の如く、エネルギーの奔流が叩きつけられる。

 

「きゃあああああぁぁぁッッッ!?」

 

 今までの堅牢さが嘘であったかのように、アイアンハートのスーツが濁流にのみ込まれる流木の如く、Building3の建物に叩き付けられる。

 

 それでも、アイアンブラッドの執拗な攻撃は止まらない。

 

 リパルサー・シールドを失ったアイアンハートに、

 

「あはははははは!! ははははははは!!」

 

 ニコラスは容赦なくパルス・ライフルの銃弾を浴びせ続ける。

 

「うっぐおおおおおぉぉぉ~~~ッッッ!?」

 

 アーマーを貫通してやって来る衝撃に、リリは両目を明滅させ、悲鳴を上げる。

 

 それでもアイアンブラッドは容赦なくパルス・ライフルの銃弾を浴びせ続けた。

 

 Building3の壁面に亀裂が入り、穴が開く。

 

 アイアンハートは、軽石を投げるかのように何度も地面をバウンドし、MITのグラウンドの1つ、ブリッグスフィールドまで吹き飛ばされてしまうのだった。

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