学園アイドルマスター〜コスモスと青い不死鳥〜 作:kimberlite
来てくださってありがとうございます。
実際にプレイしているような臨場感のある作風を心がけていきます。
よろしくお願いします。
入学式を終えた4月1日の昼下がり、ボイストレーニング室の前に立つ、ダークブロンドの長い髪を無造作に束ねた、左前のシャツとトラウザー姿の人物。その部屋の中で歌っている少女と交互にバインダーの写真を見てから、しわがれた少年のような声で呟く。
「事前調査はこんなところか……よし、スカウトに行こう」
部屋の扉を開けると、少女は独りでレッスンをこなしている。彼女が部屋に入ってきた相手へ気づいて振り返ると、青みがかったアイヴイの、ウルフレイヤーな長い髪を揺らして歩み寄ってくる。
「……出ていっていただけますか、レッスンの邪魔です」
作り物めいた冷たい雰囲気を纏わせ、目の前の相手に突き放すように退去を促す。
「失礼しました。月村手毬(つきむらてまり)さんですね」
「あなたは?」
名前を確認された少女、手毬は肯定するわけでもなく、目の前の人物に名前を聞き返す。
「プロデューサー科、1年1組長沢秋桜(ながさわあきお)です」
(あきお……男の人だったんだ。身長は私より少し高いけど、華奢な人だな)
手毬が目の前の人物について、それとなく、目の前の人物、秋桜をじっくりと見ていると、秋桜が口を開く。
「あなたに話があります。レッスン後にお時間をいただけませんか?」
「待たなくていいです。いま、ここで聞きます」
秋桜の誘いを遮るように、手毬が答える。早いところ切り上げてレッスンに戻りたそうにしているのが秋桜にも伝わる。秋桜は単刀直入に、手毬へ要件を告げる。
--あなたを、プロデュースさせてください--
「お断りします」
秋桜の単刀よりも鋭い切れ味で固辞する手毬が続ける。
「私のことをよく調べもせずにきた方を信用できません」
「よく調べてきたつもりです。その上であなたをスカウトしたい」
「……エイプリルフールなら、今のうちにお引き取りください。もう十分でしょう」
「初対面の相手にそんなことするわけないでしょう」
手毬が突き放そうとしても、秋桜は真剣な眼差しで手毬を見つめる。
(どこかで会ったような気がしたけど……男の人なら違うし)
「それなら、私が起こした問題を……知っていると?」
手毬の返答に食い下がる秋桜はうなづく。
「なのに私を、プロデュースしたいんですか?」
「ぜひ」
「……少し考えさせてください」
念を押すように問いただす手毬は、それでも退かない秋桜の前に、天秤にかけようとする。
(プロデューサーの存在は、私の助けになるかもしれない……いいえ、期待はしないでおこう。私は、そう決めたんだから)
「月村さん、なにか、お怒りですか?」
「なんでもありません、考え中なので話しかけないでください」
早く自主レッスンに戻りたいのかもしれないと、秋桜が声をかけると、また冷たく突き放すように答える。
(……そんなに怒ってるみたいに見えるのかな?ともあれ、悪い話じゃないと思う。制度の恩恵を受けられるだけでも十分なメリットだし……それに、『いまの私』をスカウトしようなんて人、他にいるわけがない)
手毬の中の天秤が傾いた。
「……決めました。私をプロデュースさせてあげます」
(って、なんでこんな偉そうに言ってるの私!ぅぅ……怒らせちゃった?)
「ありがとう、これからよろしく」
「えっ? え、ええ……コホン」
その回答に、勢いよく感謝する秋桜。手毬は咳払いして続ける。
「私には夢があるの、必ず叶えると誓った夢が。だから、その……」
--私を失望させないで--
「では、こちらへ必要事項を記入お願いします」
手毬が契約書に記入すると、彼女はレッスンを再開し、秋桜は手続のためにその場を離れる。
「なんとかスカウトは成功した……しっかり信頼を積み重ねていこう」
しわがれた少年のような声でそう呟いて。
本作の主人公、長沢秋桜も投稿日(9月27日)が誕生日ですが、作者も誕生日に学マスをプレイし始めました。