全国大会で金賞を獲得して家に帰ってきた。愛知からだとそこそこ大変だった。でも達成感もある。まさかの金賞、思ってもみなかったな。お父さんからもメッセージを貰ったし。
でも、まあこの先吹奏楽自体をここまでがっつりやることは無いと思う。
「たっだいまー!」
「おかえりー! 金賞おめでとう!」
「んー」
「お寿司頼んどいたから早くお風呂入ってきちゃいなさい」
「はーい」
ステージの上とか照明で暖かくなって汗かいてたんだよね。ってことでよーしお風呂だー!
お風呂から上がってお母さんと一緒にお寿司を食べる。かなり良いところのお寿司だ。
「珍しいね、このお店のお寿司」
「今日くらいは良いかなと思ってねー。嫌だった?」
「ううん! 嬉しいよー」
「そう? なら良かった」
母娘をやりなおそうってお互いに頑張ってきて、最近では変な空気になることは無くなった。この調子で頑張っていきたいと思う。
「もう高校では3年生が参加する演奏会は無いの?」
「んー、3月に定期演奏会があるけど、国公立後期まで考えてるからどうかなって感じ。前期で受かっても練習できるのは1週間くらいだからね」
「あ、そっか。……そうよね。大学は?」
「大学の吹奏楽サークルに入るか、滝先生が指導してる社会人吹奏楽団に入ろうかなーとは考えてる。まあでも、まずは大学受験頑張らないと」
「そうね。あすかなら大丈夫だと思うけど、大学受験に集中してくれると私的にも嬉しいかな」
「ん!」
残り2ヶ月教でセンターだ。頑張って行かないと。
次の日、透先生が北宇治にやってきてメッセージをくれた。
「皆、金賞おめでとう。激戦区である関西大会を突破しただけで無く、全国大会でも金賞を獲得できるとは。やっぱり僕の目に狂いは無かった、本当におめでとう。
3年生はこれで引退かもしれない。でも、この3年間一緒に頑張ってきた同級生はこれからも仲間であることには変わりないから、支えて支えられて、いつまでも助け合えるような関係を築いて欲しい。〝音楽は楽しい〟ということをこれからも胸に刻んで欲しいかな。
そして1、2年生。
3年生がしっかりと部活に集中できるよう基盤を作ってくれました。僕としてはこの先10年20年と北宇治高校吹奏楽部が全国に名を馳せるように取り組んで欲しいと思っています。
ただ、それでもコンクールの結果だけにとらわれるのでは無くて、【音を楽しむ】という基本的な事だけは忘れないで欲しい。現部長の中世古君達も〝音を楽しむ。そして結果も残す〟という目標をしっかりと果たしてくれたからね。
……そうそう、今の北宇治がなんと言われてるか知ってるかい? 〝お祭り高校〟って言われているんだ。いつも楽しそうに演奏していて、見ているこっちも楽しくなってしまうってね。
【音を楽しむ】と書いて音楽です。吹奏楽だけが音楽ではないのでこの先も色々な音楽に触れて楽しんで下さい」
そして、色々と引き継いで私達は吹奏楽部を引退した。中には推薦で早めに進路が決まったから部活に参加したりしている同級生も何人かいる。あと音大に進んで音楽の道を目指すから部活に参加してる同級生も何人か。
私も透先生達にそれとなく音大を薦められてはいたけど、ユーフォの演奏家としてこのさきやっていけるかと言えば興味ないし、あと……多分お父さんとどこかではちあう可能性が高くてお母さんの負担になっちゃう。
お父さんが私にユーフォをくれたのは凄く嬉しい。でもお母さんを辛い目に遭わせていたのも事実で、正直声とか性格も分からない。顔は調べれば分かるけど。
だから私の中でお父さんは〝血縁上の知り合い〟、ただそれだけ。あと家庭持ってるっぽいからねー。この先も関わらない方がお父さんの家族にも良いでしょ。「異母姉弟がいます!」って言われても余計なトラブルの元になるだけだ。
そういうことで私にとってユーフォは趣味。これはこの先も変わらない。
結と話して、後藤がパートリーダー、美鈴っちが副パートリーダーに決定。
私達の代の幹部である香織達と1こ下の幹部となった優子ちゃん達と話して川島サファイアを部長候補として教育することが決定した。
低音パートだけでお別れ会をしてくれて、いつもの教室でお菓子とジュースを持ち寄ってのパーティータイムだ。
「結先輩ー、あすか先輩ー、引退しないで下さいよー」
「ごめんねー、葉月ちゃん。留年は流石に遠慮するかな」
「うえぇ!!」
カトちゃんが結に抱きついて大号泣。私は副部長の仕事が忙しくてなかなかねー、後輩の面倒見てあげられなかったから引退も惜しまれてないんだろうな、仕方ないんだけど。あと結の方が雰囲気柔らかいから。
竹下がポテチを飲み込んだ後に私達に質問してきた。
「先輩方、3月の定期演奏会は乗れるんですか?」
「んー、どうだろ。後期まで国立の試験考えてるから厳しいと思う。前期で決まればステージには立てるかもしれないけど。練習してないのに参加するのは迷惑だよねー」
「私もかなー。当日は行くと思うけど」
「絶対来て下さいよ!!」
「「はーい」」
1年の時はこんな風に部活を出来るとは思ってもみなかった。だらだらやって適当に卒業するんだって思ってたし。それが全国金賞で引退できるなんてねー。うん、我が吹奏楽人生に一片の悔い無し! なんてね。
「あ、あの。あすか先輩?」
「夏紀ー、どうかした?」
「いつも吹いてる曲教えてくれませんか? あの優しい曲。調べても分からなくて」
「あー、あれねー。……耳コピすれば良いじゃん」
「勝手に吹いたら嫌がられるかなって」
「あー。……案外夏紀って律儀だよね。うん」
「褒められてます?」
「褒めてる褒めてる。……うん、良いよ。夏紀になら教えてやらなくも無い」
「ありがとうございます!」
黄前ちゃんはそこまで関わりなかったからねー。お父さんから教えて貰った曲も聴いたこと無いだろうし。仕方ないね。ユーフォっぽいのは変わらなかったなー。まあでも3年と1年なんてこんなもんでしょ。
結と2人で夏紀には教えてきたけどよく辞めなかったよ。初心者でよくここまで出来るようになった。うんうん、来年はA編成間違いないかな。
受験勉強に明け暮れると、部活とは違った意味で時間があっという間に過ぎて年が明けた。春高バレーも始まって、猫又君達の最後の活躍ぶりを見る。頑張れ、烏野高校。
1月2月の大学受験も終わって、私と葵は4月から学部は違うけれど同じ京都の国立大学に通う事が決まった。同じ文系だから授業とかも一緒の可能性が高い。その時は宜しくって言い合ってる。葵は晴香の通う大学の吹奏楽サークル、インカレかな? で楽器を続けるらしい。私はどうしようかなー。まあ、その時次第だね。
良く晴れた3月1日の卒業式で卒業証書を受け取って、最後のホームルームが終わって適当に時間を潰していると中庭で吹奏楽部が集まってるのが見えた。透先生もいるっぽいから挨拶だけでもしてくるかな。
……と、思ってたけど、結が私の教室まで来た。
「あすかー、卒業おめでとう!」
「結もね、卒業おめでとう!」
私の1つ前の席の椅子に座って結と向かい合う。低音パート2人で引退までやってきて、でも今日でそれもおしまい。
「あすかも葵もマジやばいね。めっちゃ頭良いじゃん! 京大でしょ! 京大!!」
「まあ勉強やってきたし。結の方が凄いじゃん。音大頑張ってよー」
「頑張るー! 頑張ってドラマかゲーム音楽作るよ! それでいつか絶対にポケモンのBGMに携わる!」
「おー、その時にはサイン貰っちゃおうかな」
「あすかも弁護士になったらサイン頂戴ね」
「気が早ーい」
大学の4年間、もしかしたら院にも行くかもしれない。絶対に結が大成する方が早いって。そんな結が雰囲気を変えて神妙な態度を取り始めた。
「ねえ、あすか?」
「何? 改まってさ」
「2年前『戻ってくれば?』って言ってくれてありがとね」
「もぉー、何度も聞いたよー。私も頑張った、結も頑張った。それで良くない? 私1人だったら低音パート回ってなかったかもしれないし、私も助かった。戻ってきてくれてありがとね」
「ううっ、あすかが素直だ」
「何それ」
2人してクスクス笑ってると、中庭の方から「結先輩―! あすか先輩―! どこですかー!?」ってカトちゃんの叫び声が聞えてきた。
「「…………絞めるか」」
何やってんだか、カトちゃんったら。少しくらい余韻に浸らせろっての。
「最後に挨拶していこうか」
「だね」
荷物を持って結と中庭に向かっていく。
中庭に到着して、吹部の同期やら後輩達から「結とあすか、迷子になってるっぽいよー」みたいに笑われて、まずカトちゃんの背後に回って私が拘束、結がカトちゃんの脇腹を擽る。カトちゃんの笑い声が中庭に響き始めた。
「あはっ! あははははっ!! やめっ! 止めて下さい!! あははははっ!!」
「誰が迷子だってー?」「迷惑かけんじゃないよー」
「く、久美子っ! 助けてぇ!! みどりもっ!! 美鈴もっ! あははははっ!!」
「だから辞めた方が良いって言ったのにー」「そうですよ、葉月ちゃん!」「それにしても良い声」
「う、裏切り者ぉー!!」
これ以上は怒られそうだな、ってタイミングで止める。あら、エッチな顔じゃないのー。潤んだ瞳に赤くなった頬。ちょっぴり汗も滲んでる。竹下と後藤がズボンをずらしたのも見えちゃったー。笑い声とエッチな声は同じ高さらしいからねー、うんうん。
「カトちゃんは拘束プレイが好きなの?」
「違いますよ!!」
そりゃそうでしょ。
夏紀と梨子も近くに寄ってきて、低音パートが全員揃った。代表として後藤が話し始める。こういうのあんまり好きじゃないけど、最後くらい聞いてやるかなー。
「結先輩、あすか先輩、ご卒業おめでとう御座います」
「「「おめでとう御座います!」」」
「俺自身2年間低音パートでやってきてこうしてパートリーダーになりましたが、なかなか先輩方のようには出来てないと思います。しかも全国金賞を獲得した次の代だなんて。正直新入生含めて来年度がどうなるか不安です。
でも、先輩方が残してくれた〝音楽を楽しむ。そして結果を残す〟というモットーを叶えていきたいと思います。なので、演奏会やコンクールなんかも遊びに来て下さい」
「OBとして手伝えることがあれば?」「忙しくなかったら良いよ」
「お願いします。……中川」
「ん」
あ、これ全員言うパターンか。……まあ最後だし、時間にも余裕有るし。良いか。
「初心者で吹奏楽部に入って、でも2年間結先輩とあすか先輩には色々教えて貰って今ではユーフォが好きです。
次のコンクールではA編成に選ばれるように頑張ります。あと副部長も」
「頑張れー」「優子ちゃんのストッパーも頑張ってよ」
「はい! ……梨子」
「はい!」
涙腺崩壊中の梨子が一歩前に出て口を開いた。
「っっ、えっと、そのー。
私も夏紀と同じで、初心者で楽器を始めてなかなか上手くいかなくても結先輩とあすか先輩が根気強く教えてくれたおかげで今年はコンクールメンバーにも選ばれました。しかも全国大会金賞も獲れて。
もっともっと音楽とチューバを好きになりたいと思います。また遊びに来て下さい!」
「後藤との結婚式には呼んでねー」「同じく!」
「えぇっ!! そんなー!! ……あ、竹下君、ごめんね」
「こうなるんだろうなって分かってたから大丈夫―」
北宇治高校吹奏楽部のおしどり夫婦として部外にも認知されてるもんね。
涙が引っ込んで顔を赤くした梨子と豪快に笑ってる竹下が入れ替わった。
「えーっと、そうですね。下山先輩と田中先輩、まずはご卒業おめでとうございます。
中学の時は関西大会常連校の俺達が府大会止まりで、チューバも辞めようかな、高校では違うことやろうかなって思ってる中、丁度生まれ変わってる北宇治に入学して本当に良かったです。1年の時は関西金賞、2年は全国金賞穫れましたしね。
最後の1年悔いのないようにやりきりたいと思います。2年間お世話になりました!」
「後藤と梨子の仲が拗れそうになったら仲介してあげてね」「あんたなら大丈夫でしょ。後藤のこと支えてあげてね」
「はい! じゃあ1年! ……加藤いけ」
「おっす!!」
竹下とカトちゃんが入れ替わって運動部出身故に雑に扱っても大丈夫なカトちゃんが選ばれた。この子はこの子で来年にもコンクールメンバーのチャンスがあると思ってる。
「結先輩! あすか先輩! ご卒業おめでとうございます!!
私も夏紀先輩と梨子先輩と同じで高校から吹奏楽を始めて、4月から先輩方には色々とお世話になってきました。他の1年生3人も経験者で正直辛いこともありましたが、楽器演奏の楽しさを理解できて本当に良かったです! 今年はB編成に選ばれるように頑張ります!!」
「基礎はしっかりね。焦っちゃ駄目だよ」「曲と編成次第だけどこの調子ならAに選ばれる可能性はあるから頑張りたまえ。低音がしっかりしてると良いからね」
「本当ですか!! 頑張ります!! ……みどり!」
「はい!」
カトちゃんと川島サファイアが入れ替わった。コントラバスは川島サファイアと美鈴っちがいるから大丈夫。うん。
「結先輩、あすか先輩、ご卒業おめでとう御座います。
……そうですね、コントラバスは私と美鈴ちゃんに任せて下さい! 『北宇治高校に私達アリ!』って思い知らせてあげますから!
偶に遊びに来て下さると嬉しいです。待ってます!」
「うん、緑輝なら大丈夫ー、後藤達のケツ叩いてやって」「恋愛でも頑張りたまえー」
「はい! ……美鈴ちゃん!」
「はい」
川島サファイアと美鈴っちが入れ替わる。この子はこの子で埼玉の強豪校にいたから頼もしい。
「結先輩、あすか先輩、ご卒業おめでとう御座います。
4月に入学したと思ったらあっという間に1年が過ぎていました。正直何してたの? って感じです。もっと一緒にステージに立ちたいです。なので今から卒業証書返却してきて下さい」
「スズちゃん? 無茶言わないでね?」
「冗談です。……っ」
あー、遂に涙腺崩壊したかー。さっきから頑張って耐えてたもんね。ハンカチで目元を押さえながら呼吸を整えた。
「今年と来年、結果を残せるように頑張ります!!」
「今度川越に遊びに行こうと思ってるんだー、オススメの場所教えてね」「結果も残して欲しいけど、吹奏楽を楽しむんだよー?」
「はい! ……黄前ちゃん」
「はい」
美鈴っちと黄前ちゃんが入れ替わる。さあ、最後のトリです。何を言うんでしょうか。
「えーっと、黄前です。結先輩、あすか先輩、ご卒業おめでとう御座います。
そうですね、今年こそは絶対にA編成に選ばれるようにします。あとは、えーっと、……あすか先輩」
「ん?」
「私にもあすか先輩が吹いてる曲教えてくれませんか?」
「耳コピすれば良かったのでは?」
「やっぱりお伺いしておきたくて」
「そう? 分かった」
通学鞄に手を突っ込んで【響け! ユーフォニアム】の譜面のコピーが入ったクリアファイルを取り出す。黄前ちゃんなら欲しがるかなーって思って正解だった。この子、自分の本心なかなか言わなくてさ。困っちゃう。たっくよー。
「はいこれ」
「あ。ありがとうございます」
「ん。今年は大丈夫だと思うから頑張ってね」
「はい!」
「結先輩もありがとうございました!」
「定演終わって23日からは先輩として振る舞うんだぞー。もう2年生になるんだからなー」
「はい!」
最後の黄前ちゃんが挨拶を終えたから、梨子は結に、夏紀は私に手に持ってた紙袋をそれぞれ渡してくれた。
「低音パートからです。私達も頑張るのであすか先輩も頑張って下さい」
「ん、ありがと」
それなりに重いからタンブラーとかかなー? って邪推する。……いや、辞めとこーっと。帰ってからのお楽しみだ。
「じゃあ先生方の方に行くから。これからも頑張ってよ」
「「「はい!」」」
「「Bye!!」」
「「「ありがとう御座いました!!」」」
1年の時は3年が消えてくれて嬉しかった。でも、私達が3年になって、後輩達から卒業をお祝いして貰えるようになるとは思わなかったな。
滝サン、松本先生、滝透先生がダブルリードの2人と話し終わったタイミングで話し掛ける。
「先生方」
「おおっ! 下山に田中か! 卒業おめでとう」
「ありがとう御座います。
最後に挨拶させて下さい。松本先生は3年間、透先生と滝先生は1年間とお世話になりました。ありがとう御座いました」
「ありがとう御座いました!」
結と一緒に一礼する。
「……では、私から。
3年間ご苦労、そして卒業おめでとう。これからおまえ達2人の世界は更に広がっていくが、高校3年間で培ってきた経験から自信を持っていろんなことに挑戦して欲しい。頑張れよ!」
「「はい!」」
松本先生と握手をして、今度は滝サンが話し始めた。
「下山さん、田中さん、ご卒業おめでとうございます。
下山さんが低音パートを、田中さんが副部長として纏めてくれたおかげで今年度の結果を残すことができました。本当にありがとう御座います。
お2人共これから大学、社会人と大人になっていくわけですが、是非音楽と共に歩んでいって欲しいと思います。お2人なら出来ると信じていますからこれからも応援していますよ、頑張って下さい」
「「はい!」」
松本先生と同じように滝サンとも握手をして、最後に滝透先生の番だ。
「下山君、田中君、卒業おめでとう。
部活をしっかりとこなして結果を残せたこと、そして大学にも第一志望の所に合格したと聞いてとても鼻が高いよ。君達ならばいくらだって成長できる。是非ともこれからの人生楽しんでいって」
「「はい!」」
「あと、僕が指揮を担当してるバンドはいつでも人数を募集しているから、興味があれば遊びにおいで。また一緒に音楽を楽しんでいこう」
「「はい!」」
「これからも応援しています、頑張って」
「「はい!」」
透先生とも握手をして、最後にまた一礼してその場を離れる。そして、校門前で待っている香織達と合流して歩きだした。これから私達は吹部の皆で開く二次会だ。高校最後となる通学路を惜しみながら歩いていく。
ふと、【旅立ちの日に】が頭に浮かんできた。
「白い光のなーかにー、山並みは萌えてー」
急に歌い出した私を皆怪訝そうに見てくる。良いじゃん、卒業ソング。卒業生なんだから。
「……急にどうしたの」「懐かしいね」
「知らない? 【旅立ちの日に】」
「いや、知ってるけどさ」
「せっかくだし歌おうよ」
「しょうが無いなー」
「まああすかだしね」
「さっすが香織! ほら、せーのっ!!」
白い光のなーかにー 山並みは萌えてー
遙かな空の果てまでもー 君は飛びーたつー
4人で【旅立ちの日に】を歌い始める。最初は乗り気じゃ無かったくせに晴香もノリノリで歌い始めた。
私、香織、晴香、葵に続いて結とフルートパートの琴子、頼子、京子、つね。ダブルリードパートの来南と美貴乃。クラリネットパートのヒロネ、臼井君、弓菜、まいな、純子、咲子、須賀美、笙子、恵子。サックスパートの来夢、弘江、キリコ。トランペットパートの沙菜と有美。ホルンパートの樹里、比呂、麻弥。トロンボーンの千円と愛衣。そして最後にパーカッションパートのナックルと沙希。
3年間一緒に頑張ってきた総勢32人で【旅立ちの日に】を歌っていく。
引退しても吹奏楽部。ソルフェージュとか発声練習で鍛えられてたからそこそこ形になってて、でも男子パートが弱いのはご愛嬌。
そして、最後のサビに移った。
今、別れの時ー!
飛び立とう! 未来信じてー!
弾む! 若い! 力信じて!
この広いー(この広いー) この広いー(この広いー)
大ーーーー空に!
歌い終わって周りから拍手やら指笛を貰いながら、校門を出るタイミングで香織が一言。
「皆! 3年間ありがとう!!」
「「「こっちこそありがとー!!」」」
「「「Foooooo!!」」」
2015年3月1日、こうして私達は京都府立北宇治高等学校を卒業した。
かけがえのない3年間の思い出と、高校生活で出来た一生ものの友達と一緒に。
【お祭り高校 KI・TA・U・JI!!】完
↓おまけ↓
2020年8月、日本で開催された東京オリンピックの男子バレーボール部門で私達は歴史的快挙に居合わせた。
94年から96年生まれで特に目覚ましい活躍を見せている男子バレー選手をモンスタージェネレーションと言うらしく、烏野高校の影山君と猫又君も該当していて高校から追いかけていた身としては鼻が高い。
そして、遂に決勝戦のアルゼンチン戦だ。2セット獲得して1セット獲られた。つまり第4セットの終盤戦。【25-24】で日本がマッチポイント。その瞬間を今か今かと待ちわびる。
画面の中で、影山君と牛島さんの2人と同じく宮城県出身で、でもアルゼンチンに帰化したトオル・オイカワ選手がボールを掴んで不敵に微笑んでる。顔良い、やばい。……及川徹って猫又君達が高1の時に対戦した青葉城西高校のキャプテンだったよね……?
『アルゼンチン代表オイカワの強烈なサーブをリベロの猫又が拾う! そのボールは綺麗にセッターの影山に返っていく! そして! そして!! そして!!!!
……決まったぁぁぁぁ!! 〝日本の主砲〟、牛島若利の強烈な一打!! 今! この瞬間!! 日本が世界を取りましたぁぁぁぁ!!! 天照JAPAN、悲願の金メダル!! 48年ぶりの金メダルです!!』
テレビの中で牛島さんのスパイクが決まった。4セット中の3セット取ったから日本の勝利だ。
ベンチメンバーがコートに詰め寄って試合に出ていた選手と大騒ぎしてて、私達もつられて興奮する。
「「「きゃぁぁぁぁぁ!!」」」
「夢じゃない!? 夢じゃない!?」
「夢じゃない!!」
「「「わぁぁぁぁ!!」」」
多分今までに無い位大はしゃぎしてる。晴香も葵も香織も私も。高校3年で全国金賞を取ったときと同じくらい興奮してるかも。
信じられない。……いや、本当に信じられない!!
『欧州遠征トリオがやってくれました!
……ああ、すみません、涙が! モンスタージェネレーション達よ、よくやってくれた!!』
「やばいよやばいよちょーやばい!」
「語彙力! でもやばい!」
「もうやばーい!」
高校1年の12月に猫又君と偶々会って、それから大学リーグ、Vリーグと応援してきて。遂には世界で頂点になってしまった。
……あれから烏野高校男子バレー部を追い続けてきて良かった!!
皆さんこんにちは。青黄紅白です。
【烏野高校の猫又君】と【お祭り高校 KI・TA・U・JI!!】をお楽しみ下さりありがとうございました!
実際にバレーと吹奏楽に興味を持って頂けたらなと思います。現地で聞く応援はやっぱり映像越しとは違います。オススメですよ。
現時点で出来ることは終了したので一旦お休みします。
ここまで応援ありがとうございました。また別の作品を投稿した際には楽しんで下さると嬉しいです。本当にありがとうございました。