お祭り高校 KI・TA・U・JI!!   作:青黄紅白

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2013年度③

 サンライズフェスティバルと中間テストが終わり、いよいよ吹奏楽コンクールの季節がやってきた。

 テスト明け初めての部活の時間になり、中世古香織がミーティングの時間で前に立つ。

 

「皆さん中間テストお疲れ様でした。

 今回で実感したと思いますが、吹奏楽部は何かと拘束されて引退時期も他の部活より遅い事が多いです。部活を引退してから改めて卒業後の事を考えると間に合わないことが多いので、早め早めから行動していきましょう。勉強も楽器と同じで毎日少しずつ伸びていくからね」

「「「はい!」」」

「久しぶりの放課後練習になるので、今日は個人練習の時間になります。明日から滝先生はいらっしゃるので少しでも勘を取り戻していきましょう」

「「「はい!」」」

「それでは各教室に移動して下さい」

 

 北宇治高校吹奏楽部一同はぞろぞろと音楽室を出て割り当てられている教室へと向かっていく。

 

 

 

 翌日、指導に来た滝透が壇上で話す。

 

「皆さん、中間テストお疲れ様でした。まずは楽器から離れていた分を取り戻しましょう」

「「「はい!」」」

「人の前で演奏する事が上達の一歩だと思っていますので、なるべくその機会を増やしていきます。実際に6月8日と7月7日に『是非演奏を!』とお声を頂いています。

学校生活との両立は大変だとは思いますが、演奏会の練習と同時にコンクールに向けて練習していきましょう」

「「「はい!」」」

「また、経験者の方なら想像ついてると思いますが、〝関西大会金賞〟を目指す上で6月下旬にオーディションを行います」

 

 〝オーディション〟と聞いて、音楽室内の緊張感は一気に高まる。いつも一緒に演奏してる仲間が合格で自分が不合格、逆に自分が合格して仲間が不合格、のパターンを知っているからだ。

 

「緊張してしまうのは当然かと思いますが、そう張り詰める必要はありません。

 皆さんには〝音楽を楽しむ〟ことをお願いしているので、今回のコンクールでは1つないし2つの曲をどこまで完成させられるかを発表する機会だと思ってコンクールを楽しんで下さい。

 〝練習を楽しむ〟。〝オーディションの緊張感を楽しむ〟。〝コンクール当日を楽しむ〟、ですね。

コンクールの結果に捕らわれるのは私と松本君だけで構わないので、皆さんは観客の反応にこだわって下さい。良い演奏には必ず拍手が返ってきますからね」

「「「はい!」」」

「それでは曲の発表です。

課題曲は【コンサートマーチ「青葉の街で」】、自由曲は【春の猟犬】にしようと思います。各パート譜面は配られていますよね。せっかくなので聞いてみましょうか」

 

 そう言って、滝透はCDプレーヤーを再生した。

 

 

 2曲聴き終わり、滝透はCDプレーヤーの電源を切る。

 

「はい、ありがとう御座いました。何となくのイメージだけでも掴めたら良いです。

 課題曲の方はオーソドックス故に何処までも追求できると思っています。さっぱりとした曲なので『どこまで爽やかさを表現できるか』が鍵になってきます。皆さんのイメージを1つにすることが大事なので積極的にパート内、パート外でコミュニケーションを取っていきましょう。私からもどんな仕上がりにしたいかは伝えていきますね」

「「「はい!」」」

「続いて【春の猟犬】です。経験者ならばきっとどこかで聞いたことがあってもおかしく無いですよね。実際に演奏しただろう人は少し嫌そうな表情をしていましたから」

「「「うっ……」」」

 

 見られているとは思わずに難度の高い曲を聞きつつ楽譜を見ていた数人が罰の悪そうな表情をした。

 

「当然難しい曲です。テンポもあってアーティキレーションも複雑。

 ただ、1つ昔話をさせて頂くと、この【春の猟犬】と言う曲は私が北宇治高校吹奏楽部の指揮をして初めて全国金賞を勝ち取った曲になります」

「「「っ!!」」」

「選曲としてはもっと相応しい曲もあるでしょう。ただ、これからの北宇治高校のスタートを思うのならばこの曲しか無いなとも思いました。〝関西大会金賞〟も口で言うほど簡単じゃ有りません。

ですが、きっと皆さんならば関西大会だけで無く全国大会だって楽しめるはずだ。是非とも頑張っていきましょう」

「「「はい!」」」

 

 そして、吹奏楽コンクールに向けての練習が始まった。

 

 

 6月と7月の演奏する曲を決めるパートリーダー会議から田邊名来は音楽室に戻ってきた。パート割をしてる打楽器パートの面々に出迎えられる。

 

「ウィーッス」

「あ、ナックルおかえりー」

「「「お帰りなさーい!」」」

「曲なんですか!? 曲なんですか!?」

「そう焦んなよ、今から伝えるから。こっちは?」

「まあなんとなく?」

「オッケー、まあこんな感じだ。

 6月は【シンクロBOM-BA-YE】と【夏祭り】、【吹奏楽のための木挽歌 Ⅱ.盆踊り】の3曲で、7月は七夕だからどれかを削って【たなばた】をやろうかって話になってる」

「「「なるほどー」」」

「【ウォーターボーイズ】見てた!」

「「「私も!!」」」

 

 喜ぶ2年1年とは対照に、3年の池田永美子と内山香純は難しい表情を作った。

 

「……コンクールの曲の練習の他に【たなばた】はちょっと負担大きくない?」

「その意見は当然上がったので、【たなばた】は無くても良いのかな、とも出てますね。他の団体が演奏すると思いますし。とりあえず3曲は決定してるので楽器振り分けていきましょう」

「それなら良かった」

「まあ、1回CDプレーヤーで聞いてみましょ」

 

 田邊名来は借りてきたCDを入れて、CDプレーヤーを操作した。

 

 

 4曲聞き終わる。

【吹奏楽のための木挽歌 Ⅱ.盆踊り】を聞いて、「和太鼓!!」と1年の坪井麻衣と大野美代子は目を輝かせた。

 

「和太鼓! やばい!」

「滝先生がせっかくだから〝吹奏楽〟と〝和楽器〟を組み合わせた曲もやってみようってさ。なかなか和太鼓触る機会無いしってね」

「ほえー!」「滝先生太っ腹ー!!」

「夏っぽーい!!」

 

 そこで田邊名来は池田永美子と内山香純の方を向いた。

 

「先輩達和太鼓やります?」

「いや! いやいやいや! 私達は良いよ!」

「亡霊だと思ってくれて良いから!」

 

2人は手をブンブン振って断る。しかし、1年の原口詩音や阿部夏実らはあまり納得のいってない様子だ。

 

「私達、永美子先輩と香純先輩に嫌がらせ受けたとか無いので引け目感じないで下さいね? あの人達はあの人達、永美子先輩と香純先輩は永美子先輩と香純先輩なので」

「そうっす。パートリーダーだってお二人がやった方が良かったのに」

「そう言ってくれるのは嬉しいけどね、まあ止めなかった私達も私達だから」

「あと、オーボエの鎧塚ちゃんのソロ聞いてたいから。……なんだっけ、和楽器でフルートっぽい横笛」

「篠笛じゃなかったでしたっけ?」

「あー、そうかも!」

「【盆踊り】の方お祭りって感じで楽しいよね~」

「あがた祭り楽しみです!」

「「「ね!」」」

 

 「そういえば、あがた祭り誘わねえと」と一瞬頭に浮かんだ田邊名来は彼女である加山沙希の方をついつい見て、その視線の意味を理解した彼女は顔を赤くしながら俯いた。

 

「……部活に集中してないから、罰としてナックルと沙希はあがた祭りで撮ったツーショットの写真を送ること。反論は許しません」

「「いぃっ!?」」

「口答えしたからキスの写真もね」

「「えぇっ!?」」

「楽しみだねー」

「楽しみー」「「「楽しみです~」」」

 

 パートリーダーを引き受けなかった訳ではあるけども、上級生としての役割は分かっているから後輩を茶化しつつも手綱を取る3年2人だった。彼氏がいないから腹いせにイタズラしたわけでは無い。きっと。

 

 

 

 6月に入って8日の地域演奏も終了し、吹奏楽部内はオーディションに向けて集中していた。そして、オーディションの結果も伝え終わる。合格者55人、不合格者15人。曲の編成と個人の表現力を組み合わせたものになった。

 不合格となってしまった15人は別室で今後の予定の確認をするために音楽室を出て行った。滝透と55人の部員だけになったのを確認して、中世古香織は口を開く。

 

「……今音楽室を退出した皆を絶対に忘れないで下さい。私達は今回選ばれた。でも15人の仲間は選ばれなかった。

 私達は4月から一緒に70人で楽しくやってきましたが、コンクールの編成上55人しか一緒にステージに上がれません。

〝選ばれた〟私達が1番しなければいけないことはコンクールの結果を出すこと以上に、いかに15人の仲間を納得させられる演奏をするかです。その為にも毎日ちゃんとやっていきましょう」

「「「……はい!!」」」

 

 普段とは違った迫力を見せる中世古香織に事情を知る3人以外もここで意識を切り替えた。

 3年生2年生は去年までの年功序列でのコンクール参加を思い出し、去年の二の舞になるものかと決意する。1年生もまた上級生の熱意に感化された。

 

 

 一方、不合格になってしまった者は松本美知恵と共に1つの教室に集まっていた。

 

「残念ながら、おまえ達は不合格となってしまった。それは事実だ。

 だが、ここでふて腐れるか、或いは前を向けるかは個人の頑張り次第になる。来年こそは選ばれるようにと励んで欲しい」

「「「はい!」」」

「では、早速だが今後の予定だ。

個人の基礎を向上させるのはもちろんだが、B編成としてコンクールに出場するか、この15人で何回も演奏するかだな、どうするかはおまえ達に決めて欲しい」

「……先生方はどう思っていますか?」

「滝先生も私もどちらも利点欠点があると思っている。

 前者はコンクールに参加して1つの曲を仕上げる楽しさを知る一方で、足りないパートが多いことや各パート1人ないし2人なので『間違えられない』という不安を抱えてしまう可能性が高い。

 それは勿論後者にも該当するが、コンクール程では無いな、と言う意見。

 私達としては、色んな曲を演奏してもっと場慣れしても良いんじゃないかと考えてる。今はまだ時期尚早ではないかという意見だ」

「その場合の予定はどうなるんですか?」

「7月7日の他に7月中にもう1回、8月になったら週に1回のペースでの演奏を考えている。曲は1曲削って1曲増やしていくことになるだろう。合計7曲くらい演奏することになるな」

「ありがとう御座います」

「他には? ……無いようだな。

滝先生から個人の講評を頂いている。参考にした上でこれからの夏期休暇でさらなる飛躍を遂げて欲しい。

それでは受け取った者から今後の予定を考える時間とする。多数決になってしまって申し訳ないが各自しっかりと考えて欲しい。

それではフルートパートから、井上!」

「はい!」

 

 フルートパートの井上調から呼ばれて各自現在の課題点を受け取ってから熟考する時間となった。結果的に彼らはコンクールでは無く何度も演奏する機会を選ぶ。

 

 

 そして、北宇治高校吹奏楽部は府大会金賞、関西大会金賞を獲得して夏のコンクールを終えた。

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